兄より優れた妹しかいねえ!   作:フクブチョー

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3rd shot 始まりはいつも

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

母親から再婚話は聞いていた。物心ついた時からずっと母と2人で生活していたため、多少戸惑いはあったが、「母さんが良いならそれで良いよ」と答えていた。

 

「貴方は本当に昔から私を困らせない子ね。流石は私の推!自慢の息子……と言いたいところだけど、良い子すぎてたまに不安になるわ。時にはワガママ言ってもいいのよ?」

 

気を使っているとでも思われたのだろうか?しかしそんなこと言われても困る。こんな物、いくら反対しても子供に権利などない。過程は変わるかもしれないが、結局は決定事項。なら無駄に抵抗するのは疲れるだけだと推は本気で思っていた。

およそ子供らしくない思考回路で、人によっては可愛くないと思うかもしれない。しかし、幼い頃からバドミントンをやってきた推は、広い視野で物事を考える癖がついてしまっていた。

 

でも、そんな彼でも文句を言いたくなることはある。

 

もし、貴方が何かトラブルを抱え、誰かに相談することがあるならば、一つ、アドバイスをしておこう。

 

「今日から一緒に暮らす私の娘、泪だ。推くんより歳下だから、妹になるかな。仲良くしてやってくれ」

 

 

大事な情報は小出しにせず、まとめて告げてこい

 

 

父親の足に隠れる少女と初めて顔を合わせた時、喉元まで出かけた言葉だった。実際、彼女と共同生活を始めた時、推はほとほと困った。幼い頃から美少年と呼ぶに相応しい容姿だったため、女子との交流は少なからずある。どんなことが好きで、どんなことが嫌いか、ある程度は知っている。けれど、それはあくまで同年代の、それも友達としての距離感での話。歳下の少女との交流経験はほぼゼロに等しい。家族というパーソナルスペースの最も内側に入り込んだ少女に、何を話していいのか、どんな事から始めればいいのか、全くわからなかった。心の準備もまるで出来ていなかったから、尚更だ。

まして、義理の父の連れ子、益子泪は同年代の女子と比べても、自己表現が上手いとはとても言えない子だった。

時折何か言いたそうにこちらを見てくるも、視線を向けるとサッと逸らす。話したくないのか、と思って離れようとしてみれば、後ろをついてくる。まるで知らない家に預けられた猫でも相手にしているかのような気分だった。

 

───付き合ってられるか

 

「推?走るの?」

 

ウエアに着替え、シューズを履いている最中、母が背中から声をかける。日課のランニングもあったが、ストレスを発散する方法として、推はいつも汗を流すことにしていた。

 

「ああ、神社まで。素振りしてから帰る」

「そう。車に気をつけるのよ」

「うん」

 

耳にイヤホンをかけ、ウォークマンのスイッチを入れる。その直前、『貴方はダメよ』と母が誰かを注意しているのが僅かに聞こえた。

 

推のいつものランニングコースは自宅から5、6キロある神社。一定ペースで走り、境内へと続く階段を駆け上がる頃には軽く息が弾む。今の自分には最適な距離と負荷で、毎日の日課としている。

 

母が提案したランニングコースだった。

 

階段を駆け上がって少し息をついた後、境内のところで練習する。4点フットワーク、素振り、自分ショット打ち、一通り熟し、一度水分補給し、走って帰る。これがいつもの推のトレーニングなのだが、今日は少し違った。

 

「君は……」

 

義理の妹が息を切らし、黒いケースを抱えてこちらを見ているのに気づいたのはフットワークの練習が終わった時だった。

 

「泪ちゃん、ついてきてたのか!ダメだって母さん言ってたろう!この辺、人通りも少なくて危ないのに」

「ご、ごめんなさい、でも……」

「でも?」

「…………一緒にいたかったから」

「──っ、」

 

目を伏せ、声を震わせる少女を見て、ようやく気がつく。親の都合で見知らぬ土地に引っ越し、新たな居場所のはずの家も、父親以外、出会って間もない家族しかいない。父親は仕事で日中いないし、実質彼女は全く知らない家に1人っきりだった。まさに見知らぬ家に預けられた猫の状態だったんだ。

