ハイスクールS×D 聖剣番犬のダイヤモンド   作:ヤギ3

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第2話

 ごきげんよう。兵藤一誠ことイッセーです。

 俺が所属しているオカルト研究部のリアス・グレモリー部長の『兵士』(ポーン)になってからいろいろなことがありました。

 堕天使レイナーレに殺されたり、ブッ飛ばしたり。焼き鳥野郎ことライザー・フェニックスにブッ飛ばされたり、ブッ飛ばしたり。

 俺もそんなことをしてきたから、それなりに度胸はついてきていると思っている。

 それでも、やっぱりいきなりというのは、驚くモノで……。

 

「せ、生徒会長……?」

 

 支取蒼那先輩。俺のひとつ上の学年、三年生の先輩だ。

 名前は、和名だが日本人離れしたスレンダーで知的な美人さんだ。

 男子よりも女子の人気が圧倒的で、リアス部長や部長の『女王』(クイーン)である朱乃さんと並ぶこの学園を代表する美女だ。

 そのとなりには、生徒会の関係者であろう男子生徒がいた。たしか、書記として最近、生徒会に入った男子生徒だっけ?

 

「なんだ、リアス先輩、もしかして俺たちのことを兵藤に話してないんですか? 同じ悪魔なのに気がつかないほうもおかしいけどさ」

「サジ、基本的に私たちは『表』の生活以外ではお互いに干渉しないことになっているのだから仕方ないのよ。それに彼は悪魔になって日が浅いわ。兵藤くんは当然の反応をしてるだけ」

 

 ――ま、まさか……。

 生徒会メンバーも悪魔なのか? オカルト研究部の部員だけじゃなかったのかよ!

 

「この学園の生徒会長、支取蒼那さまの真実のお名前はソーナ・シトリー。上級悪魔シトリー家の次期当主さまですわ」

 

 じ、上級悪魔!

 部長の他にもこの学校にいたのかよ!

 そのあとも、朱乃さんの説明は続く。曰く、シトリー家は、部長の家やフェニックスと同じ悪魔、天使、堕天使三竦みの戦争で生き残った家系である。『表』の生活では、シトリー家が支配している。……ということらしい。

 

「会長と俺たちシトリー眷属の悪魔が日中動き回っているからこそ、平和な学園生活をおくれているんだ。それだけは覚えておいてくれてもバチは当たらないぜ? ちなみに俺の名前は匙元士郎。二年生で会長の『兵士』(ポーン)だ」

「おおっ、同学年で同じ『兵士』か!」

 

 なんという奇遇!

 同学年で同じ駒の奴がいるとは……なんか少し嬉しいな。

 だが匙は、気が重そうに溜息をつく。

 

「俺としては、変態三人組の一人であるお前と同じなんてのが酷くプライド傷つくんだけどな……」

「なっ、なんだと!」

「おっ? やるか? こう見えても俺は駒四つ消費の『兵士』だぜ? 最近悪魔になったばかりだが、兵藤なんぞに負けるかよ」

 

 一触即発。

 一言で表すならそんな空気が部室内に漂う。

 

「――?」

 

 アーシア……。

 何故か、アーシアは首を傾げていた。可愛いよ? 可愛いけどさ……時と場合を考えようよ。そういう空気じゃないでしょ。

 やる気の匙を目の前に、俺はビミョーな顔で対峙していると、

 

「サジ、お止めなさい」

 

 会長のそんな言葉が聞こえてくる。

 

「し、しかし、会長!」

 

 その後に続いたのは、匙に対する会長のお説教だった。

 匙は随分驚いていた。俺が駒『七つ』消費の『兵士』であることと俺がライザー・フェニックスを倒したことを。

 匙は、木場か朱乃さんがライザーを倒して部長を救い出したものだとばかり思っていたらしい。

 気持ちは分からなくないけどな。俺もライザーに勝てたのは、奇跡に等しいと思っているし。実際、左腕をドライグに差し出してようやく勝てたし。

 

「ごめんなさい、兵藤一誠くん、アーシア・アルジェントさん。うちの眷属はあなたよりも実績がないので失礼な部分が多いのです。よろしければ同じ新人の悪魔同士仲良くしてあげてください。……サジ」

「え、あ、はい……よろしく」

 

 実に不満そうだ。

 顔に「私は不満ですよー」と書いている。そういうのに鈍い俺でも気付くぐらい分かりやすい。

 

「はい、よろしくお願いします」

「アーシアさんなら大歓迎だよ!」

 

 匙がアーシアの手を取って、手のひらを返したように軟化した態度で――というより浮かれた態度で――返事をする。

 このヤロォ……!

