ソードアート・オンライン・フェイトアンコール 作:にゃはっふー
メイトの正体が知られる中、本人は気にせず進むのみ。
あの一件以来、さすがに俺のことを隠す必要性が無くなった。
SAOプレイヤーたちには理解できそうにない部分があるが、だいぶこのゲームがおかしくなったのはいまさらと言う理由もある。
フィリアにも話をしていて、こうして《ホロウ・エリア》で彼女のカルマ救済イベントを探したりしていた。
キリトとも協力しつつ、攻略のボス攻略戦は通常は参加しない方針が決まっている。
できる限りリソースを確保しつつ、本当の戦闘に備えてのことだ。これはアスナたちがしっかり会議して決めたらしい。
それからみんなとの時間も増える。
リズやシリカがもともと中層プレイヤーで大変だったとか、リーファやシノンが外からSAOに混線で途中参加したプレイヤー。
色々な話を聞きながら俺たちは過ごしている。
そうしながら、
「ユイ、これ」
「これ、プレゼントですか? ありがとうございます」
ともかく普通には過ごしている。
こうして手に入れたアイテムで、相手が喜びそうなものをプレゼントしたりしていた。
「そう言えばメイトさん。知ってましたか」
「なにかな」
「はい、現実の子供を作るのはキスするらしいんです」
ユイは少しだけお姉さんぶりたいのか、明らかに後から作り出された俺に、色々教えてあげようと言うそぶりを見せていた。
だが、俺の知識でそれは聞かれた人の苦肉の答えと知り、そうかとしか答えられない。
セイバーの行動に目を光らせないと、本当のことを教えるとか言って連れて行きそうだ。
そんな日々の中、シノンの方で話が合った。
彼女とは知識面で話すことが多い。これもそんな一日だ。
「射撃スキル?」
「ええ、あの戦闘後だと思うんだけど」
バグスキルと言うわけではなく、シノンのデータはその後も正常であり、弓矢らしい武器も見つかった。
それに全員が驚く中で、セイバーが名乗り出る。
「ならば練習あるのみだな。余がレクチャーするぞっ」
「? あなた剣士なのよね?」
「問題ない。余の《皇帝特権》を用いれば、弓の達人くらいになれる」
「………そういうものなの」
「ああ」
不安そうなシノンを始め、メンバーにセイバーの《皇帝特権》のことを説明した。
本来持ちえないスキルを短期間所持できる。セイバーはEX。かなりのレベル補正がある。
「それなら弓の扱いも教えられる、のかしら? かなり便利な能力ね」
「おおっ、任せてくれシノンっ」
その時、とてもいい笑顔のセイバーに対して、
「セイバー、教えるフリしてシノンの身体に必要以上触れるなよ」
「ぶっ。わわ、分かっておるっ」
「………えっ」
妙に動揺するセイバー。やはり目を光らせなければいけないらしい。一番危険なのはユイか。
そう考え始めていると、シノンを始めにアスナたち女性メンバーに捕まり、俺だけが連れ出された。
「あんたいまのどういう意味」
「………」
その時、俺はやってしまったと言う言葉が浮かぶ。
リズが鬼気迫る顔で見ているため、これは話さないと解放してくれなさそうだ。
仕方なく、セイバーには悪いが
「セイバー曰く、美少年も好きだが、美少女はもっと好きらしい」
「………え」
詳しい話、セイバーは英雄の一面を、剣士として召喚された存在だ。
言い伝え通りの性別ではない時もあるし、言い伝え通りと言うところもある。
「それって………」
「ヘラクレスはギリシャの英雄として有名だが、美少年を愛していたとか。彼女は両方問題ないらしい」
その時、セイバーはユイと話し合っていた。楽しそうな雑談だが、母親であるアスナは光速でユイの側に来る。
「? ママ、どうしたんですか?」
「べべ、別にっ。なんでもないわよユイちゃんっ」
「安心せよアスナ。余は寛大だからな」
セイバーもなにを話していたかだいたい分かるようであり、アスナの態度も平然と受け入れた。
そう言い胸を張りながら、
