TS転生未来レトロゲーム実況配信のびる   作:おかひじき

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そしてのびちゃんはのびちゃんとなった(トートロジー)


ドラゴンクエスト3 そして伝説へ…〈最終回後編〉

 

月浦さんとのデュエルが終わった後。俺は両親に問いかけるべく、メッセージを入れた。

 

テトリス武闘外伝のCPU対戦をして待っているうちに返信が届く。

 

月の中継基地で働く父さんは、そうそう帰って来れないので、

「のびる」のアカウントフィールドで話すことを許してもらいたい、だと。

 

しょうがないな。まあ話す内容が重要なんだ、それでいいか。

俺はまた一人でCPU対戦に興じて、両親のログインを待った。

 

 

 

………………

 

 

 

母さんはちょっと補正入れた程度の、

父さんはゲーム用調整すらしていないリアルそのままのアバターで、

俺のアカウントフィールドにやって来た。

 

【ふみちゃん、今日はよろしくね!】

 

うん?何がよろしくなんだろう。お話よろしくってとこかな。

緊張してきた……。

 

【ええと、繋がってるかな?】

 

父の田中太郎。父には当然のことながらミドルネームはない。

現代ではむしろ古典時代の典型的名前ということで、キラキラネームの一種になるらしい。

うーん、マジわからん。

 

 

【何から話すか……そうだな】

 

俺の……田中スーザンふ美子の先天性疾患が判明したのは、出産前の検診だった。

神経伝達がわずかに未発達で、そのわずかな違いが最終的に齟齬をきたし、突然死に至る。

 

前世の時代においては判別出来ず、

原因不明の乳幼児の突然死として判断されていた事例の一つである。

 

それを未来の、現代の医学で身体的な部分を遺伝子レベルで回復させ、

精神と神経伝達、乳幼児では負荷に耐え切れないであろうリハビリ部分を、

適応性のある他者の神経伝達を利用することで介助する。

 

「それで選ばれたのが俺……だったわけか?」

 

【その通りだ。判明した時の絶望、何としてでもふみを助けたい、

そう思って手の届く限りの手段を取った。

そして、君が無事に生まれて、ここまで育ってくれて……本当に、本当に……感謝している】

 

「……」

 

ゲーム配信が古典芸能の域で、それのリメイクが大流行しているというこの時代。

正直俺は転生して良かったと既に思っている。

 

だが、事前の相談なしでという部分に思う所はある。

けど、前世に重ねた年齢と経験で理解出来てしまう。もし自分にこんなかわいい娘が出来て、

その娘が不治の病で余命いくばくもないなんて言われたら。

断言する、俺だって同じことをしただろう。

 

「『俺』の最期はどうなったか分かるか?正直よく憶えてないから、

分かれば教えて欲しいんだが」

 

【医者から聞いた話では……当時の頭部に被るタイプのVRゲームを、

睡眠時間を削ってやっていて、

そのせいかどうかストレス性の疾患で身体の方が先に限界を迎え、残った脳や神経伝達から、

接続を伝ってこちら側に……という状態だったようだね。同時代ならともかく、

過去への接続を伝って精神だけがやって来たら、それはもう転生じゃないか?と言っていたが】

 

ですよね。まるで転生という状態を人工的に作ったみたいだ。

しかしそうなると、俺は良くてもこっち側がどうなったのか気になる。

それは聞いておかねばならない。

 

「他人の神経伝達丸ごと……精神を入れて、元の心は大丈夫なのか?」

 

【ああ……医療措置としては問題ないようだ。

そもそも、人の精神を勝手に奪うような行為が出来ないから常時接続せずに、

仕方なしに随時接続して神経伝達の能力の一部を頂いている……本来そんな手法らしい】

 

ああ、なるほど。本来は完全に同居させるのが最高だけど、

生きた人間の神経伝達を全部奪う真似は出来ない……でも俺は事故でそうなってしまった。

そんな状況だったわけだ。しかし、問題はそこだけじゃない。

 

【ああ、そうだ。そこは最初悩んだよ。その上で父さん達は自分なりの答えを持ってきた。

君に……ふみにどうしても言いたい、いや、こうなったら言わねばならない事だ】

 

何だろう。緊張でそわそわしてきた。

いや、言わねばならないってんなら聞いてやろうじゃないか。

どんと来い、俺が受け止めてやる!……ちょっと違うか。

 

【母さんと父さんで、思ってることは同じなの。

でもお父さんはどうしても別に言いたい事があるって。

だから先に、私達が思ってる事を言うわね。私達はふみちゃんは、

前世を持っているだけの私の娘だと思ってる。

それはふみちゃんの心の中がどう変わっても、変わりないわ】

 

それは当たり前と言われている親の心構え。

だが実際にそれを言える、言う機会がある親というのは、そう多くはないだろう。

実の子供の心の中が気に入らない、子供が変わったからこうだ……なんて親もいる中で、

それを聞けるのはとても幸せな事じゃないかと、俺は思った。

 

 

【父さんはそうだな……それとは別に、

特別な養子をもらったようなものじゃないかという感覚もあってな】

 

「養子?」

 

