ハイスクールS×D 聖剣番犬のダイヤモンド   作:ヤギ3

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ちょっと、超展開過ぎたかな……


第4話

 翌日。

 グレモリー眷属の悪魔と対談できるようになっていた。

 さすがシトリー。さすが外交担当である魔王レヴィアタンの妹。とでも言うべき手際の良さだ。

 この時点で、教会のお上よりも好感度が上である。

 グレモリー眷属及びサーゼクス・ルシファーの妹、リアス・グレモリーは駒王学園の制服に身を包んでいた。対して俺たちは、ゼノヴィアとイリナが例の白いローブで俺は戦闘用の服を着ている。まぁ、刀が滑らないようにする指ぬきグローブと頑丈な茶色いブーツのほかは、ただの神父服というだけだけど。

 ああ、勿論、白いローブもある。脱いだだけだ。椅子にかけている。無造作に扱う姿にゼノヴィアたちはかなり苦い表情をしていたけども。

 

「さて、それでは話を始めるか」

「人形が喋った……」

「俺の神器だ。気にするな」

 

 茶髪の少年――イリナが言っていた例のイッセー君が口を開く。まぁ、コイツはパッと見、金属質な竜の人形でしかないのだから。

 ……カネがない時は、こいつを使って技術も技も必要ない腹話術でカネを稼いだものだ。懐かしい。

 

「先日、カトリック教会本部ヴァチカン及び、プロテスタント側、正教会側に保管、管理されていた聖剣エクスカリバーが奪われました」

 

 イリナが今回の事件の発端を話すと、イッセー君がはてなマークを空中に飛ばしていた。

 見える。はてなマークが彼の頭上にあるのが見える。……いや、見えないよ。見えないけど、彼が放つ雰囲気のせいで見えるように見えるんだよ。

 

「聖剣エクスカリバーそのものは現存していないわ」

 

 彼の疑問に答えるように言葉を発したのは、リアス・グレモリーだった。

 自分の下僕の考えていることぐらいは、分かるようだ。若くても『王』(キング)ってワケか。なかなか、見所ありそうな悪魔じゃないか。

 

「ゴメンなさいね。私の下僕に悪魔に成り立ての子がいるから、エクスカリバーの説明込みで話を進めてもいいかしら」

「構わないぜ」

 

 説明程度なら問題無いだろう。つーか、説明しねえと話が進まねえしな。

 俺はイッセー君の方向に向いて、説明をする。

 

「まあ、まず大前提だが、剣って奴は消耗品だ。そこんところ、剣を使わないお前は理解しているか?」

「あ、ああ」

 

 イッセー君は、ぎこちない相槌を打つ。

 

「神話や伝説に残っている聖剣も一緒だ。大昔の戦争の時に四散しちまったのさ。四散した理由は分かってねえ。相手が強かったのか、聖剣の寿命だったのか、はたまた使い手が想像以上に使えねえ木偶の坊だったのか。もっとも、剣が折れる理由なんて強敵との戦闘、剣の寿命、使えねえ使い手の三つしかねえけどな」

 

 ……イッセー君は、なんか絶句している。

 よく見れば、グレモリー眷属全員だ。

 何か失言でもしただろうか。

 

「ウワサ以上に口汚いのね、『番犬』」

 

 ああ、そういうことか。納得した。

 確かに、俺は一般的な神父のイメージに掠りもしないぐらいの生臭坊主だからな。これで一応、聖職者を名乗っているんだから、何も知らない奴が聞いたらさぞかし驚くだろうな。

 

「ウワサなんてウワサでしかねえよ。ンなもん信じてんじゃねえよ。アホらしい」

「……以後、気をつけるわ」

 

 リアス・グレモリーは貴族、しかも魔王の身内だ。

 こんな風に真っ向から悪口を言われたことなどないのだろう。顔をかなりしかめている。ポーカフェイスはニガテか? そこら辺、『王』としては、まだまだ発展途上ということだろう。

 

「話を続けるぞ。エクスカリバーは伝説が聞いて呆れるほどぶっ壊れた。ぶっ壊れた時の破片を材料に出来上がったのが今のエクスカリバーだ」

 

