神谷奈緒に出会って、担当になれて、無事に誕生日を迎えられたことが嬉しい。
本当に誕生日おめでとう奈緒。

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君に出会えた奇跡に感謝。本当におめでとう。




最高の1日を君に。

 

 

誕生日。それは人がこの世に命を授かった日であり、年に一度のお祝い事。その日が来れば誰だって主役になる。

 

そして今日9月16日は俺の担当アイドルの誕生日だ。

 

 

 

「みんなー!今日は来てくれてありがとなー!!」

 

 

 

舞台裏まで響く観客の声。楽しそうにトークする彼女の声につい頬が緩む。

 

 

神谷奈緒BIRTHDAY LIVE 2018

 

 

そのタイトルで誕生日当日に行われたイベントには約7000人のファンが訪れた。物販は全て売り切れ。最初から最高超の盛り上がりを見せていた。

しかし楽しい時間というのは早い。あっという間に終わりに近づく。

 

リハーサルでは次の曲に行くというフリをしたらBGMの後にケーキを入れてお祝いをする。ということしかやっていない。

だがそれはリハーサルだけの演出。ここからは運営側では奈緒だけが知らないことが起こる。

 

 

 

「それじゃあ次の曲に行きたいと思うんだけど‥‥」

 

 

マイク越しの声。それを聞き俺の後ろでスタンバイしていた二人に指示を出す。イタズラな笑みを見せた二人はステージの上に飛び出した。

 

 

 

「ちょっと待ったー!」

 

「次の曲にはいかせないよ!」

 

「え!何!?ええっ!!?」

 

 

 

BGMと共に聞こえる彼女の叫び声に俺は吹き出した。二人のことを認識した観客の歓声がさらに大きくなる。

 

 

 

「さあみんな!一緒に歌ってー!」

 

 

 

バースデーソングを観客と一緒に歌うサプライズゲストの二人。そして俺はカートに乗せたバースデーケーキをステージ上へと運んだ。叫び声と嬉しげな声が混ざっていた。

 

 

 

「____Happy Birthday Day Dear 奈緒~。Happy Birthday Day to you」

 

「「おめでとう奈緒!」」

 

「うぇっ!?あ、ありがとう!」

 

 

 

戸惑いつつも感謝を口にする今日の主役。少しアホっぽい何が起こっているのかわかっていない表情に笑ってしまう。カメラさんもその奈緒をバッチリ抜いていた。あとで見せてもらおう。

 

 

 

「え、ちょっと待て!なんで二人がいるんだ!?」

 

「奈緒ー。スタッフさんがカンペ出してるんだから呼んでみなよー」

 

「カンペとか言っていいんだ‥‥」

 

「えーっと‥‥サプライズゲストの北条加蓮さんと渋谷凛さんです」

 

「どうもみんなー北条加蓮だよー!よろしくねー!」

 

「渋谷凛です。よろしく」

 

 

 

ファンに手を振る二人に歓声を上がる。一方の奈緒はまだ納得していない様子だった。

 

 

 

「いや、なんでここに‥‥?」

 

「サプライズゲストって言ってるでしょー?もっと驚いたら?」

 

「十分驚いたわ!ケーキ入れるところのリハでスタッフさんたちがニヤニヤしてたのはこれかよ!」

 

「サプライズ大成功だね。それじゃあ改めて言おうか」

 

 

 

キョトンとする奈緒。二人は観客に向かって言葉を並べていく。

 

 

 

「みんな、私たちが『せーの!』って言ったら『奈緒、お誕生日おめでとう!』って気持ちを全力で伝えてねー!」

 

「いくよー!せーの!」

 

 

 

ファンや加蓮、凛、俺に裏方にいたスタッフさんやカメラさん。この場にいる奈緒以外の全員が声を揃えてその一言を言う。

心を一つに。7000人以上のお祝いの言葉が奈緒に降りかかる。

奈緒に言葉と歓声の雨、豪雨。マイクを握りしめ一歩踏み出す。

 

 

 

「みんな!!ありがとう!!!」

 

 

 

