Charlotte 性転換(TS)SS   作:ゲキガンガー

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第6話

「・・・・・・・来たか」

 その日、私は生徒会長である姉、隼子に呼び出された。

「一体、何の用なんだ?」

 生徒会室の机には地図が広げられている。

「・・・・・・・黙って待ってろ。そろそろ来る頃だ」

 バタン!

 生徒会のドアが突如開け放たれる。

「なっ!?」

 無言で入ってきたのは一人の髪の長い女子生徒だった。顔を覆い隠すように髪が伸びており、表情が見て取れない。

 というか、髪が塗れていた。水浴びでもしていたというのだろうか。

 不気味な幽霊のような女性に映る。 

「彼女の名前は熊耳。我らが生徒会のメンバーだ」

「へ、へー。そんな人生徒会にいたんだ。知らなかった」

 文字通り幽霊部員、いや幽霊のような部員だった。生徒会だから正確には会員か。;

「能力は、念動力」

 彼女は水滴を地図に垂らした。

 な、なにいってんのこのひと。

 そしてそのまま去っていった。

「そうか・・・・・・・場所はここか。ここは近くの学校だな」

 水滴が落とされたのは近隣の進学校だった。

「あの、お姉ちゃん、あの人一体、何してったの」

「熊耳。彼女も我々と同じ能力者だ。能力は探知系の能力。戦闘にこそ使えないものの、能力者を見つける事ができる。便利な能力だ」

「はぁ・・・・・・・」

 それと水に濡れていた事となんの関係があるのか。そうしないと発動しない能力なのか。

 ともかくとして。

 これから一体どうするというのだろうか。私にはわけがわからなかった。

 

 ○○学園。(原作で乙坂が通っていた学園の名前なんていうんだっけ。忘れた)文武両道で有名な進学校である。共学。

 そこは弓道場だった。精悍な顔つきの美少年が、弓道姿で弓を構えている。少年は弦を引っ張る。限界まで引っ張り、狙いを定めた。それは神聖な空気にすら感じられ、何者にも邪魔する事は許されない空間、静寂に支配された空間。精神を集中させ、その一矢を射る。正確無比な一矢は見事なまでに的の中心を射抜いていた。それと同時に、ギャラリーの弓道部員、それどころか弓道部意外の生徒達も、彼の一挙一動を見守っていた。命中と同時に、割れんばかりの拍手が鳴り響く。

 彼の名は白柳弓矢(注釈、説明するまでもなく、原作でいう白柳弓の男バージョン)成績優秀、容姿端麗、運動神経抜群、特に弓道の腕はプロ並で全国大会での優勝軽々もあるそうだ。その甘いマスクもあり、○○学園のプリンスと他校にもその名は知られわたっている。

 注釈。弓道部の主将、野球の試合、念動力、白柳弓、あたりの原作の設定は適当に混ぜて、消化します。そのあたりを混ぜた感じで話すすめます。注釈終了。

 ーーそんな中、その様子を影から見ている怪しげな人物達が四名程いた。そう。星ノ海学園の生徒会のメンバーである。

 しかし、その格好は普段の制服の格好ではない。○○学園の制服である。恐らくは潜入の為に変装しているのだろう。

「・・・・・・・しかし、本当にあいつが能力者なのか?」

「間違いありません」

 と、西森。

 再度、白柳が弓を射る。その時だった。コンマ数センチのぶれ。

 しかし。白柳の学校が怪しく光ったように感じた。間違いない。能力を使ったのだ。

 数センチのぶれは、熊耳の探知が正確だったのだとすれば念動力(サイコキネシスとも言う)により修正された事になる。恐らくはよほど動体視力のいい人間が注視しなければその違和感には気づかなかった事だろう。

 またもやど真ん中に命中した矢に喝采が起こる。

「元々の弓道の腕がたしかな上に念動力(サイコキネシス)でずるをすれば全国大会で優勝する事も容易い、か」

 友利は淡々と言った。

「・・・・・・・それで、これからどうするんだ?」

「我々の目的は能力者の保護だ。能力者は先日のような機関により、危害を加えられかねん」

 そう、隼子は説明する。

「・・・・・・・保護っていっても」

 四六時中監禁でもするのか。ペットでもあるまいに。一人の人間をずっと監視下に置くのは困難極まる。

「・・・・・・・なに。それについては考えがある。とりあえずは奴を誘い出す必要がある」

「誘い出す、ってどうやって?」

「我々は花の女子高生だ。その立場を利用すれば容易い」

 隼子は微笑んだ。

 手には便せんがひとつ。

「思春期の男子高校生を呼び出す事など造作もないさ」

 何となく、嫌な予感がする私だった。

 

 翌朝の事。白柳は登校した。そして下駄箱をあける。するとそこにはかわいらしい便せんがあった。とりあえずは中身をみる。

「・・・・・・これは」

 差出人は不明。文面はこうだ。

「ずっと前からあなたの事が気になっていました。大事な告白があるので今日の放課後、部活が終わる時間帯に屋上で待ってます」

 典型的なラブレターだった。

 

 そこは○○学園の屋上だった。

「・・・・・・・なぜ屋上なんですか?」

 物陰から生徒会メンバーは事の成り行きを見守っていた。

「・・・・・・・告白の定番といえば屋上だからだ」

「告白って」

「なぜ、有菜さんが表にたたされているんですか?」

「なに。私が告白した事にして本気にでもされたら面倒だろう」

 当然のように先ほどのラブレターは仕込みである。

「だからって妹を犠牲にしていいんですか」

 西森はあきれたような顔をする。

「高城さんという選択しもあったのでは?」

「それは・・・・・・・」

 隼子は高城の顔を横目でみる。

「・・・・・・・・相手が不憫だろう」

「む、むきっ! なんですかそれは! 失礼です!」

「しっ。黙ってろ。ターゲットがきたぞ」

 

