FGO七章ネタバレ入ります。
思い付くシーンを書き綴っていくスタイルでいきます。
七つ目の特異点。
神代という、日常的に神や怪物がいた時代であり、中でも今回降り立ったのは人間が神と袂を別った時代だという。
──その地には、その時代に生きる『彼』がいた
ギルガメッシュ王。最古の英雄王。
すでに、リンドウが聖杯戦争で出会い、カルデアで再会した英雄。
……だが、完全なる同一人物ではない。
カルデアにいる方がリンドウと過ごした記憶を持つのに対し、こちらはこの時代の存在で、当然リンドウとも会ったこともなければ記憶もない。
『別人』である。
『彼』であるが、自分の知る『彼』ではない。
それは、すごく不思議な心地だった。しかし混同するかと言えば、そんなことは全くなかった。不思議なものだ。
同じ顔の作りで、声なわけだけれど、自然に『別人』だと認識できる。
あちらからの接され方が、初対面だからだろうか。
とにかく、別物として認識できて、接していられた。言い回しなど、『彼』だなぁと思うことは多々あり、面白いなと思いながら。
何だかんだ、やっていたはずだったのだ。
「ちょ、ちょっとストップ、止まって!!」
リンドウは力一杯ストップをかけた。それはもう、状況の読めなさから我に返り、手を前に出してストップだ。
目の前には、ギルガメッシュ王がいた。
目の前と言うか、上というか。
現在、寝室らしき場所で、馬乗りされ、まさに──いや、とりあえず危機を覚える状況だった。
「何を止まれと言う」
「とりあえず動き全部ですけど!」
まず、近づくのを止めてくれ。
誤解しないでもらいたいが、別に、近づかれるのが嫌だとかいうのではない。
だが、この場所で、覆い被さられているようなこの体勢が示す先なんて限られている。
リンドウは、かなり混乱していた。
この地に来てからしばらく。今日も日課となった報告をして、何でか後から呼び出しがかかって、行くやいなやどっかに引いて連れて行かれて。
こんな夜に何の用で、どこに連れて行かれるのやらと、のんきに思っていたところ、気がついたら押し倒されていた。
おかしい。
「止まって下さいって言ってるでしょうが!」
近づく顔を、思わず手で覆い、ガードしてしまった。
が、これが良かったらしい。ようやく止まってくれた。……相変わらず、距離は近いが。
止まった王に、その下にいることになっているリンドウは、彼を見上げ慎重に口を開く。
ギルガメッシュ王、と、ここでは簡単に区別できて、自然と呼んでいる呼び名を口にした。
「……状況が理解出来ないんですが」
「これで理解出来ないとは、何だ貴様、処女か?」
「処女でも童貞でもないですけどいや違うそうじゃなくて」
男に対して処女か?とは、決定的な言葉が聞こえた気がする。
おいおいおいおい、ちょっと待て。やっぱり勘違いではなく、そうとしか思えないこの状態。
「訂正します。状況は薄々分かりますが、理由が分かりません。……わざわざどこかよく分からないところから来たばかりの俺を選ばなくても、王様なんだから極上の相手なんて選び放題呼び放題でしょう」
混乱の理由はただ一つ。
なぜ、この時代のギルガメッシュが、自分を寝室に連れ込む。明らかに、『そう』しようとしている。理由が分からないことが、混乱の最たる原因だった。
すると、暗い中、こちらを見下ろす王はゆるりと首を傾げた。
「我が抱きたいから抱く」
抱くって言った。
とうとう一部の隙なく、状況の解釈の仕様が固められた。いや、元からそうとしか考えられない状況ではあったのだが。
それにしても、抱きたいから抱くとは。だから、その理由は?
「……急すぎます」
「それがどうした」
それがどうした。
……本当、ギルガメッシュだな、とこんなときに思った。
問答無用で、とにかく強引。自分に絶対の自信を持ち、思うままの行動をする。
初めて会ったときも突然だったが、ここで二度目の初めてで同じような突然があるとは……。
だがしかし、ここで流される気は起こらなかった。
「……拒否権を発動したいです」
「拒否権? そんなものがあると思っているのか」
「ですよね」
そんな性格だとは、知っている。
無駄なことを言いながらも、頭の中ではこの場を切り抜ける術を模索している。
「──少し黙ったからって、続けようとするの待ってもらっていいですか」
黙った途端、気配が近づいて、気がついたら顔が息がかかるほど近くにあった。危ない。
「この我の顔にそう何度も許しなく触れるとはな」
「すみませんつい」
触れそうになった口を塞いでいた手を引き剥がされて、言われたから謝るけど、離れてくれないから仕方ないと思う。
「貴様、抵抗が甚だしいぞ」
「甚だしくもないと思います」
魔術ぶちかますことでも考えたら、可愛いものだろう。そんなことしないし、出来ないけど。
とは言え、目の前の王が明らかに不機嫌そうに眉を寄せるので、いよいよまずい。
「俺だって……例えばただの添い寝っていうなら、それなりにすんなり頷きますが」
「それで素直になるならば、ただの添い寝だと言ってやろう」
「それって、実質嘘つくってことだよな」
何堂々と宣言してくれてんのこの人。
しかし、負けず、なおも時間稼ぎのために何か言おうと口を開く。──が、それより早く、
「何が不満だ」
「──っ」
頬を、手が伝う。
「我に抱かれることに、何の不満がある」
ただ、頬に触れられているだけのはずだった。
少し近づけば触れる距離に口があるとはいえ、キスをされたわけでもなければ、服の中に手を入れられたわけでもない。
けれど、その手つきに、震えそうになる。
手つきに加え、赤い瞳に、覗き込まれているからだろうか。
それとも、──囁くような声音のせいか。鼓膜を擦る低音が、記憶にある声と一瞬重なって聞こえて、一度強く目を瞑り、開く。
それは失敗だったのか、否か。
目を開いた直後、よく目にする位置関係に、目の前の姿がそっくりそのまま、よく知る『ギルガメッシュ』に見えた。気がした。
──何だと言うのだ
人物としては同じ人だけに、同じ顔と声の低さで、心臓に悪い。
『別人』のはずが、その手つき、声色に、惑う。
違う。別人だ。自分が出会い、接してきたギルガメッシュではない。
だが、今、なぜか目の前にいる王の雰囲気から何までが知る彼に酷似してきている。なぜだ。場所のせいか。
「……不満が、あるわけじゃない。ただ、駄目だって言うか……」
あなたは、『彼』ではないから。
突き詰めれば、同一人物。しかし、リンドウが愛した英雄は、目の前の王ではない。
分かっていたから、これまできちんと区別出来ていた。
なぜこうなった、こうなっている。
どうして、こんなことをする。
「なるほど、義理を通す相手がいるというわけか」
「そう、です」
察してくれた。奇跡か。これだけ言えば、察するか。
ぐるぐると混乱し、言えなかったところを指摘され、若干ほっとする。
だが、だ。
ここで、すんなり引き下がるような王ではなかったのだ。
「ならば、ここで我のものにするだけのことだ」
油断するべきではなかった。距離は、そのままだったのだから。
触れんばかりの位置にあった唇が、今度こそ遮るものはなく、重なった。