「ハイ!毎度どうも、のびるです!」
『オッスオッス』『初見、テトリスと聞いて』
今日の出だしは……28人。人気爆発とまではいかないが、順調に増えているようだ。
今回は集中力がいるので、コメント読み上げは切っておく。
「えーと今日の実況はこちら、テトリス武闘外伝!」
『バトルガイデン!』『知ってた』『女の子はぷよぷよじゃないの?(偏見)』『ガチ勢の予感』
「テトリスなのでもちろん対戦ですが……武闘外伝はちょっと違う。
黄色いクリスタルブロックを取り合って、キャラごとに4種類の必殺技を出し合うゲームです。
キャラ性能に差があるのが欠点といえば欠点ですね。制限は……なしの方向で。
私はビット使います」
『出イキ』『舐めプ』『しょっぱなからイキっていく』『こいつはめっちゃ許せんよなぁ?』
「いやその……私が一番好きなキャラってキャラ性能抜きでグラプリ……
グランプリンセスなんで……」
『やはりガチ……』『予想通りで草』『舐めプとか言って正直スマンカッタ』
「ご理解いただけたようで何よりです。え、と、じゃあその、はいっと!」
アバター機能の一つ、登録動作による即時外装チェンジで購入者特典の外装にチェンジする。
赤・青・黄色・緑・桃色の5人の小人であるビットに加えて、
6人目の虹色に輝く小人となったプレーヤー(若干大きめ)外装オプションである。
『かわえええええええ』『小人メガネの虹色妖精とか興奮で血管ぶち切れそう』
『高血圧ニキは安静にして、どうぞ』『大き目の小人なのか小さい人間なのかはっきりしろ』
『大きかったり小さかったりしろ』『ナニが大きいんですかねえ……』
「はい、じゃあ対戦します。私はビットで……のびる@サーバー立てたんで……って早っ!
ええと、以下同文さんよろしくお願いします!」
以下同文さんはニンジャを選択。対戦が始まった。
ダイブ式の操作系統は色々有るが、今回俺は仮想式無線コントローラーを採用している。
思考制御だと敏感すぎて少しの気の迷いでも操作がずれるし、
有線式や設置式だとダイブ実況のパフォーマンス的に冴えないと判断したからだ。
何より、手元のコントローラーを操りつつアクロバットして技を繰り出すというのは、
前世少年期以来の夢であったと言っても過言ではない。ないのだ!
『え……』『うわ……』『ガチすぎて小生ヒエヒエ』
空間上に映し出される俺のテトリスブロックは、常に最高速を保ちつつテトリス穴1ヶ所を空けて積みあがっていく。
もちろんクリスタルブロックを相手に渡すなどありえない。
「いやまあ、武闘外伝は先行ブロック表示あるんで……クリスタルブロックを渡す理由、
ないですよね?」
『いや、まあその』『これはガチ』『ガチ修羅』『修羅勢』
『出来ること前提でそれを言うなw』『プロ級サーバー行って、どうぞ』
むー……何かムカつくぞ。
「テトリスだけじゃないテトリス武闘外伝が好きなの!皆で必殺技使って派手な対戦したいの!
わかるでしょ!」
『わかる』『わかりみがある』『急にかわいい』『QNK(急にのびちゃんがかわいい)』
『かわいすぎる妖精か』『やはり天使だった』『のびる……ガチ勢でさえなければ……』
そんなやりとりをしている間にも対戦……という名の蹂躙は続き、
やがて丸い玉が4つ……レベル4の必殺技が使用可能になっていることに気付く。
合わせて踊るか!
「よーし、じゃあ行くよー!それー!マンボ!」
ビットのレベル4必殺技、マンボ。対戦が止まり、
相手のフィールド自体が踊りだしたかのように蠢いて、
縦方向に伸びたり縮んだりしてめちゃくちゃになる。
ランダムなので、時には穴が埋まって相手有利になるギャンブル技であるはず……なのだが。
『ひでぇ』『これはひどい』『のびちゃん、その踊りは何?』『何って……マンボだろ』
『ひどい』『ひどいですね……』『何だ?そのあわれな踊りは……』
『お前ら……テトリス対戦がひどいのか、のびちゃんの踊りがひどいのかはっきりしろ』
『マンボではなくノロイなのでは?ボブはいぶかしんだ』
『フィールドもひどい、ボドボドじゃないか』『ランダムだよな?これ即死レベルじゃね?』
『もしや……伝説のロムハッカーの技を継いでいるのでは?』『かもしれん……』
『修羅の子……』
さんざんな言われようである。
「もー……いいもん。もう決着つけちゃうから」
スカスカのボロボロと化した相手フィールド。このままでも勝つだろうが、
とっときのダメ押しをする。
「それー!フィーバー!」
クリスタルブロックを即座に2つ消して放つ、ビットのレベル2必殺技「フィーバー」。
技使用時の自分のブロックをコピペして、そのブロックだけが双方落ちてくるという、
本来使いどころに悩む特殊技であるはず……なのだが。
『ひどい』『ひどい』『これはひどい』
これの強みは双方、つまり相手方にも同じブロックしか来なくなること。
相手がボロボロの状態で、今俺がやったように四角ブロックをフィーバーすると……。
ゲームセットだ。
「以下同文さん、ありがとうございました!」
挨拶はしたのだが……怒りの無言退室である。仕方ないね。
「もしかして……やりすぎてしまったのでは?」
『やりすぎ』『強すぎ』『修羅勢は修羅界に帰れ』『あんた鬼の子だよ』
その後、もう一度募集するも……もう挑戦者はいなかった。
『残当』『当たり前だよなぁ?』『つい最近は……岩に隠れとったんか?』
「テトリス武闘外伝って……楽しいよね!」
『ヒェッ』『(勝てば)楽しいよね!』『やはり狂人であったか』『のびちゃんが魔王だった件』
「もー……もう誰も来ないみたいだし、とりあえず今日は明日の予告で終わりますね。
明日のゲームは……
一目見たときから、このゲームだけは欲しかった。ロマンシングサガでお送りしまーす!」
『来たああああああ』『kitaaaaaaa』『まさかのロマサガ』『え、対戦は?』
「対戦も好きなんだけど……とりあえずロマサガやりたい欲が半端ないんで……あ、
指示もネタバレも全部オッケーです。原作の、元もリメイクも両方知識あるんで
あんま意味ないと思いますけど」
『ガチ』『これはガチ勢』『やはり狂人であったか』『青の剣はやるの?』
「そこまで狂人ではないです……ないよな?まあネタ切れとか、心の闇が
抑えきれなくなったとかでワンチャン、くらいの期待しない感じで。それじゃ、
今日ののびる実況はこれまで、ありがとうございました!」
…………
「はぁ……」
ダイブを終了し、ダイブユニットの中から出る。ダイブアバターと容姿は同じだが、
髪の色は鮮やかな赤、
目の色は緑がかった碧眼。4人兄妹の末っ子にして次女である。黒目黒髪の上3人を尻目に、
一人だけメンデルの法則の4分の1を証明するかのような見事な赤毛。
(俺がこんなにかわいい日欧ハーフの美少女であるはずがない)
鏡の前で、前世ラノベのタイトルのような文句を脳裏に浮かべても、
田中スーザンふ美子は日欧ハーフの美少女であった。
「まさったな……」
何に勝ったのかはよく分からないが、彼女は上機嫌で「第5ダイブ室」と書かれた扉を閉めて、
帰路に着いた。
圧倒的キャラ性能差があるのにチート性能のグランプリンセスに勝て
と言われるテトリス武闘外伝ストーリーモードの闇