まして彼女はまだ年端もいかない少女、不安になって当たり前。こんな達観した考えで生活している自分が少しおかしいのだ。そんな彼女がより歳が近い自分を頼るのは当然だろう。

 

「泪ちゃん」

「?」

 

中腰になり、目線を彼女に合わせる。こうやってちゃんと顔を見て話をしたのは初めてかもしれない。もっと早くこうしておけばよかった。そしたらきっと、もっと早くこの瞳の奥にあった不安に気づけたろうに。

 

「泪ちゃんが持ってるの、ラケットだよね?君もバドミントンをやるのか?」

「うん、お父さんに教えてもらってて」

「そっか。俺も母さんに習ってたんだ」

 

ラケットを取り出す。シャトルを軽く打つ。小さな羽根は少女の手の中へと収まった。

 

「バドミントンしようぜ、泪」

 

血の繋がらない2人の兄妹を始めて繋いだのは1人じゃ飛べない小さな羽根で、

 

断ち切ったのも2人で飛ばす羽根だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあ、準備できたら体育館においでね」

 

戸が閉まる。唯華の案内のもと、部屋へと案内されたコニーは足音が遠ざかるのを確認した後、これから生活を送る自分の部屋を見渡した。

 

───狭い部屋ね

 

ベッドと机以外にはほぼ通り道しかない。本当に寝て休むためだけの、必要最低限の生活空間。しかしコニーに不満はなかった。幼少期ははもっと酷い環境で生活をしていたこともある。アレに比べれば、雨露を凌げるだけでも有難い。

しかし、そんなタフな彼女にも辛く感じる点はあった。静寂の音が耳に痛い。否が応でも、一人を自覚させられる。

でも……

 

電子音が携帯から鳴る。ディスプレイに出てきた送り主の名前を見て、顔が綻ぶ。

 

『下で待ってる』

 

我ながら、単純だとは思う。たった一言。たった一文でこんなにも精神が変わる。その事実が少し悔しいと同時に嬉しい。

 

「私、寂しくないよ、ママ」

 

ベッドから立ち上がる。すぐさま着替えとラケットが入ったバッグを背負い、兄が待つ寮のエントランスへと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

宮城と聞けば、地方なイメージをしてしまうかもしれないが、都心はそんな事は全くない。人口もそれなりに多いし、仙台など、文句なく百万都市だ。そして、普通学校とは人が多く住む場所の近くに建てられる。その証拠に、仙台近郊には中高問わず、様々な学校がある。

しかしそんな常識に真っ向から逆らうかのような場所にフレゼリシア女子短期大学附属高等学校は居を構えていた。宮城県の山間部を切り開き、創立された私立高校で、人が住むには少し不便。それがフレゼリシア女子短期大学附属高等学校、通称フレ女の特徴だった。

なぜ、そんなところに学校があるか。その理由は単純。広い敷地面積が必要だったからだ。

フレ女はバドミントンのみでなく、数々のスポーツで優秀な実績を残しているスポーツエリート校。この学校の運動部に所属し、辞めずに卒業したと言うだけでもステータスとなる。故に運動部の部員数はハンパではない。入部希望者は県内に留まらず、県外からも多く殺到する。さらに優秀な成績を残した選手を国内どころか、海外からまでスカウトし、特待生としてまで入学させるのだから、その力の入れ方は並の運動部とは比べ物にならない。

高水準に整えられた施設を思う存分利用し、優秀な指導者の下、効率的に、そして最大限トレーニングを積み、卒業後は実業団やスポンサーと契約し、プロを目指す。そんな者たちにとって最高の環境を作るために、広大な敷地面積が必要だったから、こんな山間を切り開かなければならなかった。

 

そんな山の中に作られた最高の環境で、今日もプロの世界で活躍できる選手になるため、生徒達は血の滲むようなトレーニングを積んでいる。女子バドミントン部のためだけに作られたこの巨大な体育館もその例外ではない。バドシューがフロアを踏みしめる音。跳躍のために地面を蹴る地揺れ。ギリギリまでシャトルを追いかけ、倒れこむ音。そしてラケットがシャトルを捉える音。バドミントンで起こりうる全ての音が体育館の中に一斉に木霊している。

 

「ファイトー!!」

「ナイスー!!」

「声聞こえないよ!もっと出しなさい!声!」

 

