ハイスクールS×D 聖剣番犬のダイヤモンド   作:ヤギ3

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第3話

「さてと、それじゃ今後の方針だが」

「どうするつもりだ、銀七」

 

 一夜明け、少し早めの朝ごはん後の作戦会議。

 ゼノヴィアから質問がくる。

 俺と一緒の任務につく時の日常だ。こいつは、作戦なんかを考えるのが苦手みたいだからな。イリナにも言えることだが、特にゼノヴィアはそれが目立つ。基本的にこいつは、パワー任せだからな。

 必然的に俺が参謀のポジションにつくことが多い。……どっちかっていうと、俺もそういうことは苦手なんだがな。

 

「簡単に言えば、まずシトリーと交渉。こいつは俺とエリアルでする」

「大丈夫なの?」

「大丈夫さ。誰に言っている。俺たちは天下の『番犬』だぞ。心配するなら、俺に勝てるようになってからするんだな」

 

 俺は、ゼノヴィアとイリナよりも強い。

 剣の腕だけでこいつらと対等に戦える自信がある。そして俺には神器がある。強力な神器が。その事をイリナも分かっているのか、「それもそうね」と言ってあっさり引いた。

 

「それにしても、なぜシトリーからなのだ?」

「シトリーの姉は、外交担当の現レヴィアタンだからな。下手なことはしないだろう」

 

 妹であるシトリーが外交で失態を起こすと、姉であるレヴィアタンの評価と信用が落ちる。ただでさえ悪魔は現魔王と旧魔王という問題の種がある。好き好んで問題になることをするとは、思えない。

 

「それに、真っ正面からグレモリーの消滅の魔力と対峙するような真似は恐いからなぁ」

「情けないぞ、銀七。我々はエクソシストだ。悪魔との戦闘を恐れてはいけない」

 

 そうは言うがな、グレモリーの、正確にはバアル家の消滅の魔力は、その名のとおり触れたモノを消滅させる力がある。

 危険度は、他の悪魔と比べて高い。

 そんな悪魔とまともに対立したくないのだ。

 そんなわけだから、まずはシトリーから。そのあとにグレモリーと交渉。

 シトリーがまともに交渉した事実があれば、グレモリーも表立っては敵対してこないだろう。

 悪魔とはいえ、腐っても貴族だ。いわゆる貴族の義務――ノブレス・オブリージュは守るだろう。自分の家柄、存在に誇りを持っているなら。

 グレモリーは決して、自身と身内を貶めるような無様な真似はしない。情愛が深く、身内を大切にするグレモリーの悪魔なら確実に。

 

「……相変わらず賢しいな、銀七。私は、君が悪魔にとっての天敵と成り得る理由は、その賢しさ故と思う時があるよ」

「お褒めに預かり恐悦至極だよ、エリアル」

 

 灰色の人形竜が此方に向けて言葉を投げかける。

 

「さてと、他に何かすることがあるか?」

「はいっ! 久しぶりにイッセーくんのお家に行きたい!」

「イッセーくん?」

「うん。昔の友達」

 

 そういえば、イリナの故郷はここだったか。

 イリナ自身、今回のことについて「因果なものねー」なんて間の抜けたことを言っていた。

 

「まあいいだろ。久しぶりの故郷だ。少しぐらい過去を懐かしんでもバチは当たらんだろ」

「やった! さすが銀七!」

 

 満面の笑みを浮かべるイリナ。

 

「それじゃ、各々行動開始だ。……と言っても、最初のうちは俺とエリアルだけだがな。ゼノヴィアとイリナはここに待機。近くに悪魔の反応が出た時は、剣を抜かずに警戒。堕天使の場合は、剣を抜いて臨戦態勢。オーケイ?」

「オーケイ」

「分かった」

 

 机から立ち上がり、相棒である灰色の人形竜を見る。

 

「行くぞ、エリアル」

「承知した」

 

 エリアルは机の上から三対六翼の金属質な翼を羽ばたかせて、俺の肩に乗ってくる。肩に乗せるには少々デカイが、大抵の場合はこの運び方だ。もう慣れた。

 

「ああ、そうそう」

 

 廊下前の扉のドアノブに手を掛ける前に、思い出したことを言っておく。

 

