USJ編をまとめて書こうとして、大分長くなりそうだったので途中のキリの良い部分で投稿します。
マスコミ乱入?知らない子ですね。
マスコミが雄英の敷地内まで押し寄せたという騒動が起きた翌日の午後。
授業の開始を知らせるチャイムと同時に相澤先生が教室に入ってくる。
「本日のヒーロー基礎学だが俺とオールマイト、それからもう一人で見ることになった」
見ることに
相澤先生の言い方を考えると、教員の変更でもあったのかな?
「今日はなにするんですか?」
「災害水難なんでもござれ。
瀬呂君の質問に相澤先生が『RESCUE』と書かれたプレートを掲げる。
オールマイトの時は『BATTLE』って書かれてたけど、あれって何種類もあるのかな。
「レスキューかぁ…。今回も大変そうだな」
「だよねー」
救助訓練と聞いて上鳴君と三奈ちゃんが渋い表情をする。
二人の個性だと戦闘は兎も角、救助には応用し辛そうだもんね。
「バカおめー救助こそヒーローの本分だぜ!」
「ケロ、水難なら私の独壇場よ」
渋い表情の二人とは正反対に切島君と梅雨ちゃんはやる気満々といった風だ。
「おい、まだ話の途中だ」
そんな風に授業に向けて気が逸る生徒たちも相澤先生の僅かに怒気を含んだ声で直ぐに沈黙した。
「今回の訓練ではコスチュームの着用は各自の判断で構わない。中には活動を限定するコスチュームもあるだろうからな。訓練場は少し離れた場所にあるからバスに乗って行く。以上、準備開始」
◆◆◆
「コスチューム着なくても良いなんて言われたけど、皆着替えてるね」
コスチュームに着替え、バスの待つ場所へ移動している最中に周りを見ながら三奈ちゃんがそう言った。
「実際にヒーロー活動する時はコスチューム着てるからね。コスチュームの所為で救助活動が出来ませんじゃ話にならないもん」
「まぁ、そうだよね」
ただ、前を歩く緑谷君だけは体操服を着ている。
どうやら先日の戦闘訓練で破損したコスチュームの修復がまだ終わっていないみたい。
「バスにスムーズに座れるように番号順に二列で並ぼう!」
バスの前に辿り着くと、昨日学級委員長に任命された飯田君がどこから取り出したか分からないホイッスルを吹きながら皆を整列させようと大きな声を張り上げる。
けど、
「こういうタイプだったのか!」
「イミなかったねー」
どうやら飯田君の想定していたタイプと違ったようで各自好きなように席に座る。
因みにアタシは三奈ちゃんの隣に座った。
「私思った事を何でも言っちゃうの緑谷ちゃん」
「え!?な、なにかな蛙吹さん」
「梅雨ちゃんと呼んで」
三奈ちゃんと他愛も無い話をしてると、向かい側にいた梅雨ちゃんと緑谷君の会話が聞こえてきた。
「あなたの個性、オールマイトに似てるわ」
「へ!?そそそ、ソウカナ!?」
梅雨ちゃんの一言に何故か過剰に反応した緑谷君にみんなの視線が集まる。
「待てよ梅雨ちゃん。オールマイトは個性を使ってもケガしねぇぞ?似て非なるアレだぜ」
「そそ、そうだよ。ぼ、僕なんか全然、オールマイトと比べるのも烏滸がましいって言うか」
「しかし、シンプルな増強系は良いよな。派手だし出来ることが多くてよ。俺の『硬化』は対人には強いけど、如何せん地味なんだよな」
「そ、そんなことないよ。十分プロでも通用する個性だと思うよ」
「プロなー!でもやっぱプロも人気商売みてぇなとこはあるぜ!?」
切島君と緑谷君のそんな会話から話題は自分の個性へと移っていく。
「うちのクラスで派手で強いって言ったら、やっぱ爆豪と轟か?」
「でも爆豪ちゃんはキレてばっかりだから人気でなさそう」
