ゲームの世界に転生のライトノベルの世界に転生   作:ビョン

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二年生 五月第三週目 日曜日裏

「例えばさ、俺がみんなの思ってるような人じゃないとするじゃん?」

 

「うん。」

 

「本当の俺はもっと卑屈で、気持ち悪い考え方しててそれでもって生きてきた世界もみんなとは違う。そんな俺の一面を突然セリカちゃんが知ったらやっぱり嫌いになる?」

 

「なにその質問?」

 

セリカちゃんが半目で聞いてくる。

 

「例えばの話だよ。意識調査ってやつ?」

 

「ふふ、下らない。」

 

クスクスと笑ったセリカちゃんはちょっと考えると、微笑みながら口を開いた。

 

「でも確かにそんな人は嫌だな~。」

 

「やっぱ、そうなのか……。」

 

「でも、それって自分が思ってるだけだよね?結局は周りから見た評価だと思うよ。もしかしたら周りから見たら卑屈じゃないし気持ち悪くもないし、同じ場所で生きてるのかもしれないよ?」

 

これがギャルゲヒロインの言葉か。

なるほどやっぱりいいこと言うなぁ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

なんか恋したとかで俺に相談しに来たあいつを突っぱねやって来ましたセリカちゃんとデート。

なんかあいつテンション低かったけど、概ねなんか自己嫌悪とかしてんだろ。

あいつと出会ってから数ヶ月だが、大体あいつが考える事はわかる……つもりだ。

 

それなら俺がなんか閃いて名言残しても、あいつの中で「また俺に迷惑かけた」とかで自己嫌悪するだろう。

どこまでも卑屈で自分に自信がない奴だ。

 

 

 

 

 

「あそこでゾンビ相手に日本刀で無双するところカッコ良かったね!」

 

「まさかだったね!」

 

ランチを終え映画鑑賞も終え、テンションが上がりまくり感想を言い合う俺とセリカちゃんは、この間のあの公園に行こうと商業施設を後にしようとしていた。

 

「あれ?小田とセリカじゃん!」

数メートル先から聞きなれた声とブンブン手を降っている男が見える。

 

「ちょっと兄ちゃん今ダメだって!」

その横で必死に止めようとしているヒロインも見える。

 

残念だが二人の時間は終わりのようだ。

 

「お前らも遊んでたの?奇遇だな!」

 

「まあな。」

 

相模は間抜けに奇遇とか言ってくる。

横でそこそこ不満げにリカちゃんも立っている。

 

「そういえば奇遇といえば後こいつもいるぞ。」

 

俺がある電話番号に電話すると、後ろの物陰から音楽が流れる。

 

「なぜばれましたの!?」

 

「これで五人かな?」

 

「無視!?」

 

絶叫する花園を放っておくと更に後ろからまた聞きなれた声が複数聞こえた。

 

 

「あれ?みんなー!」

 

「何で全員集まってんの?」

 

「む、私だけ呼ばれてないのか?」

 

アサヒ、桐谷ちゃん、アヤノちゃんが偶然合流する。

偶然というかゲーム的には全員集まるフラグが立っていたのか。

 

 

「とりあえず近くの顔見知りの喫茶店に行こうか。」

相模の呼び掛けに皆がついていく。

……桐谷ちゃんもいるのか……これはヤバイな……。

 

 

 

 

喫茶店に着いてからは全ての物事が一瞬だった。

人の気も知らずに、仲間外れを良しとせずに原を呼ぶ相模。走ってくる原。

妙に吹っ切れたような原。ほぼ公開告白をする原。鼻血をぶっぱなして倒れる原。

勘弁してくれよ……。俺は頭を抱えた。

 

 

 

しょうがないから原の腕を肩に回し家まで送ることにした。

原も意識朦朧としながらも千鳥足で歩く。

部屋に着きベッドに寝転ぶと原が小さい声をあげる。

 

「どうだったかな、俺?」

 

「……明日から黒歴史だと思うよ?」

 

「へへ、だな。」

こいつもずいぶんこの世界に染め上がったのか素直な奴になったもんだ。

 

 

 

 

 

原の部屋から出ると心配そうに桐谷ちゃんと、その隣にセリカちゃんが立っていた。

 

「どうだった?」

 

「単純に熱収まったばかりで走ったり鼻血出したりしたからぶっ倒れただけだよ。今は普通そうだ。」

 

「そっか良かった。」

桐谷ちゃんとセリカちゃんが胸を撫で下ろす。

 

実際俺もあいつも医学の知識はないけど、この世界に来てから漠然と「大丈夫だな」感があるから医者にいかない。

 

 

「ま、今日は桐谷ちゃんあいつに会わない方がいいかも。血の海になるよ。」

 

「う、うん。」

 

「それに、あいつの気持ちさっきの言葉、出来たら咀嚼しておいてよ。親友の俺からの頼み。」

 

顔を真っ赤にした桐谷ちゃんは小走りで帰っていった。

 

「原、凄かったね。」

 

「な。」

 

なんとなく俺とセリカちゃんはマンションの前にあるベンチに腰かけた。

 

「私さ、原の事もあんたの事も何ヵ月かしか一緒にいないから全部を知らないけどさ、大切な友達だと思ってるんだ。」

 

「嬉しいねぇ。」

 

「さっきの質問、カナデのことで原が悩んでいたんでしょ?」

 

「まあ、さっきのあれ見たら流石にバレるか。」

 

セリカちゃんがコクりと頷く。

俺はあいつみたいに一気に気持ちが変わったり、距離を近づけようとは出来ない。

もしかしたら、元の世界だと嫌われるかもしない。

でもこの世界では、徐々に距離を近づけるのもありなんだ。

 

「俺さ、今は出来ないけどいつか必ずあいつよりも凄い告白したいんだ。聞いてくれるかい?」

 

「……うん。聞かせてくれるの待ってるね。」

 

 

半分告白をキザな言葉で包んだ。

カナデちゃんも満更でも無さそうだ。

よっしゃこれ決まった!

俺はカナデちゃんに見えないようにガッツポーズをした。

 


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