TS転生未来レトロゲーム実況配信のびる   作:おかひじき

15 / 45
空中戦である。


マリオペイント〈+アーカイブ動画・掲示板コメ返〉

今日も今日とて来場者988人。

ちょっと増えすぎじゃない?これでは一気に最低収入条件である初動1000人を越えてしまう。

前世と今世合わせて初めての配信・動画収入を得ることになるのだが、

まだその最後の覚悟も具体的な準備も出来ていない。考えておかないと。

 

「はい!のびるです!今日はマリオペイントです!皆さんよろしくお願いします!」

 

『待ってた!』『イエーーー!』『初見、古典ゲームですか?』

 

「今日はですね、最初ハエ叩きでこのマリオペイントの操作に慣れて、

それが終わったら絵とアニメーションと音楽を作りながら、

アーカイブ動画のコメント返信とアカウント掲示板のレス返信、頑張ってみたいと思います!」

 

『同時にか……のびちゃん大丈夫?』『マルチタスク過ぎてパニクりそう』

 

「大丈夫です、右脳しか使わないで絵を描く的なオート作業には自信あります!」

 

まあ、それやると品質はお察しになるんだけどな。

自己アカウントのダイブフィールドでスイッチを切り替え、

マリオペイントのフィールドに移動する。

 

「あー……このBGM癒される……好き……」

 

『好き……』『のびちゃん好き』『みんな好き』『愛だよ、愛……』『やさしい世界』

 

「で、ですね。このマリオペイント、

リメイクにあたりダイブ式になってるので、基本3Dなんですが……」

 

『原作はマウス操作なんだっけ?』

『ハエ叩きでマウス操作に慣れて欲しいみたいな狙いはあったのかな』

『対応ゲームは他一つしか出なかったみたいだけどな……』

『マウスでも操作できるってのは結構あったけど……だな』

『マウスってトラックボールのこと?』『お?トラ派か?』『お?やんのか?』

 

「ケンカはいけません!」

 

『はい』『はい……』

 

ふう、全くマウス派とトラ派(トラックボール派)は隙を見たら争うからな……。

未来のIT機器情勢は複雑怪奇である。

 

「じゃあ始めましょう。えーとここに……うわっと!?」

 

ハエ叩きを起動すると、白い空間の中にどこからともなくハエが現れ、

俺のアバターが仮想重力を無視して浮き上がった。

そういやそうだ、このマリオペイントは3次元だから、

高さのある構造物が作れるように仮想重力を無視して飛べるようになってるんだったな。

 

いつの間にか装備している大きなハエ叩きを手に、俺は白い空間を縦横無尽に飛び回り、

残り100匹と表示されたハエを退治してゆく。

 

『上手い上手い』『ハエは大丈夫なの?』

『羽生えてる……』『天使のびちゃんじゃないか!』

 

背中を確かめると、どうやらマジで小さめの白い翼の飾りが生えているようだ。

動かない飛行アイコンみたいなものか。

この唐突感はマリオペイントらしいといえばらしい気もする。

 

数十匹ハエを落とすと、黄色くて大きめのハチのようなハエが姿を現す。

手早く処理し、さらにゲームを進ませると、小さなボム兵がフィールドを飛び回る。

 

『ボム兵w』『これはマリオ』『かなりマリオだよ!』

 

マリオっぽいのはここだけで、その後若干大きくなったハエと、

数の増えたハチのようなハエを何十も倒し、このハエ叩きのボス的存在、

巨大なハエが出現した。これは何度も叩かないと倒せないが、

攻撃パターンは単純だし最初のやつはそんなに問題はない。軽々と倒す。

 

『まあ余裕っしょ』『たやすいものだな』『やったぜ』

 

 

 

そしてすぐに、フィールドはレベル2へと移り変わる。

レベル2は、水色になった空間で、同じように100匹のハエを叩けばいいのだが……。

 

「ちょ、多い多い!」

 

レベル1ではフィールドに2匹か3匹しか同時にいなかったハエが、

レベル2では4匹同時が当然のように現れる。

 

「えっと……この……はいィ!」

 

なかなか対応しきれずに、黄色いハエの小バエ発射を許してしまう。

俺は無駄に華麗な空中ロールを決めて大回りし、

小バエを振り切って黄色いハエを落とした。

 

「しっかしレベル上がって急にきつくなったですね……ゲームの速さが倍増したというか……」

 

雑魚100匹までは何とか蹴散らし、今度もまた巨大なハエのボスがやって来た。

 

「うおおお!だ、だから速いって!」

 

ちょっとボスの出す弾の弾速が……。

 

「弾速が倍どころじゃない……なくない!?」

 

『急に速くなったな』『ちょとsYレならんしょこれは……?』『いやーきついっす』

 

《ア゛ーーーー!!!》

 

「やられた!んんんんー、許るさーん!!この虫野郎!!」

 

『のびちゃんおこなの?』『怒った?』『怒ってないよ?』

 

待て、れれ冷静になれ。所詮はパターン、数々のゲームで鍛えたこの俺の敵ではない!