それをさらに上回る選手達の気迫。目の前の一球に全てをかけている彼女らの姿を見たくすんだ金髪を短く切りそろえた青年、益子推は、感嘆の息を吐いた。

 

───俺は、そこそこレベルの高校に一年しか行かなかったし、その後はずっと海外でほぼ単独で活動していたから、強豪校の練習風景というものを見た事なかった。俺が入ることができなかった栄枝高校クラスの名門、フレゼリシア女子。侮っていたつもりはなかったが……

 

「どうかね?ウチの子達は?」

 

いつのまにか隣に来ていた初老の男性が話しかけてくる。女子バドミントン部の監督、亘理壮一郎。半分引退している監督で、今は練習には殆ど参加していない。推がコーチとして招かれたのはコニーの指導以外に、この辺りの不足を埋める為もあった。

 

「どんな競技であろうと、最後にものを言うのはメンタルと身体。わかっている事でしたが……なるほど、コレは強いでしょうね」

「ほっほっ。君の若さでもうそういうことがわかっているとは。流石はインハイ優勝者にして、ヨーロッパで数々のタイトルを総ナメにした、あの娘の兄、益子推君だね」

「からかわないでください」

 

キュッとフェースを踏みしめる音が隣から響く。女子更衣室で着替え、アップを終えたコニーが体育館に入って来ていた。彼女も自分と同じく、練習風景をみて、少し目を見開いていた。彼女もずっと1人で練習して来たクチだ。気持ちはわかる。

 

「来たか」

「ねえ、お兄ちゃん。なんであのヘンタイ、あんなエラそうにしてるの?」

「言ってたろ。唯華ちゃん、主将なんだよ」

「シュショーってなに?」

「キャプテンの事。部員で一番偉いヤツ」

「…………へぇ」

「おお、揃ったね。志波姫くん」

「っ。はい、集合!!」

 

唯華の号令で練習をしていた部員達が一斉に手を止め、こちらへと走ってくる。統率されたその動きはまるで訓練を受けた軍隊のようだ。

 

「こちらが今日から我がフレ女バドミントン部のチームの一員となる、益子推さんとコニー・クリステンセンさんです」

『よろしくお願いしますっ!』

 

部員達が頭を下げる。推も応えるように礼を返した。

 

「…………私は別によろしくしなくていーから」

 

全員に指をさして宣言するコニーの頭をグシャリと撫でる。不必要に輪を乱すなとの警告だった。乱れたブロンドを手櫛で直してやると一瞬心地よい顔をしたのを唯華は見逃さなかった。

 

「ちょっと!人前ではやめてよお兄ちゃん!」

「お兄ちゃん呼ぶな。此処ではコーチと呼べコーチと」

 

2人のやりとりを見て、女子部員からざわめきが起こる。

 

「なんで男の人が来たのかと思ったけど、やっぱりコーチだったんだ」

「イケメンだよねぇ、王子系っていうの?ああ、汗塗れバド一色だった私達の青春に遂に爽やかな清涼剤が……」

「頑張って、とか耳元で囁かれるだけで疲れとか吹っ飛んじゃいそうよね〜。手取り足取り、ゆっくりコーチして貰いたいなぁ」

「でもコニーさんにお兄ちゃんって呼ばれてたけど……どうみても血縁じゃないよね。そういうプレイなのかな?」

「うわっ、ナマい!」

 

概ね好意的だったが、所々で風評被害がある。説明するのも面倒なので、まあ言わせておくかと思ったのだが、コニーに推と同じ行動は取れなかった。

 

「言っとくけどねぇ!お兄ちゃんは、わ・た・し・の!コーチとしてついて来てくれたんだからね!あんた達はついでよ!ついで!」

「お前のお守り(コーチ)もついでだバカ。俺は今年の全日本に出場るために帰国したんだから」

 

今度はさっきと違う意味で空気が変わる。こほんと一度咳払いすると、主将はコーチに関しての説明を始めた。

 

「益子さんは次の東京オリンピック代表候補の一人として今年行われる全日本選手権に出場されます。主に技術指導を担当してもらいますが、コーチ自身も調整を兼ねて練習に参加して頂きます。皆さん、失礼のないように」

