「なあ、ゴールデンウィーク開けて初めての登校だけどどう思う?」
「やっぱり生徒も今までより個性豊かになってるな。」
あの日、小田が女神から「ラブコメ漫画の世界との融合」を語られた次の日から世界がかなり変わった。
ゴールデンウィーク中、俺と小田が街をひたすら探索し人間観察をするという日と、部活の奴等と遊ぶという日を交互に過ごしていた。
そして俺と小田が見てきた中で気付いたことがある。
恐らくこのラブコメ漫画、同じ作者の他の漫画と世界観を共有しているらしい。
と、いうのも「あ、こいつら主人公だな。」という特有のオーラを放つやつを同じ日に別々の場所で八人は見てきた。
流石に主人公八人は多い。
よって我々はこの仮説を推し進めるようにする。
というか、どっちにしろもう俺らの中ではこの世界を「先が読めない普通の世界」と認識することにした。
だから、主人公がどうとかヒロインがどうとかどうでもよく、今を生きようと決めたのだ。
つまり、どんな奴が来ても俺は動じないし驚かない。
それが当たり前なんだから。
そんなことを感じていた二日後の昼休み。
「原!小田!アヤノ!依頼だ!ちょっとついて来てくれ!!」
相模とアサヒと依頼人の男子生徒に呼ばれるがままついていくとE組の教室。
依頼人が指差す方向には巨体の強面金髪男子生徒が席に座り何か作業をしている。
「あいつは?」
「古河リュウ、中学の時一人で学校中のヤンキーをぼこぼこにした奴だよ。」
相模の問いかけに依頼人が声を震わせながら答える。
「で?あいつがどうした?」
「何か刃物を持ってるんだよ……。あの刃物でこの教室が血で染まる前に何か俺らが悪いことしたのか聞いてくれよ……」
知らねえよ!てめえらで聞けよ!…とは言えない。これが仕事だから。
「つっても現状なにもしてないからな……」
「そうだな……。私があいつを縛り上げるというのはどうだ?」
「俺の話聞いてた?なにもしてねえんだよ!」
アヤノの案に相模が突っ込む。
「にしても何やってるんだあいつ?」
「あいつの腕の筋肉が邪魔でよく見えねえな……。しょうがない。アサヒ出撃。」
「ラジャー!」
俺の号令にアサヒは敬礼をしてから古河の方へ向かって行く。
俺の予想だと恐らくあの古河という生徒はヤンキー何かじゃなく………。
「ねえ、何やってるの?」
「………え?」
「うわぁ!この猫の顔のぬいぐるみ可愛い!君が作ったの!?」
「お、おう……。」
「すごいね!他何か作れるの?あ、ごめんね。僕八王子アサヒ!君は?」
「古河リュウ……。こういうのが趣味なんだ……。」
「やっぱりな。」
「?どういうことだよ?」
「ラブコメ漫画あるあるその1。異常に怯えられてる伝説の強面ヤンキーは大体ヤンキー何かじゃなく裁縫とか料理とかが好きな心優しき青年だ。」
ラブコメ漫画は好きだからよく読んでいた。
そしてそのラブコメ漫画にかなりの頻度で出てくるこんなヤンキー。
大体はぼっち主人公の唯一の友達とかだな。
「なるほどなぁ。確かにそんな漫画よく見たわ。」
「だろ?そういうのには、底抜けに明るいチャラ男か全く怯えないヒロインか世話を焼かせる主人公か……とりあえず怯えない奴が必要なんだよ。」
「そう考えると明るくて怯えないで世話を焼きたくなる、犬みたいなアサヒが一番の配役なんだ。」
「そうだな。ちなみにあそこに座ってる黒髪ロングの美人いるだろ。あいつがヒロインだな。」
「そこまで分かるって何かキモいな。」
「それが数ヵ月前の俺のお前への感想と同じだよ。」
何となくすげえ腹が立ったので小田の腕を殴っておいた。
「だから、あいつをこうやって縛り上げて……」
「ちょっと待って浮いてる!あとこれ大丈夫な紐!?何か細くて食い込んでくるけど…痛たたた!?」
「大丈夫だ。この程度なら骨は切れない。」
「肉は裂けるじゃねえか!?」
アヤノの手によって天井から吊るされてる相模を間違えて写メ取ってしまったので、間違えて部活のライングループに投稿しておいた俺と小田は、古河とアサヒの元へと歩き出した。