夏休み突入!
なんて素晴らしい響きなのだろうか。
上を向くと青い空が広がりミンミンゼミも騒がしく鳴いている。
そんな夏休み初日に俺と小田はいつもの時間にいつもの場所に集合していた。
「おっす!今日はいい天気だね!!」
「えぇ……なにお前そのテンション。」
小田が俺の挨拶を聞くなりドン引きしている。
「普通に挨拶しただけだろ?アァアン!?」
「はしゃぎすぎだろ……。」
「まあな。遊びで泊まりなんて久々だし。夏休みなんてさらに久々だし。テンションデラ上がりまくりよお!!」
「お、おう。とりあえず集合場所の花園の家まで行こうか。」
小田が冷静にそう告げると歩き出す。
どうも今日の俺と小田のテンションは合わないようだ。
「にしても部活で合宿名目の旅行、しかも宿を花園が使ってない別荘使わせてくれるなんて夢のような話だな。」
「だな。……にしても原ちょっと荷物多くないか?」
小田が俺の荷物をちらりと見る。
「そうか?4泊5日もあるんだぞ?着替えと水着と充電器とかはこのスーツケースの中に」
「うんうん。背中に色々抱えてるのは??」
「まずアコースティックギターがこのギターケースの中に。そして、この長いケースには釣竿が数本入ってる。あと肩から下げてるトートバッグの中には、サバイバル本と海辺で釣れる魚の図鑑魚のレシピ本等の資料や釣りの仕掛けにでかい紙に魚拓用の墨、雨の日も遊べるようにトランプ3箱に花札ドンジャラ、あとサバイバルナイフも入ってるな。」
ふさがっていない、トートバッグがかかってる方の手を指折り数え2、3回手をグーパーする。
「……百歩譲ってギターと釣竿と仕掛けと魚の図鑑とレシピ本位はまだわかるわ。それ以外突っ込み所多いわ。」
「は?どこがだよ?」
「まず何釣りするのはいいけど、何ガッツリ魚拓取ろうとしてんの?お前釣りの経験は?」
「一度も無いけど?」
「『無いけど?』じゃねえんだよ。人の別荘で初心者が魚拓取ろうとするとか普通に迷惑だろ!」
「あ、筆忘れてたわ。こりゃ失敬。」
「誰もガッカリしてねえから!あと、雨の日用で選ぶのがトランプ3箱と花札とドンジャラってクセがあるわ。まずなんでトランプ3箱!?」
「切ったり曲げたり炙ったりするから………。」
「まさかのマジック用!?」
「本気で覚えるわ。」
「しかもマジックの種も仕掛けもこれからかよ!完璧に一人で籠る気満々じゃねえか!……あと花札とドンジャラは!?」
「これはみんなでやるよう。」
「これはやるんかい!ならやっぱりクセが強いわ。」
「役ちゃんと覚えれるかな?」
「やっぱり覚えるのこれからかよ!ちゃんと分かる奴持ってこいよ!あと最後にサバイバル本とナイフ!」
「遭難するかもしれない。」
「するかぁ!!プライベートビーチ付きの別荘だわ!」
「そんな文句言うけどお前だって背中に背負ってるリュックからガチャガチャ音聞こえてるぞ!」
あまりにも言われてカチンと来た俺は、先程から歩く旅に中から金属が擦れたような音が鳴っている妙に膨らんでいる小田のバックを指差す。
すると、小田は恥ずかしそうに口を尖らせる。
「これは……あの……雨の日用のプラモデルとエアブラシセットだよ……。」
「お前だって雨の日籠る気満々じゃねえか!つうか雨の日に塗装しようとしてんじゃねえ!つうかお前見てなかったんじゃないのかよ!」
「……こないだのプラモデル部の影響で見始めて……ハマった。」
「『ハマった』じゃねえよ!よくそんなもの背負って人の持ち物バカに出来たな!!」
「うるせえ!明らかにお前の方がおかしいだろ!」
俺らが歩きながらいがみ合っていると、後ろからキラキラと輝いたものが近づいてくる。
「おはようお二人さん!」
「二人ともおはよ~」
「おう、相模とリカちゃんか。おはよー。……なにその荷物?」
二人ともこれまたスーツケースとは別に大きな荷物を持っていたので小田が気になったらしい。
「私?これ全部雨の日と夜用の本だよ?」
背中に背負ったリュックには、そこそこパンパンに荷物がつまっていた。
「まあこいつの見ると本なんて量以外気にならないね。そういうキャラだし。ちなみにどんな本?」
「キャラ?よくわからないけど持ってきた本は……ハリーポッター全巻にダレンシャン全巻にデルトラクエスト全巻。」
「小学校の図書室かな?本が全部ハードカバーだし!巻数地味に多いな!」
「あとサバイバルナイフ。」
「何で!?その本の組み合わせにナイフって技の練習用!?……で、相模は?」
「俺のなつやすみと言ったらこれ!昆虫採集セットと虫網と昆虫図鑑だ!」
「あーその感じわかるわ。俺もほらこれ。」
「お前のそれ釣竿かよ!テンション上がるな!!」
俺が同志と肩を組んでいると小田はあることに気づいたようだ。
「あれ?お前こっちのカバンには何が入ってんの?」
確かに虫網が刺さっている鞄とは別にもう一つカバンを持っている。
「え?ノートパソコンとエロゲ」
「てめえ何なつやすみに不純なもの持ってきてんだよ殺すぞ!!!!!」
「原ステイ!ステイ!」
「いや俺はエロゲをシナリオ目的で………」
「うっせばーか!!エロゲシナリオ目的でやってるからって高尚ぶってんじゃねえぞ!!」
「原落ち着けって!」
「あとサバイバルナイフ」
「何でてめえまでサバイバルナイフ持ってきてんだよ!!ぶち殺すぞ!!」
「小田落ち着け落ち着け」
「ほら!もうレイちゃんの家着いたよ!!」
小田の腕を捕まえながらリカちゃんが指差す方を見ると既に皆が各自大きな荷物を持ち待っていた。
俺の、俺達の忘れられないなつやすみが始まろうとしていた。