TS転生未来レトロゲーム実況配信のびる   作:おかひじき

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とりあえずインドの東はえぐらないと南方でひどいことになる


ネオアトラス〈かわいいおじさん〉

今日の来場は何と8100人!

思惑通りなのに伸びが実際に鈍化すると不安になってくる。

俺はこのままでいいのか?(哲学)

 

「今日のゲームはNeo ATLAS、ネオアトラスです!」

 

『kitaaaaa』『知らん』『メガテンか何か?』

『名作過ぎて鼻血吹き出る』『俺なんか耳血出そう』

『耳血は流石に病院行って、どうぞ』

 

「見た目洋ゲーに見えるけど洋ゲーではない……」

 

『アートディンクだぞ』『聞いたことあるような、ないような』

『聞いたり聞かなかったりしろ』

 

「えーとそれではまず、始めて行きたいと思いまーす」

 

アカウントフィールドからネオアトラスのフィールドに入ると、

俺の姿が中世の女貴族、あるいは女商会長風に変化する。

 

前を紐で結わえたワンピースローブというのだろうか。

緑色のローブに同色の羽帽子、ローブの下のワンピースは白でコントラストが目立つ。

そしてもちろん銀縁メガネに、腰には装飾の付いた刺突剣を装備している。

 

『のびる様素敵です!』『これはのびちゃんじゃなくてのびる様ですね……』

『男装してない麗人のびる様やぞ』

 

の、のびる様?いやいいけど……。

ゲームが始まると、ひげのおじさんが現れて色々喋りだす。

このゲームの案内役?的存在である。

 

『このおじさんは何?』『正直怪しい』『のびちゃんに話しかけちゃうとこが怪しい』

『なんでやwそれはおじさん悪くないやろw』

 

「このかわいいおじさんはミゲルです。主人公が喋らない分喋ると言うか、

何というかマスコット的な?」

 

『かわいいおじさんで草』『ご主人様とか言われてもw』

『なぜかわいいマスコットキャラをおじさんにしようと思った!言え!』

 

「このおじさんのおかげで主人公が喋らないでもゲームが進むので……」

 

『あっ……』『のびちゃんとゲーム原作者、時を越えた奇跡の合意成立』

『どっちかというと談合では?』『代わりに喋ってくれるおじさん、欲しいなー俺もなー』

 

「主人公がいるのは大航海時代のリスボンです。商会の主となって地図を作るゲームです」

 

『チーズを作る?(古典ネズミ感)』『大航海時代って?』

『新たなる発見の時代だぞ』『大航海時代でいいんだよ歴史の先生かよ』

 

まずは、ゲームスピードを遅いに設定しておく。 

そうしないとえらい忙しいゲームになってしまうという特徴があるからだ。

早速、ソリス提督が帰ってきたという報告を聞くことになる。

 

「ソリス提督が帰ってきたようですね」

 

報告を聞くと、鯨か何かとぶつかって引き返してきたという。

さらに修理のために立ち寄ったラスパルマスという街で、

パナケイアという薬を見つけたらしい。

 

『薬w』『また怪しいですね……』『おいおい大丈夫か?』

『このゲーム全体的に怪しい……怪しすぎない?』

 

「ちゃんと産物として交易できるので大丈夫ですよ。まあ実際効果あるのか知らんですけど」

 

『知らんのかよw』『騙して悪いが!』『さすのび(裏社会)』

 

「このゲームですが、その全てが『信じるか、信じないか』で物事が決まる、

というシステムで出来ています。だから報告が本当なのか最後まで実はわからないと言うか」

 

『どういうことなの……』『のびちゃんを信じればええねん』『全ては信心だぞ』

 

「これは初回なので出なかったようですが、信じる、信じないを毎回選んで地図を作っていく。

その地図作りと探検の繰り返し作業をやるゲームになります」

 

『のびちゃんが好きそうな要素来たな』『繰り返し探検していく』

『信じないを選ばされる無間地獄ですね、わかります』

 

とりあえず、探検航海の始まりだ。

まずソリスの船団を選んで、探検航海に出発させることにする。

 

ソリスを西アフリカの街へ移動させて、

その後ソリス船団をアフリカ大陸に突っ込むような感じの航路で進ませて、

ネオアトラス特有のエフェクト、地図の未知の部分にかかる雲の中を突っ切る。

 

コンソールが立体化したことで、

世界地図上で色々ミニチュアが進む様子を眺めることが出来る。

前世ではSFで見た立体図上演習的な楽しみ方が出来るようになってるな。

 

「さて、ソリスも出港したところで貿易航路を設定しておきますね」

 

『貿易航路?』『大航海時代みたい』『大航海時代だぞ』

『いやその大航海時代じゃなくて』『???』

『ゲームの大航海時代と歴史の大航海時代混同してる初心者おる?』

『あっ……(察し)』『正直スマンカッタ』

 

