ゲームの世界に転生のライトノベルの世界に転生   作:ビョン

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一年生 二月第二週目  

「今週で全てが決まるぞ。」

 

小田が朝から真剣な顔をして語りかけてくる。

 

「は?まだここに来て一月位だが何が決まるんだ?」

 

「お前気づかねえのかよ。来週にはバレンタインがあるんだぞ。」

 

「あぁ、そうか。」

 

スマホのカレンダーをちらりと見ると確かに来週にバレンタインがある。

 

「俺には関係ねえかな。毎年個人では貰ってなかったし。今回も無理だろ。」

 

「馬鹿お前。社会人の時のお前はそうかもしれないけど、今お前は学生なんだぞ!!超重要行事なんだぞ!!」

 

「いや、だから転校から一月で義理は貰えても本命は無理なんじゃねえの?希望を持つのはやめよう。」

 

「いいか、俺の事好きな奴何かまだいねえだろうけどな!!だからこそ義理が欲しい!!ちくしょう!!ヒロイン達がどの位の好感度で主人公にチョコくれるのかは分かるのに、俺らにくれるか分からないから不安でしょうがねえんだよ!!」

 

こいつのバレンタインチョコへの渇望は何なんだよ。

だが、こいつの予想に反して本命を貰えるかもしれない。

先週の事を思い出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私……小田の事が好きになっちゃったかも……」

 

真っ赤な顔を手で覆い被せセリカはへにゃりと座る。

 

「え?」

 

「一昨日の夜からずっとあいつの事が頭から離れないの!昨日もずっと頭の中にいて、明日あいつと会えると思ったら夜も寝れないの!」

 

「………」

 

「ど、どうしよう………」

 

セリカが赤い顔をこちらに向けてくる。

その瞬間、チャイムが空気も読まず鳴った。

 

「と、とりあえず昼休み相談に乗るよ。教室に戻ろうぜ。」

 

「うん。」

 

 

 

 

昼休み――

 

「サスサッスサース」

 

「原~飯食おうぜ~♪」

 

いつものように小田と相模がアホ面下げて俺の席に集まってくる。

 

「ごめん今日はちょっと用事があるから先に二人で食べておいてくれ。」

 

「おう!……何だ?アサヒといちゃつくのか?」

 

「まだ言ってるのかよ!じゃあな!」

 

「サスス~」

 

「言っちゃったよ……。さて、何言ってるのか分からないお前と昼飯食うのか……。って、ノートに何書いてるんだよ。」

 

『今思ったら俺筆談すればいいんじゃね?』

 

「それだ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

屋上前の踊り場。

 

まあ学園物で内緒の話をするのなら、ここか校舎裏と決まっている。

しかし流石に、校舎裏……つまり外は寒いので今回は室内のここをチョイスした。

 

「半日過ごしてみてどうだった?」

 

「駄目……やっぱり顔見れない!」

 

「そっかぁ~。」

 

そういうと俺は昼飯のパンを口に入れた。

 

もっと恋ばなを色々聞きたい……。

何故ここまでがっついているのか。それはズバリ心のときめきが戻ってくるのを感じているからだ。

転生前。高校は工業系に行っており周りに異性はおらず、その後就職しても女気など少しもなくそういう話をする友達もおらず、恋愛という言葉は中学に全て置いてきたような人間だった。

それがどうだろう。ここには仲のいい友人もいる。そしてその友人に恋をしている子が目の前にいる。

もう俺はこの一月でとっくに青春脳になっている。だから今俺は聞いてるこっちが恥ずかしくなるような恋ばなを欲しているのです。

 

「ちなみにだが相模もあの時口出してたが何で小田なんだ?」

 

我ながら最低な質問だ。だがそれ以上に胸のドキドキを優先した。

 

セリカはもじもじしながら、しかし顔は少し曇りながら言葉をたどたどしく発していった。

 

「相模の時も反論してくれて嬉しかった………。でもね、小田の両親にもう会えないって言ってた時の姿を見ると何か凄く胸が痛くなって。抱き締めたくなって……。」

 

なるほど。あの時の小田は両親の話をした時に、なんというか寂しさが存分に出ていた。

前に「恋愛の必勝法は母性と同情を引き出すこと」とか聞いたことがある。それが本当なのか妄想なのかは知らないが、この世界的には本当に必勝法なのだろう。

この説を取ると、セリカは「自分の為に戦ってくれる傷だらけのナイト」に惚れたのだ。そう考えると確かに納得がいく。

 

「私最低だよね……。二人が私の為に怒ってくれてる間、二人を比べて恋愛して……。」

 

セリカはさらに悲しそうに唇を噛みしめ細い声を出してきた。

 

「いいんじゃねえの?」

 

「……え?」

 

「恋愛なんてそんな物だろ。場所がどうあれどういう状況であれ、何かきっかけがあれば案外すぐ惚れちまうのさ。別に普通の事だろ。」

 

ま、普通かどうか知らないけど。

 

「それより、顔赤くしながらでも普通に話してやらないと今度は嫌われちゃうぞ?」

 

「……。わかった!そうだよね!!」

 

自己嫌悪感が俺の適当な名言によって完全に消えたのだろう。ミラクルだ。

吹っ切れたように真っ赤な笑顔を見せ、セリカは立ち上がった。

 

「私小田の事が大好き!誰にも取られたくない!だから今から、小田と話してくるね!原、ありがとうね!」

 

それだけをきっぱりというと、セリカは急いで階段を降りていった。

 

頑張れよ

 

さてと………俺はこの胸のドキドキと真っ赤な顔を戻してから戻るか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時は戻って現在。

 

「だけど、お前先週の金曜セリカとずっと話してたじゃん。もしかしたらチョコ貰えるんじゃないの?」

 

あのあとセリカがずっと小田に話しかけ、小田はひたすら筆談をしていた。

俺が結構なストレートを入れてみると、小田は少し下を向き考えるような素振りをしてから頭を上げた。

 

「やっぱ?」

 

お?こいつラノベ主人公の癖して鈍感じゃない……?