 ゼノヴィアが側に立て掛けてあった、白い布に巻かれたエクスカリバーを取り出す。

 

「今はこのような姿さ――」

 

 するすると、包帯に似た布を解いていき、中から一本の長剣が姿を現す。

 

「これがエクスカリバーだ――」

 

 聖なるオーラが部室内に広がっていく。

 俺たち人間にとっては、無害だが、彼女たち悪魔にとっては超がいくつ付いても足りないほどの猛毒だ。

 そのことを感じ取っているのか、駒王学園オカルト研究部の悪魔たち全員が額から冷や汗を流す。

 反応が他と違うのは、剣術を嗜んでいるであろう金髪の男悪魔。平然としていれば女性にモテるであろう色男は、聖剣を前にして黒い笑みを浮かべている。

 悪魔らしいって言えば悪魔らしい笑顔ではあるわな。

 

「さっき説明されたように、大昔の戦争で折れたエクスカリバー。その四散した刃の破片を拾い集め、錬金術によって新たな姿となったのさ。そのとき、七本作られた。これがそのひとつ」

 

 七本全てのエクスカリバーで同一の能力はない。全てが多種多様。まさに千変万化と言える聖剣。しかも、聖剣としての格も最上級。

 故に、エクスカリバーを使うことが許されるエクソシストは限られている。とはいっても、行方不明の一本を除いた六本の内、二本を十代の女が所有し、更にはもう一本のエクスカリバーの使用権限を『犬』などと罵倒していたはずの人間に取られる始末。最近の聖剣使いの格は、ここまで下がってきているのだ。正直なトコロ、拍子抜けを通り越して哀れで溜め息も付けない。

 ちなみに、俺が使用を許されているエクスカリバーは『夢幻の聖剣(エクスカリバー・ナイトメア)』だ。幻を操ったり、相手を眠らせたり、便利な聖剣だ。

 それが今や、堕天使の手の中。手元から剣がなくなって寂しいやら、お上の間抜け面を拝めて楽しいやら。ちょっと複雑。

 

「私の持っているエクスカリバーは、『破壊の聖剣(エクスカリバー・デストラクション)』。七つに別れた聖剣の一つだよ。カトリックが管理している」

 

 エクスカリバーの一本『破壊の聖剣(エクスカリバー・デストラクション)

 能力は単純。斬ったものをぶち壊す。ズタズタに、完膚なきまでに破壊し尽くす、破壊力特化の聖剣。

 パワー馬鹿の脳筋であるゼノヴィアとはかなり相性の良い聖剣だ。

 イリナはイリナで、腕に括り付けてある紐を取り出し、それを日本刀へと変化させる。

 

「私の方は『擬態の聖剣(エクスカリバー・ミミック)』。こんな風にカタチを自由自在にできるから、持ち運びにすっごく便利なんだから。このようにエクスカリバーはそれぞれ特殊な力を有しているの。こちらはプロテスタント側が管理しているわ」

 

 俺が偶に使用し、操ることを得意とする聖剣の一本。『擬態の聖剣(エクスカリバー・ミミック)

 俺は魔法系の技を得意とする傾向にあるらしく、聖剣も一風変ったものを扱う才能のほうがある。逆に、『破壊の聖剣(エクスカリバー・デストラクション)』みたいな奴はニガテだ。

 

「イリナ……悪魔にわざわざエクスカリバーの能力を教える必要もないだろう?」

「あら、ゼノヴィア。いくら悪魔だからといっても信頼関係を築かなければ、この場ではしょうがないでしょう? それに、私の剣は能力を知られたからといって、この悪魔の皆さんに遅れを取るなんてことはないわ」

「剣『は』な。剣『は』」

「何でそんなに『は』を強調するのよ!」

「俺以上に聖剣の能力を使いこなせる用になってから言え」

 

 その言葉にイリナは凹んだようだ。

 俺と比べてイリナは、聖剣の能力を操っているとは言い難い状態なのだ。

擬態の聖剣(エクスカリバー・ミミック)』を俺が持った場合は、生き物のように操ることが可能だが、イリナの場合は、今のように紐から刀に……のような単純な形状変化しか出来ない。少なくとも流体のように操ることは出来ないようだ。イリナ曰く、そんなふうに動かせる俺のほうが異常らしいのだが。

