TS転生未来レトロゲーム実況配信のびる   作:おかひじき

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レベル2の青いブーメランは罠だぜ派といや行けるだろ派の間には知られざる争いがあった……


ゼルダの伝説〈ひとりようRPG〉

 

「つるかめ仙人さん、今日はありがとうございました!」

 

突然メッセージが飛んで来た時は焦ったが、

何とかゴルフ対決実況配信を終えることができた。

これも俺とあちら側、双方の視聴者が平和に、穏やかに……穏やか?

 

あちらの視聴者は穏やかそのものだったが、

こちらの視聴者は初めてのリアルタイムコラボに舞い上がって、

ネタに走って騒がしかった気もする。

 

「のびるちゃんものう。小さな子がこのようなゲームをやってくれて、

わしは本当にありがたいことだと思っとるよ」

 

親フラをさんざんネタにされてるのに動じない、

何と言うかあれ以来ロールプレイを決して崩さなかったのは素直に凄いと思う。

これが明鏡止水の心か……。

 

「はい、今日の突発ゴルフ対決!-2の差でつるかめ仙人さんの勝利です!

ご視聴ご来場、ありがとうございました!」

 

 

 

………………

 

 

 

「さあ!ここからは私の今日の配信!やっていきましょう!」

 

『のびちゃんまだいける?』『半端な時間だけど何やる?』

『なんか短い対戦ものとか』『FISTとかどう?』『さらっとそれを薦めるなよw』

 

「今日の実況は、ゼルダの伝説です!と言ってもレベル1クリアまでを目安にします」

 

『ゼルダキタアアアア』『ゴルフの次にこれとか不意打ち過ぎるでしょおおお』

『QMK(急に名作が来たので)』『あわ、あわわてるな!』

 

「ええと……会話がない所がいいですね!ひとりようアクションRPGです!」

 

『あっ……(察し)』『のびちゃん用ですね、分かります』

『喋らなくていいというのは利点なんだよ!』『俺もそう思う!』『お前らw』

 

「みんなのその態度に、私はとても傷ついた。

具体的に言うとハート半分で音が鳴ってるくらい」

 

『草』『ハート半分は無理ゲーですね……』『妖精を食らって、どうぞ』

 

さあ、前世では裏までやり尽くしたがダイブリメイクでは初めてだ。

ゼルダの伝説初代、ダイブスタート!

 

 

初代ゼルダのオープニング。あの時代のあの機器でこそ響かせたあのBGMを、

リメイクに当たりあえて再現した曲が、何百年もの時を越えて流れている。

 

「やはりこの曲はやはり神だな……今回のでそれがよく分かったよ。リメイカー感謝」

 

『これが神か……』『これは伝説ですわ』『当時を偲んでいけ』

 

まずセーブを作成する。名前はかのリンクさんをリスペクトして「のびるさん」で、

設定はダイブのアバター主観に……。それを選ぶと俺のアバターが変化し、

リンクさんが緑色の髪になって、丸いメガネをかけて、

ついでに女の子になって小さくなったような姿になった。

 

『のびちゃんエルフ』『緑の服で完全にリンクさんですね……』『のびエルフ好き』

『「のびるさ」までが苗字で「ん」が名前だぞ』『リンクさ・んとか分かるやついるのかよw』

 

 

スタート地点の周辺は、

緑の岩なのか森なのか木なのか苔の生えた岩なのかわからない、

緑色の物体と背景が配置されている。原作のそれをきちんと再現したもので、

ダイブリメイクで立体化したはずが未だによく分からない。何なんだこれ。

 

『森だろ』『じゃあこっちは木?』『緑の岩だろ』

『苔が生えてるって表現だと思うけどなぁ』

 

武器は剣……最初は持ってないんだよな。盾は持ってるがなぜ剣がないんだろうか。

元ゲームの記憶通り、近くの洞窟に入る。

 

洞窟には爺さんが居る。婆さんが居る場合もある。

スタート地点にある洞窟のじいさんに赤っぽい剣をもらうのが最初にすることだ。

最弱だがこれがなければ始まらない。

稀にこれを受け取らずにクリアする剛の者もいるらしいが、俺はしない。

 

『掲げていく』『手に入れたことを見せておかないと』

『誰に見せるんだ』『うおおおおお剣もらったああああああ(テンションあげあげ)』

 

剣を受け取ると爺さんは消える。その後この爺さんの姿を見ることは出来ない。

なぜか2つの火だけは延々と燃えているが、特に意味はない。

 

フィールドを移動すると、早速モンスターのお出ましである。

 

「このクモみたいなカニみたいなあめんぼみたいなのは……何だったかな?」

 

『テクタイトやぞ』『クモじゃないの?』『だからクモがテクタイトだって』

『あれはピーハットで……こっちはリーバーですね。たまげたなぁ……』

『勝手にたまげてろ』『ピーハットうざい』

 

