来場者がついに1000人を越え、1235人。
次回から収入が発生し始める人数であり、学校でも実況配信者と知られ始めるだろう。
この未来において実況配信者は堅い部類(技術部門)の職業であり、
中でもゲーム実況での収入発生レベルの活躍は、
前世で言えば真面目な学習教科が存在する文科系部活動、
書道や美術、吹奏楽等で外部の権威ある賞を獲得した、
というぐらいのインパクトを学校生活にもたらす。
やべえ、緊張で手足が固まってる……えい、えい!
ふう、大丈夫か。よし、やるぞ!
「今日はこちらのフリップルをやっていきたいと思います!」
『フリップル?』『誰?』『外人?』『歌?』
「ファミコンのアクションパズルですけど?」
『古典ゲームのアクションパズルはやたらステージありそう』
『それは大丈夫なんですかね……』
「これは大丈夫です。やってて楽しいのは間違いないです」
『のびちゃんの楽しいは信用ならないんだよなぁ……』『確かに』
「ステージ数が多すぎてその結果難易度が高い、けどクソゲーではない。
難易度が高いゲームはクソゲーではないのです!」
『そりゃそうだが』『何ステージあるん?』『言ってみたまえ』
「えーとクリア条件によると、エンディング見るだけなら50ステージですね。
時間制限のノーマルと、回数制限のアドバンスモード両方50ステージです」
『50ならまあ』『長さによる?』
「50ステージをクリアするとエンディングがあって、その後51ステージ以降がプレイできます。
その後200……計250ステージをクリアすると強制ゲームオーバーで終わりです!」
『多すぎwww』『戦って戦って終わりを迎える……』『修羅界かな?』
『褒美に死をやろう!』『やはりラスボス……』
「リメイクだと、紹介か単発実況だけで、ステージ10以降行った動画がないみたいですね。
私以外いないみたいなんで、250ステージクリア、いつかやります!」
実際いつか長時間実況で、フルステージクリアしたい。
時間的、集中力的な限界もあるので無理なものは無理なのだが……。
『やめて(絶望)』『やる前から分かる拷問配信』
『そのステージ数はクソゲーじゃなくてもきついだろ』
『正直単調な良作の方が実況も視聴もきついよな……』
「もー、しょうがないですね。じゃあノーマルのステージ50で勘弁してあげましょう」
『あ、はい』『武士の情け……』『べ、別にやってもいいのよ?(震え声)』
『しーっ!』『おい馬鹿やめろ』
ノーマルを選択し、フリップルのフィールドに移動する。……アバターはデフォルトのようだ。
四角い部屋の側面に昇降機のレールがあって、そこを昇降機で上下する形に変わっている。
元ゲームでは黄色い卵みたいなスライムのマスコットが、
画面右端のハシゴを上下する形だったのだが、
ダイブ形式になるときついという判断だろう。それで正解だと思う。人体じゃ長時間は無理ゲー。
フィールドの反対側にはブロックが積んであって、
元ゲームでは平面の正方形の山だったブロックが立方体に3次元進化している。
……これやばくね?正方形が立方体になるとブロックの数が×1辺分増えるんだが?
