何度も、何度も、何度も、俺と伊勢の持つ刃は切り結ばれていく。
俺は相手が動きを読めないように、わざとアクロバティックな技を繰り出すがやはり全てガードされてしまう。
「意外とやるな!」
「無駄に鍛えてきたからな!」
伊勢の神速の太刀や強力な魔法攻撃を全てすんでの所で回避していく。
「くそ!」
「まだまだ!」
しかし、伊勢の方が実戦の中で培われてきた経験がある分技術面では何歩も上を行っている。
先程までは、巨大ビームや相棒君の盛大なゲームオーバー等盤外で起こった事に気を引かれてた伊勢も徐々に本来の調子が戻って来てからは、着実に一歩ずつ追い詰められていくのが自分でもわかる。
「認識の差がどうとか知らないが、俺はあの世界で一大隊分の戦力を保有してると言われてたんだぞ!お前なんか!」
「前の世界がどうとか知ら無いけど、今の世界のことで誇る事無いのかよ!!」
「うるさい!!前の世界も含めて俺の人生だ!」
「そんなの俺らには関係ない!そんなんでマウント取られても知っちゃこったねえ!」
「マウントも取れない癖に!!」
さらに剣筋が早くなる。
今まで何とか抑えられてた攻撃も、あちらこちらにかすっていく。
「喰らえ!」
伊勢ががら空きになった俺の腹に手を添える。
避けようと体を捻るが、瞬間光と音と共に襲撃が全身を襲う。
魔法を打たれた……。気付いたときには吹っ飛ばされ校舎に背中から衝突した。
「がはっ!」
そのままずるりと座り込む。
全身を痛みが襲うこの感じ、あいつマジの魔法撃ちやがった。
今まで経験したこと無いような痛みに、声も出せず悶絶する。
痛い
痛い痛い
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!
「あぁ、ごめん。つい本物の魔法打ち込んじゃったよ。あれ?体がまだある……。腐っても主人公ってことか。」
「……っ!………ぁ!」
「声も出ない程痛むでしょう?じゃあ魔法で本当に殺すのは後でにして、今はゲーム的に殺してあげる!」
持っている剣を振りかぶり、俺に向けて振り下ろそうとした。
「おっと!危ない危ない!」
大きな盾を持った高井戸先輩が刀を受け止める。
「ち!邪魔だ!」
盾に攻撃を止められた伊勢は、何度も盾に刀を振り下ろす。
「とりあえずこの薬を飲むんだ!」
そういって、小さな瓶に入った液体を口に流し込まれる。
「痛みを抑え体を治癒する薬だ。細かいことは言いっこなしだよ?」
「…はぁ!……はぁ。ふぅ……凄い痛かった。」
薬が効いてきたのか痛みは引き、呼吸がまともに出来るようになった。
「って馬鹿!何でこんな危険なところに来るんだ!見ただろ!あいつは本当に殺すことも出来るんだぞ!作戦とかどうでも良いから逃げろ!」
「そうはいかない!どの作戦も欠けたら勝てなくなる!そんな作戦を立てたのは君だろう!何でも手助けはする!だから、私達の全てに責任を持て!」
「……。」
俺は物語の名軍師じゃない。
そんな俺はみんなを巻き込んでこんな危ない賭けに出たんだ。自分の思い込みだけ、もしかしたらを考慮しきれていない、そんな穴だらけであろう作戦に皆乗ってくれた。これが俺への信頼なのか主人公の力なのかとか関係ない。
俺の背負うべき責任だ。
「あと3秒数えたらその身を盾にしろ。」
「……わかった!」
3……2……1!
「た、盾が!うわぁっ!」
伊勢の連撃に遂に耐えられなくなった盾は碎け散れ、高井戸先輩は斬られHPが0になりどしゃりと倒れこむ。
「く……必ず伊勢を倒してくれ……原くん!」
「ふぅ…。これで邪魔者は……。」
「貴様が……。」
「は?」
「貴様がぁああぁあああ!!!!!」
「な!何だ!?奴は動けない筈じゃ!?それに、周りに赤いオーラが……!?」
「うぉおおおおおおおおおお!!!!!」
「ナ……ナイフが…!変化して…!あれは!」
トンファーソード!
「お前だけは!許さない!」
先程の相模達の無双や、部長のビームが主人公に必要な大きな力への「反逆」だとするなら、
これは主人公に必要な仲間との「別れ」、そして「覚醒」。
本来なら普通の戦い中にやるはずだったこのイベントは、伊勢に勝てないであろう俺が勝つ、最後のパワーアップだ。