ハイスクールS×D 聖剣番犬のダイヤモンド   作:ヤギ3

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第8話

「うぅぅ……」

 

 イリナが泣いている。ゼノヴィアも瞳に涙をためている。

 イリナとゼノヴィアは今回のことで、俺のことをいろいろと聞きたくなったらしい。

 教会の教えから遥かに逸脱した言動、宗教が嫌いという性格、悪魔を恨んでいる訳でもない。なのになぜ、教会に所属しているのか、疑問に思ったらしい。(余談だが、エリアルもイッセー君たちにほぼ同時刻に俺の過去を話していたことを後日知ることになる)

 

「まさか、銀七がここまで凄まじい過去を背負っていたとは思わなかった。優れたエクソシストとして期待されて育ったものとばかり……」

「ええそうね。主よ! 哀れな子羊に」

「救いの手ならいらねえぞ」

「いいえ。あなたには主の慈悲が必要だわ! ああ、可哀想な銀七。主を信じられないのはその過去のせいだったのね。でも大丈夫! その試練を乗り越えた時、あなたは真の信仰を手にすることが出来るの!」

 

 相変わらず、よくわからないところでテンションが高くなるやつだ。

 

「ああ、もう。取り敢えず、ここに神父服って結構あったよな?」

「ああ。だけど、これをどうするんだい?」

 

 ゼノヴィアが質問を投げかけてくる。

 そんなもの、決まっているだろう?

 

「悪魔諸君に着てもらうんだよ」

 

 ☆

 

「今日も収穫なしか」

 

 がっかりした様子で肩を落とす匙。

 俺たちは、エクスカリバーを破壊するために毎晩、探索している。木場は勿論、俺と小猫ちゃん、そして意外にも俺たちに負けないほどのやる気に満ちている匙、さらに特別ゲストということで、エリアルというメンバーで毎晩エクスカリバーを探して夜の町をさ迷っている。

 余談だが、エリアルははじめはさん付けで読んでいたんだけど、本人がいらないと言ったので、呼び捨てである。

 

「ふむ……今日は少し足を伸ばして、そこにいなかったら解散ということにしよう。こちらは神父服を着ている。見かけたら、あちらからアプローチがあるだろうさ」

 

 と、今ではすっかり俺たちの参謀ポジションについたエリアルが提案する。うん。その意見に賛成だ。町の方には居ないっぽいし。

 

 俺たちは今、神父が着るような服に身を包んでいる。銀七(こっちにも敬称はいらないと言われた)曰く、ここに住んでいる悪魔が殺されていないのに、神父は殺されたことから、悪魔と事を構えるつもりは現状、コカビエルにはないということらしい。もしくは、戦力増強のための小休止みたいなものかもしれないとのことだ。後者じゃないことを祈っておこう……。

 閑話休題。

 つまり、何かしらの理由で悪魔は襲われにくい。ようするに聖剣と遭遇しにくいということらしい。だから俺たちは神父の格好をしている。

 銀七の奴は、悪魔が神父の格好をしていること皮肉っぽくて面白いとか言っていた。それで良いのか、現役神父! しかも、嬉々としてアルミ缶から十字架の偽物を作っていたし!

 

「場所は、そうだな。ここら辺でどうだ?」

 

 おっと。

 いつの間にか話が決まったようだ。

 木場の携帯電話に映った地図を足で器用に指し示している。そこは――

 

「バイザーと戦った場所」

 

 そう、俺が悪魔になりたてだったころに討伐したはぐれ悪魔のバイザーと部長たちが戦った場所だった。

 

 ☆

 

「……そうですか。ありがとうございます」

「いえいえ」

 

 俺たちは今、聞き込みの最中だ。

 最近あった不思議なことはないか、最近起こった不審な事件はないか、そんなことを一般人に聞いて回っている。体面的には、ここら辺に赴任してきた神父――俺はカトリック所属なので、牧師だが――として、悪しきものを祓いたい、と、敬虔なクリスチャンを装って。

 そこから、どんな場所で事件が起こっているのか、これから起こるとしたらどこが可能性高いか、そんな考察の材料にできればいいのだが、収穫はゼロ。

 フリードも頭がイカれているだけで、悪いわけではない。うまく立ち回っているようだ。

 

「銀七って、敬語使えたんだ」

 