 

「ハハハ! 匙くん! 俺のこともよろしくね! つーか、アーシアに手を出したらマジ殺すからね、匙くん!」

 

 無理やり作った笑みを浮かべながら、アーシアと匙の手を引き離して思いっきり握って挨拶してやった。

 そうすると、あっちも引きつった笑みを浮かべて手の握り(潰し)返してきた。

 

「うんうん! よろしくね、兵藤くん! 金髪美少女を独り占めなんて本当にエロエロな鬼畜くんなんだね! やー、天罰でも起きないものかな! 下校途中、落雷にでもあたって死んでしまえ!」

 

 お互い引きつった笑みを浮かべながら、相手の手を全力で握りあっている。旗から見たら異様な光景だろう。

 だが、コイツだけはマジで許さん。アーシアに手を出したらどうしてくれようか――!

 

「あの、サジさん」

「ア、アーシア!?」

「なんだい、アーシアさん!」

 

 一体何だというのだろうか!

 アーシアが……ウチのアーシアがよりにもよって匙なんかに相談しているだと!? つーか、匙の勝ち誇った顔が鬱陶しい!

 

「サジさんの神器ってドラゴン系じゃないですか?」

「っ!? よく分かったね」

「やっぱりそうですか!」

 

 当たったことが嬉しいのか、顔に満面の笑みを浮かべるアーシア。可愛いさ。可愛いけどさ。どうして、アーシアに匙の神器がドラゴン系か分かったんだ?

 

「アーシアさん。なぜサジの神器がドラゴン系だとわかったんですか?」

 

 興味津々といった感じで、会長がアーシアに尋ねる。

 だが、興味が有るのは会長だけじゃないらしい。部室にいる全員がなぜ匙の神器を言い当てることが出来たのか興味が有るらしい。当事者の匙も。当然、俺も。

 

「教会にいた時にドラゴン系神器に封印されていたドラゴンさんから、ドラゴンの気配の察し方というのを教わっていたんです。レーディングゲームを行った時に、自分にできることはやるべきだと思って、当時のことを思い出しながら練習していたんです」

「一緒にイッセーが暮らしていたから、練習には困らなかったでしょうね」

 

 部長の言葉に俺は、左手を見る。

 俺の左手には神すら殺す可能性を持つ『神滅具』(ロンギヌス)である『赤龍帝の籠手』(ブーステッド・ギア)が宿っている。その中には『赤き龍の帝王』(ウェルシュ・ドラゴン)ことドライグというドラゴンが封印されている。

 文句なしでドラゴン系の神器だ。

 なるほど。部長の言ったとおり、ドラゴンの気配を探る練習台には持って来いだろう。

 

「教会ということは、エクソシストね。一体誰に教わったのかしら。ドラゴンの気配を察知できるような神器使いであれば、名が知られていると思うのだけれど」

 

 上級悪魔で色々なことを知っている部長と会長ですら知らなかったことだ。そんなことを知っているエクソシストがいるなら、名前が売れていてもおかしくないだろう。

 

「えーっと。教会では『番犬』と呼ばれていました」

「『番犬』ですって!?」

「あらあら……」

「……意外と大物が出て来ましたね」

 

『番犬』?

 あんまり強そうな名前じゃないんだけど……。部長や朱乃さんがビックリしているし、そんなにすごいやつなのかな?

 

「部長。『番犬』って」

「教会でも有名なエクソシストのことよ。特に、神を信仰しないエクソシストということで有名ね」

「え!? そいつ本当にエクソシスト何ですか!?」

 

 エクソシストってキリスト教の信者の中から選ばれる存在じゃないのか!? 神を信仰しないって……前提からオカシイじゃないか!?

 

「『番犬』に関しては、例外なの。……イッセー。堕天使を覚えているかしら」

「……ええ」

 

 俺が悪魔になるキッカケとなった出来事。堕天使レイナーレに殺されたこと。

 今でも、トラウマだ。本当に好きだったのに、アイツはそんなことを思っておらず、内心では俺を殺そうと考えていて、殺された。

 当時は、裏切られた気分になったものだ。……あまり思い出したくない。

 

「堕天使たちが使う『光』。アレと同じものを『番犬』は操ることが出来るの。しかも、威力も濃度もあの堕天使の比じゃないわ。下手をすると上級の堕天使すら凌駕するわ」

「う、嘘ですよね?」

「本当のことよ。……あまり信じたくないことではあるけどね」

 

 堕天使たちが操る『光』。アレって悪魔にとって猛毒だったはず。しかもレイナーレの比じゃないって……アレで俺死にかけたんだぞ!? いや、実際に死んだけど!

 そんなものを操るエクソシスト。悪魔にとっては最悪の相手じゃないか!

 そりゃ、有名にもなるよね!