「今日から君たちの臨時コーチをつとめさせてもらう。益子推です。なにぶん、若輩なもので、至らない点も多くあるかと思うが、お手柔らかによろしく」

 

全日本、と誰かが呟く。そう。推が帰国した本当の理由はバドミントン全日本選手権で優勝するため。ヨーロッパで数々の大会に参加していたのはいわゆる武者修行の一環。多くのタイトルを取ってきた推は、日本バドミントン界において、注目の新星である。そんな彼が日本バドミントン連盟からオリンピック代表候補選手として選ばれるのは必然であり、その代表選考会の一つである全日本選手権に招待されるのも必然だった。そんな時に舞い込んだのが臨時コーチとして招きたいというフレ女からのスカウト。本来、コニーの交換留学の為の視察だったそうだが、女子優勝候補筆頭選手の上位互換とも呼べる推のプレーを見て、今回の話に至ったそうだ。日本の滞在費も、練習環境も全てフレ女が用意してくれるという条件のもと、推はこの仕事を受けた。

 

「それでは2人には早速、練習に参加してもらいます。まずはストレッチ。その後2分ランニング!!」

『はい!!』

 

今までのは練習前のノック。本格的な部活動の練習メニューはこれから始まる。

バドミントンの練習とは大きく分けて三つ。一つは体力向上。もう一つはウエイト。そしてラケットワーク。バドミントンは基本的に走りっぱなしのスポーツ。跳んだり跳ねたりを最長3セットずっと続けなければならない。その上バドミントン選手は常に尋常でない集中を持続する必要もある。初速に限れば、世界最速であるバドミントンのシャトル。スマッシュなど平均時速350kmある。一瞬でも油断すれば一歩も動けずポイントされる。無酸素運動と有酸素運動をほぼ同時に行い続けなければならない。

身体も、頭も、心も、全てフルに動かし続けるハードなスポーツ。勿論強いメンタルも必要。言うなればゴールがわからないマラソンを全力疾走しながら、筋トレをするようなもの。体力と筋力がなければ話にならない。故に強豪校であればあるほど、練習内容は体力向上とウエイトが多くの比重を占める。

フレ女も勿論、その例に漏れない。ストレッチの後、二分間走。ダッシュ、腿上げ、バービー、小刻みステップ、ラインタッチ、フットワークにカエル跳びetc.

体力アップメニューだけで、女子は勿論、男子すら常人なら倒れかねないハードワーク。新入りの一年生はここで血反吐を吐くのがフレ女の毎年恒例行事だ。しかし、今年は、というか今日はその光景が少し違う。

 

「…………流石ね」

 

グロッキーになっている一年生達をよそに、軽く息を弾ませる程度で、ドリンクを口にするコニーと推を見て、唯華は感嘆の息を漏らす。推はともかく、コニーが初日からここまで余裕でついて来られるとは思わなかった。

 

「ここまでちゃんと走り込むの久しぶりだ。流石に暑いな」

 

休憩時間に入り、体育館の扉を開くと、推が頭から水を被る。雫が飛び散り、光に反射した。

 

「なんでこんな締め切って練習してんのー。開ければいいのに」

「コニー、練習中に勝手に開けるなよ。シャトルを打つ音って意外とうるさいからな。ましてこの人数だ。開けてたら迷惑だ。扉開くのは休憩時間だけってのが部活の普通」

「日本人って周囲に気を使いすぎじゃない?こんな山の中なんだから多少煩くてもいいじゃない」

 

休憩時間、ふつうにお喋りする2人。明らかにまだまだ余裕がある。初日は喋るどころか、体育館裏でリバースも珍しくないというのに。

 

───ヨーロッパの大会を総ナメにしたのは伊達じゃないね、基礎体力の出来が違う

 

「唯華ちゃん」

 

推が呼ぶ。もう定刻の休憩時間を過ぎていた。いけないいけないと軽く両頬を手で叩き、大きく息を吸う。

 

「休憩終わり!各ショットの素振りとノックやった後、歓迎の伝統行事を行います!みんな、気合い入れて練習するように!」

『はい!!』

 

上級生達は勝手知ったるもので、淀みなく練習に参加していく。一年生は先輩の指示に従って行動し、コートでラケットを振った。推はここで一度コート外に出る。コーチとして適切な指導を行うために、一人一人のラケット捌きを見る必要があるからだ。ノック出しもコーチの仕事だ。