 

「そういえば、貴方は聖剣を持っていないのかしら『番犬』」

「はっ。聖剣、聖剣ねぇ。持っているぜ。十本程な(・・・・)

 

 異空間から、聖剣を幾つか召喚する。グレモリーと俺たちの間にある木製の机の上に。今回は、十本程度しか持ってきてない。仮倉庫の中には、あと数十本存在するんだがな。

 至って一般的な長剣が複数。他にも短剣、長槍、短槍、戦斧、大鎌、中には弓矢や拳銃まである始末だ。

 我ながら、よくもここまで統一性を出せないものだ。

 

「愛刀は腰に差したままだがな。……よっと、これが俺の愛刀、『雷切』だ」

 

 腰から雷切と呼ばれる反りのない小太刀を鞘ごと抜き取り、テーブルの上に置く。

 その後に、隣にいるイリナとゼノヴィアがガタリと音を立てて立ち上がる。

 

「こ、これは一体どういうことだ!?」

「ち、ちょっと銀七! これって一体!? まさか盗んだ!?」

「……言ってなかったか?」

「「聞いてない!」」

 

 どうやら、ここにある聖なるオーラを放つ武器について彼女たちに説明してなかったようだ。

 

「要説明だな、銀七」

 

 エリアルの諭すような声。

 

「仕方ねえな。説明してやる。俺の『神器(セイクリッド・ギア)』ごとな。関係あるし」

「いいの?」

「いいさ。イリナの言ったとおり、今回は悪魔に対する信頼ぐらいはさせねえといけねえからな。それに、今ここで説明しないと、脳筋な狂犬に噛まれちまう」

「誰が狂犬だ!」

 

 ゼノヴィアがグルグルと喉を鳴らし始めたので、始めることにする。

 ……ったく。立派に狂犬やっているじゃねえかよ、ゼノヴィアのやつ。

 

「俺の神器の名は『竜の人形(ドラゴン・ドール)』。分類するなら、ドラゴン系自立型神器とでも分類するべき神器。ドラゴンを封じた人形を操る神器だ。絶対に操る必要はないんだけどな。自立型って言っているんだし」

「『竜の人形(ドラゴン・ドール)』……。随分と珍しい神器を持っているのね。それで、封じられているドラゴンは『七玉龍』の中の誰なのかしら」

「あの~、部長。『七玉龍』って何ですか」

 

 イッセー君がグレモリーに聞いている。そりゃ、成り立ての悪魔は知らないか。『二天龍』や『五大龍王』ほど有名じゃないんだし。

 むしろ、マイナーな方だ。

 

「それに関しては、私が説明しよう」

 

 エリアルが口を開く。

 突然の意見にグレモリーは少し驚いているようだ。

 

「あら、当事者が自ら説明してくれるのかしら」

「ああ。自己紹介ぐらいはできる。それに、だ。私だけ自己紹介を行っていないというのも座りが悪い。是非させてくれ」

「……わかったわ」

 

 許可が出た。

 エリアルが人形の瞳でイッセー君を見つめ、金属質な口を開く。

 

「私たち神器『竜の人形(ドラゴン・ドール)』は、『七玉龍』という七体の龍王の成り損ない(・・・・・・・・)が封じられている」

「龍王の成り損ない?」

「ああ、そうだ。二天龍と龍神を除いた世界最強の五体のドラゴンたち。それの成り損ないが『七玉龍』だ」

 

 七つの玉。

 七つの宝玉。

 龍たちの中でも特に光るものがあった七体の強力な龍たち。

 故に、『七玉龍』

『七玉龍』たちの特徴として、異名に宝石の名前がついている。

 

