「俺リムジンなんて初めて乗ったよ………。」
静かな車内でぽつりと相模が呟いた。
これ街中で絶対曲がれないだろ、ミニチュアダックスか!
と、ツッコミたくなる程長ーい黒いリムジンの心地いいシートに身を預けて窓から流れていく景色をただボーッと眺めていた。
「この時期に東名が渋滞してないなんて……」
ぼそりとつぶやく。
家や学校の回りしか出掛けたことが無く、遠出なんてこの世界に来て初めてだ。
俺らが住んでいる町は東京神奈川埼玉辺りのどこかをモチーフにした場所らしい。
全くどこかわからない景色と地名が過ぎて行くといつの間にか東名に乗っていた。
ここからは見慣れた景色……だと思ったがやはり少しずつ違う。
渋滞もない。外に見えていたホームセンターやパチンコ屋も違う店名になっていたりそもそも無かったりしている。
今までのように全く違う景色を見るより数段、異世界感が出ている気がする。
そんなことを考えていると、ポンポンと横に座っていたカナデに肩を叩かれた。
「どうした?」
「今夜あのアコギ貸して。」
「あぁ、いいけど……。あれお前何持ってきたの?」
「エレキギターとかかな?夜の海はアコギの方が風情あるでしょ?」
「なるほどな。」
俺の関心の声にカナデは少し笑うと耳にイヤホンを付けて音楽を聞き始めた。
多分弾きたい曲なのだろう。
リラックスしてきたのか、談笑をしている女子チームと真面目な顔してエロゲ攻略をしている男子チームに別れている。
俺は朝早く起きてテンションが上がりきっていたせいか、何だか眠くなってきたのでうつらうつらとしていた。
あぁ、もう寝る……。
その瞬間、肩に何かがポスンと当たった事を感じたがそのまま眠りに落ちって行った。
「おい、起きろ。着いたぞ。」
小田に肩を揺さぶられ飛び起きる。
「へ!?ごめんなさい!!」
「何が?寝ぼけてないで荷物持って降りろよ。」
既に皆が下車している。
俺も慌てて自分の荷物を持ち忘れ物落とし物がないか確認して車を降りる。
改めて回りを見回すと凄い場所に来たのを実感する。
広い砂浜に海、青々とした山。そして広い別荘。
このほとんどが私有地だと聞く。
流石花園財閥の別荘。なんて素晴らしい場所なんだ。
「おいおい。いつまでボーッとしてんだよ。」
「あぁ、ごめんごめん。完璧に寝てたわ。」
「だろうな。」
笑いをこらえたように肘で口を隠して相模が言う。
「え?なに?」
「アサヒ。写真見せてやれ。」
アサヒがいそいそと自分のスマホを操作しこちらに画面を見せてきた。
その画面には俺とカナデがお互いに寄っ掛かり頭をお互いの方へ傾け眠っている姿だった。
「仲いいんですね。」
顔がみるみる熱くなるのを感じる。
「え?嘘これマジで?お前ら何か小細工しただろ?」
「してねえよ。」
小田のめんどくさそうな返答に焦り、カナデの方を見る。
……あれ?顔赤らめて目背けてるし、あいつも回りの女子からヒューヒュー言われてるし。
俺も恥ずかしくなって思わず顔を背ける。
顔を上げると目線の先には大きな山がある。
その麓……ここから50m位離れた所に何か白くてそして何か悲しく感じるものが、山道へ入っていくのを見た。
「どうした?」
「あそこ何か白いのいないか?」
「……何もいねえよ。」
小田、またか。
最近こいつのこの微妙そうな顔をよく見る。
夏休み、自然、白い……シルエットもよく思い出してみる。
その結果………
「幽霊っ子か?しかも目の前で成仏するタイプの。」
「流石に分かるよな。」
「そりゃ白くてデカイ帽子とワンピースなんて、日常生活には合わない服装だからな。」