「えっと、どうも。のびるです」
『わこ』『わこつ』『初見』『タッチは壮絶でしたね……』
「いつもの皆さんも初見さんもようこそ。今日は……今日はね。
ちょっと疲れたので癒し……心の底から癒せる作品をやって、癒されたいと思います」
『癒し?』『かわいいやつかな』『のびちゃんは癒し』
「はい、ありがとぅ……ありがとねぇ……今日の作品はこちら、
アクトレイザー、いってみようと思います……」
『……?』『ちょっとわからない……』『いやわかるぞ』『クリエイションモードは癒し』
「えーと早速ゲームスタートを……ってうわ!?」
アバターの主観切り替えをしたら急に雲海でびびった。
そうだよなこのゲーム天空城から始まるんだよな。
『びびった』『そういやスタートこれか』『ラピュタ王か何か?』
「えーとキャラメイク?デフォルトのアバターで行けるならそれで……」
アクトレイザーの案内役、キューピッド的天使によるキャラメイクだ。
名前だけだった原作とは違い、アバターも変えられるようになっている。
どうやらロマサガと違って細かい個別データ入力は必要ないらしい。
まあ内容的にも容姿以外を区別する必要ないからな……。
操作設定はコンソール展開=ポーズ機能の半リアル設定。
ロマサガとは違いアクション+リアルタイムSLGのため、これが最適と判断した。
「じゃあセーブして……女神として!女神としてフィルモアの地への戦いに
赴くとしましょう……!?」
そこからは、スーファミ版から隔絶した技術の迫力を見せ付けられた。
回転しながら落ちて行くあの場面が、体感フリーフォールとして余すことなく表現されている。
表現してしまったのだ!
「ヒャァァァアアア!!!こんなとこで急に……ンァアアアア!?ヒィェァアアアア!?」
『おちけつwww』『まさかここでwww』『のびちゃんすごい顔してるwww』
『また不意打ちかwww』『光り輝きながらすごい顔で落ちる女神www』
天空から落ちた光の玉が石像に宿り、神の身体となる。
そこでアバター設定による容姿の最適化が行われるのだが……。
「ヴァー……ああ、地上に降りるだけですっごい疲れた……ちょっと休みます……休みますね?」
即座にポーズ機能を使い、ようやく一息ついて神の身体を確認する。
装飾的な白く輝くドレスアーマーに、半ばティアラのような兜。
手足の装備も整えられてフル装備の条件は満たしているが、やや装飾を意識した仕上がりである。
隙間から覗く鎧下は輝く青のドレスに覆われており、それを反射した鎧全体が青白く輝く。
何度斬ってもわずかな瑕疵もない、手に持つ両手大剣とあわせて、
確かにただの女騎士ではなく、人の世界には場違いな戦争の女神か戦乙女といったいでたちだ。
『ふつくしい……』『やはり女神だった』『やはりメガネだった』
『メガネのことのびちゃんって言うのやめろよ』
『んんwwwドレスで鎧とかありえませんぞwww』
「さて、じゃあ行きますか……」
所詮ファーストステージのフィルモア開幕、
ダイブリメイクされたとしてもそれほどの難易度はないだろう。
素振りで大剣の振り味を試しつつ、最初の敵……なんか青いやつを斬り捨てる。
「いけそう」
『ややイキ』とか『神の慢心』とか何か書かれているが、それが実感なのだから仕方ない。
リアルでは振れないような大剣を振り、
飛べないような距離を跳躍してアクションできるのはやはり嬉しい。
スーファミで2Dだったアクションがダイブで立体になっても、
ゲーム性はそれほど変わったわけではなかった。
「基本的にこのゲーム、冷静にパターンを把握すれば攻略できないとこないんですよね」
何か木に浮き出た顔を切り、猿を蹴散らし、敷き詰められた茨を越えた先に、ボスがいた。
ボスはいたが……。パーフェクトでクリア。こいつ見てすぐパターン分かるんで。
『無傷』『無傷かよwww』『これは癒し』『のびる……貴様このゲームやり込んでいるなッ!』
ボス戦が終わり、石像から光の玉が天に昇って……!?
