ハイスクールS×D 聖剣番犬のダイヤモンド   作:ヤギ3

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戦闘難しい……。
この話だけで一体、何回書き直したことか。


第10話

「この俺をたたっ斬る? 出来るとでも思っているのか?」

「剣ってのは、当てりゃ斬れるんだよ」

 

 当てるまでが難しいんだがな。

 それに、老人ホームの屋上なんて限られたスペースしか無い場所だ。そんなところじゃ切り札を出したくても出せない。余波でゼノヴィアたちが死ぬ。

 出せる手札は『陰陽術』『仙術』『竜の人形(ドラゴン・ドール)』『雷切』『聖竜剣』そして『夢幻の聖剣(エクスカリバー・ナイトメア)』。十分に見えるが、うまく使いこなさないとコカビエルに傷一つ付けられないかもな。

 

「フン。くだらん」

 

 侮蔑の色を含んだ声を吐いたコカビエルが腕を一閃する。

 それだけで、光の槍がこっちに飛んでくる。

 ――デカイ! やっぱり今まで戦ってきた敵とは格が違う!

 

「エリアル!」

 

 エリアルは何を言いたいのか正しく理解して、行動してくれた。こういう時は理解力の高いエリアルに感謝感謝である。

『ファイバーカノン』

 エリアルが吐き出した光の柱のような光線は、コカビエルの巨大な槍と拮抗しついに対消滅した。

 辺りに白煙が立ち込める。俺とコカビエルは互いに互いの姿が見えない状態となった。

 

「何?」

 

 コカビエル側から見えるであろう白煙の中に浮かぶ黒い俺の影。それを見て、驚愕というよりは拍子抜けといった反応が帰ってくる。

 翼がない人間である俺に対して、コカビエルは翼がある。制空権はコカビエルにあるのだ。空中で行動できない俺と空中を自由自在に飛び回るコカビエル。

 どちらが空中戦において有利かなど、素人でも分かる問いだ。

 それなのに、空中へと跳んだ俺を侮蔑の眼差しで見つめているコカビエルは、後ろに飛ぼうとする。――が、何かに阻まれた。

 

「これは!?」

 

 後ろにあるのは、赤い障壁。

 俺が『陰陽術』で作った壁だ。

 何が起こったのか戸惑ったコカビエルに一瞬の隙ができる。そこを逃すほど、俺は甘いつもりはない。

 

()ッ!」

「ぬるい!」

 

夢幻の聖剣(エクスカリバー・ナイトメア)』を振りかぶり、コカビエルに斬りかかる。

 だが、やはりというべきかさすがというべきか。コカビエルの方も光の剣を作り上げ、難なく受け止めている。

 

「吹き飛べ!」

 

 コカビエルが剣に力を込めてくる。

 人外の力で吹き飛ばされそうになる。

 なにせ、こっちは空中で俺にはここにとどまるための翼がない。

 だから吹き飛ばされないように――足に力を込めて踏みとどまった。

 

「なっ!」

 

 空中で人間は静止できない。そんなことは当たり前だ。

 とどまるための地面がない。

 ならば作ればいい。

 俺の足元には、コカビエルの背後にもある赤い障壁がある。

 こうすれば、制空権を奪われることもない。自由に空を歩くことが出来る。

 

「ククク! なるほど。なかなかユニークな戦い方をする。行動の一つ一つが予想できんな。しかァし!」

 

 先ほどとは比べ物にならない力を剣に感じ、そのまま吹き飛ばされるが、空中で静止することが出来た。

 

「地力が弱すぎる! 人間にしても脆弱! 貧弱! パワーがなければ鍔迫り合いで勝てるはずがない!」

 

 やっぱりこうなるか。

 前に俺のプロフィールを言ったことがあったはずだ。

 太りにくい。

 即ち肉がつきにくいのだ。それは筋肉も同じ。いくら鍛えてもパワーだけは上がらなかった。そのため、それを誤魔化すための技術などを磨いてきたのだが、こうも簡単に看破されるとはな。

 自信なくしそうだ。

 

「コカビエル様!」

「このお方に剣を向けるとは……。身の程をしれ猿が!」

 

