超次元ゲイムネプテューヌ 夢のヒーローを目指して   作:ホタチ丸

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はい、皆さんこんばんわ!
mk2編の最終章、ついに始まります!
それでは、 切り札を探せ はじまります


勇者を目指して
切り札を探せ


 抱きしめているアカリちゃんの体が段々と透けてきている。

 

 まるでギョウカイ墓場で消えた夢人さんの時と同じように……

 

 ただでさえ、夢人さんといーすんさんが連れ去られてしまったことで混乱していた私の頭は完全に真っ白になってしまった。

 

 ……嫌だ……嫌だよ!!

 

 腕の中で私のことをママと慕ってくれる大事な娘が消えてしまう現実を認めたくない!!

 

「しっかりしてアカリちゃん!? ……またあの時と同じ……いや、いやあああああああああああ!?」

 

 呼びかける声にも、もう返事をしてくれない。

 

 強く揺さぶってもされるがままで、アカリちゃんの体を通してすでに自分の腕が見えてしまっている。

 

 本当にあの時の再現を見せられている気分だ。

 

 私には何もできないの!?

 

 あの時のように……また目の前で大切な人が消えるのを見ていることしかできないの!?

 

 そんなの嫌だよ!?

 

 私はアカリちゃんを強く胸に抱き寄せた。

 

 消えないで!? お願いだから、いなくならないで!?

 

 固く目を閉じて、腕の中のアカリちゃんを逃がさないように抱きしめる。

 

 ……しかし、突然ぽっかりと胸と腕の間にあった温もりが消えてしまった。

 

 アカリちゃんの頭と腰を支えていたはずの手は肩とお腹にぶつかる。

 

 恐る恐る目を開けると、抱えていたはずのアカリちゃんは消えてしまっていた。

 

「あ……あ、ああ……あああああ!?」

 

 私は目を大きく見開いて振るえる両手に目を落とす。

 

 視界の端では、お姉ちゃん達が何か言っているような気がするけど、私の耳には入ってこない。

 

 ついさっきまで確かに触れていたはずのアカリちゃんがどこにもいない。

 

 目の前が霞み、手のひらに温かい水が落ちていく。

 

 でも、温かいと感じるのは一瞬だけ。

 

 次々と涙がこぼれる度に、手のひらには水の冷たさだけが残ってしまう。

 

 何もかもあの時と同じ状況に、私は絶望してしまった。

 

 夢人さんやいーすんさんだけじゃなく、アカリちゃんまで目の前からいなくなっちゃった。

 

 そんなの……そんなのいやぁ……

 

『なかないで、ママ!!』

 

 ……無理だよ。

 

 だって、アカリちゃんが消えちゃったんだよ?

 

 私のことをママって言ってくれる大切な娘がいなくなったのに、泣き止むことなんてできないよ!!

 

『ママがないてると……ぐずっ……わたしも……ぐずっ……』

 

 ……ごめんね、駄目なママで。

 

 私もアカリちゃんが泣いていると余計に涙が……あれ? 私、誰と話してるの?

 

『ぐずっ……わたし、だよ……ぐずっ……アカリだよ……ぐずっ……』

 

 ……ああ、そうだよね。

 

 この声はアカリちゃん以外にいるはずが……

 

「って、ええええええええ!? イタッ!?」

 

「ねぷっ!? きゅ、急にどうしたの?」

 

 私が頭の中に聞こえてくる声に驚いて顔を上げると、額がお姉ちゃんの顎にぶつかってしまった。

 

 ……う、うぅぅ、痛いよ。

 

『だいじょうぶ?』

 

「う、うん、大丈夫だよ。ちょっと驚いちゃって……」

 

「……アンタ、何を言ってるの?」

 

「え? 何って、アカリちゃんと話をしているんだけど……」

 

「……ネプギア、今は強がらなくていいのよ」

 

 私がぶつけた額を擦っていると、ユニちゃんが心配そうに顔を覗き込んできた。

 

 正直に答えたら、ユニちゃんは今にも泣き出しそうな表情で目を細めて私を抱きしめてきた。

 

「アカリがいなくなったことがショックで現実逃避しているのはわかってる……でも、今はお願いだから泣いて現実を受け止めて」

 

「え、ちょっと待っ……」

 

「わたし達も、一緒に泣くから(ぐすっ)」

 

「ちゃんと傍にいるから」

 

「皆も同じ気持ちだよ。だから、泣くのを我慢しないでいいんだよ」

 

 正面からユニちゃんに抱きしめられた私の両手をロムちゃんとラムちゃんが掴み、後ろから包み込むようにナナハちゃんにも抱きしめられた。

 

 な、なにこの状況!?