【ああ。養子にもらった兄が、ふ美子を生涯助けてくれる。

親は子供の一生に付き合うことは出来ないからな。

まさに一体となってふ美子と共に生きてくれるお兄さんは、確かにここにいる。

そうじゃないか?】

 

ああそうか。父さんは、前世の俺、おっさんの人格の存在を認めようとしてくれているんだ。

凄いなこの人は……俺では到底、そんな所まで思い至ることはないだろうな。

 

【医者が言うには、既に大人として完成した前世の人格に包まれながら、

年を追うごとに今世の人格が溶け合って混じることになるらしい。そういう兆候はあったかな?】

 

確かにあった。前世の年齢にふさわしい、おっさんらしい落ち着きぐらいは持っていた、

俺とは思えない幼い言動や反応を配信では見せてしまったことがある。

あれは俺自身がごく自然にやらかした反応ではあったのだが、

後からそう言われてみればそういうことなのかも知れない。

 

今世の年齢に相応しい人格も、俺に混じり合いながらも成長していると言うことか。

しかし、違和感でも覚えそうなもんだが全くないんだよな……。

 

【適応性を見たと言っただろう?今世と現世の人格で混じり合っても全く不具合を起こさない、

それが適応だよ。それを探すために、父さん達は実験段階の新技術にまで縋って……】

 

そうか。そういうことか。今の俺の状態が、ようやく理解出来た気がした。

俺の前世と今世は、時空を越えて人格融合を適応させる、

奇跡的な相性の良さを持っていたわけだ。

でも、そうすると疑問がある。

 

「ええと、性別が違うのはどういうことなのかな?」

 

【ふみの前世と今世は男女で対照になる精神構造を持っていたらしくてね。

現在は男性寄りの中性、あるいは両性で安定している。これから徐々に女性側の意識が育つ中で、

そのバランスが必要だったのだ……と聞いたことはある。まあ、専門家とはいえ、

新技術に関しての推測なんて全く当てになるものではないがね】

 

ふーん、まあいいか。自分でも驚くほどに、

俺は今の自分が自分であると自信を持っていたようだ。

人格がどうの、別人がどうのと聞いても、全く心に波風が立たない。

おそらくだが、のびるとしての活動が、

俺に絶対的なアイデンティティを与えてくれたのだと思う。

俺は俺であり、俺はのびるだ。『私』はゲーム配信をして稼ぎ生きていくのだ。

小学生にしてその自信を得られたこの時代、転生して良かったと心からそう思える。

少なくとも今の所はね。

 

【まあ何だ、つまりだな。父さんはふみの人格の全てを尊重したい。

まるで前世が無かったように、今のふみとしてだけ扱われるのは寂しいだろう。

だからあえて、過去から転生して来たふみの新しいお兄さんに対して、

お礼を言わせてもらう。娘を助けてくれてありがとう】

 

いえいえ、どういたしまして。

こちらこそ助けられたようなものですから……。

 

父さんはそれだけ言うと後ろに下がり、代わりに母さんが出てきて、

俺の手を取り、目線を合わせてこう言った。

 

【私も、ふみちゃんに言いたいことがあるの。父さんみたいに長々話さないから良く聞いてね】

 

お、おう。確かに話長かったけどさ。最終的にはいい事言ってたから勘弁してやってよ。

で、母さんの話って何かな……。

 

【ふみちゃん、私達の娘として生まれて来てくれてありがとう。あなたが私の子供で良かったわ】

 

そんな事言われたら泣いちゃうだろ!

中のおっさんも小学生の美少女も涙もろいんだよ!

 

涙ぐむ俺の手を取りながら、母さんは追加で、わけのわからないことを言い始めた。

 

【でね、話はこれで終わりだけど、ふみちゃんとやりたい事があるの】

 

なんか嫌な予感がするからログアウトしていい?

ダメ?アッハイ。

 

【一緒にドラクエしましょう!】

 

……は?

 

 

 

………………

 

 

 

どうしてこうなった!

 

いや分かっている。特に裏なんてものは無く、

子供のやってることに一緒に参加したい親がそれを実践した。

ただそれだけのことなのだ。

 

両親だけでなく、珍しく家に帰ってくつろいでいた古典漫画家の次兄、

田中マスターズ拳も一緒に参加することになった。連絡を入れて、これで4人だ。

 

母さんもあれだけど、父さんの名前センスも正直言ってあれだな。

まあ現代においては古典だから客観的に見ればマシだけど、

俺から見ると全力のオタネームにしか見えない。

 

ちなみに、ここで言う古典漫画とは、

古典に則ってそこからの引用でストーリーを組み立てる創作物……。

前世で言うパロディ同人を指す言葉だ。

 

実際、前世で例えるなら源氏物語や徒然草のパロディ同人やってます!

みたいなイメージを持たれているのが古典漫画である。

 

しっかし……家族皆でダイブ施設に行ってRPGって。

いやまあ、実際お手軽な遊園地に行くようなもんだから理解出来ない事はないけど。

前世時代に妄想したダイブ系ゲームと、今の時代の現実は全然違うんだと痛感するな。

 

両親も兄さんも、ふみちゃんの好きにやっていいよという事で私に任せてきた。

なら『私』の好きにさせてもらうぞ!