 コカビエルの周りに複数の堕天使が集まってくる。親衛隊か近衛兵ってところか。

 露払いはどうしたとも思ったが、そっちもかなりの数の堕天使と聖剣使いがいた。

 中には上級堕天使もいるってのによくもまあここまで集められたものだ。

 

「まあ、これはこれで一興だ。どうするミカエルの狗。コイツらを殺せなければ、俺に剣を向けることすらできんぞ」

 

 さてさて。

 面倒なことになったな。

 近衛の数は五体(・・)。そのうち上級は、三体。ま、駆除できない数じゃねぇな。

 

「それじゃさっさと終わらせるか」

「ナメるなよ翼もない猿風情が!」

 

 上級堕天使の激昂を鼻で笑ってあしらう。

 

「こいつを見ても同じことを言えるか?」

 

 右手のエクスカリバーを異空間にしまって、虚空を掴むようにして、前方に持ってくる。

 

「汝は雷の軍神が化身。天を裂く斬撃。刃を持つ天雷也! 布津御霊剣!」

 

 落雷が右手に落ち、黄金に輝く雷から金の光を放つ鋼色の大刀が現れる。

 

「布津御霊剣だと!?」

「バカなッ! 人間風情に神が振るう聖剣が扱えるわけがない!」

 

 堕天使たちは口々に疑問の言葉を言い放つ。

 無理もない。俺がいま握っている布津御霊剣は、日本神話でも屈指の軍神タケミカズチが振るい、数多の神を斬り伏せてきた神すら恐れる聖剣だからな。

 

「嘘だと思うならそう思っとけ。――ただし代償は高くつくぞ」

「クッ……ソォ!」

 

 臆した堕天使たちは、苦し紛れの突進を一斉に仕掛けてくる。

 それを一閃。

 なにもない空間を切り裂くように剣を振るう。

 すると、黄金の津波にも見える斬撃が五体の堕天使を真っ二つにした。

 

「銀七のやつ。とんでもない切り札を隠し持っていたな……!」

 

 ゼノヴィアが驚愕の声で布津御霊剣を見る。

 周りを見ると、ほとんど全員がそのようだった。敵は勿論のこと。ゼノヴィア、イリナ、木場君の三人もだ。

 

「さあ、次はてめえの番だ」

 

 布津御霊剣の切っ先をコカビエルに向ける。

 神すら恐れる聖剣を目の前にしてコカビエルはせせら笑っていた。

 

「クク! これは面白い曲芸を見せてもらった。しかし、戦争の生き残りであるこの俺に――その程度の幻覚が効くとでも?」

「なに!?」

「幻覚だと!?」

 

 クソッ。

 さすがに格上相手じゃバレるか。

 布津御霊剣はその輪郭があやふやになり、消え失せる。

 布津御霊剣が存在していた右手には、雷切の雷をまとったエクスカリバーがある。

 

「それじゃ、今の斬撃も幻覚?」

「そうだ。実際は雷切の雷で焼いただけだ」

 

 疑問の声を上げる木場君に対して説明をする。

 転がっている五体の堕天使の死体も、下半身が生え、下半身が真っ二つに斬られた死体から身体中にやけどを負っている死体に変わる。中には、聖竜剣で串刺しになっている死体もある。体が真っ二つになったのに、息があっちゃオカシイだろう?

 騙し惑わしてこその『夢幻の聖剣(エクスカリバー・ナイトメア)

 その力を使っていないことを、死んだ堕天使どもは不審に思うべきだったな。

 

 まあ、コカビエル相手には使えなかったけど。

 

「私を無視してもらっては困るな!」

 

 上空に佇む灰色の龍。口を開けたエリアルがコカビエルに向かって叫ぶ。

 口の中の光は、段々とカタチを作り、雨あられと降り注ぐ小さな槍の雨となってコカビエルを襲う。

 

「フハハハハ! 甘い! 甘いなぁ! 光の龍よ! 戦争時の力とは雲泥の差ではないか! この程度じゃ私には遠く及ばん!」

「理解しているさ戦闘狂!」

 

 俺は、降りしきる光の雨を両手に出した光の槍で弾いているコカビエルに接敵する。

 俺の頭上には赤い障壁。これでエリアルの槍を無視して、コカビエルに攻撃できる。

 

「ハァァ!」

 

 エクスカリバーでコカビエルの身体を斬り裂こうと剣を振るが、光の槍に弾かれる。

 だが、予想内だ。

 本命は雷切。

 左手の小太刀を突き出す姿勢で刺突を行う。

 槍で刀を弾けばエリアルの槍で消し炭だ。

 光の雨を弾けば雷切で串刺しだ。

 どちらであっても必死。

 ――勝った!