 

「な、何言ってるの? アカリちゃんはいなくなってないよ。だって、声が聞こえて……」

 

「……もういい、もういいのよ。私達に気を遣う必要なんてないのよ」

 

「そうですわ。アカリちゃんの声が聞こえるだなんて嘘を言って気丈に振る舞う必要なんてどこにもないのですわ」

 

「へ、あの、ちが……」

 

「言わなくてもわかってるわ。アカリのことはわたし達も悲しい。だからこそ、そんな風にあなたが1人で背負い込む必要なんてないのよ」

 

「ネプギアはアカリちゃんのママで、わたし達よりもずっと悲しんでるのはちゃんとわかってる……だから、ネプギアはいーすんやゆっくんのことは考えなくてもいいから、今はアカリちゃんのために泣いてあげて」

 

 首だけを動かして回りを見渡すと、お姉ちゃん達も瞳に涙を浮かべながら口々に私を気遣ってくれる。

 

 ど、どうしてこんなことになってるの!?

 

 皆にはアカリちゃんの声が聞こえてないの!?

 

 それとも、本当に私が現実逃避していて幻聴を聞いているだけなの!?

 

『ちがうよ!! わたしはここにいるよ!! ちょっとまってて!!』

 

「え、アカリちゃん何を……っ!?」

 

『っ!?』

 

 急に体から力が抜ける感覚を覚えると同時に、眩しい光が部屋中を照らし出した。

 

 そして、首にぷにぷにした何かが回される感触があると……

 

「わたし、ふっかつ!!」

 

 頭の上からアカリちゃんの声が聞こえてきた。

 

 多分、私が肩車しているような体勢でいるんだろうけど……どうしてこんなことになってるの!?

 

 

*     *     *

 

 

「単純にシェアエナジーが不足していたのだろうな」

 

「シェアエナジーが、ですか?」

 

 私はマジェコンヌさんの言葉に首をかしげてしまった。

 

 ……あの後、アカリちゃんが急に出てきてことでちょっとしたパニックになったけど、遅れてやってきたマジェコンヌさんやアイエフさん達に怒鳴られたことで冷静に戻れた。

 

 ちょっとまだ耳がキーンとするけど、今はアカリちゃんのことを聞かなくちゃいけない。

 

「そうだ。そもそも『再誕』の女神は情報の塊であり、貴様らとは違って肉体を持たずに生まれてくる」

 

「え、でも、アカリちゃんはちゃんとここにいるよ。ねー」

 

「ねー」

 

「少し黙ってろ。だから、情報の塊である『再誕』の女神は貴様らのデータを……女神の肉体データを手に入れることで、女神の体を“再現”しているにすぎない」

 

 お姉ちゃんとアカリちゃんが茶々を入れたけど、何となくマジェコンヌさんの話は理解できる。

 

 つまり、女神の卵の時に私のデータを手に入れたから、アカリちゃんは私にそっくりになったんだよね。

 

 私の体のデータ……ううぅ、なんか言葉にすると恥ずかしいなぁ……とにかく、それを“再現”しているから、今の姿になっている。

 

「『再誕』の女神などと銘打っているが、実態は特別な力を使える女神だ。体内のシェアエナジーが不足すれば、体に変調をきたしてしまう。今まで赤ん坊の姿でいたのも、最小限のシェアエナジーで“再現”できる体だったからだろうな」

 

「うにゅ?」

 

 マジェコンヌさんが私が抱いているアカリちゃんの顔を見ながら説明を続ける。

 

 話題の本人であるアカリちゃんは内容がわかっていないのか、きょとんとしているけど。

 

「もう知っているかもしれないが、本来ならプラネテューヌの女神候補生そっくりに生まれるだけのシェアエナジーが女神の卵には蓄えられていたはずだった。だが、それを勇者が砕いてしまったせいで、蓄えられていたシェアエナジーはそれぞれの欠片へと分散してしまい、体を“再現”し続けることも困難であったはずだ。だからこそ、今まで勇者の体の中にいたのだろう。体を“再現”しなければ、シェアエナジーの保有量が減ることはないからな」

 

「……えっと、つまりアカリが消えかけたのは、夢人の体から引き離されてしまって、体を“再現”し続けなければいけない状況でシェアエナジーが底を尽きかけたから、なのね?」

 

「その通りだ。『再誕』の力もシェアエナジーがなければ使うことなどできない。今まで勇者が『再誕』の力を使えていたのは、欠片を集めることで少しずつシェアエナジーを回復することができたからだ」

 

 ノワールさんとマジェコンヌさんのおかげで、だいぶ状況を理解することができた。

 