 

「私が勇者で、母さんが僧侶。兄さんは魔法使いで、父さんは……」

 

【武闘家がいいな】

 

知ってた。格ゲー実況観戦大好きだもんね。モニターの格ゲーでさえ、

100回やって100回ボコボコにされてから格ゲーやるのは諦めたとか言ってたが、

ドラクエみたいなターン制バトルのダイブリメイクなら武闘家も行けるだろう。

 

ゲームを起動し、俺の性格診断を始める。

質問に答えていって、お城の質問を終えて出た性格は「ずのうめいせき」

 

【さすがのびちゃん!】

 

「のびちゃん言うな!いや、のびちゃんだけど今はのびちゃんとか言っちゃ駄目!」

 

流石に親と一緒にプレイしたあげく、

実況配信で使うハンドルネームを名乗るのはきついので、

今回は特別に本名プレイする。勇者「ふみこ」の誕生である。

 

ここでゲームフィールドに移行し、

俺は単独で、ゲーム内の「母」に起こされてアリアハンのお城に向かう。

 

銅の剣と旅人の服が初期装備か。

50ゴールドと仲間用の装備を貰い、タンスからラックの種を回収する。

何か大きな殻つき銀杏みたいな見た目してるな。

銅の剣で殻を割って食べてみると本当に銀杏の味がした。

運は3上がってる。幸先いいな。

 

さて、まずはルイーダの酒場に直行し、待っている家族を仲間に入れよう。

 

【のびちゃん待ったよー】

 

【最初はスライム狩りか?】

 

【スライム狩り?大丈夫なのか?】

 

母さんはそこそこゲームの経験あり、拳兄さんは重度のゲーマー、

父さんは現代で最も多いタイプの実況見る専、

しかも格ゲー派なのでほとんど初体験のジャンルになる。

 

「まあドラクエだし、ターン制でアシストが大分入ってるから行けるでしょ」

 

まず最初は武器防具を装備してナジミの塔へ……と言いたいところだが、

ダイブでの感覚に慣れてもらうため、アリアハン周辺の雑魚狩りにしよう。

 

アリアハンの城の周囲でうろうろして、エンカウントを待つ。

青々と草が茂った草原を歩くのは気持ちいいな。

 

「お、来たな」

 

スライム1匹とおおがらす1匹の編成だ。

 

【メラ!】

 

開幕で兄さんのメラがスライムに炸裂し、スライムは伸びてダウン。

次いで俺の銅の剣がおおがらすにぶち当たり、大ガラスはピヨって倒れた。

まあ、流石に全年齢にゴア表現はないか。

 

【わぁー、すごい!ふみちゃんもケンちゃんもやったねー!】

 

「母さんは平和だなぁ……」

 

まだ余力があるので、雑魚狩りを再開。

アリアハン周辺の、海が見える草原の道をうろうろしているだけでも正直楽しい。

データ上の仮想世界とはいえ、ゲーム購入ポッキリで観光出来ているようなものだからな。

 

父さんは嬉々としてスライムやおおがらすに拳を叩き込み、

母さんは防御しながら皆の様子を見て時折回復し、

兄さんはとりあえずメラ連発で敵を倒す。

もちろん俺は前衛でメイン物理だ。

 

全員のレベルが2か3になり、俺がメラ、母さんがニフラムを憶えた所でアリアハンに帰還。

勇者の自宅に宿泊することになる。

 

【まあまあ、ふみちゃんがお世話になりまして……】

 

「挨拶しないでよw」

 

【こういうのは気分だから……】

 

どういう気分だ。全く母さんは……。

 

 

 

………………

 

 

 

ゲーム内の就寝と共にログアウトした俺達は、

近所のダイブ施設で目を覚ました。

俺と母さんが先に、兄さんがぶつくさ言いながら後からやって来る。

父さんも、月のどこかで目を覚ましているのだろうな。

 

こういう世界をうろうろするゲームの場合、

ダイブリメイクだとゲーム時間がかなり増える傾向にある。

途中ログアウトの「キャンプ」機能が標準装備されるほどだ。

 

技術が進んで、却ってかかる時間が増えるってのは何か面白い感覚だな。

 

 

もう外は夕方か。

 

「ふみちゃーん!今日は港の海鮮屋さんよー!」

 

「はーい!」

 

いつもの夕食、いつものお店。

俺達は携帯端末で自動運転車を手配して、ダイブ施設を後にする。

 

港の近くの、夕焼けに染まる国道を進む自動運転車の群れ。

黄昏の太陽が、俺と母さんのメガネと赤毛、周囲の車と港の海面を茜色に照らし、

自らを知った「俺」と「私」を祝福するように、無駄に輝いていた。

 

 

 




お疲れ様でした。TS転生未来レトロゲーム実況配信のびる、本編完結です。
何というか、TSというのは今の自分を受け入れることで終了であります。
次が何になるかは分かりませんが、何一つ文章になっていない構想だけは色々あるので
何か出来たらまた投下するかもしれません。それでは。
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