 

───やはりレベルが高い。スイングスピードは早いし、フォームは基本に忠実。

 

素振りとノックを見た推は部員全員の力量を概ね理解していた。

ラケットがシャトルを打つ音を聞けば、センスと実力は大体わかる。練習に参加しているもの全員が実力者の部類に入っていた。なるほど、これほどのプレッシャーの中で毎日練習していれば強くならないはずがない。

 

───それでも、泪ほどではない、か。

 

今の泪の実力はとあるツテのお陰で知っている。ザッと見渡す限り、確実に泪以上と言える選手はこの中にいない。勿論、勝負など時の運。アイツが負ける事もあるだろう。しかし、確率で言えば低いのは揺るぎない事実だ。

 

───なんとか対抗出来そうなのは、コニーを除けば……

 

「遅い!ジャッジ早く!全国のシャトルはもっともっと早いよ!」

「はい!!」

「次!!」

 

この中で誰よりも声を張り上げている黒髪の少女の姿に青年の視線が向く。実力者揃いのフレ女バドミントン部の中でも、彼女はちょっと刮目するレベルだ。主将を務めるに相応しい強さを誇っていた。

推が知る限り、彼女は頭の良いプレイヤーでもっとクールなタイプだった。それがたった数年見ない間に、フィジカルは勿論、なによりメンタルが別人のように強くなっている。

 

「それでは、今日の練習はここまで。これから新入生歓迎イベント、伝統の新入生対上級生の対抗戦を始めます」

「対抗戦?」

「歓迎試合のようなものですよ。ワンセットマッチを行うんです。それでは呼ばれた人はコートに入ってください」

 

新入生達が名前を呼ばれ、上級生とゲームを始める。当然と言うべきか、勝つのは上級生。15〜18歳と言えば、身体も出来上がり始め、選手として最も伸びる時期。一年生が卒業する頃には別人のように化けるのもザラ。この年代の2年間には凄まじい差がある。

 

その中で唯一の例外は……

 

「ゲーム!21ー6!マッチワンバイ、コニー!」

 

多賀城ヒナとコニーのゲーム、大差で勝利を収めたコニー。やはり彼女のセンスは群を抜いている。

 

───ま、センスだけじゃないが

 

プロを含め、さまざまな選手と試合してきたコニーのキャリアは一介の高校生などとは比べ物にならない。まして、初めて出会ってからほぼ毎日この俺と打ってきたのだ。いくら名門でも、そう簡単には負けない。

 

「ぼ、ぼろ負け……」

「多賀城、気を落とすな。ちょっと差はついたが、スコアほど実力に差はないよ」

「お兄ちゃん、どっちの味方なの」

「どっちもだよ、コーチなんだから」

「もぉ!」

 

ドンっと胸板を叩かれる。やめろ、と手を取った。こいつのパワーでグリップ越しに殴られたら、結構痛い。

 

「…………ねえ、推さん」

「?どうした唯華ちゃん」

「その、ですね……」

 

ラケットのグリップを握り開きしながら、ガットを弄る。何か言いたそうにこちらを見てくるも、視線を向けるとサッと逸らす。

この所作には覚えがあった。初めて出会った頃の泪やコニーそっくりの目。何だかんだ唯華とは付き合いも長い。歳下の友人というより、推にとって唯華は

 

───まったく、女……というか、妹みたいなヤツは大体同じだな

 

「唯華」

「は、はい!」

 

急に呼び捨てにされた黒髪の少女は跳ねるように背筋を伸ばす。燻んだ金髪の兄貴分は微笑を浮かべ、頭を撫でる。持っていたラケットを軽く持ち上げてみせた。

 

「バドミントン、しようぜ」

 

 

 

 

 




後書きです。いやー、難産だった。運動部の経験はありますが、名門校の部活動に関してまったく知らないのでイメージが全然できなかったです。今もあまり納得いってない。それにしても推、妹増やしすぎだろ!タイトルがタイトルだからしょうがないけど!次回、唯華VS推。武者修行を終えた推の実力がついにベールを脱ぎます。それでは、感想、評価よろしくお願いします。面白かったの一言でも頂ければ幸いです。
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