早速試し切りをしよう。重さ設定はしていないのでらくらくと剣を振り回せる。

それが無きゃ、俺がこんなアクション系が入ったゲームをやることは無理だ。

 

雑魚敵を倒すと、その瞬間エフェクトを残して消えて、

色々なアイテムを落とす。原作のように地面に落ちたままになるわけではなく、

なぜか低空に浮いたままになっている。落ちてるものを拾わない的な配慮かな。

 

「あ、時計」

 

『時計かぁ……』『時よ止まれ!』『またザ・ワールドか!』

『ファミコン時止め好きだな……』

 

「ハートは……取っても何もないですね。ええと……説明によると、

これは食べるらしいので食べて見ますね」

 

赤いハートを食べる。柔らかいが弾力があって甘いにおいがする。

 

「グミみたいな食感ですね……甘い……」

 

『酢ダコの絞り汁みたいな味じゃないのか……』

『どこ情報だよそれwww』『知ってるけどそれはないw』

 

口の中でモッチャモッチャいわせながら、敵を倒して進んでいく。

ハートは一口で食べられるサイズだ。りんごみたいな味がする。

擬似的な満腹感はあるが、ダイブフィールドの仮想食感なのですぐにそれは収まる。

 

『俺はグレープのグミみたいな味だったぞ』『俺の時は苺の味だったけどな』

『マジかよ』『プレイヤーの好みと倒した敵の種類で変わるらしいぞ』

 

このゲームは通貨であるルピーもアイテムと一緒にドロップする。

案外小さいな……まあ持ち歩くならこんなものか。

財布……ルピーを入れる小袋の中に、255ルピー入る。

 

「貯める作業もいるんですが、この時点ではまだですね。さっさとダンジョン行きます」

 

 

さて、レベル1はどっちだったかな。

確かスタート地点から上の方に行った所にある木の中に入っていく感じだったような。

 

「ああ、あった」

 

大きな穴が開いた木の中から、レベル1のダンジョンに入った。

原作だと見えなかったけど入り口は階段になってるんだな。

不気味な石像と扉が並ぶ迷宮の玄関口。

 

とりあえず両隣の部屋でスタルフォス(がいこつ)とキース(こうもり)を倒し、

カギを手に入れよう。

 

『ヒャッハー!』『カギを出しやがれ!』『ここがイキり時ですよ!のびるさん!』

 

「お前らなぁ……」

 

全く人をヒャッハーみたいに。この俺がそんないきり立って襲い掛かるような真似、

例えゲームでもするはずが……。

 

「極彩と散れ!」

 

『来たァァァァ』『のびちゃんの古典イキりきたあああああ』『極彩と散れwww』

 

いや違うぞ、これはその、集中して敵を斬る時に出たとっさの気合みたいな感じで、

別にそんな意識してと言うか……。

 

「オラァッ!!」

 

『これは完コピwww』『よくそんな低い声出せるなw』『承太郎様ですね、わかりますwww』

 

違うと言ってるだろうが!全くこの草どもは本当に人をイキりみたいに……。

 

「闇に滅せよ……」

 

『半蔵さんwww』『草の者ですね、わかりますw』

『のびちゃんのイキり欲張りセット大盛りすぎるwww』

 

……まあ敵は全滅し、カギ2つ手に入ったのでよしとする。

転生した精神と記憶はあっても、その実際の適応を考えると、

俺はまだ今生経験としては10歳児であることを痛感するな。こういう時は。

 

その後危なげなく進み、矢の情報を教えてくれる爺さんを攻撃して無事にやり返され、

マップ上方の部屋で弓を回収。

途中ブロックを押す感触が滑り良すぎて気色悪かった。

 

ブーメランを使う敵、ゴーリアを倒すと、ブーメランがもらえる。

レベル1の宝は弓とこのブーメランで2つとなる。

 

壁から現れる手、ウォールマスターを回復ポイントとして、

ついにレベル1のボス、アクオメンタスとご対面である。

だが……。

 

「しょせんレベル1ですからねぇ」

 

前後しながら3方向ショットを散発的に撃って来るだけで、

数々のアクションやSTGをやり込んだ「後」の俺なら負けようがない。

数が多く不規則な動きの雑魚の方が手ごわく感じたな。

 

「さて、これでトライフォースのかけら一つ回収してレベル1、クリアです!」

 

『おめ!』『トライフォースを掲げていく』『この演出はマジで1話終わった感あるなw』

 

「今日もご視聴ありがとうございます。実況配信はいつもの私、のびるでした!」

 

 

 




レトロゲームがダイブでリメイクされて自分が小学生になってたら大はしゃぎだろう?
誰だってそうする。俺もそうする。(兄貴感)

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