「はいのびるです!今日も皆さんよろしくお願いします!」
『わっこおおおお』『わこつ』『のびるちゃーん』
今日は……660人来てる!?な、何があったんだ?
どこかで紹介でもされたか?この調子で増えたら……どうしよう?
「今日はですね……ゲームボーイのうおーズ!やっていこうと思います!」
『ウォーズ?』『ゲームボーイウォーズか!』『またイキリのびちゃん?』
「ゲームボーイウォーズではありません!うおーズです!魚です!」
『は?』『何それ?』『知らない……』
「それでですね……これは魚が主人公なんですけど、あえて主観モードで!
やってみようかと思います!」
『な、なにィ!?』『魚主観とか……漢だ……』『さすのび……』
魚主観とは?ゲームの中には人外主人公の作品も多数ある。
うおーズはその中の一つ、完全な魚主人公オンリーのゲームなのだ。
流石に感覚とか思考その他を人外で体感するのは危険とされ、
視点と動作だけの主観操作となるが、
それでも人間の身体を動かす操作感とは全く別物。
特に実況する場合はコメント出力の思考操作もあるので、
適応に苦労することになる。
しかし、元になったゲーム……非ダイブ時代のゲームをやりこんでいれば話は別。
その元ゲームの操作感を頼りに、かなりの速さで適応することが出来るのだ!
……今日うおーズをやろうと引っ張り出して、数時間ほど悪戦苦闘して適応した。
どうしてもやりたかったので!
そうして乗り込んだ魚主観、海中フィールドの背景はまさにダイブ。
テトラポッドに岩肌、海中の太陽光まで表現されていてなかなかに豪華だ。
『何で人魚じゃないんですか!?(絶望)』『生きる望みをなくした……』
『BGMいいな』『クソゲーはBGMがいいの法則』『これクソなの?』
「いえ、短いのがネックですけど、内容そのものはすごい楽しい部類ですよこれ」
食うか食われるかのサバイバル(魚)の感覚が味わえる。HP設定などなく、
食われてしまえば即死の大変漢らしいシステムとなっている。
ゲームボーイでは黒かった自機の魚は、
俺のアバターにちょっと合わせたのか濃いめの緑色になっている。
そんなとこ凝らなくてもいいと思うが。
「流石に感覚とかは大部分カットされてるみたいですね……あ、これは」
俺が泳いで進む先に、小魚が群れていた。
「この小魚を、最初は25匹食べればいいわけです。こうやって……はい!」
このゲームは突進がそのまま噛み付きなっている。
獲物を見つけたら突進し、噛み付き、そのまま連打で飲み込む、
というのがほぼ唯一にして必須の動作となる。
このダイブリメイクにおいては……そのまま突進・噛みつき・噛み動作でいいようだ。
ちなみに海面を飛び出してジャンプすることも出来る。
隙が大きいから追い詰められないとやらないけど。
「あと24匹……」
『楽勝やん』『敵いないの?』
「敵いますよ。1フィールドに1匹ですけど中魚が出てきて……ほら、あれです」
そこにいたのは 自機の魚より大きな魚。
「これ胸びれも背びれもないんで魚に見えませんよね。全部そうなんですけど」
『確かに』『フーセンか何かに見える』『中魚、大魚とかいるの?』
「噛まれたら一撃死ですけど、地形を利用して立ち回れば……」
『中魚テトラポッドに挟まってる……』『しょせんAI』『悲しきCPUの悲劇……』
「いやその、こういうゲームなんでそう言われても……はい、クリアです。造作もないですね」
『はいイキる』『細かくドヤるのかわいい』『手堅くイキっていく』
「これで……レベルごとに3ステージあって、レベルは3で終わりです」
『ファ!?』『短っ!』『全9ステージ?』
「あと、裏ステージというか2週目のABC表記の3レベルがあるんですけど、
それで完全クリアですね」
『若干伸びた……』『でもまだ短いな、18?』『まあマシにはなったが』
ゲームボーイだから仕方ない……っていっても魔界塔士の方が先だった気がするが……。
「手軽に遊べるってのも利点といえば利点ですね……って猫っ!?」
『ネコとヨットw』『唐突すぎww』『ジャンプ先に猫がいるwww』
……ちょっとびびったが、危なげなく3ステージ目もクリア。
「レベル2に入りますね、ここからは4文字パスワードがあります」
そして……初見はかなり驚くだろうなこれは。
俺も、正直魚主観で今まで捕食者だった「中魚」が小さく見えると不思議な感じがするが。
『!?』『でっか!』『小魚と中魚が……中魚と大魚になった!?』
「そうです。自機の成長と共に、レベル2では中魚を食べて、
大魚に捕食されることになりますね」
しかし、それで食べるのが20匹とは少し、食べすぎな気がするが……。
「ってひゃあぁ!?」
フィールド外から突然の突進で目前に現れた大魚に、一撃で捕食された。
立体フィールドの捕食される感覚って、正直言ってかなり怖い……怖くない?