「俺がシトリーと交渉してくる間に教会に行ってくれ」

「教会?」

「ああ、あの教会ね」

 

 ゼノヴィアは首を傾げていたが、イリナは教会にアテがあるのか分かっているような表情だ。流石に故郷の地理は頭の中に入っているらしい。

 

「そこで先に送り込んでいたらしい神父と対談の予定だ。お前らが出ろ。基本的に話し合う必要はない。神父の話を聞いてくるだけでいい。なんなら、ボイスレコーダーだけ持って行って、寝ていても構わねえぜ? その後は、さっき言ったとおりだ」

 

 そのまま、ドアノブをひねって廊下に出る。

 小さな一軒家、ただの民家の廊下は酷く寂しく冷たいものを思い出す。そして――

 

「ああ、ダメだ。イラナイことまで思い出してしまう。くそっ! 教会の連中め……俺に対する嫌がらせか?」

 

 玄関でイリナやゼノヴィアが来ているような白いローブを手にとって、それを眺める。

 

「嫌か?」

「嫌だね」

「相変わらずの宗教嫌いだな。だが仕事だ」

「分かっている」

 

 十字架のネックレスを首から下げる。

 大きめな純銀の十字架を手の中で弄ぶ。

 ゼノヴィアやイリナからしてみれば、神々しい印象を受けるらしいが、俺はケバケバしい印象しか受けない。他に思うことなんて『成金趣味』ぐらいしかない。

 

「……無駄金注ぎ込みやがって。金を本当に必要としている奴らはテメェら以外にいるだろうが」

「金好きも相変わらずのようだ」

 

 くつくつと喉を鳴らすような笑い声を上げるエリアル。

 まるで、俺が守銭奴である様な言いようだな。……ああ、クソ! そうさ。俺は守銭奴だよ。だけど、この性格を俺は気に入っている。俺は金の大切さを知っている。

 大人たちは言う。「金で買えない大切なものもある」と。

 神父たちは言う。「強欲は罪であり、欲を制することこそ善である」と。

 どれも間違ってはいない。むしろ正しいだろう。金で友情は、愛情は、心情は買えない。欲に溺れ、好きなモノを好きなだけ貪ることは身の破滅しかもたらさない害悪だ。

 

 だけど、金で買える幸せが、金で防げる不幸が――金で守れる日常があることも事実だ。

 

 だから人は、仕事して金を稼いで家族を養って幸せを手に入れようと努力している。

 その姿が――幸せを一途に望む姿が罪なわけがない。罪であっていいはずがない。

 

 ――神は人を『救わない』のだから。

 

「行ってきます」

 

 やっぱりダメだ。らしくない。

 家族と一緒に過ごした家に似ているせいか、いつも以上に気を抜いていしまう。

 エクソシストの証である金糸の刺繍をしてあるローブを着てシトリーとグレモリーのいる駒王学園へ向かう。

 

 ☆

 

「へぇ、神父さんなんですか」

「説教もしない生臭坊主だけどな」

 

 いきなりだが、俺のスペックを紹介しよう。スペックと言っても戦闘の……というわけではなく、俺のプロフィールみたいなもののことだ。

 

 名前は水澄銀七。

 澄んだ水に七つの銀。

 悪魔や吸血鬼の弱点である澄んだ水(いわゆる聖水)に、これまた悪魔や吸血鬼の弱点の銀。しかも幸運の証である七、聖書でも色々な意味を持つ七の数字。

 俺のキャラじゃないが、どこか運命的なものすら感じてしまう。

 名前からして、今の地位に立つべくして立った感じ。

 

 歳は――十三歳から数えてないから細かいところは分からないが、日本では高校二年生であるということだけ分かっている。

 正直、はぐれ悪魔との殺し合い生活を何年も休みもナシで続けていれば、歳なんて気にしている暇が無くなる。

 

 見た目は男子高校生としては平均的な身長に女性要素が少し混じっていると呼ばれる微中性的な見た目らしい。女装すれば女に見られるが、普段は男と認識されるレベルだ。知り合いの中で一番似ている奴は男っぽいゼノヴィアだろう。

