アタシは二代目グラントリノ   作:ag260

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映画の書下ろし漫画に出てきたグラントリノ見て気づいたら作ってました。


1:目指せヒーロー

つい最近、受験という学生にとっての一大イベントを終えたアタシこと『飛風(とびかぜ) 空音(そらね)』は自宅で悠々と惰眠をむさぼっていた。

 

「Z!Z!Z!」

『おい!空音!起きとるか!」

「Z!Z―――むにゃ?」

 

そんな中、アタシの部屋のドアをけたたましく叩く音で夢の世界から現実に引き戻される。

 

「んん~?おじいちゃん?」

 

寝ぼけまなこをこすりながらドアを開けると、そこには予想通りおじいちゃんが立っていた。

 

「空音、やっと起きたか。お前宛に届いてたぞ」

「アタシに?」

 

そういっておじいちゃんが差し出してきたのはやや大きめの封筒。

その表面には雄英高校の文字が記されていた。

 

「もしかして、受験の結果通知表!?」

「多分な。ほれ、さっさと受け取れ」

 

アタシは差し出されたそれをひったくる様に受け取る。

 

「もう中身見た!?」

「人の手紙を見るほど耄碌してるように見えるか?」

「全然!ありがとうおじいちゃん!」

 

アタシは受け取ったそれを抱え、自室に戻りドアを乱暴に閉めた。

 

「まったく…。落ち着きのないのは誰に似たんだか」

 

部屋に戻って机に座りながら、おじいちゃんから受け取った封筒を緊張しつつ見つめて数分。

 

「良し!女は度胸!」

 

意を決して封筒を開けると、勢いが付きすぎていたのか中に入っていた小さな機械が机の上に放り出された。

 

『私が!投映された!!』

「きゃっ!?オ、オールマイト!?」

 

放り出された際にスイッチが入ってしまったのか、いきなり映し出されたNo1ヒーローとその音声に思わず声を上げる。

 

『いきなり私が映し出されて驚いているかね?実は来年度から雄英に勤めることになったんだよ!』

「オールマイトが雄英の先生!?」

 

これには驚いた。

オールマイトと言えば『平和の象徴』とも呼ばれる生きる伝説だ。

そんな人物から直接教えを受けるなんて幸運はそうそうない。

 

『コホン。私の話は置いといて、飛風少女!筆記、実技ともに高得点だ!実技に至っては(ヴィラン)Pが50点に加え、秘密にされてた審査制の救助活動(レスキュー)Pが27点で77点!もう1人の少年と同率だが入試トップで合格だ!』

「入試トップ…」

『個性の使い方も実によかった。映像で見せてもらったが、まるであの人を―――』

「ん?」

 

投影機の調子が悪いのか、若干映像がと言うよりオールマイト自身が小刻みにブレ始めた。

アタシの気のせいか、顔色も悪くなっている気がする。

 

『ンンッ!さて気を取り直して!来いよ飛風少女!雄英(ここ)が君のヒーローアカデミアだ』

 

オールマイトの力強い呼びかけと共に、投影機が役目を終えて映像が消える。

そして―――

 

「やっっっったああああああああ!!」

 

あふれ出る喜びをそのままに、アタシは歓声を上げながらおじいちゃんのいるリビングに駆け降りた。

 

「やったよおじいちゃん!」

 

椅子に座ってアタシの好物でもあるたい焼きを食べようとしているおじいちゃんの小さな体を持ち上げ、そのままくるくると回りだす。

 

「アタシ雄英に合格してたよ!」

「おお、やったじゃねぇか」

「入試トップだって!」

「分かった分かった。アツアツたいを食べながら聞いてやるからまずは下ろせ」

「個性の使い方もよかったって褒められた!」

「分かったから…」

「アハハハハ!」

「いい加減下ろせ!」

「痛い!?」

 

くるくると陽気に回っていたアタシの頭におじいちゃんの容赦ないチョップが落とされた。

 

「何すんの!?」

「はしゃぎ過ぎだバカ孫。雄英に合格したからってヒーローになれるわけじゃねぇんだぞ」

「むぅぅ…」

 

おじいちゃんの言葉にアタシは唸ることしかできなかった。

事実、雄英に入学できたからってヒーローになれるわけではなく、スタートラインに立っただけに過ぎないからだ。

 

…それでも。

 

「…もうちょっと喜んでくれると思ったのに」

「…はぁ。お前が合格(受か)ることなんざ分かり切ったことだったのに、そんな大げさに喜ぶかよ」

「え?」

「誰がお前を扱いてやったと思ってるんだ?お前ほどの実力で受からねぇはずはねぇよ」

 

そう言ってにやりと笑うおじいちゃん。

じゃあ、おじいちゃんはアタシが雄英に合格するって最初から信じてたってこと?