 元々女神の卵の欠片だったアカリちゃんは、少なくなってしまったシェアエナジーでは赤ちゃんの姿にしかなれなかった。

 

 しかも、その少ない力を夢人さんをゲイムギョウ界に戻すために使ってしまったため、体を“再現”し続けることすら困難になってしまった。

 

 それを解決すると同時に、夢人さんをバグにしないために体の中に入っていた、で多分間違いないと思う。

 

 だけど、何らかの理由……フィーナ、ちゃんが関係していると思うけど、夢人さんと引き離されたアカリちゃんは体を“再現”し続けなければならなくなってしまった。

 

 夢人さんが『勇者への道』で、アカリちゃんの中に残されていたシェアエナジーを使ってしまっていたため、“再現”し続けるだけのシェアエナジーも無くなったから、消えそうになっていたんだね。

 

 ……あ、だから、ちょっとだけ体が重いのかな。

 

 アカリちゃんが体を“再現”し続ける限り、私の体の中にあるシェアエナジーを消費していくんだよね?

 

 アカリちゃんが出てきた時に感じた脱力感はそう言うことだったんだ。

 

「それじゃ、ネプギアの体の中に入ったのは、不足しているシェアエナジーを確保するため?」

 

「それもあるが、これがプラネテューヌの女神候補生以外では上手くいかなかっただろう」

 

「それはどうしてですの?」

 

「女神の卵、ひいては『再誕』の女神に干渉できるのは、選ばれた勇者とモデルとなった女神だけだ」

 

「……つまり、もしネプギアちゃん以外がアカリちゃんを抱きしめていれば、アカリちゃんはそのまま消えていたと?」

 

「おそらくな」

 

 私はその推測を聞いて、背筋に冷たいものを感じた。

 

 アカリちゃんが本当に消えていたかもしれないと思うと、今でもぞっとする。

 

 思わず抱きしめる腕の力が強くなってしまった。

 

「ママ?」

 

「……ううん、何でもないよ」

 

 圧迫感を感じたのだろうか、アカリちゃんは私を見上げてくる。

 

 私はそれに何でもないとほほ笑みながら返して、アカリちゃんが消えずにすんだことに安堵する。

 

 ……よかった。今度はちゃんと守れた。

 

「まあ、アカリが大丈夫なことはわかったからいいとして、問題は連れて行かれた夢人とイストワ―ル様よね」

 

 アカリちゃんの問題は解決したけど、私達には他にも考えなければいけないことがある。

 

 フィーナ、ちゃんとジャッジ・ザ・ハードに連れて行かれた夢人さんといーすんさんの行方だ。

 

 でも、2人が連れて行かれた場所は1つしか考えられない。

 

「ギョウカイ墓場だろう。あそこは今やフィーナのテリトリーであり、私達がもっとも行くことが難しい場所だからな」

 

「……でも、ギョウカイ墓場に行くための転送装置は壊されちゃったのよね」

 

 ユニちゃんの言葉をきっかけに、全員が壊されてしまった転送装置に目を向けた。

 

 前に使った時には、新品同様の輝きをみせいてた装置は今や見るも無残な姿をさらしている。

 

 とてもではないけど、すぐに修理できるようには見えない。

 

「壊されただけならまだしも、あの転送装置はイストワ―ル様がコアとなって初めて起動する装置だったのよ。そのイストワ―ル様が連れて行かれたんじゃ……」

 

「じゃあ、アタシ達は2人を助けにいけないの!?」

 

 アイエフさんの言う通り、ギョウカイ墓場に行くための転送装置はいーすんさんの力がないと起動しないんです。

 

 理由は聞いたことがありませんけど、おそらくいーすんさんだけが知ってる特殊な手続きが必要なんだと思います。

 

 装置を直すだけなら私でもできると思うけど、起動させることができないため、私達はギョウカイ墓場に行くことができない。

 

「落ち着くですの、日本一」

 

「でもさ……そうだ! ワンダーがいるじゃない! 確か、ワンダーでギョウカイ墓場に行くことができたはずだよね?」

 

「あ、うん、確かにできるはずだけど……」

 

「さすがにバイクじゃ、全員で行くことはできないよね」

 

 日本一さんが閃いたって感じで笑って代替案を提案するけど、5pb.さんとファルコムさんが困ったように返答する。

 

 いくらワンダーさんがギョウカイ墓場に行く機能を備えていたとしても、バイクに乗れるのは多くて2人までなので全員で行くことはできない。

 

「それにギョウカイ墓場に行けたとしても、そこは敵の本拠地。罠が張り巡らされているはずよ」

 

