ソードアート・オンライン・フェイトアンコール 作:にゃはっふー
データ収集を始めます。
戦い、ボス攻略戦の前。俺はフィリアの下に顔を出した。
「そう、攻略は進んでるんだね」
「ああ。キリトも《黒の剣士》として活躍しているから、彼もそっちに。今日は探索はできない」
「別にいいよ。攻略の方が大切だから。わざわざ言いに来てくれたの?」
「? ああ」
俺はそう言うとフィリアはおかしそうに微笑む。
なにがおかしいのだろうか。
「変なの。メイトはその、本当にNPCなの? 少しそうは見えないな」
「俺は聖杯戦争に対応されたSAOプレイヤーらしいから、俺は分からない」
俺は俺としている。その理由には興味は無い。あるのはただ〝上〟へと向かうこと。
フィリアに報告し終え、俺が転移門で町に戻るとユウキがいた。
「ユウキ」
「あ、メイト。今日は攻略戦なのにどこ行ってたの? セイバーが探してたよ」
「フィリアに探索できないことを伝えに。ユウキは」
「ボクはレベリング。少しでも強くなって、メイトたちの役に立ちたいから」
そう微笑むユウキの頭を撫でる。ユウキはふにゃ~と言う顔になり、嬉しそうだ。
「もう子ども扱いして」
だがすぐに頬を膨らまして、ぷんぷんと言いながら不機嫌になる。人間は分からないな。
ともかく俺とキリトたちは攻略戦。しかもサーヴァントが相手だ。
気を引き締めないといけないが、必ず突破する。
「〝上〟へとたどり着く、その為に」
その為だけに俺はここにいる。
◇◆◇◆◇
聖杯戦争のボス部屋。これに対して前回ほどプレイヤーはいるが、みんなかなり緊張していた。
他にも攻略組以外にも、博学なプレイヤーも組み込まれる。
それは相手が伝説や伝承に出て来る者であり、相手は三騎。誰か一人真名を看破できる可能性を高めたかった。
そしてその中に弓矢を背負う者もいる。
「シノンも来るのか」
「当たり前でしょ。これでも一応知識はあるわ」
そう言ってシノンまでいる中、アスナの号令が走る。
「それでは今回のボス攻略はおそらく、聖杯戦争のシステムを使った戦いと判断されます。つきましては、戦闘を担当するメイト君からの注意事項を聞いてください!」
その言葉に俺が一歩前に出る。
ほとんどすでに俺がNPCなのは知られているが構わない。先に行くのには関係ない。
「話に出たメイトです。サーヴァントの種類は七つの他にエクストラクラスが存在しますが、これはイレギュラーなため頭の隅にあればいいです。肝心なのは七つのクラスです」
キリトたちにも改めて説明しなければいけないため、フィールドに出る前に全プレイヤーに説明することになっていた。
その中で一人のプレイヤーが手を上げる。
「それって前衛剣士とか、そういうのか?」
「はい、サーヴァントは英雄たちの一面をコピーして、クラスに合わせられた者のことです。有名どころで言えば英雄ヘラクレス。彼はセイバーが最良、アーチャーなら最適でしょうか」
「クラスってのは七つあるようだが」
「剣士セイバー、槍兵ランサー、弓兵アーチャー、騎乗兵ライダー、魔術師キャスター、暗殺者アサシン、狂戦士バーサーカーです。バーサーカーについて説明します」
バーサーカーは狂った戦士。本来の英雄から理性を外して、狂わせることでより強力な兵器へと変える。
英雄によってはすでにそれしか言い表せない者もいれば、それによって凶悪になる者もいる。そう説明した。
「バーサーカーは正直、理性が飛んでれば飛んでるほど危険です。皆さんが相手できるクラスは、ライダーとアサシン。よくてキャスタークラスのみです」
「セイバークラスとかとは」
「戦えない可能性が高いです。なにより、彼らには必殺技があります。宝具です」
神秘が込められた武具、能力と言ったもの。
先に言ったヘラクレスなら、十二の試練、ゴット・ハンドが一番。
「これは英雄ヘラクレスが十二の偉業から、十二個の命のストックを持っている。それが彼の宝具の一つです」
「………ヘラクレスだけは出て来てほしくないな」
「そもそもそれで一つかよ………」
キリトがそう呟く中、それには同意するが、殺せないわけでは無い。
死なないだけなら、死ぬまで殺せばいいだけ。
だがいま言った通り、英雄が最低でも一つ持っているだけであり、複数宝具を持つサーヴァントもいる。
