「野球部の練習手伝いと部室の掃除を依頼してきた一年生の神田くん?」
「来ていただきありがとうございます!野球部一年の神田です!よろしくお願いします!」
春も既に通りすぎ夏を思わせる温度に襲われた今日この頃。高井戸先輩の依頼と同時に舞い込んできた依頼のため俺、アサヒ、カナデ、セリカ、花園の五人はグラウンドに来ていた。
「でも練習ったって、俺らみたいな素人じゃなくて普通に野球部でやればいいんじゃないの?」
「……その練習する部員がいないんです。部員は俺含めて四人なんです。」
「え?野球部なのに?」
カナデが思わず声をあげる。
「そうなんです……。」
野球部と言えば部活の中でも特に人気のある部活だ。
しかも、この学校は生徒数も多い。
確かに部活も多いがいくらなんでも野球部が四人だけとは思えない。
となると、恐らくこれは「部員が少ない廃部寸前の野球部を再建していく。」というストーリーの漫画の舞台なんだろう。
それなら部員を増やそうとするのはこの野球部が頑張ればいいだけで、俺らは依頼通り練習の手伝いをすればいい。
「まあ現状わかったよ。で、他三人は?」
「三人とも欠席です。先輩が喧嘩で停学、マネージャーが彼氏さんと遊びに行ってて同級生が風邪です。」
「これはひどいわね……」
セリカが苦笑いする。
「お願いします!練習手伝って下さい!」
神田くんは坊主頭を下げ大声で叫んだ。
まあ、これは神田くんが悪いのではなく単純に運が悪いだけだ。
「わかったよ。」
ろくに野球何かやったことない俺とアサヒと花園は神田くんの練習手伝いを。
カナデとセリカは、マネージャーサボりにより長らく放置されているらしい部室の片付けに向かった。
「部室の片付けは任せてよ。」
「すまないなカナデ。何か重いものとか持つときは危ないから呼んでくれよ?」
「心配しすぎ。……でもありがとう。」
「セリカ様!何故私は練習なのですか!?」
「あんた掃除したら、逆に散らばっていくじゃない!」
「酷い!」
「それに……少し運動した方がいいと思うけど?」
「……何故私の腹部を見るんですの!?わかりましたわ!ナイスボディーになって戻ってきますわ!」
「花園さんも師匠のように屈強な体を持ちたいのかな!?」
二人が部室に行くのを見送り俺らはとりあえず軽いランニングとストレッチをすませた。
「ぜーぜー。もう限界ですの……。」
「普段どんだけ運動してないの……?」
今にも死にそうな花園に軽く引いてるアサヒ。
「じゃあ次はキャッチボールお願いします!!」
そんな二人をスルーしてグローブをはめながら、これまた大声で提案してくる神田くん。
しかし、今までまともにキャッチボールなんかしてきてない俺に上手くボールが投げれるのだろうか?
そんな不安が一瞬過った。
「じゃあすいません!まずボール投げてみて貰っていいですかー!?」
神田くんがそこそこ離れた位置から俺に呼びかける。
えぇい、考えても仕方ない。
俺はとりあえず頭の中にある野球選手の投球フォームを真似してボールを投げてみた。
スパーン!!
気持ちいい音が響き渡る。
俺の投げたボールは神田くんの頭より少し上に上がってしまったらしくグローブが着いている手を伸ばしている。
「原さん以前野球とかやってました?」
小走りでこちらに駆け寄ってきた神田くんは常識的な声量で質問してきた。
「え?どうゆうこと?」
「凄くキレがあるボールだったから……」
「師匠野球の才能もあったんですね!?」
「あなた野球もやってたんですの?」
あぁ……
これまた褒められなれてない俺の天敵。
今日一日ずっと上げられまくるのか………。