 

「甘いわぁ!」

 

 エリアルの槍は槍で弾かれ――黒い翼が俺の体中を殴打した。

 

「グフッ!」

 

 胃の中から胃液とともに赤い血液が食道を逆流してくる。

 それだけじゃない。

 あまりの衝撃に目がチカチカし始めた。――まるで鉄の鞭だ。

 いや、むしろ龍の尻尾で叩きつけられたに等しいだろう。

 身体の痛みを感じられない程の激しい痛み。

 ははっ! どこか他人ごとのように感じるのもそれが原因かもな。

 これがコカビエルの力。――聖書に記された堕天使の力。

 桁が違う。

 格が違う。

 はっきり言って想像以上だ。参ったなこりゃ。

 身体もうまく動かない。まるで、自分の体じゃないみたいだ。

 

「銀七!」

「そら! 貴様もだ!」

 

 弾丸の如き速さで、光の槍がエリアルの羽根を食い千切る。

 

「グ、オォォォォォォ!」

 

 悲鳴のような。慟哭のような。――あるいは憤怒のような。

 そんな声をエリアルは上げながら、墜落していく。

 が、最後の力か。ファイバーカノンをコカビエルに撃つが、ひらりと危な気無く躱される。

 

「きゃあ!」

 

 悲鳴の方を見れば、イリナがフリードに弾き飛ばされていた。

 さすがにフリードと上級堕天使の相手はきつかったか。

 体力のあるゼノヴィアはともかく、イリナはスピートとテクニックで補うタイプだ。『天閃の聖剣(エクスカリバー・ラピッドリィ)』の相手はマズかったか。

 クソッ! よくよく見てみれば、ゼノヴィアも木場君も数で押され始めている。

 

「――ッ! 大丈夫かい!?」

「無事か銀七!」

 

 木場君とゼノヴィアも集まってきた。イリナもだ。

 ゼノヴィアと木場君は肩で息をしている状態だし、俺とイリナに至っては、体中ボロボロ。戦闘の続行が厳しい。

 

「イリナ、ゼノヴィア、木場君。……退くぞ」

「なっ!」

「なぜだ!」

「勝ち目が殆ど無い。負け戦だ。仕切り直す必要がある」

 

 その言葉を理解は出来ても不服なのか、ゼノヴィアたちは顔をしかめた。

 特に、木場君はその端正な顔を歪ませて、未だに戦う意志があることを剣を掲げることで表した。

 

「剣を下ろせ木場君」

「……出来ない。今、目の前には僕たちの仇であるエクスカリバーが存在している。剣を下ろすことは出来ない!」

 

 クソが! 肝心なときに物分かりの悪いやつだな!

 

「下ろせ! 今の状況じゃエクスカリバーを折る前に殺されて終わりだ!」

 

 血反吐を吐きながら言葉を重ねても木場君は剣を下ろさない。

 

「とはいっても、そこの悪魔の相手はすでに死んだようだぞ?」

 

 コカビエルの言葉に『透明の聖剣(エクスカリバー・トランスペアレンシー)』の所有者の方を見れば、確かに体中から血を流している。致死量だ。十中八九、死んでいるだろう。

 だが、剣で斬り合って出来た傷じゃない。

 血が流れているのは目や耳、鼻に口といった人間が元から備え付けてある穴から流れ出ている。――まるで、体の中が破裂したような死に方だ。

 

「ふん。調整の必要があるか」

 

 バルパーはひどくつまらなそうな口調でそう呟く。

 バルパーの研究関係。聖剣が原因か。大方、こいつも聖剣についてこれなかったってところだろう。

 

「いやはや、それなりに面白かったぞ小僧。余興程度にはなった」

 

 ……アレで余興かよ。

 奥の手を見せれなかったが、それでもほとんど出し尽くした状態だぞ……。

 

