六式使いの自称ヒーロー   作:ライトハウス

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戦闘描写が苦手。


受かれ入試

 

 

「ようやくこの日が来たか……」

 

俺は今、あの雄英高校の校門前に立っていた。

 

前世では漫画やアニメで見てきた風景だ。なんというか感慨深いものを感じる。

 

周りは俺と同じように入試を受けにきた中学生で溢れていた。さすが雄英高校、受験者の数も半端じゃない。これが倍率300倍(200倍だったか?)となる所以(ゆえん)か。

 

こんだけ居るというのにヒーロー科に入ることができるのは僅か40人のみというのだから狭き門だ。誰もがヒーローを目指しここにやってきている。

 

……そう考えるとアレだな。世間的には(ヴィラン)扱いされている俺がこの学校に入るのは中々マズい気がするが、まあいいだろう。俺は間違ったことをしているとは思っていないし第二の人生だ。自分の意志を貫いていこう。

 

 

 

 

 

————そう、俺は人を殺したことがある。

 

と言っても、俺が殺すのは人の道を外れたクズ。殺人などの凶悪な犯罪を犯した(ヴィラン)のみだ。

 

初めて(ヴィラン)を殺したあの夜以来も、俺は何度か凶悪な(ヴィラン)()()していた。

 

東京という場所はとにかく(ヴィラン)が多い。個性社会となってからは犯罪率も急速に増えている。やはり都会の方が治安は悪いのだ。その中でもチンピラ風情なら殺す必要はないが、反省もせず赦されない行為に及ぶ輩は粛清対象だ。

 

いつも黒い覆面、そしてこの活動を始めてからは体格がわかりづらいよう身につけている黒いマントなどから特徴が伝わり、関東圏で出没するためヒーローや警察には(ヴィラン)として目を付けられてしまっている。

 

ニュースなどでも俺の話題を見るため最近は活動を抑えていた。俺の行いが世間一般的には悪とされていることは自覚している。自らの正義だけを過信するのは危険だ。ヒーローや警察とも敵対はしたくないしな。

 

だが、ネットなどでは俺を『真のヒーロー』だとする声も増えてきている。そういった議論をするテレビ番組なども見かけるし、俺が粛清した(ヴィラン)によって家族を殺されたような人たちが俺をかなり支持しているのも耳にする。

 

『ヒーロー殺し』ステインから取ったのだろう。『ヴィラン殺し』キラ、なんて呼ばれているのを見たことある。俺は極稀に『サイファーポールNo.9』と名乗っていたのだがキラの方が語感がいいし活動に合っているし定着しているしで俺の()()()()()()(ヴィラン)ネームはキラになりそうだった。まあ、俺を支持している人達がつけた名前だ。受け取っておこう。

 

別に支持や栄誉を得たくてやっているわけではないが、それでも感謝の声があれば力になることには変わりない。俺の道を再確認する助けにもなる。

 

理不尽に親しい者を失うのは辛いことだろう。ましてやその犯人は今ものうのうと生きているとなれば。

 

だからこそ、俺がやる。誰もやらないのなら、誰も出来ないのなら。

 

それが俺の目指す英雄(ヒーロー)の道だ。

 

 

 

 

 

とはいえ、実力が伴わなければどうにもならないし、職業としてのヒーローの知識や経験なんかも大事だろう。と言うわけで雄英高校を受験するという目標は変えずに日々を送ってきたのだ。

 

別に原作キャラに会いたいなんて不純なことは思っていない。当然。もちろん。絶対に。

 

あ、峰田見つけた。原作キャラだ……!

