ゲームの世界に転生のライトノベルの世界に転生   作:ビョン

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夏休み合宿2日目 その4

「なんというか……その……話のスケールがでか過ぎて現実味がない。」

 

夕方。

全員が帰ってきたので、カナデも含め一度リビングに集めて昨日あったこと、今日あったこと、俺と小田は異世界から来たという事を打ち上げた。

但し、この世界はゲームの世界とは伝えない。

俺から言わせれば「人から『お前は○○キャラ』って自分を矢印で語られてるの嫌だろ?」

いらない事まで言う必要はない。俺らが伝えなきゃいけないことは、俺らが異世界から来てるという事だ。

それにこの世界は既にゲームのようにいかない。

 

「大体幽霊とか異世界とか唐突に言われても飲み込めねえよ。」

 

「だよなぁ。」

 

「でも、お前らがそんなくだらない嘘付くとは思えない。よって俺は信じる様にする。」

 

他のメンバーが下を向き俺らの言ったことを必死に理解しようとする中、相模は一人だけ理解を示した。

 

「そうか……。ありがとう。」

 

「ただ信じた上で一発ぶん殴らせろ。」

 

そう言うと俺の左頬に相模の右こぶしがめり込む。

思わず後ろに飛ばされ尻餅をつく。

 

「お前らが今まで黙っていた気持ちもわかる。こんなの理解されると思わないもんな。でも、その黙っていた結果仲間を泣かせた。俺の勝手かも知れないけど、お前らがどうすれば良かったか答えも出せないけど、これで一発だ。気にくわないなら俺に一発殴ってくれ。」

 

俺は殴る気なんて全く起きなかった。

 

 

 

 

 

夜。

小田とセリカの作ってくれた晩飯静かな空気の中食べ終わり、一同が何となくリビングに残り思い思いに時間を過ごしていた。

 

 

「師匠。」

 

「どうしたアサヒ。」

 

「質問なんですけど、師匠達が来た異世界ってこの世界とはどんな違いがあるんですか?」

 

「そうだなぁ。例えば、日本人なら髪の色は黒か茶色が多いかな。この世界みたいにみんな色が違ってて色鮮やかじゃないよ。」

 

「でも、師匠…。」

 

「あぁ、今は髪の毛真っ白だが本当は黒髪だよ。」

 

アサヒはありえないと言いたげな顔をした。

 

「それに、金持ちのお嬢様は俺らが通えるような学校には来ないし、くノ一も観光地にはいるけど魔法のような術なんて使えない。何でも作れる天才少女なんていないし、学校の全権を握る生徒会もない。学生は平坦な学生時代を過ごし平坦な大人になり、劇的な死に方もしない。そんな全てがこの世界に比べると平坦な世界が俺の故郷だ。」

 

「じゃあ……元の師匠は?」

 

「俺なんてお前らみたいな大切な友達もいない学生時代を送って平坦な大人になってやりがいもない仕事をして一人で死ぬまで暇潰しをしようとしてた奴が急にこの世界に来ただけだな。小田は?」

 

俺のフリに今まで静観をしていた小田が椅子に腰掛けながら自分の半生を振り返った。

 

「ま、俺も原と大体同じだよ。俺は友達何人かいたけど普通に大きな事件もなく小中高と上がって、最後は登校中に車に轢かれそうな子供助けて、俺が轢かれて、気付いたらこの世界に来てたね。」

 

「あ、そうなんだ。」

 

「師匠も知らなかったんですか?」

 

そういえばこいつの元の世界の死因詳しく知らなかったな。

登校中死んだからこいつ一人で登校したくないのか。

 

「じゃあ二人は一度死んだ身……なのか?」

 

「状況から察するに俺は多分死んだね。原はよくわかってないらしいけど。」

 

アヤノの質問に小田が上手く女神辺りの話を消して返事をした。

 

「ま、その子供は薄れ行く意識の中で無事を確認できてたし、無駄じゃないでしょ!」

 

「流石、ただで死なない男ですわね。」

 

「うるせえ。」

 

花園の茶々に小田が突っ込むと空気が明るくなった。

 

みんなが異世界についてどんな世界か想像を膨らませながら雑談をし始めた。

これでひとまず俺らの故郷の話は終わりだ。

 

 

 

 

ふと、視界の隅に違和感を感じる。

違和感の方へ目を向けても、何の変哲もないただの窓が夜の防波堤を写している。

 

防波堤……。

「あ。」

 

そこそこ間抜けな声が思わず出てしまった。

 

「どうした?」

 

「さっき言ってた幽霊の事忘れてた。カナデ呼びにいこうぜ。」

 

「うん。」

 

ソファーで三角座りをしてお茶を飲んでいたカナデを呼ぶと、とてとてと俺の隣に来た。

なんというか本当に可愛い奴だ。

 

「幽霊なんて初めて見るからドキドキするな……。」

 

「私に見えるかな?」

 

「もしもの場合はどの術を使えばいいのやら……。」

 

 

 

 

さて、この別荘の構造上玄関から出ると堤防に行くまでぐるっと家を回らなければならない。

しかしリビングに隣接している縁側からなら、一直線で行ける。

サンダルも数足ある。

 

俺は縁側の窓にかかっている大きなカーテンを開けた。

 

真っ白い服を来た女が不気味に笑いながらこちらを見つめていた。

 

「お兄さん~忘れないでよ~。」

 

 

「「「「「「「「ぎゃあああああああああ!!!!!?!!!?!????!!!!!!!!」」」」」」」」」

 

 

 

 


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