「化け物め……!」

「フハハハハ! これは滑稽だな! この俺が貴様らを容易く葬れる怪物と知らずに挑んだか! ククク! ミカエルも馬鹿な真似をする。こいつを後十年。いや、五年生かしておけばこの俺を打ち取れずとも腕の一本ぐらいは落とせただろうに。ククク。クハハハハハ! 耄碌したかミカエル! この調子では、天使は恐るるに足りんなァ!」

「なんですって……!」

 

 天に向かって嘲笑を続けるコカビエルを、俺達の中で一番信仰深いイリナが夜叉を思わせる表情で睨めつける。

 いや。イリナだけじゃなかったな。

 イリナの隣を見れば、ゼノヴィアも似たような表情でコカビエルを睨めつけている。

 ただ、イリナと比べれば幾らか理性的に見える。

 だが、イリナがコカビエルに立ち向かっても止めるほどではないだろう。なにせ、こいつも隙があればと狙っている目をしている。

 

「ふん」

 

 コカビエルの鼻で笑う声がする。

 そこに含まれた意味は紛れも無く――侮蔑と嘲笑。

 

「神の使徒が聞いて呆れる。自身の感情すら制御できてはいない。この程度では教会もたかが知れるというものだ」

「――ッ! 私たちを笑ったわね。それだけならまだいいわ。だけど! 主とミカエル様の侮辱は許さない! 悔い改める時間も与えないわ! アーメン!」

 

 ミカエルを侮辱されて激高していたイリナは、今ので完全にキレただろう。

 日本刀の形をしている『擬態の聖剣(エクスカリバー・ミミック)』に力を込めてコカビエルへと駆け出す。

 ――ってマズイ!

 

「ゼノヴィアァァァ! イリナを止めろォォォ!」

 

 あのままだとイリナが殺される!

 

「ハァァァ!」

 

 振りかぶった一撃。

 縦に走る銀の一閃。

 その速度は、文句なしで速い。

 

 ――だが、それは人間のレベルでは、だ。

 

 相手は千の人間でも真正面から大立ち回りを見せ、打倒する強大な堕天使。

 

「遅い。あくびが出るほどにな」

 

 イリナの一撃を光の槍で防いだコカビエルは、光の斬撃をゼロ距離からイリナに浴びせた。

 まるで砲撃のような光の奔流が起こる。

 光が消えた後には、膝をついたイリナの姿があった。

 剣を握っていない。周りを見れば、イリナの遙か後方。貯水タンクに突き刺さっている日本刀が見える。

 

「カタチを残していたか。そこは褒めてやろう。だが――これで終わりだ」

 

 コカビエルの右手に光が集る。

 

「間に合えッ」

 

 前方に魔法陣を九つ作り出す。

 その中央から長剣のカタチをした聖竜剣を射出する。

 

「おっと。……なるほど。お前は仲間がやられそうになると守ろうとするのか。ならば、それを利用するのも一興だ」

 

 コカビエルの周りに無数の槍が生まれる。数は、十や二十なんてものじゃない。百は超えている。

 その全ての切っ先の向きは俺ではなく――イリナ!?

 

「てめぇ!」

「ハハハ! さあどうする? 光を宿す竜の子よ!」

 

 コカビエルが生み出した光の槍の全てがイリナに向かっていく。

 クソッ! イリナは足を痛めているのか、立ち上がる気配すらない!

 

「動けっ!」

 

 思うように動かない自分の体に命令を与え、無理やり動く。

 動くたびに筋繊維がプチプチと千切れていく感覚を感じる。バキバキと骨が砕けていくのが分かる。

 それでも動く。

 

「らァァァァァ!」

 

 イリナを背後に隠すように、イリナと光の槍の間に剣を構えて立つ。

 光の槍をエクスカリバーと雷切の二刀流で迎え撃つ。

 一撃一撃が重い。

 受け止めている腕が光の槍を砕くたびに、すり潰されるような感覚を感じる。

 

「や、やめて銀七! そのままじゃ死んじゃう!」

 

 イリナの声が聞こえるが、全部無視だ!

 あいつも俺の声を無視して突っ走りやがったんだから、俺だって聞いてやる義理はない!