 

やばい、少し浮き足立っている。落ち着こう。落ちる可能性はかなり低いとはいえ絶対ではない。落ち着いていかなければ。

 

その後、入試の説明を受ける際も教師であるプレゼント・マイクや大声で質問をする飯田くんを見たせいでテンションが上がってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

筆記は余裕だった。いくら名門とはいえ二度目の高校受験である。中学の内容やらは簡単だった。

 

問題はこれから始まる実技試験だ。

 

おそらくこの場に無個性のやつは俺しかいないだろう。誰もが自らの個性を使ってこの試験を受ける。

 

その中で合格するには中途半端な気持ちじゃあ駄目だ。目を閉じ極限まで集中力を上げ身体から力を抜く。小さく深呼吸をしてから目を開いた。

 

そろそろ合図がくる。デクくんや飯田くん、麗日さんがいることから試験が突然始まることはわかっている。転生特典としてここらへんは有効に利用させてもらおう。こっからは————本気だ。

 

(ソル)

 

合図が聞こえた瞬間、一気に加速する。受験生の集団が一瞬で背後に遠ざかっていく中、さっそく見つけた仮想(ヴィラン)——雄英が用意したロボットだ——の頭部に蹴りを食らわせる。すると機械の破壊される音とともに頭部が吹っ飛んでいった。どうやら力を入れすぎたらしい。柄にもなく少し緊張しているか。

 

月歩(ゲッポウ)

 

着地したらすぐさまジャンプし、そのまま空中を走りながら昇っていく。これは脚力だけで空気を蹴り空を歩くという六式の技だ。この技は恐らく修得に最も時間がかかっていて単純な力だけでなくコツも必要な難しい技だ。

 

だが、その分かなり便利である。道を無視できる上に状況を俯瞰できるのだ。上から見ればどこに仮想(ヴィラン)がいるのかすぐにわかる。

 

仮想(ヴィラン)が集まっているエリアを見つけるとそこに降下、嵐脚(ランキャク)という超高速で蹴りを放つことで鎌風を呼び起こす技で一度に数体の仮想(ヴィラン)を行動不能にした。

 

嵐脚(ランキャク)は極めれば石や壁を切断することもできるのだが、俺はまだそこまではできない。ヒビを入れるか砕くのが精一杯だ。

 

だがこの試験では切断までできなくとも大丈夫だ。実際に仮想(ヴィラン)はへこみ、破損している。

 

周りを見渡すと他の何体かで俺を囲んできている。全方位から攻撃をしかけてくるつもりらしい。

 

紙絵(カミエ)

 

その攻撃の全てを俺はひらひらと避けていく。

 

この技は相手の攻撃の風圧に身を任せ回避する技だ。自分で考えて避けるのではなく、身体から完全に力を抜き風に任せて避ける。その姿はまるで紙のように見えることがこの名前の由来となっている。

 

すると、離れていた仮想(ヴィラン)が集まってきて更に数が増える。完全に俺を囲み同時に腕を叩きつけてきた。

 

鉄塊(テッカイ)

 

それを俺は両腕をクロスさせ頭上で全て受け止める。この技は身体を硬化させる防御技でその硬度は鉄に匹敵するほどになるという。この技の特訓はどうしても攻撃を受けることが必要となるため一人暮らしを初めてからようやく開始できた。最初は身体中が傷だらけになるため親には見せられないのだ。

 

そのためまだ三年ほどしか鉄塊(テッカイ)は特訓できていない。鉄塊拳法(テッカイけんぽう)という鉄塊(テッカイ)をしながら動く技はまだできないのだ。

 

この技は呼吸なども重要となるため少し息を整える。まだ仮想(ヴィラン)が動きださない内に足元を嵐脚(ランキャク)で攻撃、バランスを崩したところに拳を叩き込む。

 

一度に何体もの仮想(ヴィラン)が吹っ飛んでいった。その後も(ソル)指銃(シガン)の連続使用により周りの仮想(ヴィラン)を全て行動不能にする。

 

この辺りはあらかた倒したな……。移動するか。

 

再び月歩(ゲッポウ)によって空を駆けていき、仮想(ヴィラン)がいる場所を探していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

仮想(ヴィラン)の数もかなり減ってきて、試験もそろそろ大詰めといった頃、遂に()()が出てきた。

 

