(もう10人来てる……)
あくる日。誰も来なかったらどうしよう……などという心配は杞憂だった。
「ハイ!古典ゲームだけが友達!のびるです!よろしくお願いします!」
『わこつ』『えーホントにィ?』『かくいう私もぼっちでね』
『お前古典ゲームの話だけ早口になるよな』
ターン制シミュレーションなので今日は音声読み上げソフトを入れている。
これは新鮮だな。
「今日の古典ゲームはこれ!ファミコンウォーズ!対戦!対戦ですよ!」
『おおおお』『のびちゃんと対戦……お付き合い……』
「のちのショーグンとかミサイルとかない、初代の仕様ですね。
さあ!のびる@サーバーに来なさい!古典ゲームファンの兵(つわもの)どもよ!」
のびるのメガネ少女アバターはファミコンウォーズ風の青い豆戦車に乗り込み、
青い軍服で挑戦者を出迎えた。購入者特典外装である。基本的に、
この時代の対戦・協力型ゲームは広告料に加えてホスト役の配信者を購入・課金
ターゲットとしており、購入特典として実況配信時におけるクライアント側への
無料招待権が付随するやり方になっている。まさに実況配信者は、
対戦・協力ゲームを無料でやらせてくれるネットの神となれるわけだ。
この世の天国かな?
「最初の兵(つわもの)は……のびるの父さん、ですか?ええと……その……そんな
ウルトラの父みたいに言っても……ダメですよ……えと……はい……じゃ、じゃあ場所は
ソラマメジマで!」
『かわいい』『ぼっちかわいい』『ゲーム以外マジで話せなくなるのかわかわ』
『例外でフリーズするリアルぼっちの術は俺に効く』
『コミュ障がリアルすぎて心が痛くなるからもっとやって』
相手はパイロット風のゴーグルをつけたアバターを選択したようだ。もしかしたら、
空があれば航空戦力で来たかもしれないが……ソラマメジマに航空戦力はない。
計画通り!
「私は青軍だし、後攻でいいのよ?」
『よゆうっすね?』『王者の余裕』『うそつけ絶対よわよわだゾ』
対戦が始まった。のびるの父……相手の赤軍はファミコンウォーズ初見なのか、
装甲輸送車と歩兵を使って普通に進軍しようとしている。
「勝ったな……」
『フラグ乙』『負けそう』『イキるの早い……早すぎない?』
初ターンは生産のみなので即マイターン。
ファミコンウォーズ陸戦の主役は戦車でも自走砲でもない!
「山盛り戦闘工兵・シェフの気まぐれトッピング作戦だぁー!」
『やった』『やりやがったこいつ』『申し訳ないが戦闘工兵山盛りはNG』
『泥沼の消耗戦クルー?』『のびるの脳みそはツルツル』『脳死プレイ乙!』
『ちょろっと歩兵混ぜてる……いやらしい……』
「ふっふっふ……勝てば良かろうなのだァー!!ブルームーンに栄光あれ!!」
戦闘工兵。それは一言で言ってしまえばコスパ最強のユニットである。
2000で生産できるくせに、16000で生産する戦車Aにある程度ダメージを与えられる。
単独では無理があっても、複数で見ると?正直、値段と火力が見合っていない。
あまりに火力過剰である。移動力こそ2マスで最低だが、
輸送ユニットに乗れるし街占領も出来る。
それに、この狭いソラマメジマなら移動力はそれほど欠点にならない。
「やっぱり……ニンゲンの力って……最高やな!」
『どこかのラスボスみたいなこと言い出した』『ボスのび』
『工兵自爆突撃かます10才女子とかちょっと』
『何気に自走砲Aもこっそり街配置してる……いやらしい……』
目の前の司令部コンソールには、
量産されて死んでゆく自軍敵軍の様子が映し出されているが……。
「グロイけど、不意うちじゃなければどうってことないなぁ」
『ボスモード』『イキリメガネ』
『軍服を着て自分を屈強な軍人だと思っている一般小学生のびちゃん』
『イキれる時にイキっていく』『安心したら即イキる、狂気ののびるゲイン』
ファミコンウォーズは特に、街占領の数が即毎ターンの収入に繋がり、
一度押されると挽回は難しい。
毎ターンこちらが戦車Aか自走砲Aを生産し始めた段階で、相手投了となった。
「のびるの父?さん、ありがとうございました。なんかちょっとやりすぎた予感が……」
『ガチのび』『若干ゃイキリ』『ちょいイキ』『のびちゃんが楽しそうで何より』
「それにしても戦闘工兵作戦の瞬間にアレだけ反応が返ってくるとは……
けっこう古典ガチ勢多い、多くない?」
『あたぼうよ』『むしろ今回のびちゃんの方が詳しすぎて驚きなんだが』
『古典ゲームも色々あるし……』
『そうそう、古典ゲームでも古い方は既にやる人減ってるからな』
『古典の中でも古典、古典古典ガチ勢のすくつ』
『多分のびちゃん含む』
「ふぅん、そうなんだ。それなら私古めでいこうかな。インベーダーから、プレステ、プレステ2くらい?もうちょい?」
『プレステは甘え』『プレステ1はギリギリセーフでは?』
『発売はポケモンの1996年より前だぞ』
『有りでは?』『むしろポケモンもアウト』
『白黒携帯機のポケモンアウトはどうかと……』
やっぱりここはまとまらないか。
「えーと、それじゃあ話に出た中で、プレステ1までは有りってことにします。あと、
それ以降もリメイクされた作品も多くて、現代のフルダイブ型リメイクだとリメイクのリメイクが基本になってるって作品があったりするんで……その辺有りの方向で一つ」
『おk』『せやな』『リメイクのリメイクのリメイクのリメイクまでは知ってる』
『のびちゃんの好きにしていいのよ』
「そうですね。まあ、一応話もまとまったところで……私はゲームがしたいんです、
次の戦争を始めよう!次の次の戦争のために!」
『即イキ』『油断したところをイキっていく』
『のびちゃんまーたイキりよるん?』『お?泥沼の戦闘工兵ミラー作戦行くか?』
その後、ソラマメジマを何度も戦火に包み込んだ俺は5勝1敗。よさげな戦果を挙げて、
その日の配信を終えた。
内心の一人称=俺
他人に対しての一人称=私
こっそりTSっぽくしていくスタイル