 

「イリナ! 銀七!」

「おっと。そういえば、貴様らも居たな」

 

 新たに槍が生み出される。

 その向かう先は、木場君とゼノヴィア。

 

「逃げろ!」

「お前たちを置いて行けるわけ無いだろう!?」

「僕も同感だ。僕だって戦える!」

 

「――足手まといだっつってんのが分からねえのか!」

 

「「ッ!」」

 

 二人の息を呑む声が、この剣戟の中、何故か聞こえた。

 ゼノヴィアたちは傷ついただろうか。

 チラリと見てみれば……あーあ。ゼノヴィアを泣かしちまったか。

 参ったな。

 

「いいから逃げろぉ!」

「……すまない」

 

 木場君が一言だけ言って、去っていく。

 ゼノヴィアは何も言わず、目尻に涙を溜めたまま木場君の後ろに付いて行く。

 俺はそんな二人を笑いながら眺めた。

 よかった。これであいつらは取り敢えず安心だ。

 そんな気持ちを一旦、脇に置き、コカビエルを睨む。

 

「……なぜ待っていたんだ。それも、弾幕を薄めてまで」

 

 しかも、今この瞬間は槍が一つも来ていない。

 そうでなければ会話など出来もしないだろうが。

 

「あいつらが逃げてサーゼクスの妹の元に行けば、戦争がしやすいからな。……リアス・グレモリーとその眷属全員の死体をサーゼクスの前に晒せば、あの日和見主義者の魔王も戦争に乗り気になるだろう?」

「クズが」

 

 コカビエルの考えを一言だけで非難する。

 どっちみちあいつらを殺すってことじゃねえか。――やらせねぇ。絶対に。身体が死のうが、魂だけでも呪い殺してやる。

 

「だが、貴様らは殺す。バルパーが面白いことを考えていてな。そのためにはエクスカリバーが数本必要。破壊の聖剣(エクスカリバー・デストラクション)の持ち主は逃げたが、お前たちの夢幻の聖剣(エクスカリバー・ナイトメア)擬態の聖剣(エクスカリバー・ミミック)の二本があれば問題ない。奪い取るついでに殺してやろうと思ってな」

 

 クソが。

 俺達の命はおまけかよ。

 

「そら。先ほどの続きだ」

 

 また、百本近くの槍が降ってくる。

 それを二本の剣で撃ち落としていく。

 撃ち落とす。

 撃ち落とす。

 だが、ついに右手のエクスカリバーが弾かれた。

 

 魔法陣から、聖竜剣を取り出し、撃ち落とし続ける。

 すぐ壊れては、取り出しを繰り返す。

 壊れた金属片と光のカケラが体中を細かく斬り刻む。

 

「もういいよ銀七。もう……」

「よくねぇ!」

 

 俺の血飛沫を浴びて体中を真っ赤に染めたイリナが弱音を吐くが、大声でそれを否定する。

 

「俺は――女泣かせた上、死なせてまで金も未来も欲しいわけじゃねえんだよ!」

 

 脇腹と右足に槍が突き刺さる。

 その痛みに顔をしかめながらも、手は止めない。

 

「なになに? なんでござんすか? まさかお涙頂戴とか? ぷぷー。だっせェェェェェェ!」

「ふん。くだらん寸劇に付き合うつもりはない。もう消えろ!」

 

 巨大な槍が迫ってくる。

 それを聖竜剣と雷切で受け止める。

 

「オォォォォォ!」

 

 無理やり、仙術で底上げした力任せに槍を斬り裂く。

 だが、その代償に雷切と聖竜剣が砕けた。

 かき消した巨大な槍の向こうには――更に大きな槍。

 

 これは……無理だな。

 壊せない。

 あーあ。死ぬのかね?

 ゼノヴィア。泣かせたまんまだったな。

 泣かせちまったこと、謝んねえとな。

 ああ。なんだ。……まだ死ぬわけにはいかねぇな。

 仕方ない。奥の手だ。

 

「エリアル。――禁手(バランス・ブレイク)

 

 次の瞬間、廃墟が全壊する。

 崩壊していく瓦礫の中、俺はイリナを抱えて――巨大で金属質な灰色の龍の背中にしがみついて逃げた。




拙い文でごめんなさい。
戦闘、きちんと描写できていればいいんですけど……。
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