『大自然の掟です』『食うか食われるか』『やはり修羅界……』
『のびちゃんの実家怖ぇ』『さすのび』
散々である。
「もー!実家じゃないって!頭来た!さっさとクリアしちゃうからもー!」
その後、タコをスルーし、ジャンプした先のカモメを運よくギリギリかわし、
見事レベル2もクリアする。
そして迎えたレベル3では、あんのじょう。
『でかっ!』『でか!』『すごく……大きいです……』
大魚を15匹食らい、さらに大きい巨魚から逃げる日々が始まる。
「やることは変わらんのよねー」
『のびちゃん大きくなったな』『すごく……大きいです……』
「基本変わらないんで、ちゃっちゃと行きます」
『相変わらずBGMはいいゾ』『これしかないから洗脳されそう』
『もう手遅れですぞ……』『いいんだけどエンドレスで気が狂いそう』
もう魚主観の操作も慣れ、楽々とステージをクリアする。
そして、ここからが本当の地獄だ……。
「ラストステージ。食べるのは3匹です」
『それだけ?』『楽勝やん!』『ダイバーいるwww』
「はい、ダイバーがいます。飾りです。そしてこのステージは……」
『ん?』『なんや……』『飾りかよw』
「巨魚を食え!」
『は』『は?』『ちょっとよくわからない……』
「実はこの巨魚……尻尾からなら食える!」
『ダ、ダニィ!?』『のびちゃんの逆襲』『食らいついていけ』
地形を利用し、食われないように立ち回るのは変わらない。
それに加えて、このステージは何としても捕食者である巨魚を逆に食わなければならないのだ。
「もーーーー!ちくしょーめ!おのれ巨魚!またしても我が覇道を阻むかー!」
『のびちゃん今度は覇王になってる……』『強そう』『奇襲に弱そう』
『四面楚歌に陥りそう』『最終的に負けます』
「よし……いい子だ……そのまま真っ直ぐ……」
『まだだ……』『まだだょ……』『暴れんな……暴れんなよ……』
「うおおお!今だああああ!!」
『突撃じゃー!!』『イクゾー!』『グランダルメは地上最強!!』
隙をみせた巨魚に、尻尾から食らいつき噛み、噛み!
「勝った……まずは1匹目!」
一度コツをつかんでしまえばどうということはない。
待ちの戦法で次々と食らいつき、ついに3匹目の巨魚を捕食した!
『やったああああ』『エンディングだー!』『すっごーい!』
『のびる……お前がナンバー1だ』『おめえええええ』
エンディングは、大きな魚がWINNERと書かれた横断幕を引いて、
その周りを主人公の仲間?の魚が行進しているというだけのシンプルなもの。
ただ、このリメイクにおいてはかなり力を入れたらしく、
取り巻きの魚が大群になり、大きな魚は主人公自身と分かるような仕組みになっている。
というかいつの間にか俺が横断幕をくわえて、引っ張っていた。
『WINNER』『まーたBGMええやん……』『ひょっとして良ゲーなのでは?』
『漁ゲー』『誰が上手いこと言えと』
「安心するのは早いぞ、諸君」
『せやった……(絶望)』『クゥーン……』『今はもうおとなしい……』
「実際のとこあんま変わらないんで……さくっとクリアできちゃいますけど」
『ズコー』『お、おう』『まあ、そうなるな』
………………
そして2週目。ABCの3つのレベルを乗り越え、実に5匹の。5匹の!
巨魚を食らってエンディングに到達した俺が見たものは。
あいも変わらずWINNERと書かれた横断幕を引っ張る俺と、周囲の魚。それに、
CHAMPION OF OCEAN
の文字だった。
『海の王者!』『チャンピオン!』『世界に生きる全てのもののチャンピオン……』
『YNC(やはりのびるはチャンピオン)なんやなって』『宿命づけられていく』
『全てのチャンピオンを求めていくんやなって』
ここでチャンピオンかよ!知らねえというか忘れてたよこんなん!
俺が狙ってやったかのような風評やめろよ!マジで!
「もー!知らない!もー好きに言ったらいいじゃん!もー!」
『のびちゃんはのびちゃんだよ』『チャンピオン!』『ゆ、許された!』
そしてシステム上、エンディング後の強制ゲームオーバーで終わりとなったゲームにより、
標準アバターに戻りアカウントホームで俺が見たものは。
『王者!』『チャンピオン!』『魔王!』『姫!』『のびちゃん!』
などと、俺の呼称を主張することで盛り上がる視聴者の姿だった。
……ネタで盛り上がっちゃった気持ちは分かるし、何とも言えない。
俺が別れの挨拶をしたのは、皆のコメントが落ち着いた数分後のことだった。
タイトルがシンプルなのにややこしいことになる……ならない?