「んだとコラ!?人気ぐれーだすわ!」
「ホラ」
「強いって言ったら飛風もだよな」
「え、アタシ?」
梅雨ちゃんと怒鳴る爆豪君の会話(と言っていいのか分からないけど)を聞き流していると、切島君が急にアタシにも会話を振ってきた。
「戦闘訓練じゃあんなに凄かったじゃねぇか。プロヒーローのお祖父さんに小さいころから鍛えてもらってたんだろ?」
「そ、そうなの!?」
切島君の言葉に返事をする前に緑谷君が大きな声で食いついてきた。
「そ、そうだけど?」
「すごいよ身内にヒーローが居るなんて!なんてヒーロー名なの!?あ、そうか!飛風さんが凄い個性を使い慣れてるって感じたのはお祖父さんに訓練を見てもらえたからなのか。公共の場での個性使用は禁止されてるからどうやって鍛えたんだろって不思議だったんだけど、プロの資格を持っているお祖父さんに見てもらえたなら納得だ。もしかしてお祖父さんも同じような個性なのかな?それならあの熟練のヒーローみたいな戦い方も納得だぞぶつぶつぶつ」
えぇ…。
おじいちゃんの話に物凄く食いついてきたと思ったら、急に独り言を呟き始めたんだけど…。
周りに視線を巡らせても他の皆もアタシと同じように若干引いてる。
「緑谷ちゃん。空音ちゃんが困ってるわ」
「ぶつぶつぶつ――はっ!?ご、ごめん。ヒーローの事となると、つい…」
「い、いや、少しびっくりしたけど大丈夫だよ?」
梅雨ちゃんに声を掛けられ正気に戻った緑谷君は恥ずかしさからか顔を真っ赤にして頭を下げてくる。
「おい、静かにしろ。もうすぐ到着するぞ」
「「「「はい!」」」
相澤先生の鶴の一声で騒がしかったバス内も静かになる。
あの爆豪君ですら静かにするのだから初日の除籍勧告がやっぱり効いてるのかな。
数分後に目的地に着いてバスから降りると、まるでテーマパークのような広場が見えた。
「すげー!USJかよ!?」
この光景に上鳴君が興奮したように叫ぶ。
「水難事故、土砂災害、火事。あらゆる事故や災害を想定し僕が作った演習場です」
そんなことを言いながら現れたのは宇宙服のようなコスチュームを纏った教師だ。
「その名も
((((本当にUSJだった!!))))
なんか初めてクラス全員の意見が一致した気がする…。
「スペースヒーローの13号だ!災害救助で目覚ましい活躍をしている紳士的なヒーロー!」
「わたしファンなんだ!13号の!」
アタシが取り留めのないことを考えていると、緑谷君が先生のことを説明しそれに追従するようにお茶子ちゃんもテンションを上げる。
「えー、授業を始める前に皆さんにお小言を一つ、二つ、三つ、四つ…」
おおう…。どんどん増えていくね。
お小言はおじいちゃんので十分なんだけどなぁ。
「皆さんご存知だと思いますが、僕の個性は『ブラックホール』。どんなものでも吸い込んで塵にしてしまいます」
「その個性でどんな災害からも人々を救出するんですよね!」
「…ええ」
緑谷君の言葉に13号先生は一息の間を開けてから重々しい雰囲気で口を開いた。
「しかし、簡単に人を殺せる個性です。皆さんの中にもそういった個性の方がいるでしょう」
「―――ッ」
その一言に生徒たちの数人が息を飲む。
「昨今起きている殺人事件の約八割が個性を使用、または利用したものです。現在の法律で個性の使用は資格制にされ厳しく規制されることで成り立っているように見えますが、誰もが容易に人を殺せる行き過ぎた個性を持っていることを忘れないでください」
13号先生の語った内容はアタシがおじいちゃんに最初に教え込まれた事の一つだ。
おじいちゃんが活動していた内容は全くと言っていいほど話してくれないけど、その時代の話はよく教えてくれた。