「ええと……ですね。最初はこの真珠とマダス貝の街の航路を結んで……」

 

『定番ですな』『そうなのかー?』『まあ図鑑埋めと初期の利益を両方やろって感じ?』

 

ネオアトラスのダイブフィールド。

世界の産物が積まれる(予定)の広い商会主の部屋に置かれた、

大きな平面立体世界地図コンソールを使って指示棒やら指先一つで指示を出す、

その指示に従って立体エフェクトに包まれた世界地図上をミニチュアが動く、

というのがこのゲームのダイブリメイクのメイン操作となる。

もちろんゲーム開始早々の今はヨーロッパ周辺以外白紙、白い雲に覆われている。

地図自体は平面だが、雲や建物等が飛び出す絵本状態で3D化するので、

いわゆる平面立体地図と呼ばれるコンソールの一形態である。

 

「はい、利益は少ないですけど、真珠とマダス貝で黒真珠という2次加工品が出来るので、

それは最初にやっておこうというプレイスタイルですね」

 

『黒真珠か』『真珠養殖ってそんな昔あったっけ?』『信じる心が大事ぞ』

 

「時間があるので探索に移りますね」

 

飾り気のない地味な指示棒で、既に見えているヨーロッパのあちこちを拡大縮小し、

何か目を見張る発見物やアイテムの入った箱を探す。

まずはロンドン周辺で定番の発見物を回収。

 

『箱があるぞ』『宝箱だ!』

 

「まあこういうゲームでは定番のストーンヘンジですね。

このように、何か見つけるとお金がもらえます」

 

近くで絵文字の石版というアイテムも2枚見つけて、

ひげのおじさん……ミゲルがこの石版と世界の謎について語り出した。

 

『双子火山?』『こういうのはリアルの伝説なの?』

『いや確か、これは創作だったと思うけど……』

 

「こういう世界の謎を解き明かすみたいなのが、原作リアルタイムではあったらしいですね。

今ではそのイベント的な謎の解明に参加する機会は、永遠に失われてしまいましたが」

 

色々あったな。ゲーム内の謎やED到達のキーワードを送ると何かもらえる的サムシングが。

前世の思い出に浸って捜索していると、地中海の真ん中で「地中海のテーマ」を発見した。

 

『テーマw』『地中海さんのテーマソングやぞw』『流石穏やかですね……』

 

地中海のテーマをバックに探索を続け、イタリアで錬金術工房を見つける。

 

「お、これは……」

 

発見の次の瞬間、ミゲルがラスパルマスを見に行こうと言い出した。

 

『ミゲルw』『このおじさんはホンマに』

『ダメだwおじさんマスコットはいつ見ても草生えるwww』

 

「せっかくだから……というか強制ワープですね」

 

折角なので、ラスパルマス周囲を探索していこう。

周囲に咲き誇る赤いユリに混じって白ユリ発見。

トンガリ山も見つかって、まあ悪くはなかったかな。

 

ギリシャにはアカデミアがある。近くの箱からケメロスの竪琴を発見。

そこから中東に目を向け、

これまたこのゲーム独特のシステム「噂バルーン」で箱舟を発見。

 

すると突然、国王からの親書が届くイベントが始まった。

 

貿易特権契約。ポルトガル王国と貿易独占契約(云々)

ポルトガル国王アフォンソ5世

 

親書を信じない超ハードモードもあるらしい。

俺はしないけど。

 

一旦開放されてうろうろしていると、国王が詳細な説明に再度訪れる。

20年でインドへの航路を見つけてくれと。

そのために探検航路1、貿易航路2を増やしてくれる。ここはゲーム的都合だな。

 

探検航路が増えたので新船団を作り、今までずっと酒だけ飲んでいたロハスを、

新しい船団の提督にする。とりあえず調査にでも行かせるかな。

 

さて、貿易航路が増えたので、

出来上がった黒真珠をコンスタンチンの首飾りと交易して黒真珠の首飾りに。

もう一つは指輪と交易して黒真珠の指輪も作っておくかな。

2次交易品はちゃんと交易拠点双方に算出するのが利点だ。

 

『定番』『定番だな』『徐々に産物が増えていくのがいいんだよなぁ』

 

「この……ここにある塩とか、こっちの泥吹草とか、

役に立たない特産物もいいですよね……」

 

『泥吹草、いいよね……』『いい……』『www』

 

とりあえず今設定できる航路は設定したので、

ちょっとアフリカ周辺を探索していたら、今度はアフリカのテーマを発見した。

 

「この曲好き……」

 

『俺も俺も』『ちょっと激しすぎない?』『は、ハゲちゃうわ!』

『落ち着けwww』『アフリカのテーマ一番好きだわ』

 