「キリトもアスナも問題ないぞっ」
瞬間アスナはユイをセイバーから遠ざけた。その中にはキリトも混じっている。
「問題ありますっ」
「? なんの話をしてるんです?」
「ユイは知らなくていいよ、いつか分かることだよ」
俺はそう言い、キリトもびくびくしているがセイバーは、
「これでもう我慢せずとも良いと言うことだなっ。ぐふふ」
シリカを見ながら微笑むセイバー。シリカがびくんと警戒態勢に入るが、セイバーは解放されたように嬉しそうだ。
シノンとリズから目を光らせるように言われたり、セイバーは笑顔を絶やさずアスナたちを見ていた。
そんな日々の中、変化らしい変化は………
「う~ん………」
「どうしたキリト」
「メイト、それが」
キリトの手には重箱とは言わないが、簡単なお弁当がある。前に中身を見せてもらたが、S級食材を使用したお弁当がキリトの部屋に届けられるようになった。
これにはキリトガールズ全員が反応して、誰がお弁当を届けているか調べることになったが誰が置いているのか不明のまま。
キリトはS級食材と言うこともあり、毎日食べることにしている。勿体ないからな。
アスナはそれに対して手料理を振る舞い、触発されたキリトガールズの手料理が出され、それも食べる羽目になる。
しかし、実は俺にしか相談されていないが、他にも不可解な現象は起きていた。
朝起きると着替えが用意されてたり、帰ると湯がちょうどいい温度で張られてたり、洗濯が終わってたりしている。
最初はユイか宿のサービスかと思ったが、それはキリトが使う宿で必ず起きるイベントの為、首をかしげるしかない。
いまは実害が無いから穏便にしているが、目立つようなら本格的に調べるとのこと。
「キリトガールズも大変だな」
「待て、そのキリトガールズはなんだ」
「『アルゴ』が教えてくれた」
情報屋である彼女から色々情報をもらうことはある。
そう言ったところを除けばおおむね平和だ。
だがこれは果たして平和と言えるのだろうか、この時俺には理解できなかった。
◇◆◇◆◇
そんなこともありつつ、シノンに弓矢の扱いを教える日。シノンがあんたも来いと首根っこ掴まれて引っ張られ、セイバーは二人共々問題ないと真顔で言ったため、俺を盾にするシノン。
それでも教わることには変わらず、森のフィールド。小川も流れる、爽やかな風が吹く草原近くで集まる。
「とはいえ、余のスキル的なアシストだけ、まずはシノンの感覚でやった方が良い」
「そうさせてもらうわ」
俺をいまだ盾にしながら、セイバーと共に狩りに出るシノン。
「そんなに警戒せずともよい。生前ならいざ知らず、いまは無理矢理娶る気はない」
「無理矢理だろうがなんだろうが警戒するわっ」
「ぬぬぬ……、まあ良い。手ごわい方がいい時もあると言うものだ」
「あんたこの子のマスターなんだから責任を取りなさい」
「分かった」
そう言いながら、フィールドで猪型モンスターを見つけようとする。
俺が木の上に上り、辺りを見渡したら、
「いたぞ、良いのがいた」
小川がすぐ側で流れる木の上で、遠くでのそのそとフィールドを一匹で歩く猪がいる。
「本当ね」
すぐ背後からシノンの声が聞こえ振り返ると、そこに彼女はいた。
「登ったのか」
「ええ、ここからなら飛距離も伸びるし、狙い場所としていいわね。セイバーは私が射貫いたら仕留めるって」
「そうか」
彼女はそのまま前の方に出て、俺の前で猪を狙う。
少し密着する状態で弓を構えるシノン。
シノンが構えたところで静かにし、枝を気を付ける。まさか折れたりしないだろうか?
しばらくしたらセイバーが遠回りして立ち位置に着く。
「さすがセイバーね、良い位置。静かにしてね、狙うから」
そう言われ静かにしている。
弦が引かれ、静かに集中するシノン。
僅かにシノンの髪が鼻をくすぐるが、コードキャストを使用して感覚を鈍らせておく。
ただ香りだけはしっかりするのだが、これ後で言えば殺されないか?