 

「そんな風に悪魔祓いを悪魔狩りという規模で行える、悪魔に対しての絶対の優位性から特例としてエクソシストとして生きることをヴァチカンから許された例外中の例外。それが『番犬』よ」

「当然、悪魔内でも有名です。天敵ですからね」

 

 部長の言葉に続けるように会長が口を開き、説明を続ける。

 

「教会内では『番犬』と呼ばれるだけですが、悪魔内では『悪魔狩り』『光竜使い』『竜騎士』……マイナーなものだと『悪魔専門の掃除屋』(バスター・オブ・デヴィル)というのもありましたね」

 

 ぶ、物騒な二つ名ばかりだな……。

 そんなやつとアーシアが知り合いだったのか……アーシアが無事でよかった。

 

「よく『番犬』と知り合いでしたね」

「はい。銀七さんって名前なんですけど、はぐれ悪魔の討伐で傷をよく作る人でしたのでその傷を治すために、よく私のもとを訪れていました。……今思えば、友達と呼べる人がいるなら彼のことかも知れません」

 

 アーシアが少し寂しそうな、でもほんのちょっぴり楽しそうな複雑な顔で微笑む。

 アーシアも教会時代はいろいろあったわけだし、その時のことを思い出すのは複雑な気分なのだろう。俺が堕天使のことを思い出す事と同じように。

 

「ま、なんにせよ。お互いのルーキー紹介はこれで終わりね。そうでしょう? ソーナ」

「ええ、そうね。それでは、私達はこれで失礼させていただきます。昼休みに片付けたい書類がありますので」

 

 会長はソファーから立ち上がり、部室を後にしようとする。

 それに合わせて、俺とアーシアも立ち上がる。

 

「会長――ソーナ・シトリーさん…………さま。これからもよろしくお願いします」

「よ、よろしくお願いします」

 

 会長は薄く微笑むと「ええ、よろしくお願いします」と返してくれた。

 

「リアス、球技大会が楽しみね」

「ええ、本当に」

 

 直前にまで迫った球技大会の宣戦布告とも思える会話をお互いに交わして会長は去っていった。

 ――ああ、会長と部長は仲がいいんだな。

 短いながらも、そう理解するには十分だった。

 

 ☆

 

「ヘックシュ! ……なんだ? 誰か噂でもしているのか?」

 

 俺――水澄銀七は駒王学園付近の拠点にしている小さい一軒家(教会が提供してくれた)の天井を見つめながら呟く。……風邪を引いている感じじゃないし、たぶんそうだろう。

 ……全く、眉唾ものだと思っていた迷信を信じるようになるとは、そんなに余裕が無いのかねぇ、俺は。

 

「それこれも、テメェらが問題を起こすからだけどな!」

「「ヒィ!」」

 

 目の前には、正座しているゼノヴィアとイリナがいる。イリナの背後には、隠すように白い布で巻かれた長方形状のものが鎮座している。……隠れてねぇけど。

 ゼノヴィアもイリナも慣れない正座をしているせいか、顔をしかめている。

 

「イ、イリナ……。私はもう……足の感覚がない」

「甘いわね、ゼノヴィア……私は十分前から感覚がないわよ……」

「そんなことで自慢するんじゃねえよ。つーかイリナ。テメェは日本人だろうが。外人のゼノヴィアに負けんなよ」

「し、仕方ないじゃない。正座なんてやったこと無いんだから」

「ハァ……」

 

 説教のためにゼノヴィアとイリナに正座を強要して十二分。イリナは二分で駄目だったらしい。

 ホントに日本人かよ、コイツ。

 

「説教をするなら、早くはじめてやればどうだ? その方が彼女たちのためにもなるだろう」

「お前は女に甘いな、エリアル」

「そうか? そんなつもりは無いんだがな」

 

 傍らのテーブルに腰掛けている灰色の竜――エリアルが口を開く。

 コイツは『竜の人形』(ドラゴン・ドール)と呼ばれる俺の神器(セイクリッド・ギア)に封印されているドラゴンだ。封印と言っても、力と姿に制限を設ける程度で、完全な自立型の神器だ。俺がわざわざ力を使おうとする必要もない。

 一説によると、『竜の人形』は同じドラゴン系神器『龍の手』(トゥワイス・クリティカル)の亜種だとか。もっとも、確証も何も無いんだけどな。

 

「まあいい。まずはゼノヴィア。……管理が適当すぎるんだよ。テメェに預けた路銀全部落とすってどういうことだコラ」

「いや、物珍しいモノがたくさんあったからつい……」

「つい、じゃねえよ」

 

 ゼノヴィアから目を離し、今度はイリナに視線を向ける。

 

「イリナァ……その後ろのモンはなんだ?」

「こ、これは……聖なるお方が描かれた絵画で……」

「どう見てもパチもんだろうが!」

 