「うわっ……!生で見るとデカイな…………」

 

建物をなぎ倒し登場する超大型仮想(ヴィラン)。その大きさはそこらへんの建物なんかより更に大きい。

 

周りの受験生も慌てて逃げ出していた。確かに、あれはかなりの攻撃力を持った個性じゃなければ倒せないだろう。それに超大型仮想(ヴィラン)は0ポイント。倒しても何の得にもならない。

 

——だが、だからと言って。

 

いや、だからこそ。

 

英雄(ヒーロー)なら逃げちゃ駄目だろ。

 

俺は逃げ遅れた受験生にぶつかりそうな崩れた瓦礫なんかを破壊し怪我をしている者を安全な場所へと運んでいった。

 

たしかに、俺はこの試験に救助活動P(レスキューポイント)があることを知っている。でも、そうじゃない。打算じゃなく、やりたいからやるんだ。

 

ただ、それだけだ。

 

そう————今超大型仮想(ヴィラン)に向かって飛び出した、あの少年のように。

 

 

SMAASH(スマアァァッシュ)!!!」

 

 

上空から聞こえたそんな掛け声と共に、超大型仮想(ヴィラン)は大きく姿勢を崩す。

 

……とんでもない威力だな。顔バッキバキに破壊されてるぞ。

 

あれが————ワン・フォー・オールか。

 

おっと、見ている場合じゃないな。

 

「なあ、大丈夫か?」

 

「……え?あ、うん……」

 

呆けている麗日さんを起こして少し離れた場所に座らせる。その後月歩(ゲッポウ)である程度の高さまで走ると落ちてくる緑谷出久をそのままキャッチした。

 

「…………え?」

 

「足、折れてんだろ。降ろしてやるからじっとしとけ」

 

着地してからなるべくそっとデクくんを座らせる。

 

「その怪我じゃあ動くのは危険だ。そろそろ試験も終わるし安静にしてた方がいい」

 

「で、でもっ……!それじゃあポイントが!まだ、0ポイントなんだ……ポイントを取って、合格しないと……!僕は…………っ」

 

「もうここらへんには仮想(ヴィラン)もいない。どのみちまともに戦えないだろ。いいからじっとしとけ」

 

「…………っ!」

 

俺の言葉に納得したのか、涙を流し俯く。するとプレゼント・マイクから試験終了とのアナウンスが入った。

 

……悔しいだろうが今は我慢してもらうしかない。彼の勇気と行動は雄英教師陣に評価されポイントを貰えるはずだ。麗日さんも彼を見て心配そうな表情をしている。恐らく雄英に自分のポイントを分けるよう直談判しに行くことで彼女もポイントをもらえるはずだ。

 

それに、俺も今68ポイント取っている。例え救助活動P(レスキューポイント)が0だったとしても合格は確実にできる数だ。色々あったがなんとかなったようだ。

 

俺は受験生の治療のためやってきたリカバリーガールにデクくんのことを任せると試験会場を立ち去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後日、雄英高校から届け物があった。おそらく合否の結果が送られてきたのだろう。

 

それを開けると投影された映像にオールマイトが映し出される。ウキウキでサプライズだとかびっくりしたかだとか言っているがオールマイトが雄英の教師となることは知っていたため何か申し訳ない気持ちになった。

 

筆記は好成績。実技の結果は敵P(ヴィランポイント)68、救助活動P(レスキューポイント)25の合計93ポイント。入試一位で合格とのことだった。

 

「ふー…………」

 

気が抜けて体に入っていた力も緩む。柄にもなく緊張していたようだがなんとか第一関門クリアだ。原作のキャラとも絡めるし。

 

ここからだ。ここから俺は更に理想の英雄(ヒーロー)に近づいてみせる。

 

 

 

 

ここが、この世界が————俺のヒーローアカデミアだ。

 

 

 

 




ヒロイン未定。麗日さん以外の誰かです。

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