ゲームの世界に転生のライトノベルの世界に転生   作:ビョン

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旅立つあいつが七色の虹描く

「さて、楽しかったこの合宿最後の晩飯のカレー。やっぱり夏に食う最高だな。」

 

「本当にね。結構食べちゃったかも……。」

 

普通盛りより少な目位しか食べてないのに、カナデはどうやら腹回りが気になるらしい。

 

そんなこんなで合宿も残すところこの夜と明日帰るのみとなってしまった。

最高の思い出は残ったけど、やはり寂しさが襲ってくる。

 

飯を食べ終わり砂浜で何となくキャンプファイアをする事になったので、適当に木を重ねただけの焚き火を作り9人全員が円になり囲んだ。

 

「でも、合宿楽しかったね。」

 

「その通りだなリカ殿。花園殿、改めて今回は別荘へ招待して貰ったこと、感謝致します。」

 

「アヤノさん、やめてくださいよ。その……私も皆さんと数日過ごせて大変楽しかったですわ。」

 

焚き火の光に当たった花園の顔は、さっきよりも赤くなっていた。

 

 

「ところで、何かを忘れてる気がしない?何か……凄い大切なことを。」

 

「そうですわ。大切なこと……人?がいたような気がしますわ……。」

 

相模の言葉が皆の心臓を鷲掴む。

皆思い当たる節があったのか、口々にこの違和感を言葉にする。

そうだ、みんな忘れている。みんなにとっては1日だけの幻を忘れている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お兄さん。お別れ言いに来たんだ。」

 

あいつがそんなことを言ってたのは、昨日の夜。俺が穴のなかにいる時だ。

 

「どういう事だ?」

 

「私ね、みんなと遊んで楽しくて、そしたらポンと頭の中で自分の家の景色が出てきたの。そこからどんどん景色が広がってどこなのか思い出したんだ。それに、ひとりぼっちじゃなくなったら満足したみたいで多分もうみんなから見えなくなるんだ。」

 

月明かりに照らされたそいつはいつもよりも透明で、いつもよりも輝いていた。

 

「そうか……。他の奴等にはさよなら言ってきたのか?」

 

「言ってないよ。私は夏が作り出した幻だから、いつかみんな忘れちゃうから……ってカッコつけすぎ?」

 

「何で俺だけに……。」

 

「お兄さんはきっと覚えているから。この世界の人じゃないお兄さんなら。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「バカ野郎……。」

 

俺もお前の顔も名前も声も思い出せねえよ。

 

「原……。」

 

隣にいるカナデが俺の顔を複雑な顔で覗きこむ。

こいつもきっとあいつを忘れきれてないんだろう。

 

 

「小田、お前がこの歌をチョイスしたのはこういう事だったんだな。」

 

「おかしいよな、ゲームで知ってたはずなのに名前も出てこないなんて。他の子達ならスリーサイズまでバッチリなのにな。頼む原。こんな空っぽの記憶じゃ、俺らの中のこの子は消え去ってしまうよ。」

 

小田が潤んだ目で俺を見つめる。

 

 

「カナデ、ギター頼む。あいつを俺らの中で生かすんだ。」

 

「いくぜ。『New soul』」

 

 

 

目を瞑りながらあいつに送るレクイエムを、カナデのアコギにあわせて歌う。

 

 

 

『雨がやんだのを窓を開け、確かめてみた

「春の終わり」をぼくは知る胸破れ

 

「さよなら」告げずに旅立つあいつに音楽を奏でる!』

 

 

 

 

もっとちゃんとさよならを言っていけあのバカ。

俺らはそんな思い出すことも出来ないお前にこんな贈り物しか出来ないじゃないか。

 

 

 

 

『愛し合い歓びをともに分かち合う

こんな夜を繰り返すのを幸せと呼べば

大事なものと大事じゃないものが

少しずつ見えてくるような

そんな気がするよ今』

 

 

 

『新しい魂を空に掲げて

失ってきたものすべてに祈りを捧げ

歩きだし、またひとつ心の鐘を

鳴らすために僕らは生きてる

そんな気がするよ、今』

 

 

 

 

「そうですわ……。私はあなたがやったドッキリ決して忘れてないですわ。」

 

「ごめんね……。一緒にいたのに忘れちゃって…。」

 

花園とセリカが頭を押さえながらゆっくりと空を見上げる。

それにあわせて皆があいつとの思い出を話しかけるように空を見上げる。

どうやらこの世界の人間も1日一緒にいただけの幽霊の事を覚えているようだぜ。

 

カナデもギターを弾きながら空を見上げる

 

 

「新しい世界へ!響くハーモニー!俺たちのソウルで!」

 

 

夜風が頬を撫でる。

 

 

 

 

お前はお前のやるべき事をやって空から見守っていてくれ。

俺らは、お前という存在を魂に刻んで歩いていくから。

お前の今までとこれからを祈っている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふー。やっとこさ着いたぜ。」

 

「お疲れー!じゃあここで解散ということでみんな!本当にありがとう!」

 

翌日

別荘から撤収後、無事に花園家前に着き皆別れを惜しみながらも別々の自宅の方向へ歩いていく。

相模達とも別れ、俺と小田は久々の自宅へ向け幾分か軽くなったリュックを背負い歩いていた。

 

「遊び終わった後って何でこんな寂しいんだろうな。」

 

「本当何でだろうな?寂しいからお前んち行ってもいい?」

 

「良いわけ無いだろ気持ち悪い。明日にしろ。」

 

「明日ならいいのかよ。でもよかったのか?ギター置いてきて。」

 

「花園が置いといていいって言うからさ。それに、サバイバルナイフでギターの背面に俺ら10人の名前も彫ってきたよ。これであの時の俺らはずっと一緒だ。」

 

「うわ、ちょっとだせえ。」

 

「だせえとはなんだてめえ!!」

 

 

こうして俺らの合宿は終わった。

凄い長い気がしたけどこれでもまだ8月になってない。

つまり、まだまだ夏休みは終わらない。

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