六式を身につけようと思い立ってから約12年、ひたすら身体を鍛え続けた結果、俺はある程度なら使いこなせるようになっていた。
特に、
中学生になるまではひたすらトレーニングだったのだが、両親に頼み込んで一人暮らしを始めてからは夜に外出しても何の問題もなかった。
一人暮らしをすることに説得力を持たせるため東京の名門校に通うことになったのだが、どうせ雄英を目指すのでまあいいだろうと割り切った。
その結果、対人の経験を積むことで相手にダメージを負わせすぎない加減やらも覚えていった。
だが、実際のところこれはかなり危険な行為だ。
もちろん、怪我なんかの危険もあるが、一番はそこではない。単純にヒーローの資格やらなんやらを持たずに
つまりバレたらヤバい。雄英を受験することすら出来なくなる可能性があるのだ。
だがまあ、今のところ大丈夫だろう。そこまで凶悪な
流石に事件を起こした後の奴なんかを相手にするとヒーローや警察と鉢合わせる可能性があるからな。
それに覆面もつけているし、中学生にしては高めの身長、低めの声によって相手は俺を大人だと思っているはずだ。
今のところバレたことはないし、バレたとしても犯罪者になるわけでもない。
それに大抵そこらへんのチンピラは大した個性も持っていないのだ。俺自身に危険が及ぶこともなかなかないだろう。
だからそこらへんは大丈夫だ。問題は、最近になって気づいたことなのだが、
ここ最近、以前に倒したチンピラとまた遭遇することが多いのだ。散々こらしめたと思ったのだが、再び悪事に手を染める輩が一定数いるという事実に驚く。
ニュースでも
死刑を訴える遺族なんかも多いという。なかなか世知辛い話だ。日本では
実際、
アメリカなんかではヒーローによる
うーん、俺がどうこうできるわけじゃないけどなあ、少々甘すぎる気もするんだよな。たしかに日本は他の国と比べれば犯罪率は低いが再犯率は高めなのだ。
時折、ヒーローが酷く無力に思える。ヒーローは
もちろん、災害救助なんかもヒーローの仕事なのだが、もっと大事なことがあるんじゃないかと思えて仕方ない。
……よくない考えだなあ。
さて、今日も深夜の街を徘徊しようか。
そろそろ受験が近づいてきたこともあって俺は深夜のパトロールの数を減らしていた。
ぶっちゃけそこまでしなくても中学までの内容なんて余裕なのだが念には念を入れ勉強はしておこうと思う。筆記で落ちるなんてシャレにならないからな。
……にしても、人通りが少ないな。
現在、放課後。俺は家に帰る途中なのだが普段は多い人通りが今は少ない。というのも警察署から脱走した
今回で逮捕されたのは二回目なのだがどうやら懲りずに逃げ出したそうだ。まったく、クズはどこまでいってもクズということなのだろうか。
今日は久しぶりにパトロールをしよう。もしかしたら例の
夜になると暗めの服に着替え外にでる。しばらく歩いてから路地裏へと足を運んだ。大抵の
そうやって歩き始めてから約一時間、今日は何も起きなさそうだと少し気を緩めたとき、女性の悲鳴のような声がかろうじて聞こえた。
「……これは」
そんなに大きな声ではなかった上に遠い。建物の上に登りなんとか聞こえてきた方角に向けて走っていると、追いかけられている女性とそれを追う人影を見つけた。
急いで覆面を被り人影の前に降り立つ。女性には先に逃げるよう告げ相手の顔を見ると、そこにはテレビで連日報道されている例の脱走した
「……あぁ?んだよ、ヒーローか?せっかくお楽しみ中だったっていうのによぉ……」
目の前の男が下卑た笑みを顔に浮かべこちらを見てくる。気持ちわりぃ。……たしか個性は単純な身体強化系とのことだったな。さっさと終わらせるか。
「おい、だんまりか?つーかお前、ヒーローっぽくねえなあ、その見た目。どっちかっつーと
「黙れ。お前にはもう一度捕まってもらう。ペラペラ喋ってる余裕はないぞ」
「あ?なんだてめ……」
「
隙だらけの
「ぐ、ぅええぇぇ……!おぇっ」
モロにくらった男は崩れ落ち、気色の悪い声を出す。さて、こんなもんか。
ちなみに、
まあ、さっさと警察に突き出そう。そう思い意識を失わせようとした瞬間、蹲っていた
体勢が整っていない
「ぐぅっ、くそっ!ぶっ殺してやる……!」
「よくこの状況でそんなことが言えるな。もうじきお前は刑務所の中だ。殺せないさ」
「……くひっ、ひひ、ひひひひひひ」
すると、突然
「たしかに今はそうかもなあ。でもよぉ、ムショを出たら真っ先にお前を殺しに行くぜ。何年後かは知らねえが、必ずな。お前の大切な人間だって殺してやる……!どれだけ時間がかかろうとなぁ…………」
……なんだ、こいつは…!背筋にぞっとしたものが走る。こいつは、ダメだ。この社会に、いてはいけない存在だ。
こいつは一度逮捕され、それでも刑期を終えた後に再び人を殺している。それで捕まったのに逃げ出し、そしてまた今日人を襲っていた。
こいつは、必ずまた誰かを殺す。俺に辿り着けなくとも、誰かを。
「ぐ、ぅ、ああああああああああああ!!!」
俺は、大きく腕を振りかぶり、人差し指を立てる。
これは、指を硬化させ銃のような速さで突く危険な技だ。だから今までは人に向けて使わなかった。
だが……だが!!
「お前は、ここで消す……!
俺はこちらを笑いながら見る
後日、例の脱走した
頭を銃のようなもので撃ち抜かれていたらしいが、弾丸などは見つかっていないらしい。
目撃者の証言などから、ここ最近出没しているヒーローを名乗る黒ずくめの男による犯行だとされている。
ネットなどでは『ヒーロー殺し』ならぬ『
……これが、俺が、俺だけができることだ。
俺がなりたいのは職業としての『ヒーロー』ではない。現代の、富や名声のために動くのではなく。
正義を執行し、悪を滅する、俺は……!
「サイファーポールNo.9……!」
たとえ犯罪者と罵られようと、俺はやる。理不尽な
これが、俺の『ヒーロー』の道だ。
スパイダーマンやキャプテン・アメリカなんかも意外と敵は殺してますよね。CP9も海賊は殺したりするのでそういった過激すぎないステイン的なダークヒーローがいてもいいかなと。