感極まって今にも泣き出してしまいそうな表情。でもそれ以上に嬉しかったのだろう。満面の笑みでそう言った。

 

 

 

「それじゃあ奈緒。ケーキ食べてみなよ。フォークあるし」

 

「こ、これは!今、日曜の朝にやってる魔法少女のイラストケーキ!?」

 

「そうだよ。喜ぶと思って奈緒のプロデューサーが買って来たんだ」

 

 

 

俺も奈緒の笑顔が見たくて事前に予約しに店に行った。その時店員さんに「お子様のお誕生日ですか?ロウソクはいくつお付けしましょうか?」って聞かれて本当のことを言ってしまうと俺が恥ずかしかったから咄嗟に「えっと‥‥5本お願いします」と言ったのは誰にも言えない秘密だ。

きっと加蓮と凛にバレたらからかわれるし、奈緒にバレたら顔赤くして怒られること間違いないから。でも喜んでくれているみたいだし買って来てよかった。

ケーキを頬張る姿、最高かよ。

 

 

 

「それじゃあ私たちの出番はここまでだから。頑張ってね奈緒」

 

「え、行っちゃうのか?」

 

「イベント自体はまだ終わってないでしょ?お祝いなら後でたっぷりしてあげるし」

 

「まあ、そうだけど‥‥」

 

 

 

何かが腑に落ちない様子の奈緒。それを見て凛が言った。

 

 

 

「加蓮。奈緒はプレゼントが欲しいんじゃない?」

 

「あぁー。なるほどねぇー」

 

 

 

二人の顔が一瞬でイタズラなものになる。奈緒もそれに気付いたみたい。少なからず後退っている。

 

 

 

「奈緒じっとしててよ」

 

「絶対動いちゃダメだからね」

 

「な、なに‥‥~~っ!?」

 

 

 

二人が奈緒の両頬にキスをする。

今日一真っ赤な表情。最大の歓声と黄色い悲鳴が上がった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

♢♢♢

 

 

 

 

 

 

ライブが終了してから約1時間が経過した。イベント会場の外にはまだ余韻に浸っているファンの姿がちらほら見える。彼らの表情はどれも生き生きしていて自分のことのように嬉しくなる。そんな姿を横目に俺は車を裏口に移動させた。

今日のイベントを盛り上げてくれた2人と主役はすでに会場から出ていた。なにやら楽しそうに話している。

だが俺の存在に気が付いた主役は小走りで駆けつけた。

 

 

 

「ごめんなプロデューサーさん。待たせちゃって」

 

「大丈夫だよ。加蓮と凛は帰り大丈夫か?」

 

「私たちもプロデューサーが来るから心配しないで」

 

「それに2人の時間邪魔したら悪いもん。気にしないで」

 

 

 

また奈緒の顔が赤くなった。ほんと分かりやすい。

 

 

 

「こらこら、今日の主役をからかうなよ」

 

「そう言うアンタは嬉しそうに見えるけど?」

 

 

 

返す言葉が見つからない。だって2人きりになれるのは嬉しいし。男ってのは単純で欲に純情なんだよ覚えとけ。

あとニヤニヤすんな!

 

 

 

「と、とにかくだ。ちゃんと担当プロデューサーに家まで送ってもらえよ」

 

「はーい」

 

「楽しんでね」

 

 

 

何をだ。

奈緒を助手席に乗せて俺は車を走らせた。

 

 

 

「そのまま家でいいか?それともどこかで食べてくか?」

 

「そうだなー……今からケーキ持ってプロデューサーさんの家で改めてお祝いってのはどうだ?」

 

「んー。家散らかってるけど?」

 

「気にしないよ。早く行こう」

 

 

 

俺が気にするんだけど、とは言わないでおく。今日の主役は奈緒だ。バースデーガールの願いは聞いてやらねば拗ねてしまう。

 

 

 

「それにしても驚いたよ。まさか凛と加蓮が来るなんてさ」

 

「一応ライブ始まる前から関係者席にいただろ?」

 

「そりゃああたしが招待したんだし……いつからサプライズするって決まってたんだよ」

 

