よろしくお願いします!
「え……と、繋がってる?やってるうちに人来るかな?じゃあその、始めます……ハイ……」
その放送は唐突に始まった。受信側には、深緑色の髪に薄緑の目、
白い肌のメガネ少女アバターが映し出された……はずだ。服装は完全に古典SFの
宇宙服だが、実況配信のために頭部は透明の金魚鉢スタイルにした。
自機である砲台は、どうやら対空戦車スタイルのようだが……。
「ハイ……はえある実況第1回はこれ。スペースインベーダー!
やっぱり古典ゲームをやるからには最初はこれ、でしょう。
完全ダイブ型リメイクでどうなったのか興味あります……ありますよね?」
西暦2,888年。ゲームは既に完全ダイブ型が主流になり、ここ10年ほどのメーカーの
仕掛けにより20~21世紀の「古典ゲーム」の完全ダイブ型へのリメイクブームが
起きていた。そして、その古典ゲームリメイクを実況しろと言わんばかりに
次々改正された学習指導要領と通信情報・金銭収受関連法制……何者かの作為を感じる。
(もう5人見てる。小学校から新教科に採用された上にメディアも煽って流行ってるし、
当然だけど)
自身も小学生である【田中スーザンふ美子】、ハンドルネーム【のびる】は、
小学生女子を配信タイトルに入れたのはちょっと過剰に煽りすぎたかな?と、
今更になって少し悩んだ。
(しかし本名が田中スーザンふ美子って。俺を転生させた神だか悪魔だか知らんけど
ふざけすぎ……ふざけすぎじゃない?)
そう。彼女は転生者である。スペースインベーダーと同年に生まれ、
21世紀までゲーム一途の人生を送ったゲーマー……ゲーマーのおっさんが転生した、
その成れの果てである。
(この古典ゲームリメイクの流行も胡散臭いし、俺以外の転生者が絡んでるような
気もするが……探る当てもないし、何より俺には得しかない。学校でゲーム実況配信が
評価されるとか地上の楽園かよ)
出現するインベーダーを遠距離から確実に処理しながら、のびるは表示されるコメントに目を通した。集中が必要なタイプのゲームをやる時は、コメント音声化ソフトを
切って目視表示オンリーに切り替えることにしている。表示ポイントは、リアルでも
ダイブアバターでもかけている、アニメか漫画のような大きな円形のフチなしメガネの下部に半透明処理での表示を採用した。
『無言実況』『無口ヒロインいいゾ~これ』『インベーダーだけを殺す機械かよ!』
『ツマンネ』『タブンネ』『ハピナス!』『ハッピーうれピーよろピくね?』
(し、しまった!無言で3分くらいやってた!)
「え、ええと、みなさんよく来てくれました!のびるです!10さいです!古典ゲームが大好きで、今日はええと……原点とかそれっぽいスペースインベーダーを最初にやって、これから古典ゲームやります!私よろしくします!」
『あら^~』『おぼえた挨拶を必死にたどる小学生……ほぅ』『メガネっ娘というだけで俺は』『メガネとって』『なんだと?』『お?やんのか?』『どうせおっさんだぞ』『それは逆』『逆だな』『今は小学生のほうが多いゾ』
インベーダーを処理する間にもうコメントがついてゆく。これは流行の力だろうか、
それとも俺の実力?だったら嬉しい。
『のびるちゃん、前、前!』『これはがめおべら?』『いや、これは違うぞ』
『何?知っているのか雷電!』
(コメントの様子が……え?)
コメントと考え事に集中していた俺の目の前に、意外に速いインベーダーが迫る!
「ヒェァァァ!?グロ、グロイ!近い!近!ナゴヤ、ナゴヤうち……ウヒェァァァ!!
グロ、グロイ!ナゴヤうちグロイ!何でグロくすんの!?聞いてない!どうして
インベーダーグロくなってるの!?聞いてないから!こんなの知らない!!」
『ああ^~』『この瞬間……たまりませんな』
『こんなの知らない!ってもう一回言ってみて』『いい悲鳴だぁ』
『ホラーやるべきでは?』
「原作かわいかったのに何でこんなことすんの!?もう知らない!知らないから!
今日は終わり、もう終わり!」
『これはガチ』『悲鳴乙』『泣かないで』『もっとこわがって』
『怖がったり怖がらなかったりしろ』
こうして俺の今世初実況配信は散々な終わりを迎えたのであった。
こういう設定でやるならまずインベーダーかなって