 口が悪い自覚はあるが、余計なお世話である。そういうイリナも敬語を使えそうかどうかと言われれば、十人が十人、使えないだろうと予想するだろうに。

 

「そうか? 私は意外でもなんでもなかったぞ。銀七は、昔は敬語だったらしいからな」

「え!? そうなの!?」

 

 雲行きが怪しくなってきた。

 

「おい。何でてめえが知ってんだ」

「エリアルから聞いた」

 

 あんの、お喋りトカゲめェ……帰ってきたら覚えておけよ……。

 

「まあ、私がエリアルに聞くに至った理由は、銀七の寝言を聞いたからだ。そこで昔の口調も一人称も知った」

「な!? お、お前……俺の昔の一人称まで知ってんのかよ!」

 

 マズイ! これは非常にマズイ!

 あんな黒歴史ものをゼノヴィアは知ってやがるのかよ……! 下手したらアザゼルの「閃光と暗黒の龍絶剣」以上の黒歴史だぞ。(余談だが、なぜ知っているかは、天使たちから聞いたから)

 

「言うなよてめえ! ぜってえ言うんじゃねえ!」

「……これが日本で有名な『フリ』という奴か?」

「ちげえよ!」

 

 コイツ……話が通じねえ!

 

「むぅ。言ってはいけないのか……」

「それは残念ね。それでゼノヴィア。教えて欲しいことがあるのだけど」

「なんだ?」

「銀七の昔言っていた寝言ってどんなものだったの?」

「ああ、それはな」

 

 イリナの奴、搦め手で攻めてきやがった!

 クソッ! 何としても、言われるのを阻止しなくては……!

 

「お、おい」

「『ギンも金華おねえちゃんが大好きですよぉ』と言っていた」

 

 ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああ! しかも俺、そんなハッズカシイ台詞を言っていたのかよ!

 

「なにそれ、可愛い~」

「るせぇ! さっさと行くぞ!」

「どこに?」

「敵のとこだ。さっきエリアルが補足した。もう、イッセー君たちは交戦している」

 

 その言葉に、ゼノヴィアたちは顔を引き締める。

 

「急ぐぞ」

「了解だ」

「うん。あ、それでさっきの」

「忘れろ」

 

 ☆

 

「上だ!」

 

 匙の一言で、全員が上を向く。その方向から、白髪の少年神父が長剣を持って降りかかってきた。

 

「神父の一団にご加護あれってね!」

 

 降りかかってきた神父――フリード・セルゼンは、その手に持った長剣で斬りかかってきた!

 その長剣を素早く剣を抜いた木場が防ぐ!

 

「フリード!」

「おんやぁ。その声はイッセーくんではございませんか? へぇぇぇぇぇ、珍妙な再会劇でござんすね! どうだい? ドラゴンパゥワーは増大したかい? そろそろ殺していい?」

 

 相変わらず、イカれた奴だぜ。

 フリードの手にある長剣は、イリナとゼノヴィア、銀七の剣と同質の危険を感じる。間違いなく、エクスカリバー――!

 それを確認して、俺は神父服を脱ぐ。俺だけじゃなく、匙や小猫ちゃんもだ。小猫ちゃんのコスプレも可愛かったんだけどな。少し残念だ。

 子猫ちゃんがおもむろに懐から、一枚の紙を取り出す。

 あっ! 銀七が使えって言っていた結界用のお札か!

 それを地面に向かって落とすと、空の色が変わった。その瞬間、エリアルがにやりと笑った気がした。……こえぇ。

 

「ブーステッド・ギア!」

『Boost!』

 

 今回、俺たちはサポートに徹する。俺も譲渡に専念する。

 

「伸びろ、ラインよ!」

 

 匙の手の甲には、可愛らしくデフォルメされたトカゲの顔らしきものが装着されていた。その口から、触手のような物が伸びている。

 あれが、匙の神器か!

 そのままトカゲの舌は、フリードの足にグルグルと巻き付いた。

 

「うぜぇッス!」

 

 フリードが長剣でトカゲの舌を斬ろうとしているが、斬れない。実体がないかのようにすり抜けるばかりだ。

 

「へっ。こいつはちょっとやそっとじゃ斬れないぜ。木場! これで奴は逃げられねえ! 存分にやっちまえ!」

 

 なるほど!