……シューティングになるとそれほど上手いってわけじゃないけどさ。

 

『やった!』『撃破だ!』『まだ続くの?』

 

「確かレベル3までで面はループだったかな……ここのレベル終わったら

ハエ叩きは終わりにします」

 

 

 

レベル3はピンク色の空間になっている。やることは同じだが……。

 

「同時に6匹はきっついですよ……」

 

例のごとく、小さなハエから始まるのだが。

 

『なんか色っぽい声がする……』『のびちゃん大人になった?』

 

「ち、違いますよ!ハエ!ハエです!こういう声のハエが混じってるんです!」

 

なぜかやられた時に色っぽい声を出すハエが混じっているのだ。

それ以外は同時に出現する敵の数が増えたぐらいで……それが難しいのだが、

俺は難なく……というには苦労しつつ100匹のハエを叩き落し、ボスと対峙した。

 

「なんかこいつ声低いなー……っとと、弾速また速くなってる!?」

 

『はええwww』『ハエだけにはええ!』『だれうま』

『今です!』『こいつラスボス?』『当たり前だけど全部ハエなんだな……』

 

速すぎる弾速にヒヤッとする場面もあったが、結局そこからはミスることなくレベル3を終えた。

 

 

 

「延々続きますけど……とりあえずこれはこのぐらいにして、まず曲作りの方に行きますね」

 

『ハエ叩きおつ』『なんかもう達成感あるぞw』

『さて、のびちゃん問題のお芸術分野の方ですね……』『画伯かな?(予言)』

『当たりそうな予言しとくのはやめろwww』

 

何と失礼なリスナー達だろう!まあいい、俺の才能にまだ気づいていないだけ、

マリオペイントで素晴らしい作品を作れば、

きっとそのセンスに感動して称えるに違いない……(希望)

 

 

 

 

………………

 

 

 

 

「さて、やって来ました。いわゆるマリオシーケンサーですね」

 

『やっほおおおお』『何が始まるんです?』

 

正直立体フィールドである意味は見出せないが、五線譜が浮き、

ツールボックスの中に飛行機やマリオの顔やスターといった音楽アイコンがしまわれている。

その音楽アイコンを五線譜に置き、音楽を作る。スーファミ版と同じ仕組みのようだな。

 

「まあとりあえず……スターを置けば綺麗な曲になる!」

 

『お、おう』『せやな』『一理ある』

 

「それじゃ、いろいろ置きながら返信していきたいと思います」

 

アーカイブ動画だけじゃなくて、アカウントの掲示板もチェックする。

どれから返信しようかな……開始当初には思いもよらなかった大量の反応が書かれている。

 

「えーっと最初は……『オフ会とかはやるんですか?』それは無理な願いだ、

私の力を超えている」

 

『知ってた』『忘れてるかも知れんがのびちゃん小学生女子だぞ』

『……素で忘れてた件』『いくら実況者って言っても小学生はな』

『確かに音声を聞かずにログ内容で見てると年上と錯覚するけどね』

 

「私も残念です……ええと次、『ゲーム以外の趣味は何ですか?』これはねー、園芸です!」

 

『これは田舎ですね……』『さすのび』『お花かな?(無垢)』

 

「花もやりますが野菜もやります!今年はえんどうまめ植えましたよ!」

 

『遠藤?』『のびちゃんに植えられたい』『遠藤……無茶しやがって……』

 

「基本難しいのは植えないです……じゃ次、『好きな食べ物は何ですか?』

梨!なしです!あとはイクラ!」

 

『なし?』『梨は千葉の魂ゾ』『のびちゃんのお子様側面を見るとほっこりする』

『梨は若干趣味渋いけどイクラはまんまですね……』

 

「次ええと……『将来の夢とかある?』ありますあります!古典発掘者兼配信ゲーマーですね!」

 

『らしい!』『まんまですね』『ゲーム以外の古典も知ってる風だし』

『こりゃ骨の髄からですな』

 

「ええと、私の姉が古典発掘者で……ゲームもそうですけど、私の半分は姉の、

半分は兄の影響ですね」

 

古典発掘者とは、文字通り古典、ゲーム以外のアニメ漫画小説は言うに及ばず、

今は忘れられ、あるいは消えてしまった作品を見つけ出し、修復し、

時には2次情報から再現する、という不可能を可能にした技術者の職種である。

個人的には、ここに転生者が絡んでいるような気もするが……。

 

「それでええと、音楽が出来ましたのでちょっと流します。はい!」

 

マリオシーケンサーから、スターをふんだんに使った自作BGMが流れる。

実に心が安らぐいい曲だぁ~。

 

