ゲームの世界に転生のライトノベルの世界に転生   作:ビョン

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二年生 七月第二週目 その3

「皆さんなんで俺らが来てるのかわかってるんですか!?」

 

さっき外に出ていった部長も取っ捕まえ部員六人全員を部室の中心に集めた。

色々やられた小田はちょっとキレてるし、アヤノはやはり一歩後ろに下がっている。

 

 

「ノウハレベルオチテル!オチテル!」

 

「そこふざけない!」

 

小田に怒られた男子生徒がしゅんと小さくなる。

流石にこれ以上キレたままだと話も進まないので一度落ち着かせよう。

 

「まぁまぁ。元々この人達成績は優秀だったんだから何とかなるって。それにこのドリルがある。それよりまだ名前も知らないんだからお互いに自己紹介しとこうよ。俺は2年の原です。」

 

「お前がそういうなら……俺は2年副部長の小田です。」

 

「私は2年伊賀。よろしく。」

 

「じゃあそちらも自己紹介お願いします。」

 

「俺が3年部長の総司令だ。」

 

「は?」

 

「私は3年副部長の准将。」

 

「え?」

 

「俺が2年の大佐。」

 

「俺も2年の少佐だ。」

 

「僕は1年の少尉。」

 

「そして、私が1年の伍長であります!」

 

「ちょっと待てえ!!」

 

小田が再度ぶちギレる。

 

「あんたら自己紹介ぐらいまともにやれやぁ!!なめてんのか!!」

 

「手は出すな!マジで!」

 

「暴力はいけない……。」

 

「てめえからぶん殴ってやろうかぁ!」

 

さっきから、ちょいちょい小田の神経を逆撫でする事ばかり言っている少佐に小田は手を伸ばしている。

 

「落ち着け!マジで!!アヤノ!」

 

「承知!」

 

「いってえええ!!糸食い込んでるから!!」

 

いつぞや相模にやった細い糸でがんじがらめにする術をしてもらい小田を沈静化させ、改めてプラモ部の方を見ると既に自分等の世界に入り込み談義していた。

 

「あの人アヤノっていうかアヤメさんなんじゃ……。」

 

「零丸使いそう。」

 

「さようなら。愛無き人よ。」

 

 

 

「さっきからあいつらは私をジロジロ見て何を話してるんだ?」

 

「あれは……何て説明しようかな……。お前に似たアニメのキャラを知っている?」

 

「ほー。人をアニメキャラで例えるのか。普通に腹立つ。誰から縛ればいい?」

 

「頼むからやめてくれ。」

 

「俺のもそろそろほどいてくれ。」

 

 

 

 

 

 

 

「というわけで、とりあえずこの生徒会長が作ったドリルやって再テストに備えてくださいよ。」

 

とりあえず全員座らせてから一人一人にドリルを手渡す。

小田とアヤノは後ろに下がったので、俺の独壇場となった。

 

「皆さん何故か今回のテストだけ点数が低かったんです。今年受験を控えてる方もいるので真面目にやってくださいよ。」

 

 

 

その言葉が響いてくれたのか6人共それぞれドリルを開きペンを走らせている。

何だ、ドリルやらせるの楽勝じゃん。

 

俺は5分ぐらい勉強している姿を確認したのち、大きな棚に飾られているプラモデルの数々を観賞していた。

 

やはりプラモデルやシリーズへの愛情は本物らしく、素晴らしい作品が並んでいる。

 

白く光輝き金に輝く剣を上に掲げる角笛の魂に、これまた輝く舞い降りる剣、泥臭さとオープニングを忠実に再現されている輝き撃ちに、赤いあいつが初代に腹蹴りするあの名シーンまで多種多様だ。

 

このシリーズ好きとしては、もっとじっくり見ていたくなるがここは我慢。

 

小田の方へ向かい確認したいことをこっそりと耳打ちする。

「ヒロインってあの伍長?」

 

「そうだよ。名前は台場マチ。だけど伍長とか名乗って無かったし、ものづくりとか設計が好きな活発な娘だと思ってたけど……。活発じゃないよねあれ?」

 

確かに、立ち振舞いやしゃべり方等を見ると、活発……というより陰っぽい方だ。

 

ということは、やはり何かのマンガとプラモデル部が融合した結果あんな感じになってしまったわけだ。

完璧に合体事故だ。

なるほどなるほど。

俺が納得をしていると、

 

パキッ……パキッ……

 

 

明らかに勉強じゃない音を聴き、勉強机の方を見ると俺らが見てないのを良いことに部員全員が膝の間にプラモの箱を挟みビルドしていっている。

 

そんなこいつらの姿を見て、急にこの活動がアホらしく感じた。

 

 

 

 

 

 

 

「原、お前成績いいよな?何か勉強に向き合う方法とかある?」

 

「うーん。もういいんじゃない?勉強しないなんて自分の勝手だし、これ再テスト落ちても俺ら責任に問われないんだろ?もう諦めようぜ。時間の無駄。」

 

