ゲームの世界に転生のライトノベルの世界に転生   作:ビョン

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二年生 七月第二週目 その4

「はい?」

 

夏休みもあと数日に迫ったある日。

俺は一人生徒会室に呼ばれていた。

そして、生徒会長から意味のわからない質問を食らっていた。

 

「もう一度言おうか。君は何者だい?」

 

「何者というか。俺は俺です。」

 

「そう言うのか。」

 

先程生徒会メンバーの女の子が注いでくれたコーヒーを飲む。

 

「は?」

 

「今この部屋にいるのは君と私だけだ。そしてこの部屋は防音性も高い。そして私も口は硬い。」

 

「いくらそんなこと言われても、俺は俺ですとしか言いようがないです。」

 

「私はね、神に愛されているんだよ。」

 

「は?」

 

おいおい。

こいつ頭おかしいだろ。

この学園を飲み込むだけじゃ飽き足らず、教祖にでもなるつもりか?

 

「君は気づいているだろう?私のカリスマ性の高さに。」

 

「それがどうしたんですか?自慢ですか?」

 

「私はね生まれつき皆に愛され、私を愛していない者など見たことがない。」

 

「でも、うちの部活作った理由は生徒会の敵対勢力との橋を作るためなんだろ?そんな勢力いる時点で、あんたを好いてる奴しかいないなんて嘘になるね。」

 

「敵対勢力自体が嘘だよ。私はお気に入りの子には何でも与えたくなっちゃうんだ。そして私はお気に入りの子は手元に置いておきたいんだ。だから、適当に理由を作って手元に置けてなおかつ、生徒会の補佐をする部活の部長という優良な物件を用意してあげたのさ。」

 

「それを本人が望まなくても?」 

 

「そんなわけないさ。私から物を貰えたら誰もが全力で喜ぶ。そうなっているのさ。」

 

人は過ぎ足るものを持つと傲慢になるらしい。

こんなに我が儘で、恩着せがましい奴を崇拝するしかないこの世界の住人には同情する。

 

「だが、君は私に反論したよね?それに仕事を放棄しようともした。」

 

「あのですね、納得できないから反論したし仕事もあんたが出した条件の範囲で放棄しようとしただろ?」

 

「それ自体が珍しいんだよ。原君。君が当たり前のようにやった反論も、放棄も普通の人ならやらないのさ。それを君はやった。これは、私にとって人生初なんだ。言うことを聞かない君を取って食ったりしない。ただ、何者なのか知りたくてね。」

 

目を輝かせながら会長が席にのめり出す。

俺は別の世界から来たから、こいつのカリスマ性の効力が少ないようだな。

 

だがそれを実際に言っても信じてもらえるのだろうか?

隠している必要もないし、こんなふざけた話もうしたくない。

適当な嘘をついてもしょうがないし、本当の事を言って押しきろう。そう思った。

 

「俺はこの世界とは別の世界から来たんです。それに年も十ほど上です。」

 

「私はね、君と冗談を言い合うためにこの部屋に呼んだんじゃないよ………と言いたいがやはりそうだったか。」

 

「どういう事だ?」

 

「君の経歴を失礼ながら少し見させて貰ったがどうにも空白でね。そんな経歴不詳な事を疑問にも思わない周りの態度を見て分かったよ。」

 

俺の経歴が分かるような資料なんてあるのだろうか?

俺自体そんなものをあまり見たことがない。

 

「ずいぶんと察しもいいし、理解もしてくれるんですね。」

 

「当たり前さ。そこまで真っ直ぐした目で言われたら信じるしかないさ。」

 

「そうですか。じゃあ他言禁止で、もう帰りますね。」

 

「あぁ、悪かったね。それに歳も上なのだろう?このような場では普通の口調で構わないよ。」

 

「そうか、分かったよ。」

 

「それに……胸に隠している録音機だが聞かせたところで誰も信じないから無駄だよ。」

 

「そうかい?じゃあほらよ。」

 

一応の保険で胸ポケットに隠していた録音機を会長へ投げ渡す。

それを受けとるなり会長は、中のSDカードだけを抜き取り再度録音機を投げ渡してきた。

 

「それごと燃やした方が手っ取り早いんじゃないのか?」

 

「もったいない事は極力しない趣味でね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おう!原お疲れ~。生徒会長に呼ばれてどした?」

 

部室で待ってくれてた小田が俺を出迎えてくれる。

まあここで黙っていてもしょうがない。事情を知っているし今回の事を相談しておこう。

 

「生徒会長に転生者だってバレた。」

 

「………なぜ?」

 

人って驚くとここまで静かに質問できるのか……

 

「俺の経歴が見つからなかったらしい。」

 

「……それだったら俺も目をつけられるはずだろ?」

 

「生徒会長に歯向かったから目をつけられてたな。」

 

小田がしばらく顎に指をかけ考え、口を開いた。

 

「あれ?何で俺生徒会長の言うことを聞いてたんだろう?」

 

「それが生徒会長の力なんだと。カリスマ性とかで今までこの世界の人間全員から愛されてきたんだって自慢してきたよ。俺やお前も洗脳されかけたけど、この世界の人間じゃないから逃げられたんだろ?」

 

「自慢ね……」

 

小田は悲しそうな顔をして俯く。

どうやら、生徒会長は何か更に裏がある設定のようだ。

 

「どうした?」

 

「……いや何にもないよ。」

 

小田が精一杯の作り笑いをする。

その笑い顔にはしっかりと「これ以上は聞くな」と書いてるように感じた。

 

 

「そうかい。ただ、何かあったら絶対に言えよ?」

 

「わかってるよ。」

 

吐き捨てるようにそういうと小田は帰ろうぜと俺に言ってきた。

果たしてあの会長の裏をあと数ヶ月で全部知ることなんてあるのだろうか?

……元がゲームの世界何だからわかるんだろうな。

 

 


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