 

「…まぁ、入試1位で合格は上出来だ。今日は獅子屋のたい焼きでも買ってやる」

「もぉ、おじいちゃん大好き!」

「まったく…。現金な奴め」

「早く行こ!獅子屋のたい焼き美味しいからすぐ売り切れちゃうよ!」

「落ち着け!そんな格好で外に出るつもりか?」

 

おじいちゃんにそう言われ自分の格好を見返して、昨夜から変わっていない寝間着姿のままだったことを思い出した。

 

「あはは…。着替えてきまーす!」

「…ヒーローになるならそのせっかちな性格はどうにかせんとな」

 

後ろから聞こえるため息交じりの言葉を聞き流しながら、部屋へ駆け戻る。

おじいちゃんの御小言は長いからね。

獅子屋のたい焼きが売り切れちゃうよ。

 

「おじいちゃん、お待たせ!」

「おう。じゃあ行くか」

 

服を着替え、ヒーロー事務所も兼ねた自宅から目的のお店に向かって意気揚々と出かける。

 

少しして獅子屋のある繁華街までたどり着くと、パトロールをしている何人かのヒーローとすれ違った。

すれ違ったヒーローたちは学生などから呼び掛けられれば笑顔で手を振り返し、中にはサインまでする人もいる。

 

「ねぇ、おじいちゃん」

「なんだ?」

「おじいちゃんもプロヒーローなんだよね?」

「今更何を」

 

そう、アタシのおじいちゃんはこう見えても現役のプロヒーローなのだ。

 

「でも、アタシおじいちゃんがヒーロー活動してるの見たこと無いんだけど」

 

アタシのその言葉におじいちゃんは一瞬きょとんとするが、すぐに表情を崩して笑い始めた。

道ですれ違う人たちが驚いてアタシたちの方を振り返るのがちょっと恥ずかしい。

 

「今はたくさんの若いヒーローがいるからな。こんな爺が汗水流す必要もないんだよ」

「…おじいちゃんはそれでいいの?おじいちゃんの実力ならもっと有名になれるし、ビルボードチャートの上位にも―――」

「良いんだよ。俺が隠居出来てんのは平和な証拠だからな」

 

そういうおじいちゃんの声色はとても穏やかで、それ以上アタシは何も言えなくなった。

 

「…そっか。なら仕方ないね。後はアタシに任せてよ」

「後はって何がだ?」

「こっちの話!ほら、獅子屋着いたよ!アタシ餡子とカスタードと抹茶のたい焼きね!」

 

アタシがそう言うと、訝しげだったおじいちゃんの表情が次第に呆れたものに変わる。

 

「3つも食うのか?てか、カスタードと抹茶ってなぁ。たい焼きと言ったら餡子だろ」

「えぇ~?カスタードも抹茶も美味しいよ?おじいちゃんも食べてみなって!」

「そんな食えるか。お前の一口分けてくれ」

「しょうがないなぁ」

 

そんなのんびりとした会話をしながら、たい焼きを買い終えたアタシ達は帰路に就いた。

 

ちなみにたい焼きはとっても美味しかったよ!

おじいちゃんもカスタードと抹茶を食べてみたら意外と美味しかったって!

 

 

その後は雄英に入学するための準備や、家から出て1人暮らしのための部屋選びに家財道具の購入、わずかにできた暇もおじいちゃんに『体が鈍るといけないから』と訓練を付けられ、入学前の休みは飛ぶように過ぎていった。

 

そして―――

 

「忘れ物はねぇな?」

「うん、大丈夫!大体の荷物は先に向こうへ送っちゃったし!」

「…そうか」

 

雄英高校入学式の少し前。

アタシは上京の準備を終え、新幹線のある駅前に見送りに来てくれたおじいちゃんと共に居た。

 

「あいつらはこんな日にも帰ってこれねぇのか」

「お父さんとお母さんの事?仕方ないよ。大事なお仕事だもん」

 

アタシは眉根を寄せるおじいちゃんに努めて明るい声で言った。

まあ、ちょっと寂しいのは確かだけど、ちゃんとお祝いと激励の手紙はもらったしね。

 

「じゃあ、そろそろ電車の時間だし行くね」

「ああ、ちょっと待て。雄英でオールマイトにあったらこれ渡してくれ」

 

アタシを呼び止めておじいちゃんが差し出したのは1通の手紙。

 

「これをオールマイトにって、おじいちゃん知り合いなの!?」

「古い知り合いってとこだ。頼んだぞ」

 

あのオールマイトとおじいちゃんが知り合いだったことに驚きつつ手紙を受け取った。

 

「勝手に中身見るなよ?」

「み、見ないよ!?」

 

すごい気になるけど、さすがに人の手紙は見ないよ!

 

「じゃ、じゃあ今度こそ行くね!体育祭テレビで見てね。絶対活躍するから!」

 

気まずさを無理やり抑え、荷物を持ち直して改札へ向かう。

 

「おい!」

「おじいちゃん?」

 

改札を潜ろうとした時、急におじいちゃんから呼び掛けを受けて振り返る。

 

「―――誰だ君は!?」

「―――っ」

 

とぼけた表情でそう言うおじいちゃんに一瞬だけ驚いたけど、アタシはすぐにその意図を察した。

そして、満面の笑みと大きな声で宣言する。

 

「アタシはスーパーヒーロー!二代目グラントリノだよ!!」

 

アタシの宣言を聞いたおじいちゃんは最初はポカンとしていたが、しばらくすると目尻に涙を溜めるほど大きく笑い出した。

 

「は、はは、ハハハハハ!そうか、そうか!その名前が似合うよう頑張ってこいよ!」

「行ってきます!」

 

そうして、大きな声で笑うおじいちゃんに見送られながらアタシは改札を潜った。

 

目指すはおじいちゃんを超える最高のヒーロー!

飛風空音、全力で行きます!

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