激しいリズムに乗って探索を続ける俺に、ソリス提督の帰還の知らせが届く。

世界地図コンソール上で、未知の雲の中を突っ切っていくソリス船団が心地よい。

だが、今回は……。

 

「残念ながら陸地を発見できなかった……だと!?」

 

『うっそだろお前ww』『アフリカえぐれてるだろこれwww』

『むしろえぐって行こう』

 

「一応信じるけど……もう一回行って先の街を見つけてくれないと困るぞ、本当に」

 

航続距離というものがあるので、

船が進化しないで探検できる場所がなくなると困ったことになる。

しかしいきなりえぐれて始まるとは思わなかったな。

陸地になりやすい場所はかなりの割合で陸地になるはずなんだが……。

 

信じるを選択すると、地図コンソール上の暫定領域が確定し、

えぐれたアフリカ地図がこの世界の世界地図となる。

 

『これは空想世界地図』『信じる心www』『ムー大陸作りそう』

『こんな怪しい報告でボロい商売ですわww』

 

「えーっとまあ、存在しない大陸を作ることも、大陸を海でえぐることも出来ます。

現実の陸地は陸地になりやすいようになってるらしいですけど、それは確率ですからね」

 

と、調査に行かせていたロハスが帰ってきた。

錬金術工房で、盗賊団の噂を聞いてきたらしい。

 

「この盗賊団イベント、ものすっごく面倒くさい!のですよねえ……」

 

『それな』『そうなん?』

『大量に存在する盗賊団アジトを最小スケールで探して当たりを見つけるゲームだゾ……』

『聞いただけでのびちゃんが好きそう』『のびちゃんが好きそうって何だよwww』

 

俺は好きじゃないぞ。失敬な!

 

「お、今度はソリス提督が帰ってきましたね。かなり早いけど陸地見つけたかな?」

 

ソリス提督、2度目の報告。今度は未知の雲に突っ込んで早々に陸地を発見し、

即座に戻ってきたらしい。ついでに複数の街も見つけたようだな。やるじゃん!

 

「お、象牙湧いてんじゃーん!やりますねぇ!」

 

象牙は価値も量もそこそこ。距離の関係上利益を出しやすい特産物だ。

 

『この時代は象牙も普通に買えたんやなぁ』『象さん……』『時代の風を感じる』

 

 

その時何の前触れもなく、外部からのメッセージを告げる音がフィールドに鳴り響いた。

そういや今日は、お迎えに来るって言われてたんだっけか。

 

「あ、えーと、時間になっちゃったんで今日はここまでにします。

今日のゲーム、ネオアトラスはどうでしたでしょうか。

実況配信、いつもののびちゃんでした!」

 

『えーもう終わり?』『乙』『お疲れのびちゃん』『意外と時間経ってた……』

『おっつーん』『達者でな』『サラダバー!』

 

 

………………

 

 

「あ、ふみちゃん!こっちこっち!」

 

公共交通機関の運営する配送自動運転車に乗り、手招きするのは俺の……私の母。

俺と同じ赤毛でメガネで緑がかった碧眼を持つ、田中スカーレット富み子その人である。

 

今時自動運転車がいくらでも街をさまよってるんだから、

いちいちお迎えする必要はないんだと言っても聞かない。

忙しい身でありながら、俺をお迎えできる時は出来るだけお迎えに来るのを生き甲斐とする、

まあ……親の心がけとしては非常に尊敬できる人物である。

 

必要はないのに改名するような度を越した日本オタクっぷりと、

その名前センスで俺の名付け親として行った罪は一生許さないけどな!

あと身長も体型も大人にしては小さい……というのは、

俺としては喜んでいいのか悲しんでいいのか分からないところである。

 

その車の後部座席に乗り込んで、俺たちは家へ向かう。

 

「ふみちゃん見たよー?ちゃんと実況配信出来てるじゃない!」

 

な、何……だと!?親フラどころじゃない、親の実況参観だと!?

 

「見ないでいいって言ったじゃん!何で見るの!?」

 

「だって見たいじゃない!のびちゃんっていうの?いっぱいファンがいるんだねー!」

 

こ、これは恥ずかしすぎる!!!羞恥心とか言うレベルをとっくに越えてる!

 

「見ないでいいの!見ても言わなくていいから!」

 

「えー、見たいなー。ふみちゃんがのびちゃんで遊んでるの見たいなー」

 

このあと見たい見るなでさんざん押し問答のあげく、結局見ることは止められなかった。

だって俺前世の両親とは寿命の関係で死別しているから、

改めての今世の親の頼みを、拒絶し切ることは出来なかったんだ。

 

まあ配信中に茶々を入れたりしないとか基本的なことは理解してるようだし、

このぐらいならまあ、良しとするかな。

 

 

 




基本的に親は恥ずかしい
恥ずかしい親じゃなくても恥ずかしい

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