凶悪な宝具や大軍に対応できるもの。一番危険な宝具は大軍か対人か。正直判断できないもの。
それでもやらなければいけない事実は変えられない
「それでは行きましょう。くれぐれもまともな戦闘があると思わないでください、正直俺にも会わない限り、なんとも言えません」
そう言い、俺たちはとんでもない戦いへと挑むのだった。
◇◆◇◆◇
発見されたボス部屋へと進むと景色が消えていく。
暗闇の道を歩いていると唐突に光が広がり、空間が一変する。
攻略組が気を引き締める中、世界は月夜の下、古城の広い庭園。
「消えなさいこの極東のド田舎リスっ」
「邪魔しないでくださいなッ、いまあの方の為に編み物をしているのです!」
二人のサーヴァントはすでに戦闘している。
一人は槍を振り回す、竜の尾を持つ可憐な少女。
片や編み物の途中のような姿の、角を持つ黒い着物、白い髪の妖艶な少女が炎を纏う。
「バーサーカー二人か」
「違うわよっ」
「あっ、わたくしはバーサーカーです」
全員があっけにとられる中、すぐに真名はともかく、クラスは分かった。ランサーとバーサーカー。そのバーサーカーはすぐにキリトを見た。
「あっ………」
「へ?」
「好きっ!!」
そう言ってゴッと言う炎と共に、頬を赤く染めて接近するパーサーカーに対して、フィールドに防壁を作った。
防壁はいまだ改良されて強固になっているのだが………
「邪魔ですッ」
だが片腕をねじ込み、宝具にすら耐えられた防壁が腕一本で貫き、手を伸ばす。
「ひぃっ」
「そいつ引いてるじゃないッ。あんたのは悪質なストーキングなのよ!」
「違います、隠密的にすら見える献身的な後方支援です。この方だって、嬉しそうにいつも食べてくださいました」
「は? へ? ま、まさか、君が弁当の犯人?」
「ああ、やはりわたくしたちは通じ合っているのですね♪」
嬉しそうに頬を染めながら、防壁を破壊しようとするバーサーカー。
すぐにアスナが目を細め、キリトの背後に近づく。とても低い声で、
「キリト君、お弁当ってなに?」
「ひぃっ」
「き、キリの字、まさかすでにボス部屋に入ったんじゃ」
「い、いや知らないっ。そもそも弁当のことだって、サーヴァント戦が終わってしばらくしてからだっ。この層に来る前ですらない!」
そう言って怯えるキリトだが、周りの目は冷ややかだ。
「ああ
「! 安珍ですって………」
「ええそうですっ。わたくしとまた会う約束をしてくれたっ、また会うと!!」
その目に理性は無く、シノンはまさかと呟いた。
「あ、安珍清姫伝説………。この女、まさか」
「し、シノンっ、真名が分かったのか」
「ええ、彼女は清姫。彼女の逸話は簡単に言うと」
「………安珍様がいけないんです」
ガンッと言う音と共に、防壁にまた腕を差し込み、コードキャストがひび割れ砕かれる。
「また会うと、約束してくれたのに………。嘘をついて去っていった」
そうして砕かれた中、腕はなぜか包帯が巻かれ、傷だらけだった。
いつの間にか、下半身が蛇になっている。
「だから愛おしくて恋しくて裏切られて悲しくて悲しくて………憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎―――」
壊れたスピーカーのように同じことを切り返す少女は、ずっとキリトを見つめていた。
全プレイヤーが怯え、そのホラーのような様子にアスナがキリトに抱き着く。
「だから蛇になって追いかけて、安珍様は鐘の中に隠れてしまったから………。焼き殺してしまいました………」
腕を引っ込めて扇子を広げる。優雅に口元を隠すが、その口は釣り上がる様子が分かる。
ただ狂気に満ちた瞳でキリトを見つめた。
「焼けた鉄の中、蒸し焼きにしてしまいました………。ですが、こうしてまた、お会いする機会に巡り合いました。おいしくてよかったです、いっぱい入れましたから♪」
呟く彼女は嬉しそうにしていた。その両腕は血が滲む包帯が巻かれている。
そう言えば、キリトのお弁当は赤いものが目立っていた気が………
「ぶっ」
口元を押さえ、吐きだそうとするがもう無い。
シノンを始めとした全員の背筋が凍り付き、俺が静かに、
「問題ない、この世界は仮想世界だ。ノーカンだキリト」
「恐ろしく冷静だな奏者よ………」
そしてまた再度キリトへと迫ろうとしたとき、炎を纏う槍が間に入る。