「わかっているだけでも、何体いるかもわからないキラーマシンとジャッジ・ザ・ハード、それに加えてもう1人の『再誕』の女神フィーナ……少数で勝てる戦力じゃありませんの」

 

 ケイブさんとがすとさんの言葉に、全員が顔を暗くしてしまった。

 

 キラーマシンは1体でさえ厄介なのに、それがギョウカイ墓場に何体いるかもわからない。

 

 ジャッジ・ザ・ハードもリーンボックスで戦ってわかったけど、本当に強くなってる。

 

 私とユニちゃん、ナナハちゃんの3人が全力で攻撃してもあのパワードスーツに傷1つ付けることができなかった。

 

 ……そして、フィーナ、ちゃんの存在。

 

 赤ちゃんのアカリちゃんとは違い、私と同じ姿をしていたことから、フィーナ、ちゃんは『再誕』の力を使うのに必要なシェアエナジーを確保しているんだと思う。

 

 しかも、ギョウカイ墓場では、ゲイムギョウ界から私達に送られてくるシェアの力も少なくなってしまうので、私達女神は力を最大限発揮することができない。

 

 ただでさえ行くことができる人数が少ないのに、力も満足に発揮できない私達がフィーナ、ちゃん達を突破して夢人さんといーすんさんを救うことができるの? ……無理だよ。

 

 でも、2人を助けなきゃ……

 

「じゃあ、2人を助けたら、そのまますぐに戻ってくればいいんじゃないの?」

 

「現実的じゃないわね。2人がギョウカイ墓場のどこにいるのかもわからない現状じゃ、ラムの言うような電撃戦はできそうにないわ」

 

「2人を探しているうちに囲まれたらお終い、ってことね……せめて、2人の位置さえわかればできるんだけど……」

 

「それは考えても仕方のないことですわ。仮に2人を救出できたとしても、どうやってゲイムギョウ界に帰ってきますの? 単純に2人で行ったとしても、帰りは夢人さんとイストワ―ルを加えれば倍になってしまいますわ。いくらイストワ―ルが小柄だと言っても、さすがに4人もワンダーには乗れませんわよ」

 

「ああ、それもそうよね」

 

 ラムちゃんの意見に、ブランさんやノワールさん、ベールさんが難色を示す。

 

 行ける人数が限られているのなら、2人の救出を優先させることは間違ってない。

 

 でも、実際にギョウカイ墓場のどこにいるのかわからないため、2人を探しているうちにフィーナ、ちゃん達にみつかってしまうだろう。

 

 運よく2人を救出できたとしても、ギョウカイ墓場からゲイムギョウ界に戻ってくる際に、ワンダーさんに頼らなければならない以上、乗れる人数がオーバーしてしまっては駄目なんだ。

 

 そう考えると、現実的にギョウカイ墓場に行けるのは1人だけ。

 

 1人で敵の本拠地で2人を探さなければいけなくなってしまう。

 

「チカに頼んで側車をつけてもらえば、即席のサイドカーに改造して行くことができる人数は増やせるだろうけど……」

 

「焼け石に水よね。1人増えたとしても、相手の戦力を上回ることなんてできないもの」

 

「ワンダーを運転する人と、小柄なボクやロムちゃん、ラムちゃんが何とか全員側車に乗れたとしても、最大で4人……それでも足りないですよね」

 

 ケイブさんにアイエフさん、フェル君が何とかワンダーさんに乗れる人数を増やす案を出そうとしても、私達はそれでも難しいと感じてしまう。

 

 ジャッジ・ザ・ハードを相手にするだけでも3人じゃ足りないと言うのに、4人しか行けないのなら夢人さん達を探す暇なんてあるわけがない。

 

「ああもう!! 何かいいアイディアはないの、マジエもん!?」

 

「マジエもん言うな!! ……ったく、こっちだって計画にないことで焦っているって言うのに……」

 

 考えても考えても打開策が見つからないことで、お姉ちゃんがマジェコンヌさんに尋ねるんだけど、何か様子がおかしい。

 

 舌打ちをして何かぼそぼそと言いだすマジェコンヌさんを見て、私は何か引っかかるものを感じた。

 

 ……計画、って何のことだろう?