そうこうしたとき矢が放たれ、猪を捕らえて刺さる。
すぐに追撃するセイバーを見たとき、
「やった」
軽くガッツポーズを取ったシノン。その時、メキメキと言う音が強まる。
気づいたときには枝が折れた。
「はわっ」
「!」
ざばーんと川に落ちると共に何かに触れ、すぐに身体を起こす。
空中でシノンを抱えて身体を反転し、シノンの下になったはずだ。
顔を上げてみたとき、それは、
「あ、アンタねえ………」
抱きかかえるシノンを見ると、顔を真っ赤にして俺を見ていた。
水に濡れて透ける衣類、そして俺の片手はシノンの胸に触れている。しかもどうも服の隙間を通って素肌に触れていた。
インナーも見えたところで立ち上がり、頬を赤く染めて弓矢を構えた。
「ま、待てシノン。グリーンを攻撃すればオレンジだ」
そう、グリーンプレイヤーを攻撃すれば、オレンジプレイヤーになってしまう。シノンもそれを思い出して止まった瞬間、
「きゃっ」
バランスを崩したのか、シノンはしりもちをつく形で後ろへ倒れて水に浸かる。
深くない川の中、水浸しの俺たち。
その時、俺は気づいても言ってはいけないことを言った。
「あっ、くろ」
俺はつい見えたそれを口にした瞬間、シノンはますます顔を赤くした。
「くっ、カルマ救済イベントすればいいんでしょッ」
「!」
放たれる弓矢の中、俺は必死に避けながら謝り続けた。
セイバーが戻る前にコードキャストで乾かすことと、お昼は俺が奢ることで許してもらう。
少し散々な結果だが、シノンの弓は戦闘で使えるものと確認はできた。
◇◆◇◆◇
町こと《園内》に入るとボロボロになり、お互いグリーンのまま帰宅すると、キリトが凄いことになっていた。
「「なにがあった」」
キリトがこちらを見て奇しくも同じ感想が出た。お互いなにかあったのか知らないが、シリカたちがキリトの側に張り付いている。
話では占い師NPCから今日は不幸な目に遭うと言うことを言われ、厄払いに女の子と一緒にいないといけない。
そんな話を聞きシノンは呆れた。
商業区にいる占い師はイカサマで、まぐれで当たれば幸運グッズを押し付けるらしい。
シリカ、リズを左右に後ろからリーファに抱き着かれている彼に、シノンが占いをする。
「もうすぐキリトに災いが降りかかる」
「………俺は無力だ」
その時、来客を告げるベルが鳴り響いた。
「あ、シノのん、メイト君、セイバーさん。キリト君を見なかった?」
「アスナ話があるから少し出よう」
「キリトならそこの女子の固まりの中よ」
俺が急いでアスナからキリトを隠そうとしたが、シノンはそれを撃ち砕く。
アスナが怪訝そうに店の中を見ると、
「ははっ……や、やあアスナ………」
女子たちはすぐに避難し出し、こうして不幸が降りかかる。
「まったく、男ってものは」
「キリトの周りは可愛らしい者が多くて良いぞ」
セイバーはそう言い、こうしてお互い不幸な目に遭うのだった。
◇◆◇◆◇
「最近視線を感じる」
「ストレアか?」
あれからしばらくしてキリトが俺たちの部屋に入り、相談する。
この前の一件で色々あったキリトだが、ついにお弁当だけじゃなく、レアアクセサリーなどが渡されてきたらしい。
しかも指輪。
「誰が、キリトの索敵スキルに引っかからないんだよな?」
「ああ、それも最近手紙もあるんだ」
「手紙?」
セイバーが首をかしげると、手紙は挨拶から始まり、キリトのことが事細かく書かれていて少し悩む。
「キリトのファンか。ストレアか」
「ストレアじゃないのは確認済みだ」
「それでは他の女子ではないか?」
セイバーの言葉に俺とキリトがセイバーを見る。
「セイバー、なんで女だと分かる? いや女性じゃなきゃ少し怖いが」
「文面からはさすがに分からないが、紙から僅かに香水が香る」
「ん………」
嗅いでみると確かに香水の香りがする。これだけで女子と決めつけるのはどうかと思うが、確かにヒントではあるか。
だが本当に香水か?
「コードキャストで調べてみるか」
「鑑定までできるのか?」
「解析してみる」
コードキャストで解析してみると香りの元の結果が出た。
これは香炉で香木からの香りだと分かる。
「香水じゃないな」
「香木か、けどこれでかなり情報が整理できるよ。ありがとう」
「気にするな。けど、香木の香りがする部屋で書いた手紙か」
「言葉にすると恋する乙女としては満点だな」
だが、正直手紙の内容を読み続けていくとだんだん細かくなっていく。
ついにはユイのことや、他のメンバーとのやり取りまで書かれている。これは行き過ぎている。
「これは少し………」
「やっぱり、少し調べてみるか。俺はともかく、ユイになにかあったら困る」
「そうした方がいい。なるべく側にいたらどうだ」
「ああ、アスナとも相談してそうする。他のみんなにも話しておくか」
そんな会話をしてその日は解散になるが、
「? そう言えば、香木なんて言うアイテムとかあるのだろうか? 調べてみるべきか」
結局香木による香りを楽しむアイテムは見つからず、謎は謎のままであった。
チキンライスなどを筆頭に手作り弁当を渡されるキリト。
メイトはシノンとイベントを起こす。
セイバーは解放されました。
それではお読みいただきありがとうございます。