 イリナの背後にある絵画に向かって手を伸ばす。イリナが「い、いや、やめて! お願いだからやめて!」等と言っているが、無視だ。

 絵画を覆い隠している白い布を取り払う。

 中から現れたのは、辛うじて剣と槍を持った人だと分かるヘッタクソな絵だった。

 

「誰だよ、これ! ゲオルギウスとでも言うのか!」

「そうよ!」

「テメェはほんとにクリスチャンか! よく見ろ! ぜってー違う!」

 

 どう見ても槍と剣でドラゴンを退治した聖人なんぞに見えない。良くて、槍と剣を持った道化師だ。これで大道芸でもする場面しか思い浮かばない。

 捨ててやろうか、と思い、イリナの後ろの大きさだけは一人前の絵画を見ると――イリナが泣きだした。目尻に涙をためている。

 そんなに大切なモノかよこれ――!

 

「~~~~ッ! たくっ! 今回だけだ!」

「「へっ?」」

「だぁから、今回は許してやるから次からすんなって言っているんだよ!」

 

 そういった瞬間、笑顔になって「さすが!」とか「やさしい!」とかこっちを褒めてくる。……現金な奴らだ。

 ま、今回はこいつらの信仰が先走ってのことだと思ってお咎め無しってことにしておく。信者に信仰心を抑えろなんて言っても無駄なことは骨身に染みている。次から気をつけろと言っておいたほうが良いだろう。それに、コカビエルとの戦闘とはぐれエクソシストとの戦闘、グレモリーにシトリーとの交渉などやることは山積みだ。こいつらを何時までも叱っている時間はない。

 ……いつの間にか、ゼノヴィアとイリナ(プラス変な絵)がどこかに行っていた。痺れた足で這って行ったのだろうか。俺に言えば、エリアルに運ばせたのに。

 

「クククッ」

「なんだ」

 

 声のした方を見れば、笑いを堪えているエリアルがいた。

 

「全く。私に対して女に甘いとは……君が言える話ではないだろう、銀七。君も十二分に甘いではないか。イリナ嬢とゼノヴィア嬢があまりにも必死だったから許してやろうと思ったことすら自分の中で適当な理由をつけて正当化するとは……。随分と可愛らしい真似をする」

「なァ!」

「いやはや、君以上のフェミニスト、いや、少し違うか。君以上に仲間思いな奴など、昔に会ったアーシア嬢ぐらいのものだな」

「そ、そんなんじゃねえよ!」

「そう照れるな。こういうのを巷では、ツンデレ……と呼ぶのだったか?」

「~~~~ッ!」

 

 言うことに欠いてなんちゅう事を言っているのだ、このハネトカゲは!

 俺のどこがツンデレだ! そんなんじゃねぇ! 断じてねぇ!

 適当な理由をつけたんじゃなくて、正当な理由があっただけだ! だから、イリナとゼノヴィアを許しただけだ!

 仲間に甘いとか、そんなんじゃねえ!

 

「クククク。アイスティーでも飲むか? まずは、その熱した鉄のように赤くなった顔を冷ますことに専念するといい。……愛の告白を目前に控えた年頃の女性のようだぞ」

「るせぇ! つーか、そんな三流恋愛ドラマの内容をどっから仕入れてくるんだよ!」

「なに、風のウワサでそんな話があると聞いただけさ」

 

 カラン、という氷の音と共にアイスティーが目の前のテーブルに置かれる。市販の紅茶だ。

 日本人ではないゼノヴィアもいるし、一応買っておいたものだ。

 

「風のウワサでそんなことが耳に入るか」

「いやいや、そう馬鹿にするものじゃないぞ。風はどこにでも吹く。いろんなことを運んできてくれるものさ。今も数百年前も変わらない。

 早くアイスティーを飲め。『教会の番犬が恋する乙女のように羞恥に顔を赤らめていた』などと風に運ばれぬうちにな」

「アァ―――!」

 

 ついつい、とんでも無い奇声を上げてしまった。

 頭をぐしゃぐしゃと掻き毟ったせいで、髪の毛が所々ハネている。まるで、寝起きのようだ。

 エリアルの言うとおり、アイスティーを一気に飲み干す。

 

「片付けよろしく! 俺は明日に備えて寝る!」

「了解した、我が主」

 

 バンッと扉を勢い良く占めて自分の部屋へ向かう。

 

「……今回は可愛らしい主に巡りあったものだ」

 

 エリアルのそんな呟きが聞こえた気がした。

 誰が可愛いだ。誰が。

 




話、進んでねえ……

まぁ、今回は、主人公のウワサと本当のところ……みたいなものだと思っておいてください。
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