「奈緒が招待出した後。2人の同僚に話通してスケジュール確保してもらった時には。加蓮と凛は心底楽しみにしてたみたいだったぞ」

 

「からかいたかっただけだろそれ。しかも主犯はプロデューサーさんかよ」

 

「2人が言い出したんだと思ってた?」

 

「プロデューサーさんはサプライズとかしないと思ってた」

 

「俺だってサプライズくらいする。担当アイドルの驚いた顔が見たいからな。特に俺の担当アイドルはリアクションが大きくてやりがいがある」

 

「だから常にバラエティ番組の仕事回してくるんだな?」

 

「毎度楽しませてもらってます」

 

 

 

「なんだよそれ!」と怒る彼女に俺は笑った。そんな感じでツッコミ入れるからからかいたくもなるしバラエティの仕事が増えるんだよ。あと俺じゃなく番組からの依頼だから。

本当にこのアイドルは表情がコロコロ変わって飽きないな。

 

 

 

「でもサプライズは嬉しかっただろ?最高の景色、見れたか?」

 

「________最高だった!今までで一番楽しいライブだったよ!!」

 

 

 

MC中、画面越しに見ていた笑顔が数十センチ先にあった。

その笑顔に高鳴る心臓。

ズルいぞそれ。顔見れねぇ。よかった信号待ちで。じゃなきゃ事故ってた。

 

 

 

「どうかしたのかプロデューサーさん。急に目逸らして……」

 

 

 

お前のせいだ。

 

 

 

「…………なあ奈緒。少し寄り道していいか」

 

「いいけど、どこ行くんだよ?」

 

「それは着いてからのお楽しみな」

 

 

 

顔に熱の残る中俺はハンドルを切って車を目的地に走らせた。

首を傾げる奈緒と全力で視線を外す俺。いつもならありえないであろう状況が2人きりのここにはあった。

 

 

 

 

 

 

「奈緒、目閉じて」

 

「へ?なんでだ?」

 

「いいから閉じて」

 

 

 

目的地は俺の家からそう遠くない。場所がバレてしまったら見せたいものも驚きが半減してしまうかもしれない。それは困るのだ。

奈緒は疑問を持ちつつも目を閉じる。

 

 

 

「いいって言うまで開けるなよ」

 

 

 

一応釘を刺して俺は目的地にたどり着いた車から降りた。助手席の扉を開けて奈緒の手に触れる。ビクッと肩が揺れた。かわいい。

 

 

 

「出られるか?俺の手握ってていいから」

 

 

 

奈緒が何も見えていないから俺に手をギュッと握る。かわいい。

 

ある位置まで奈緒を連れて行き、そして合図を出した。驚け、と言う願いを込めて。

 

 

 

「いいぞ。目、開けて」

 

「……っ、わぁー」

 

 

 

奈緒の声に俺は内心ガッツポーズする。木でできた柵に手をかけ景色に釘付けになっていた。

 

俺が奈緒を連れてきたのは家の近くの高台。街が一望できる場所。ただここにたどり着くには入り組んだ道を通らないといけないから人はほとんどいない。俺も休日に散歩してなければ見つけることはなかっただろう。

あの日ここから眺めた景色はすごくキレイだった。だけど今日のはもっとキレイだった。

 

街中の光が輝く。クリスマスのイルミネーションのよう。全ての光が奈緒を祝福しているようにも見えた。奈緒は光の街をずっと眺めている。

 

 

 

「すごいだろここ。どうしても奈緒に見せたくて。気に入った?」

 

「うん!すごくキレイだ。ありがとうプロデューサーさん!ライブの後にこの風景が見られるなんて、今日は永遠に忘れられない1日になりそうだよ!!」

 

「……俺もだ」

 

 

 

奈緒の満面の笑顔がたくさん見れた。それだけで俺は幸せだ。

 

 

 

「改めて。誕生日おめでとう奈緒。奈緒が生まれてきてくれて、アイドルになってくれてよかった。俺奈緒のこと大好きだよ」

 

「…………あ、あたしも、大好きだよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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