あのあと、部員からプラモデルを取り上げ何度かドリルをやらせようとするが、全くやる気がないのを俺は感じ取っていた。

ノートの余白に設計図を書く。英語辞典開いたと思ったら、機体の名前を考えるのに開いただけ……とか。

流石に俺も呆れて、わざと部員に聞こえる声で小田と話をする。

 

 

「でも依頼だから……。」

 

「あのな……ここまでこいつ等のミスのケツ拭く手伝いしてやってんのに、本人ら遊ぼうとばかりしてるんならやる必要無いだろう。同い年にはもう社会に出て自分で考えて働いてる奴らもいるんだぞ。何甘えた事やってんだって話だろ?」

 

「そうだけど……。」

 

「アニメキャラの真似をするのも結構。部活をやるのも結構。だけど、一番大切な勉強をやらずそれで他人に迷惑かけて自分等は遊ぶなんて、そんな恥知らずな連中と関わりたくないのよ。自分を客観視出来て無いんだな。オタクって自分のコミュニティに引きこもった時だけ強くなるから!自分と別の意見を持つ奴らを理解しようともせず、コミュニケーション取らねえから人の気持ちなんて考えることも出来ずただ悪口を吐き続け、それで自分は強いって思い込む奴らだからさ!」

 

綺麗にブーメランが頭に刺さり血まみれ状態だがまだ続ける。

 

「そんな奴らだから俺らの事ゲームのNPC位にしか思わないでこっちの気持ちも分かろうともしないで、迷惑かけてても気付かないか『ネタだから!』で済ませようとしてるんだよ!根本カッコつけだからな!」

 

「もうやめてくれよ!」

 

部長が声を荒げた。

 

「君達が必死に俺らの事やってるのにふざけて悪かったよ!でも……」

 

「でもじゃねえだろ!言い訳してんじゃねえよ!それ聞いたところで俺らが無駄に消費した…」

 

「なあ原。」

 

「今話してんだ。……俺らがあんたらの為に無駄に消費した時間とかが戻ってこねえだろ!大体……」

 

「ねぇってば…」

 

「ちょっとさっきからうるせえなぁ!?何だよアヤノ!?」

 

「隣の空教室から何か音聞こえないか?大丈夫か?」

 

「は?」

 

熱くなっていた頭を一度冷やし黙りこみ耳を済ます。

そうすると確かに空き教室の筈の隣の部屋からゴウンゴウン重低音が響いている。

 

「ホントだ。アヤノちゃんの言う通り何か聞こえる。」

 

「何の音だ?」

 

ふと下を見ると、さっき部長が誕生日パーティーの招待状の換わりに破いて捨てた紙が目に入る。

 

『トライ・ファイターズ』

 

「まさか……」

 

 

 

 

 

 

 

「あれ?君達どうしたの?」

 

隣の空教室のドアを開けると、薄暗い部屋で青く光る机のような機械の前で高井戸先輩がパソコンから顔をあげきょとんとした顔でこちらを見ている。

 

「これなんですか?」

 

「唐突だね。これはプラモデルを特殊な粉で実際に動かして戦わせる事ができる機械さ。AR投影機と同時開発で作るのに大忙しだったねー。ちなみに現在調整中さ。」

 

「あ、こないだ忙しそうだったのこれ作ってたんですか。」

 

 

「それを作って貰ってからバトルが面白すぎて頭から離れなかったんだ……。」

 

俺らを追ってきた部長が先程の言い訳の続きを並べた。

 

「高井戸先輩。これに自爆装置って付けれます?」

 

「嘘だろ!?」

 

「壊すつもりかい!?」

 

 

 

「あいつらが次の再テスト赤点取ったら爆破します。」

 

「なるほど、再テストに彼らはなってるのか……。了解した。でもなんだか……私が必死に作った機械がボタン一つで散り散りになるなんて……何だかとても興奮するな……。」

 

恍惚とした表情でくねくね体をくねらせる高井戸先輩。

やっぱりこの人頭おかしいよ…。

 

 

「おら!これ爆破されたくなかったらドリルやって再テスト対策しやがれ!!」

 

慌ててドリルのある部室にダッシュで戻っていく部員達を見送る。

 

「これでなんとかやってはくれるだろ?」

 

「流石原だ。考えることがぶっ飛んでる。」

 

「全くだな。」

 

「「「はははははは!」」」

 

 

 

「ところで原君。火薬の量はどのぐらいにする?」

 

「え?いやあんなのはったりですよ。先輩が作った傑作を爆破するなんてもったいないですよ。」

 

「え?爆破しないのか……。そうか………。」

 

「……なんでそんな残念そうなの?」

 

一週間後。

再テストの結果受験者全員無事補習は回避され、我が学校生徒全員等しく同じ時間夏休みが貰えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「失礼します。」

 

「原君。今回の仕事ご苦労だったね。」

 

「いえいえ、生徒会長のドリルあればこそですよ。ところで、私は何故呼ばれたのですか?」

 

「…単刀直入に言おう。君は何者だい?」


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