「ウヒェアアアアアアア!?」
天空城への自由上昇?というまれに見る体験である。
『wwwww』『またwww』『知ってたwww』
………………
敵を倒し、ようやく人が住めるようになったこのフィルモアに、人間を送り込む。
ここで、操作が天使に切り替わるわけだが……ダイブ版は、マニュアルとオートを選べるらしい。
マニュアルはスーファミ版と同じだが、オートの場合は勝手に動く分、
天空城で人々の暮らしを見守ることが出来るらしい。
「楽しそう!これはオートで見るっきゃない!」
『然り然り』『見守るって何だよ』『イベント追加とか?』
天使に大まかな指示を出した後、雷で木を燃やし、街の方向を誘導して人々の様子を見る。
→人々の様子を見る
~ 計画のエックス チャレンジャーたち ~
「!?」
『ナニ!?』『何かギリギリなの始まった!?』『計画のエックスwwwww』
難航する橋の開発 魔物の巣に届かない 親方衆の反発
家庭崩壊 神様は頼れない
≪橋の技術。その未知に挑んだ、とある親方の物語……≫
「アウトー!」
『せふせふ』『計画って……あっ(察し)』『勘のいいガキは嫌いだよ』
計画のエックスは、悔しいが面白かった……。
何も知らない天使が、人間の動向を報告に来た。これは……。
≪神様!我々は川に橋を架けられるようになったのです!≫
「ああ、うん……もらっとく」
なんとなく計画のエックスでネタバレのような何かを食らった気分の俺は、
微妙な感覚で橋の技術を回収した。
いつのまにか炎の魔法も捧げられていたので、それも回収しておく。
「さあ、行きましょう」
全ての魔物の巣が封印され、南東の穴に魔物の気配が。ミノタウロスである(前世ネタバレ)。
予知能力のある男が教えてくれました。行かねばなりません。
俺は地上に降りるたびにフリーフォールを体験することになる……なるのは分かっているが!
「ウッ……ハー、ハェー、アクションステージのたびにこれはきつい……きつくない?
いや、スーファミ版は全部回転拡大してたから、
全部やらなきゃいけないことはわかるけど、わかるけど!」
『www』『それなw』『のびる……無茶しやがって……』
『まー言うて神の身体設定だからすぐ回復するでしょ?』
確かに。この神アバターは相当身体能力が高い人のデータを参考に
調整されてるんだろうな、ってのはわかる。
「はー……確かに回復したんで、フィルモアクリアしちゃいましょう!
癒しどころか疲れちゃったけど」
『そうだったw』『のびちゃんは癒されたい』『俺はのびちゃんに癒されてるぞ!』
このミノタウロスの穴(仮名)も、しょせんは前世やり込んだゲームのステージ1だ。
パターンも分かるし、冷静に見極めるセオリーはこのゲームの絶対的鉄則である。
『のびちゃん非ダイブのほうで相当やりこんでるね』
『結構色んなアーカイブに登録されてるからな、これ』
『俺より上手い……』
ちゃんと上ルートを通れば結局パターンで安定だし、
ミス以外ダメージを受ける要素もない。
やり込んだパターンの道中でしっかりとダイブアバターと前世ゲームとの
操作感覚の違いをすりあわせ、万全の状態でボスのミノタウロスと対峙する。
「パターンは……同じかな」
ミノタウロスのホーミング着地を距離をとってかわし、
斧を振り切り青い飛び道具を発射しきった後にミノタウロスに向けてジャンプして、
最低限1回、運がよければ2回切りつける。
『さすのび』『これはわかってますね……』『まさったな……』
危なげもなくミノタウロスを退治。フィルモアに平和が訪れた。
ひとりのプレイヤーの、すなわち俺の、自由上昇?の犠牲と引き換えに……。
フィルモアは平和になったが、予知能力のある男は死んだ。うん、知ってた。
ここで他の土地に行ってください、とまで言えるようになった人間たち……。
「やっぱりニンゲンって……最高やな!」
『ほーらイキりよる』『神気取り』『のびちゃんはのびちゃんやなって』
『神ゲーだからしゃーない』『何?のびちゃんは女神様ではないのか?』
とりあえず今日はここまでにして、配信を終わらせた。
「面白かったけど……次こそは、次こそは癒し系ゲームで癒されなければ!」
何か本末転倒な執着を抱えたまま、俺はダイブ室を後にした。
神様ゲーがとてもやりたいのだがあまりない……人間たまには思い上がらないとな