『うーん……』『悪くないのでは?』

『でもアッフンの配置に微かな狂気が見える……見えない?』

『洗脳されそう』『ループしてると徐々にやばいパターン』

『安らいだら危険的なサムシングが……』

 

「じゃあBGMが出来たので、次は背景フィールドを書きます。ペイントです」

 

 

 

 

ペイントに移動し、まずは……海藻を配置する。

色は茶色、長い茎の上に大きなヤツデのような「側葉」を持つ、カジメの森である。

 

『これは狂気の天才』『草』『草』『初手で海藻配置とは……』

『その発想は人類と理解しあえない』

 

「えーとこのリメイクでは……ダイブフィールドでの直接接触操作ですね。

最初に球体とか立方体を置いて、粘土みたいに変形させて固定化する……。

重さがない分かなり便利ですよ」

 

ペイントツールから球体や立方体その他の立体を取り出し、配置して変形させ着色する作業。

 

「ええと……返信しますね。『一番好きなゲームジャンルは何ですか?』それですか……ええと、

アーカイブのモニターでやる古典原作と、ダイブリメイク版で好みが実は違ってて……。

アーカイブ版は何でもやれるんですけど、ダイブ版のホラーは苦手です。逆にこれみたいな、

ダイブフィールドで遊べるような作品はダイブ版の方が好きになってます」

 

『わかりすぎて困る』『同じのもあるけど別物もあるよな』『ダイブは別腹』

 

「次行きます……『きょうだい何人ですか?』計4人です!下から私、姉、兄、兄の順です」

 

『ああ……』『なんかわかる』『のびちゃん製造秘話』

 

そこまで返信して、気がつけば背景フィールドが完成していた。

 

「あれ、なんか予想以上に速く終わりましたね。色塗りが一瞬で

ファジーに終われるのはやっぱいいですね」

 

『なんかこう……海底?』『何で海の中に月があるんですかね……』

『海藻盛り過ぎでは?』『スター多めのキラキラしたBGMにこれは』『ありでは?』

『意識高そう……』『海藻超速コピペは草』

 

 

 

 

「はい!それでは最後に、4コマの最低限設置で3DアニメCGモーション作ります!」

 

この「マリオペイント」ダイブリメイクでは、コマ数を指定してオブジェクトを配置すると、

そのコマの間を勝手に補正してそこそこのアニメーションにしてくれる機能があるのだ。

 

「それで、アニメにするのは……クラゲです!」

 

『クラゲ?』『クラゲかぁ』『え……なんかそれっぽいぞ』

『意外に名作に見えてきた』『これは画伯じゃない画伯(トートロジー)』

 

「白い素体をそのまま持ってきて……あっと、返信しますね。『好きなテトリス棒は何ですか?』

もちろん直線のテトリス棒ですね……ってこの返信いる?」

 

『いるいる』『イルマス!』『需要ありまくり!』『のびちゃんはテトリス棒がお好き』

 

うーむ、未来って分からん。

 

「次は……『のびちゃんの中の人はいますか?』中の人などいない!」

 

『いないよ』『いるよ』『皆の心の中にいるよ』

 

「そもそも私の中の人って何……実は別人とか……」

 

『実況してると思い込んでいた……?』

『暗いアカウントフィールドで独り言を言っているだけ……』

『恐ろしい……』

 

「んで次……『ドリキャスは許可してください!何でもしますから!』ん?」

 

『ん?』『ん?』『今、何でもするって』『何でものびちゃんって』『のびちゃんのドリーム!』

 

「残念ながらドリキャス世代まではないんだよなぁ……」

 

『ないなぁ……』『そうか?』『(ドリキャス世代までは)ないです』

 

 

 

………………

 

 

 

そんなこんなで返信しているうちに、3DアニメCGモーションが完成。

白いクラゲが幼生から成体の循環を繰り返して伸び縮みしながら海を漂う、

それだけのアニメーションだ。

そのアニメーションを背景フィールドに合成し、さらにBGMをつけて、ついに作品が完成した!

 

「これがのびるアニメーション一大作品、クラゲたちのカジメリステンだ!」

 

『はい』『あっはい……』

 

完成した作品は、海中のカジメ林の中を漂うクラゲ。日時は夜で空には星と月、

BGMはスターをふんだんに使った儚さを感じさせるキラキラとした曲がエンドレスで流れる。

 

『これはこれで』『わからん……』『なんか泣きそう』『ふつくしい……』

『小学生の女の子が作りそう』『まんまで草』

 

なかなか悪くない評価じゃないか!

 

「今日もお付き合いありがとうございました!マリオペイント実況配信、のびるでした!」

 

俺は上機嫌で家に帰り、調子こいて姉にクラゲのカジメリステンを送りつけて、

寝る前に我に返って悶絶した。

 

 

 




私だってお芸術ぐらい出来ますよ!どうですか姉よ!
なお
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。