上田ノブシゲには中学の時から嫌な噂が付きまとっていた。
俗に言うクラスのマドンナに告白したが号泣。
マドンナがあらかじめ集めていたクラスの上位カーストの人間達がその場を目撃。噂に尾ひれが付きまくり流れ、彼は周りの人間から白い目で見られていた。
その噂は高校に上がってもずっと広まったままだった。
……そんなことはなかった。
彼はあまりのショックに周りが全員自分の事を白い目で見ている……そんな負の殻に閉じ籠りも自分は皆に嫌われていると思い込んでいた。
俺が朝クラスに入ると一瞬ピリッとなる。
もうみんな俺なんか気にせずにいればいいのに、結局は常に石を投げる相手を気にしているのである。
もしかしたらクラスに何人か気にしてないやつもいるのかもしれない。
……いや、やめておこう。
期待するだけ無駄だ。
そんなやつはいないと考えていた方が楽だ。
席に着くなりやることもないので一時間目の授業の準備をもうしておく。
机の上に教科書とノートと筆箱を……。
しまった。筆箱を前に落としてしまった。
足を伸ばして自分の椅子のした辺りまで引っ張ってくれば取りやすい。
さて、足を伸ばして……。
「……落としたぞ。」
俺の前の席の厳つい顔をした古河が筆箱を拾ってくれたようだ。
「あ、あ…りっす。」
あまりに咄嗟の事で、喉もできておらずまともにありがとうも言えなかった。
「…あぁ。」
古河は不器用に返事をするとそのまま、机に広げていた雑誌を持ち女子生徒の方へ歩いていった。
これが今日最初で最後の学校内での会話だった。
翌日
登校し自分の席に座ると、古河が話しかけてきた。
「……喉大丈夫か?」
喉?どういう事だ?花粉症ももう終わったし風邪が流行っている様子もない。
俺が首を捻っていると古河が口を開いた。
「……昨日声が出てなかったから喉が痛いんじゃないのか?のど飴を持ってきたからお裾分けだ。」
そういってあめ玉一つ俺に差し出した。
「あ、あぁ。俺は単純に話さないだけだから声が上手く出なかっただけだ。」
「……ほう。とりあえずそれやる。」
俺は一礼し飴を口に放ると、口から鼻へミントが通った。
終業の鐘がなった。
俺はいつものように通学鞄の中に教科書や筆箱を入れると話し相手もいないので、さっさと帰ろうとした。
「おい、上田。」
前の席の古河が俺を呼び止める。
「な、何?」
「……ちょっと手伝って欲しいことがあるんだがいいか?」
一言二言喋っただけで友達面か?
というまで腐ってはいないが、そこまで仲良くない奴に着いていく義理もない。
それにこいつ、噂では変な奴らとつるんでいると聞いたことがある。
俺の例もあるしはっきり言って眉唾物だがどうしようか。
「……そんな時間は取らない。相模が人手を欲しがってるんだ頼む。」
「さ、相模?」
知らない奴の名前を当たり前のように出されても困る。
「……あぁすまない。生徒会業務補佐活動部の部長から人手を貸してくれと頼まれたんだ。俺と一緒に来てくれないか?」
なるほど生徒会業務補佐活動部……なにする部活なのかわからないけど、名前的に生徒会が絡んでるから学校の公的な活動なんだろう。
まあ、行く義理もないけど断る理由もない。
このあと何かする用事もないし飴の恩もある。
「い、いいけどなにするの?」
「……知らん。」
おいおい大丈夫かよ………。