 

「あ、あの……」

 

「遅れてすまない」

 

 私がそのことについて聞こうとした時、部屋の扉が開きコンパさんとレイヴィス、ワレチューの3人がやってきた。

 

 レイヴィスは1人で歩くのが辛いようで、コンパさんの肩に腕を回している。

 

 それを隣で見ているワレチューはすごく怖い顔でレイヴィスを睨んでいた。

 

「ここまででいい……ありがとう、コンパ」

 

「いえいえです。でも、レイヴィスさんも無理しちゃダメですよ。体に傷はありませんけど、疲労はかなり溜まっているみたいですから」

 

「それはわかっている……だが、今はそれに構っている暇はない。そうですよね、マジェコンヌさん?」

 

「ああ」

 

 コンパさんにお礼を言うと、レイヴィスは肩から腕を離して、顔を引き締めてマジェコンヌさんの方を向いた。

 

「ギャザリング城に……ゲハバーンを取りに行きましょう」

 

 レイヴィスが口にした名前に、マジェコンヌさんの眉がピクリと動いた。

 

 ……ゲハバーンって何だろう?

 

 取りに行くってことは何かの名前なんだろうけど……

 

「ゲハバーン、って何ですか?」

 

「フェル、でよかったよな?」

 

「あ、はい」

 

「お前は知識として、この世界のことをどれだけ知っていた?」

 

「え、えっと……ボクは名前と最初の部分だけです。後は、ネットで紹介用のムービーを見た程度で……」

 

「なら、知らなくても仕方ないかもしれないな……簡単に言ってしまえば、ゲハバーンとは魔剣だ」

 

 私達の疑問を代表してフェル君がレイヴィスに尋ねたけど、予想外の単語が出てきてしまった。

 

 ま、魔剣!? そんなものを取りに行くの!?

 

「俺の知っていた知識では、時限式のフラグを立てることで発生する特殊ルートでのみ手に入る武器だ」

 

「……ちなみにそのルートって?」

 

「【救世の悲愴】と言う、所謂鬱エンディングだ」

 

 な、なんか名前からしてすごく嫌な予感しかしないんだけど、そんな物を取りに行って本当に大丈夫なのかな?

 

 の、呪われたりしないのよね?

 

「それに、あそこには初代勇者もいた。もしかすれば、力になってくれるかもしれない」

 

「初代って、夢人の前の勇者ってことよね?」

 

「う、うん。夢人が2代目だから、間違ってないと思うけど……」

 

「……すまない。実際に生きているわけではないのだが、思念体のような形で存在しているんだ。紛らわしかったな」

 

 ユニちゃんとナナハちゃんの疑問に、レイヴィスは申し訳なさそうに謝る。

 

 ……夢人さんの前の勇者、古の女神達と一緒に戦った伝説の勇者さま。

 

 そんな存在が思念体と言う形だとしてもいたなんて、まったく知らなかった。

 

「……そうだな。私も奴に聞かなければいけないことがある」

 

「おおう! それじゃ、魔剣と初代勇者に会うためにギャザリング城に行くんだね!」

 

「ああ……だが、その前にリーンボックスに寄るぞ」

 

 お姉ちゃんが元気よく腕を上げて宣言すると、マジェコンヌさんは待ったをかけた。

 

 ……リーンボックスに何かあるのかな?

 

「リーンボックスですか? ギャザリング城とは逆方向ですけど、何か用事でも?」

 

「寝ているマジックに用があるだけだ……そして、居ればトリックとリンダも一緒に連れて行こうと思っている」

 

「トリックちゃん?」

 

「下っ端も?」

 

「そうだ。奴らも知る権利があるからな」

 

 ベールさんの問いに答えたマジェコンヌさんの言葉の意味がわからず、私達は首をかしげてしまう。

 

 知る権利、って何のことなんだろう?

 

「詳しくは初代と会った時に話してやる。今はリーンボックスに向かうぞ」

 

「あ、ちょっと待って……行っちゃった。それじゃ、わたし達も行こうか」

 

 踵を返して部屋を出ていってしまったマジェコンヌさんに何か含むものを感じるけど、今は行くしかないよね。

 

 私達はお姉ちゃんの言葉に頷くと、マジェコンヌさんを追うために部屋を扉に近い人から順々に出ていく。

 

 最後に残った私がアカリちゃんを抱きしめたまま、壊れた転送装置へと視線を向けて決意を言葉にした。

 

「……必ず、助けにいきます」

 

「ママ?」

 

「大丈夫だよ。うん、私達も遅れないように行こう」

 

「うん!」

 

 心配そうに見上げてくるアカリちゃんに笑って答えると、私は少し早歩きで部屋を後にした。

 

 夢人さんといーすんさんを助けるために、まずはリーンボックス……そして、魔剣と初代勇者さまが待っているギャザリング城へ。




という訳で、今回は以上!
今回は導入話ということで、状況説明回になってしまってますね。
ようやく次回からいろいろと伏せていたことについて触れていきますよ。
それでは、 次回 「犯罪神の秘密」 をお楽しみに!
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