「簡単に言うなら、各属性のトップたちだな。例えば『紅玉龍(ルビードラゴン)』は炎を司る龍の中でも最強を誇る。龍王と比べても遜色ない。中には特殊な能力持ちもいた。それが私こと『金剛龍(ダイヤモンド・ドラゴン)』エリアルだ。神の軍勢に参加したわけではないのに、生まれつき聖なる光を操る力を持っていた。天使たちからしたら異質な龍だっただろうな。わからないものは怖いものな。だから、今では子犬以下の大きさの人形に詰められているわけさ。私たち『七玉龍』は、力が強いだけの龍だとでも思っていてもらえればいい。事実、神話などで書かれるほど大層な存在ではない」

 

 強力な穏健派ドラゴンたち。それが『七玉龍』の本性と言って良い。

 穏健派だから危険度が低く、神話や英雄譚では描かれないドラゴンたち。そして、戦争によって自分達は何一つしていないのに、神器に封じ込められた、戦争によるとばっちりを一番受けた連中。

 これを聞いた時、エリアルに少し同情した。

 

「神器に封じ込められても、力は使える。全盛期の何十分の一という非常に脆弱な能力だがな」

「その力の一つ。というか技の一つ。光を物質に纏わせ宿す能力『ファイバーエンチャント』の結果が、この大量の聖なる武器ってわけ。ドラゴンの力が宿っているわけだから、名前をつけるなら『聖竜剣』ってところか」

「何でそんなものを作ろうと思ったのかしら」

「いやさ、最近の聖剣使いは雑魚ばっかでよ。そいつらが討ち漏らした雑魚はぐれ悪魔の掃討命令もされるようになったんだよ。報酬は良い仕事なんだけど、退屈だから土産屋に売ってある模造刀とかを買って、研いで、『エンチャント』をかけてどこまでやれるかってゲームの戦利品。エンチャントを十回ぐらいかけたらこうなった。ちなみに、雷切は俺が個人的に所有している刀だ。これについては協会側にとやかく言われる筋合いはねえよ」

 

 その言葉に、協会側のエクソシスト、オカルト研究部の悪魔全員が溜め息を吐いた。仲間はずれは、とんでもなく殺気を放ってくる色男だけだ。

 

「んん。話を戻そう」

 

 その言葉に全員、我に返ったかのように顔を引き締める。

 グレモリーたちは、今回の犯人がコカビエルと教えると、酷く驚いた顔をしていた。それもそのはず。堕天使の組織『神の子を見張る者(グリゴリ)』の幹部。あの戦争を生き抜いた掛け値なしの強者だ。

 

「私たちの依頼――いや、注文とは私たちと堕天使のエクスカリバー争奪の戦いにこの町に巣食う悪魔が一切介入してこないこと。――つまり、そちらに今回の事件に関わるなと言いに来た」

 

 簡単に言えば、教会は堕天使と悪魔が手を組んで聖剣を神側から排除させようと考えるのでは、と悪魔を疑っているということだ。

 未成年で未だ経験浅い『王』ではあるが、それでも貴族の次期当主の『王』だ。その程度のことに気が付かないはずがない。

 当然のようにグレモリーは怒り、「魔王の顔に泥を塗るような真似はしない」と宣言してきた。贅沢三昧の司祭共に爪の垢を煎じて飲ませたいぐらいだ。

 グレモリーのたった三人だけで可能か、という質問に対しては、イリナもゼノヴィアも死んでも構わないという姿勢を見せたが、俺だけは「死にたくねえよなぁ。でも報酬が良いからやらざるを得ないんだよ」と言った。その発言に、またグレモリーが呆れたり、色々あった。

 

「話すことはもう話したな? よし、帰るぞ」

「そう、お茶は飲んでいかないの? お菓子ぐらい振舞わせていただくわ」

「あ、そう? それじゃ」

「いらない」

「ゴメンなさいね」

「オイ」

 

 せっかく食い物も飲み物もくれるって言ってんだから、素直に貰ってもいいじゃねえかよ。

 

「――兵藤一誠の家で出会った時、もしやと思ったが、『魔女』アーシア・アルジェントか?まさか、この地で会おうとは」

 

 は?

 アーシア?