 お姉ちゃんもとんでもない事するなぁ。妹の気も知らないで。

 私はそう思った。

 そうこうしているうちに、目的の人物。白柳弓矢が屋上へと来た。あんな差出人も書いていない手紙に律儀に対応するなんて。だましているこちらとしては心が若干痛む。

「・・・・・・・君かい。朝、僕の下駄箱にこの手紙を入れたのは?」

「は、はい。そうです」

「驚いたな・・・・・・・まさか君みたいなかわいい子が僕に手紙を」

 まんざらでもなさそうだった。これは喜んでいいのか? 果たして。

「けどおかしいな。君みたいな子、うちの学園にいたかな?」

 ギクッ。確信をつかれる。

「わ、私、影薄いから。それに、最近転校してきたばかりだし」

 適当な事を言ってごまかしておいた。

「そうなんだ。それで、どうして、僕の事を?」

「それはーー」

 どう話を合わせていいものか。

「し、白柳さんの弓道をしているところが素敵で、それで」

 適当に無難な事を言っておく。頬を赤らめ、もじもじとした仕草をする。いかにも告白して恥ずかしそうな女子を演じる。全て計算の上の事だった。

「う、嬉しいな。けど、ごめん」

 白柳は頭をさげる。

「・・・・・・・僕は勉強と部活で手一杯なんだ。今度弓道の全国大会があるし、とても恋愛に時間と気力を割いてられないんだ」

「・・・・・・そうなんだ。こちらこそごめんなさい」

 なんだろうか。安心したけど、なんだか心が痛むような。

「さて、青春学園もののような展開はその程度にしてもらおうか」

「誰だ!」

 物陰から生徒会メンバーが姿を現す。

「なっ。人の告白をのぞき見るなんて悪趣味ですよ」

「悪趣味なのはのぞいていた事だけではない、この告白自体が仕組まれた茶番だからだ」

 と、隼子。

「なっ!」

 白柳君は私をみる。

「そ、そうなの? この告白は君達のやらせだっていうのか」

「う、うん。そうなの、ごめんね」

「なんだ・・・・・・・罪悪感を感じていた自分が馬鹿みたいじゃないか」

 白柳君は落胆したようだ。

「それで、こんな悪趣味なまねしてまで僕を呼び出して、一体何をしたいんだい?」

「・・・・・・・白柳弓矢。貴様が能力者だという事を我々は既に知っている」

「なっ!?」

「しかもその能力を弓道に利用している事もな。ずるをして勝ってもスポーツは楽しくない。何よりもおまえ自身が罪悪感を覚えているのではないか?」

「そ、それはーー」

 白柳はどもる。

「それだけではない。能力を利用していれば機関に目をつけられる事になる」

「機関?」

「あたまのおかしい連中だ。お前も人体実験にかけられるだろう。自我を失い、廃人同然の余生を過ごす事になる。貴様のしている事はリスキーな事だ。今後は普通の人間として生きろ。それがお前自信の為だ」

「嫌だといったら?」

「勝負をしようじゃないか。それでお前が勝利すれば今後二度と能力を使わないと誓え。我々が負けたら見逃そう」

「勝負?」

「貴様の得意な弓道で勝負しようじゃないか」

 隼子は微笑んだ。

 

「勝負は一回限り、的に近いほうが勝ちだ」

 夕暮れ時。人気のない弓道場。

「お、お姉ちゃん、大丈夫なの?」

「なにがだ?」

「わたしたち、弓道なんてした事ないよ」

 袴姿に私たちは着替えていた。

「・・・・・・そうだな」

「それでどうやって勝つっていうのよ」

「心配するな。必ず勝てる」

 隼子は言った。

「それで、誰が僕の相手をするんだ?」

 白柳はそういった。

「そうだな、じゃあ、じゃんけんでもするか」

「じゃんけん?」

 そんな適当でいいの。

「じゃんけん、ぽん」

 じゃんけんの結果私が負けた。

「それじゃあ、有菜、お前がやれ」

 隼子はそういった。

「けど、どうやって」

「適当に引っ張って放せ」

「け、けど」

「いいから」

「はい」

 私は適当にうって放した。

 当然のように、大きく的をはずした。

「大外れでやんの」

 と友利。

「それじゃあ、僕の番だね。悪いけど、僕が的をはずす事は絶対にないよ」

 白柳が弓を構え、弦をひっぱる。そして、矢を放とうとした時だった。

「いまだ! 有菜! 乗り移れ!」

「わ、わかったお姉ちゃん!」

「なっ!?」

 私は乗り移った。

 矢は放たれる。大きく外れた。私は元に戻る。

「なっ! き、汚いぞ! 能力を使うなんて!」

「・・・・・・・そうだ。汚い。だが、それはお前もしていた事だろう」

「な、それはそうだけど」

「自分自身、わかったはずだ。能力を使ってずるをして得た勝利など意味がないという事を」

「なっ」

 図星をつかれたようだ。

「わかったなら金輪際能力を使うな。それが貴様のためだ」

 隼子はそう告げた。

 白柳はうなだれた様子だ。

 


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