 まずは、フリードを逃げられないようにしたのか。冴えているな、匙の奴!

 

「ありがたい!」

 

 木場が二本の魔剣を創造して、フリードとの距離を詰めていく。

 

「チッ! 『光喰剣(ホーリー・イレイザー)』だけじゃないってか。複数の魔剣所持。もしかして『魔剣創造(ソード・バース)』でござんすか? わーお! レア神器を持っているなんて罪なお方ですこと!」

 

 言葉とは裏腹に、口調と顔は随分と楽しそうだ。

 

「だが、俺の持っているエクスカリバーちゃんにそんじょそこらの魔剣くんでは――」

 

 フリードが大きくエクスカリバーを振って、木場の魔剣二つを難なくへし折る!

 

「相手になりませんぜ」

「ほう。ならば、私の光はどうかな?」

 

 いつの間にか、木場とフリードの上空に移動していたエリアルが言葉を発する。

 それにしても、エリアル、デカくなってない? 肩に乗るぐらいちっさかったのに、百五十センチはあるぞ。これが、アンロックモードってやつか?

 

「げぇ! エリアル! てことは、銀七もいんのかよ!」

「悪いが、ここで果ててもらう」

 

 エリアルの体にある線が、青白く光ったかと思うと、今度は光を放つ口から太い光線を吐きだした!

 それをフリードは躱すが――

 

「アッツ! アッチィィィィィィイイイイイ!」

 

 どうやら、掠ったようで、悶絶している。それにしても――熱い? 俺たち悪魔なら光で火傷を負うけど、人間は負わない筈だぞ。

 光線が止み、見てみると、木場とフリードがいた場所が無くなっていた! しかも、断面は溶岩のようにドロッと赤熱している!

 って、木場!

 

「危なかったな。もう少しで滅せられるところだった……」

 

 どうやら、無事のようだ。

 

「私の光は、ただの剣を聖剣に変えてしまうほど濃度が高くてな。御覧の通り、悪魔だけでなくあらゆるものを溶かすほどの熱を発する。なに、当たったところで、傷口が焼けて血は出んよ。比喩などではなく、事実として死ぬほど痛いだけだ!」

 

 こえぇぇぇぇぇぇぇ! チョー怖いんだけど! 悪魔なんて、光線の余波で完全に消滅するんじゃないか!?

 これが、『金剛龍(ダイヤモンド・ドラゴン)』エリアルの実力!

 

『……エリアルの奴、衰えたな』

 

 はっ? あれで衰えた? 何言ってんだ、ドライグの奴。

 

『あいつの本来の力は、あんなものじゃない。廃墟一帯を更地に変えられるものだ。少なくとも、地面に向けて放つのなら、地面は噴火の後のように溶岩が流れ出しているはずだ』

 

 マジかよ! あれで力が格段に落ちている。神も危険視するはずだよ! エリアルが全力を出したら、地形が変わるんじゃないか? ……自分で言ったけど、笑えない。

 

「チッ! 吸血鬼のいる搭でだるま落としをする様なドラゴン相手してちゃ、命がいくつあっても足りないってーの!」

 

 だるま落とし!? 吸血鬼のいる塔でだるま落とし!? そんな事をやっていたのか、エリアル!? 「七玉龍」……恐るべし!

 

「貴様が容易に罠を発動させるからだろうが! したくてしていた訳ではない!」

 

 どうやら、原因はフリードのようだ。出来るのもどうかと思うけどさ。

 

「とりあえず、悪魔ちゃんをチョンパーしちゃうことにしますかねぇ!」

 

 フリードはエリアルの方にではなく、木場の方へ、とんでもない速さで向かう! ――なんて速さだ!

 

「俺様のエクスカリバーは『天閃の聖剣(エクスカリバー・ラピッドリィ)』! 速さなら負けねぇんだよッ!」

 

 スピード特化の聖剣ってことか! エリアルが攻撃しようにも、あの速さじゃ避けられるし、木場を巻き込みかねない。

 木場も、魔剣を作り出して受け止めるが、粉々になる。

 

「ダメか!」

「死・ね!」

 

 フリードの持つエクスカリバーが木場を貫こうとする――!

 あ、あれ? そんな俺はというと、なぜか浮遊感を感じていた。下を見てみると――こ、小猫ちゃん!? 小猫ちゃんが俺を持ち上げている!