「この部屋の端っこで上下をうろうろしながら、ブロックを投げて対消滅させるゲームです」
『対消滅?』『反物質か何か?』『もう許せるぞオイ!』
「いやそう表現するのが分かりやすいというか……実際やってみましょう。えい!」
俺の投げた小さな立方体ブロックはそのまま空中を横すべりして、
積みあがったブロックの一つを消滅させ、その奥にあるブロックが手元に弾かれて戻ってくる。
『えーと、つまり?』『……直感的に分かりにくい!』
『同じブロックを投げて消滅させ、次のブロックは跳ね返ってきたブロックを使う……』
「はい、そうですね。ちなみに最初に投げる稲妻ブロックはオールマイティですね。
手詰まりになってミスになるともらえます。
繰り返して、そのステージの規定数以下にすればクリアです」
ブロックには三角とか四角とか赤丸とかのアイコンが描かれていて、
同じブロックを対消滅させることで消していき、ステージごとの規定数以下にすればクリア。
ペナルティとして、消せないブロックを投げるとぶるぶると自機が震えて時間を浪費する。
時間がゼロになるとゲームオーバー。ミスではなくゲームオーバーである。
『www』『震えてるw』
「間違えるとこうなります。さて、とりあえず早めにクリアしちゃいましょう」
次々にブロックを消して行き、流石にステージ1なのでジャストを狙ってクリアを達成した。
立体化への配慮なのか、時間制限が長くなり、規定数も上昇していて難易度が下がり、
実況時間的にも助かった。
「規定数ジャストか全消しでクリアすると、次ステージのブロックが果物になります。
といっても別に変わったことがあるようには見えないんですけど」
りんごやバナナ、緑のぶどう……マスカットの描かれたブロックに変わるが、
特に何か変わったようには見えない。
『果物好きという純粋な心やぞ』『好きなものを消すんです?』『果物は友達!(なお)』
ファミコン時代の精神を宿したシンプルかつ軽快なBGMと共に、
その後も俺は次々とステージのクリアを重ねた。
ブロックが増えたりフィールドの形が変わったり、ブロックの通るミニ土管が追加されはしたが、
基本的に絵面もBGMも何も変わらずにステージが過ぎていく。
変化は稀にステージクリア時に見せられる小ネタ劇場くらいだろうか。
何か意味があるわけではないので、単調なアクションパズルというゲーム内容もあいまって、
視聴者側の精神的耐久力をガンガン削っていた、とは後で聞いた。
………………
『これは……思ったよりきつい』『BGMの種類少ない……洗脳されるぅ……』
『助けて……助けて……』『一つ積んでは父のため……2つ積んでは母のため……』
『終わりのないのが終わり……それが「フリップル」!!』
予想通りなのか予想外なのか、俺としては想定外だったのだが。
俺はこういう単調なパズルゲーは大好きなのでどうしても評価が甘くなってしまう。
やらないとは言わないが、クリアじゃなくて紹介程度に留めたら良かったのかもしれないな。
他の実況者のように。
だが、私はそうしない!
「ほら、もう少しなのでみなさんがんばてください。ステージ50ですよ……」
『ラス面……ラス面……』『ラスボスはいますか?』『何で急にたどたどしくなてるんですか?』
『がんばてくださいw』『頑張れw頑張れw』
ステージ50クリア。昇降機が上昇し、上部に開いた出口へと消えた。
「ゲーム、いちおうの……クリアです!」
『終わった……?』『乙カレー』『888』『88888888』
『いやーキツかったゾ』『どう見てもクソゲーではないんだけどね……』
『やってる分には面白そうだったな』
今回はデフォルトアバターであり、俺は疲れていないし、
エンディングまできちんと確認するため、まだ主観モードを切っていない。
エンディングが始まると、黄昏た背景の中、黄色い卵形のマスコットが近づいてくる。
原作の訳分からないマスコット主人公である。
彼?は俺のそばに近寄ってきて、そして……。
大空にハートマークで、締め!
「またこれかよ!!!」
『www』『wwwww』『またこれかwww』
『黄色い卵型マスコットに懐かれるのびちゃん』
『黄色い卵×のびる』『ファミコン意外とこういうED多いなw』
『乙女ゲー(なお相手は黄色い卵)』『ラブラブwww』
そりゃセクシャル配慮はなされてて、
ファミコン原作であった巻いて絡み合う動作はなくなってるけどさ!
あれは流石にないなーってリメイカーの配慮には最低限感謝だけどさ!
大空にハートマーク出してたら結局アレじゃん!
意味合いは変わってないじゃん!!
「あーもう!これもう!今日は終わり!終わりです!
明日はドールマスターでスーパーウルトラベースボールやります!
私がチームエディットしてくるので皆さんはそれを使ってください!」
『野球?』『きたああああ』『超人野球だっけ?』『対戦やったああああ』
『アーカイブで持ってるけど対戦経験ないから楽しみ』『そんな有名?』
『スポーツゲーム冬の時代経験者が対戦相手がいないのを嘆く位には』
『対戦はアーカイブからモニターか石油王専用の立体出力でやるしかなかったからね』
案外盛り上がってるみたいだな。前世リアルタイムより盛り上がるかも知れん。
「それじゃ、今日の実況はフリップル。のびる実況に来ていただいてありがとうございました!」
意外なほどEDにハートマークが多かった感