人形の暗殺教室   作:-甘夏-

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取り決めの時間

グラウンドに倒れる彼女の姿は普通の中学生だ。決して私のような触手の怪物ではないはずだ。

そう自分に言い聞かせながら、彼女の身体に触れていく。

 

「!?」

 

すぐさま触手を切り離す。興奮状態の彼女の触手には他の触手を刺激する効果でもあるのか。体に触れた触手はどす黒く染まっていく。

その様子を見つめていると、烏間先生が近づいてきた。

 

「先ほど、連絡を受けた通りか。今の話からするとお前の触手の持ち主らしいが……」

「烏間先生。少し2人きりにしてください。それと、私が彼女に害を成すことはしないので防衛省の報告もしないで頂きたい。」

見るからに奴の調子は下がっている。それも今までに見たことのないレベルでだ。

戦闘の負傷は奴が完璧にこなすだろうし、言う通り動いた方が良いだろう。

 

「……分かった。彼女は怪物ではなく中学生だ。学業に影響を出させるなよ」

「ええ、分かっています。もし約束を破っていたら私の触手を壊していただいて構いませんよ」

 

そう言って、奴は瑠海さんを抱えて校舎へ戻って行った。

それを見届けながら、俺も1度退散したのだった。

 

 

「安心してください。私以外誰もいませんよ」

 

目が覚めたのは教員室だった。声がする方向に居たのは、やはり殺せんせーで焦っていたのか少し粘液が出ている。冷や汗のつもりなのだろうが、私の触手にはそんな機能はついていない。これも生徒と関わる上で必要だと判断したのだろうか。

そんな事を考える程には意識がはっきりしてきた事を自覚しながら口を開く。

 

「それでは、先生と話し合いましょうか。私と先生のこれからについて」

「ええ。生徒と共に生活するのが先生ですから」

 

こうして、夜が明けるまで話し合いは続いた。大半は先生へのエロ本の餌付けだった訳だが……。

そうして決まった事は2つ。

1つ目が『殺せんせーの触手は卒業記念品として私に送られる。代わりにE組の暗殺教室に一生徒として参加すること』

2つ目が『私の触手は人助けの為にしか使わない。その代わりに私の触手を抜くことを禁止する』

最初の1時間はひたすら触手を取られないよう苦労したが、殺せんせーの理解を得られたのは良かった。

私の触手は体の一部であり、切り離せば命に関わってしまう。そんなデリケートな肉体を成長させていくのも個別授業の一環として行うらしい。たった数時間前まで全力で殺しにいったというのに、この先生はアフターケアまで万全なんだろう。

 

「瑠海さん。貴女に足りないのは色々ありますが、まずは学生の生活に慣れてください。もし先生と体が同じならば、貴女はスイーツと石くらいしか食べていないでしょう」

「……はい」

「というわけで、マッハ20で全世界の美食を作ってみました」

 

そう言いながら、分身の女将風殺せんせーが和食を運んでくる。その後ろには牛乳瓶を飲む風呂上がり風の分身が6体ほど。……ツッコミどころしかない。だが

 

「ありがとうございます。それじゃあ頂きます」

 

マッハ20には及ばないが、私だってそれなりの速度で動くことが出来る。みんなが登校するまでには完食できるだろう。

 

「あ。これからは先生と一緒に暮らしましょう。まずはお弁当です」

「世話焼きですね。……あ、美味し」

 

皆が下校したあと学校へと向かうと、グラウンドには2つの影があった。

 

「殺せんせーと瑠海?」

 

2人は何か言葉を交わし、戦闘を始めた。それは端的に言って爆発だった。殺せんせーのド怒りでも、お姉ちゃんが死んだ時の怪物の恐ろしさでもない。それ以上の憎悪だった。

そんな戦闘も数十分たった頃には決着が着いた。烏間先生の銃撃によって静かになった2人は校舎へと入り、烏間先生も山を下って行った。

それは本当に嵐にように強烈に、素早く過ぎ去って行った。そしてあとに残ったのは焦りだった。

殺せんせーを殺す前に、瑠海によって殺されてしまうのではないかという焦り。家に帰ってからはその思いで頭が一杯になった。その感情と共に、私の触手が疼き始める。

 

【もっとつよくなりたい?】

【もっとつよいあんさつしゃになりたい?】

【もっと もっと もっと】

 

その感情を押し殺しながら眠りにつくのは、触手を抑える以上に辛かった。




次回は全校集会!
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