 

「いやーこないだのアレから、俺の事嫌いだったのが友達と思ってくれるようになってるよな!一歩前進だな!」

 

鈍感というか、思考が一歩も二歩も遅れてるだけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おはよーっす。」

 

「師匠!おはようございます!」

 

「はい、おはよう。」

 

いつも通りの時間に登校、いつも通りの出迎え、そしていつも通りの席に着席する。

 

「よ!小田、声出るか?」

 

「おー相模。俺の美声が戻って来たぜ。」

 

「うわあ、汚ねえ声。」

 

「何を!?」

 

ははは、とアホ二人が笑いあっている。

 

そんな小田に向かってセリカが真っ直ぐ歩いてきた。小田の前に立ち止まると真っ赤な頬を掻きながらぎこちなく話しかけてきた。

 

「お、おはよ。小田、声はもう大丈夫なの?」

 

「あぁ、迷惑かけたな。おかげでバッチリだ!」

 

「そう……良かった。こ、これでも少しは参拝してたんだからね!」

 

「ありがとう。」

 

小田が柔らかく笑うとセリカは更に顔が赤くなっていく。

 

 

「おいあれ、」「謹慎解けたんだ」

 

廊下が妙に騒がしい。その騒がしさはある人物が連れて来てるらしい。そしてその人物は、教室まで騒がしさを連れてくると姿を表した。

 

「おはようございます。」

 

「花園…。」

 

小田が名前を呟き立ち上がる。

 

花園は、ツカツカツカっと俺らの前……というより小田と相模の前まで歩いてくると綺麗に体を90度曲げた。

 

「先日は申し訳ございませんでした。」

 

「……は?」

呆気に取られた小田が思わず声を出す。

 

「先日はお二人の事やお二人の両親を侮辱してしまい申し訳ございませんでした。謹慎の間自分のした行為の最低さに気付きました。この度は大変申し訳ございませんでした。」

 

「別にいいよ。でも、俺らよりも言うべき奴がいるだろ。」

 

呆気に取られてる小田に代わり相模が花園に告げた。

 

「ありがとうございます。そうですわね。」

 

そういうと次は小田の後ろに隠れていたセリカに近づく。

 

「先日は貴女の努力を愚弄するような発言をしてしまい…申し訳……ありませんでした……。」

 

遂に花園は泣き出してしまった。しかしその涙を隠すように必死に謝罪している。

 

「えっと……いいよ。だからもう泣かないで。」

 

そういうとセリカはポケットからハンカチを差し出した。

 

「ありがとうございます…ありがとうございます……」

 

花園はハンカチを受け取り涙を拭うがそれよりも多くの涙が出てくる。

 

「謝って貰ったことだし友情の握手だな!」

 

相模は唐突に言うと花園と握手した。

 

「ほら、小田も。」

 

「お、おう。」

 

我に戻った小田も花園と握手する。

 

「関係ないけど原とアサヒも。」

 

「俺も!?」

 

「僕の握力で手を潰さないか心配だぜえ……。」

 

とりあえず俺とアサヒも花園と握手する。

ちなみにアサヒと握手しても花園の手は潰れなかった。

 

「じゃあ最後にセリカだな。」

 

「うん。」

 

そういうとセリカと花園は握手をした。

 

「色々あったけど、これからは友達だね!」

 

セリカはそういうと、歯を見せニカッと笑った。

 

「甲斐さん………甲斐さん!!!」

 

花園はガバッとセリカに抱きつく。

 

「うわ!?……んふふ、もう泣かないの。」

 

セリカは花園を抱き締め背中をぽんぽんと叩く。

 

「いいぞ、尊いぞ!!」

 

「ヒロイン×ヒロインにここまでの可能性があるとは……恐るべし。」

 

「お前ら少しは自重ってものを覚えろよ。」

 

やれやれ、俺はわざとらしく肩を竦めた。

 

 

 

 

 

 

 

二日後―――

 

「セリカ様………あぁセリカ様…………愛しておりますわ。」

 

「ちょっ……ちょっと……花園さん。休み時間の度に抱き締められると動けないし小田の所に行けない…。」

 

「あぁん。私の事は下の名前のレイとお呼びしてくださいよセリカ様ぁ。」

 

「あ…いいところに、ちょっと助けて原!」

 

「……な?いつ惚れるか分からないし、誰に惚れるのかも分からない。そして積極的に愛情表現するのが恋愛だ。……二人で愛し合えよ?」

 

「待って原……ちょっと助けてよお~!」

 

 

 

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