 顔立ちは、イタズラ好きそうな顔をしているとよく言われる。総合評価は上の下。地味で目立たないが整っている。だけど、年頃の女の子は不良っぽいところに騙されてコロッといっちゃうかもしれないとは……誰の評価だったかな? まぁ、とある女性の意見はこんなものだ。

 

 髪の毛は、黒色。

 イリナに使っているシャンプーと洗い方を聞かれるぐらい髪質は良いらしい。

 他には、体質的に太りにくいってことぐらいかな。

 

「あはは。そうなんですか~。大変ですね~」

「ああ、大変なんだ。同僚はどうにも書類仕事というか事務系の仕事がニガテでね」

 

 つまり、元女子校の校門前に白ローブなんて派手かつ目立つ格好で立っていると、女子生徒に話ぐらいかけられる。

 暇つぶしには良いんだが、こっちも仕事でやっている。いかにもエクソシストですよ、という格好で悪魔の領域内にいるというのに警戒が疎かになる。それは一応マズイのだ。

 ちなみに、さっき言った同僚はゼノヴィアとイリナのことだ。どっちも体育会系だからな。悪魔相手は強いが、書類相手はニガテで嫌いのようだ。

 

「何をしているんですか? ……あと少しでホームルームですよ」

 

 凛とした声が響く。

 声の主は、槍のようなものを背負った女性が傍らに立つスレンダーなメガネ美女だ。偏見だが、生徒会長や生徒委員長とかやっていそうだ。

 

「あ、生徒会長……」

 

 どうやら、あたっていたらしい。

 女子生徒はその生徒会長の言葉通りに僕のもとから離れて、校舎の中へと消えていく。不満そうな顔もしないとは、随分と人気なんだな。生徒会長殿は。

 

「それで、アンタはホームルームに向かわないのか? 生徒会長。……それとも、シトリー殿って呼んだほうがいいか?」

「……エクソシストが何のようですか?」

 

 警戒。

 やはり、警戒されるか。……当然だけどな。

 俺も警戒していたし、エクソシストと悪魔の関係なんてこんなものだ。見下したような眼でない分、心地よさすら感じる。

 

「ちょっと、用があってね。アンタとグレモリーに」

「そしてまずは、私……というわけですか」

「そうだぜ。アンタ、レヴィアタンの妹だからな。外交……得意だろ? 話ぐらいなら聞いてくれるだろうと思ったのさ」

「はぁ。分かりました。話を聞きましょう」

 

 よっしゃ。目論見通り。

 暗に「姉であるレヴィアタンの顔に泥なんて塗らないよな?」と、半ば脅しに近いようなことを言ったかいがある。

 

「まずは、自己紹介から。俺の名前は水澄銀七。教会からは『番犬』って呼ばれている」

「噂をすれば影というのも、案外馬鹿に出来ませんね」

「俺の噂でもしてたのか?」

「はい。ちょうど」

「ふぅん」

 

 俺にとっては、よくあることだ。よくも悪くも話題になりやすい人間であることは、よく理解している。良い噂は、聞いたことがないけど。

 

「できれば、貴方の肩に乗っているドラゴンも紹介していただければ、ありがたいのですが」

「ああ。それもそうだな。……エリアル」

「エリアルだ。よろしく頼むよシトリー嬢」

「よろしくお願いします。私はシトリー家次期当主、ソーナ・シトリーです。この学園の生徒会長をしています」

 

 意外だったな。

 シトリーがいるとは事前に聞いていたが、まさか次期当主殿が直々に通っているとは思いもしなかった。

 

「シトリー。アンタの城に招待してくれ。立って話すような内容じゃないしな」

「……相当に込み入った話のようですね。わかりました。ついてきてください」

 

 ソーナ・シトリーとの会談の席は設けることが出来た。基本的に、こちらの要求は気分を害するようなものではあるが、下手に手を出したら戦争が勃発しかねない案件だ。何もしなくていい、と言われれば、素直に応じるだろう。

 触らぬ神に祟り無し。そんな言葉も知らないほど、ソーナ・シトリーは無能じゃなさそうだし。

 シトリーとの交渉はほとんど成功したようなものだな。

 ゼノヴィアたちに良い報告が出来そうだ。




話が進まねえ……。
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