「ランサーは二騎か」
冷静に分析すると古城の中から、一人の英霊がその場に現れた。
白髪の髪に炎を纏う英霊。それに清姫ともう一人のランサーがすぐに距離を取る。
「あんた」
「いったいなんの真似です?」
「貴殿が愛した男を求めるのは勝手だが、戦いの場で礼儀を忘れては困る」
そう言ってセイバーと俺の方を見る。新手のサーヴァント。
「此度の聖杯戦争にて、ランサーの位で召喚された英霊。カルナ」
「カルナ? それって」
「インド神話、施しの英雄カルナ」
すぐに構える。シノンはさすがに分からない顔をしていたがそれを手で制するカルナ。
「まずは報告として言っておく。俺は君らとは戦わない、戦うのはマスターとセイバー、この二人だけだ」
「それは」
「君らは聖杯戦争とは関係なく、またこの戦いはそれですらない。俺が戦うのは、戦士としての意味、それだけ」
槍を一振りする。
ステージが斬り裂かれ、全員が驚愕した。
地割れのようにフィールドが分かれ、僅かに浮上する大地は、サーヴァントとして戦う舞台なのだろう。
「エリザベート、清姫。悪いがこの戦い手出しはやめてもらおう」
「別にかまいません、わたくしには関係ないことと」
「なにげに人の真名バラさないでよっ」
清姫とエリザベートはそう言い、カルナは斬り取った浮かぶステージへと上がる。
仕方ないと周りを見ながら、
「エリザベート、まさか血の伯爵婦人の少女時の姿らしい」
「サーヴァントとして明らかに何か足されているな」
「それって」
説明しておかなければいけない。まずシノンが彼女の歴史を話す。
ランサーはエリザベート・バートリー。拷問具の一部を使った血の歴史のサーヴァント。
それをシノンから聞き、青ざめる人々。
竜の尾などはおそらく逸話から足されたなにか。
「例え史実でなくても、サーヴァントは伝承の中から力を得られる。彼女は生前のイメージで竜などが付け加えられてるんだろう」
「カルナって英雄は」
「………施しの英雄カルナ。彼は死んではいるが、それは姦計や力を削ぎ落されたからであって、全力の状態じゃない」
「つまり、弱ったところを殺された英雄」
「しかもとことんだ。故に全力のカルナとの戦いはみんながいると勝てない。俺とセイバーだけが好ましい」
その言葉に彼は否定も肯定もしない。
戦士として彼は戦う、ただそれだけを叶えるためにここにいる。
「私、別に戦う気はないわよ。っていうかそもそも呼ばれたこと自体不愉快だし、私はあとでしてもらうことをしてもらえれば、倒されてもいいわ」
「条件付きで通してくれるのか」
それに全員が驚いた。サーヴァント戦、つまりボス戦は戦いが必要と思ったからだ。
「わたくしも安珍様を渡してくれればそれで構いません」
「えっ」
キリトが青ざめ、俺は変わらない表情のまま、静かに尋ねた。
「渡せばいいのか、そのあとどうする」
「倫理コードを解除してもらいます」
即座に真顔で答える清姫に、それに全プレイヤーが固まる。キリトはすぐに後ろに下がる。
それはどういう意味だろうか。念のため聞き返す。
「そのあとは」
「それは……言わせないでください」
頬を赤くするが下半身が大蛇の清姫。
アスナが顔色を変えずに、ただ機嫌が悪いことが分かる。
「わたくしは死後の世界を安珍様と過ごすためにここに来ましたから、安珍様がいればそれでいいのです♪」
その言葉にやっと我に返る一同。
「つまり、キリト君の命と引き換え………」
「んなこと許すわけねえだろうがっ」
プレイヤーたちが構える中、清姫の目が見開く。
邪魔をする者たちを定め、静かに炎を纏う。
その様子を見ながら俺もまた構える。
「俺たちはカルナと戦う、清姫は頼む」
「分かった」
すぐにステージを移り、プレイヤーは蛇と成った少女。清姫へと向けられる。
カルナへはマスターである俺。そしてそのサーヴァントセイバー。
こうして戦いの火ぶたが切られる。
「………私は?」
一人戦う理由が無い為、離れた位置でその様子を見つめていた………
キリト、安珍に見られ清姫のターゲット。
エリザベート、戦う理由無し。
カルナ、ただ戦士として戦う。
今回はこの三騎が出現。
カルナは本気で戦いますので、メイトとセイバーは勝てるかどうか。
それでは、お読みいただきありがとうございます。