 

「……佑斗先輩を頼みます」

「お、おぉぉぉぉぉおおおおお!?」

 

 そのまま、小猫ちゃんは俺を野球ボールよろしく木場に向かって投げた!

 

「木場ァァァァァ! 譲渡すっからなぁぁぁぁぁぁ!」

「うわっ! イッセーくん!?」

『Transfer!!』

 

 木場をタッチして、力を譲渡する。

 

「もらった以上は、使うしかない! 『魔剣創造(ソード・バース)』!」

 

 次の瞬間、フリードが飛び退き、飛び退いた場所から無数の魔剣が咲き誇るように出現していた!

 

「……ほう。『魔剣創造(ソード・バース)』か。使い手の技量しだいでは無類の強さを発揮する神器だ」

 

 突如、声が響く。

 突然のことに、フリードを含めた俺たち全員が、声が響いてきた方へと顔を向ける。そこには、初老のおっさんがいた。

 まさか――

 

「バルパー・ガリレイ……!」

「いかにも」

 

 初老の男は、首をゆっくりと上下に動かし、肯定する。そうか、コイツが木場の敵か。

 

「何をしているフリード」

「トカゲくんのベロが邪魔で逃げられねぇんすよ!」

 

 フリードは顔を最大限にまでしかめて、足に巻きついている匙の神器を見る。

 

「ふん。まだ聖剣の使い方が十分ではないか。聖剣に『因子』の力を込めろ。そうすればおのずと切れ味は増す」

「こうか!」

 

 途端、フリードの持っている聖剣から膨大な量の聖なる力が吹き出す。まるで間欠泉のように。

 

「そらよ!」

 

 ブシュッという生々しい音を立てて、匙の神器から伸びるトカゲの舌が断ち切れる。

 

「じゃあな! 次会った時が最高のバトルの時間だ!」

「次があると思ってんのか、クソ野郎!」

 

 荒々しい口調で登場したのは、まるで閃光のような速さで、俺たちの脇を通り過ぎてフリードに小太刀を振り下ろしている銀七だ。

 小太刀は、フリードのエクスカリバーによって防がれている。あのスピードに対応しやがったのかよ!

 

「よう! ひさしぶりじゃなぁ~い、銀七ぁ!」

「ハッ! てっきり魔獣にでも食われて野垂れ死にしているとばかり思っていたぜ、クソ野郎! ここできっちりと俺がぶち殺してやる!」

 

 二人共、互いに離れたかと思うと、すごい速さで接近し、とてつもない速度で自分の剣で敵を切り刻もうと振るう。

 

「もぉー、銀七のバカ。後先考えずに飛び出しちゃって」

「すまない。遅れた」

 

 見ると、ゼノヴィアとイリナの二人も到着したようだ。

 

「銀七。きさま、自分の親に剣を向けるつもりか?」

「誰が親だ! てめぇは、ただの獲物だ! てめぇが……てめぇ如きが親を語るんじゃねぇ!」

 

 バルパーの言葉に激昂する銀七。

 その瞳はひどく血走っている。

 まるで、狂犬だ。

 

「フリード。ここは引くぞ。さすがに分が悪い」

「あいよ!」

「逃がすか!」

 

 再び、銀七が飛び出してフリードへと小太刀を振るおうとするが――

 

「今度こそ、あばよ銀七!」

 

 いつぞやの閃光玉に目を潰されて、視界が白く塗りつぶされる。

 視力が回復したとき、フリードとバルパーはいなかった。

 

「クソッ! 逃がしたか。追うぞ、エリアル!」

「了解した」

 

 空中にいたエリアルが、小さくなり、走り出した銀七と共に去っていった。

 

「僕も追わせてもらう! 逃がすか、バルパー・ガリレイ!」

「あ、おい! ちょっと!」

 

 木場まで、いなくなっちまった。さてと、どうしたもんかね。俺たちも追いかけたほうがいいか?

 

「力の流れが不規則になっていると思って来てみれば……」

「これは困りましたね」

 

 聞き覚えのある声に、思わず飛び上がる。

 錆び付いたブリキのように動かなくなった首を声のした方向に向けると、部長と会長がいた。

 俺たちは、全員、青ざめた。

 

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