 

「おいおい、気付いていなかったのか?」

「あー。確かに面影あるわ」

 

 アーシアとあったのは、数年前。成長期の頃だったからな。

 見違えたな。全く分からなかった。

 

「貴方が元『聖女』の魔女さん? まさか悪魔になっていたなんてね」

「しかし、悪魔か。『聖女』と呼ばれていた者。堕ちるところまで堕ちたものだな。まだ我らの神を信じているのか?」

 

 正直、ゼノヴィアもイリナもこの宗教家モードに入ると少しうるさい。

 人を引っ掻き回すはずの俺ですら、ノーサンキューなまでに舌が回るようになる。舌先三寸口八丁が宗教家に必要なモノと言われれば、そうだなと納得するけども。それでも、詐欺師よろしく口が回る人間を見て、あまりいい気分はしない。怖いし。

 それに、アーシアは神を未だに信じているだろうよ。俺には理解できないレベルで信じていた。最早、心酔していたと言っていいレベルだったんだから。

 

 不意にあの言葉が――俺が一番嫌いなあの言葉が聞こえてきた。

 

「ならば我らに斬られるといい。今なら神の名の下に断罪しよう。罪深くとも、我らの神なら『救いの手』を差し伸べてくださるはずだ」

「――――」

 

 ガッ! と剣を抜こうとしているゼノヴィアの白ローブを掴んで、行動を静止させる。

 

「……何をするんだ、銀七」

「……禁句だぞ、ゼノヴィア嬢」

「なに?」

 

 非難がましい目でこちらを見てくるが、そんなことはどうだっていい。

 今、コイツなんて言った?

 神の『救いの手』って言ったか?

 

「銀七、信者でもない君が邪魔していい問題じゃないぞ」

「そんなこたぁどうだっていいんだよ、クソが。テメェ、神の『救いの手』がどうのこうのって言ったか?」

「ああ、その通りだ。我らの神は慈悲深い存在であり――」

「どうでもいいんだよ、そんな野郎のことは」

「なっ!」

 

 ゼノヴィアが絶句している。それだけじゃない。イリナも、グレモリーも、イッセー君も、ここにいる全員が俺の発言に絶句している。

 

「どういう意味だ」

「だからどうでもいいって言っているだろうがよ。俺は、初めて会った日に言ったはずだぜ? 俺は宗教が大嫌いだって。もうひとつ教えてやる。俺が世界一嫌いな言葉は『神の救いの手』だ。この言葉を吐いた奴は八つ裂きにした後、灰も残さず焼き滅ぼしたくなるんだよ」

 

 とある詐欺師が言った『神が救ってくれる』と。

 ハンッ! 今にして思えば、とんだお笑い種だよ。こんな胡散臭いセリフのせいで――人生が狂ったなんてさ。

 

「その言葉はな、俺にとっちゃあ俺と俺の家族を地獄に叩き落とした言葉なんだよ。――そんなフザけたセリフでアーシアを、誰かを斬るってんならまずは俺を斬ってからにしろ」

「……ハァ。さすがにお前と戦っていては、命がいくつあっても足りない。それに、事情がありそうだ。……分かった。今回は引こう」

「理性的な判断。感謝するぞ、ゼノヴィア嬢。――ああ、それと。そこの少年は一体此方に何の用があるのかな?」

 

 小さな人形竜がその小さな瞳でとある一点を見つめる。その先にいるのは、例の色男。終始、殺気を放っていた美少年だ。

 

「ははっ。ようやく気付いてくれたね。……待ちくたびれたよ」

 

 底冷えするような冷え切った声。

 言葉の一つ一つがまるで氷竜のブレスのように凍えていた。

 

「何の用かな? 少年?」

「君と君の主には興味ないんだ。用があるのは、そこのエクスカリバー使い二人さ」

 

 今度は、色男からのご指名だ。

 

「では、私たちがもう一回問うことにしよう。……何のようだ」

「戦ってくれないかな、僕と」

「――君は一体何者だ?」

 

 本来は爽やかであろうはずの色男の美貌は憎悪で、数分前の俺の顔と同じ顔をしていた。

 彼は、悪魔らしい奈落(ゲヘナ)から響いてくるような、重く、冷たく、しかし憎悪の熱を含んだ言葉を放つ。

 

 ――君たちの先輩だよ。失敗だったそうだけどね――

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