オールマイトがデビューするより更に前の、個性を用いた犯罪率が二十パーセントを超えていた時代。
その罪を犯した人たちの殆どが「そんな事をする人」には見えなかったような人だったらしい。
『人は力を持つと誘惑に弱くなっちまう。ほんの些細なきっかけでそれに負けちまう。忘れるなよ。力を持つこと、それを振るうことの責任をな』
おじいちゃんに口を酸っぱくして言われた事の一つ。
大丈夫、アタシはしっかりと覚えてるよ。
「相澤さんの体力テストで自分の力を知り、オールマイトの戦闘訓練でその力を人に向ける危険性を体験したと思います。この授業では人命のために個性をどう活用するか、それを学んでいきましょう」
USJを見て浮かれていた生徒たちも全員が先生の話を真剣に聞き入っている。
「君たちの力は人を傷つけるためではなく、人を救うためにあるのだと心得て帰ってください。以上、ご清聴ありがとうございました」
「ブラーボー!ブラボー!」
「ステキー!」
閉めの言葉と共に飯田君とお茶子ちゃんが歓声を上げ、アタシたちは拍手を送る。
「話は終わったな。それじゃ早速―――」
13号先生の話が終わった頃合いを見て相澤先生が授業を始めようとした時、その視線が広場の噴水前に固定された。
あれは…黒い靄?
「全員一かたまりになって動くな!!」
「…え?」
「13号!生徒を守れ!」
先生の怒号に呆気にとられていると広場にあった靄はだんだんと大きくなり、そこから体中に手のようなオブジェを付けた気味の悪い男を先頭に大勢のガラの悪い人たちが現れ始める。
「何だありゃ?入試みたいにもう始まってるってパターンか?」
「動くな!あれは―――
困惑したように呟く切島君に相澤先生はきっぱりと言い放つ。
「13号にイレイザーヘッドですか。先日頂いたカリキュラムではオールマイトがここにいるはずなんですが」
「やはり先日のマスコミはクソ共の仕業か」
黒い靄の男が丁寧な言葉遣いで言った台詞に相澤先生が忌々しそうに呟く。
「オールマイトは何処に居んだよ。せっかくこんな大衆連れて来たのに」
体中に手のオブジェを付けた男は面倒くさそうにボソボソと何かを言うと、顔を上げてアタシたち生徒に視線を向けた。
「…子供を殺せば出てくるかな?」
ヤバいヤバいヤバいヤバい。
一瞬、あの男と目が合ったけどまるで背筋に氷柱を差し込まれたような悪寒が背筋に走った。
あの男は笑って人を殺せる、人を殺しても何も感じない、そういう類の人間だ。
反射的にその男と距離を取ろうと足が半歩後ろに下がった時、相澤先生がアタシたちとその男の間に割って入り視線を遮った。
「13号避難開始!学校へ電話を試せ!センサーの対策も頭にある
「う、ウッス!」
「先生!一人で戦うんですか!?」
ゴーグルを装着し、首に巻いていた捕縛武器を緩める相澤先生に緑谷君が驚いて声を上げる。
「いくら個性を消せてもあの人数相手じゃ。それにイレイザーヘッドの戦闘方法は個性を消してからの奇襲捕縛だ。正面戦闘は―――」
「一芸だけじゃヒーローは務まらん。13号、生徒たちを頼むぞ」
相澤先生はそう言うと、階段を一気に飛び降りた。
「おいおい、誰だあいつ?」
「知らねぇよ!だが、一人でこの数に突っ込んでくるなんてよ!」
「大マヌケ野郎だぜ!」
階段下に並んだ
おそらく、遠距離攻撃できる個性なんだろう。
けど――
「出な――ガバッ!?」
「な、なんで――ぐぎゃっ!?」
個性を消されて混乱している内に捕縛武器で絡め捕られ、頭を打ち付け合って呆気なく意識を飛ばした。
「馬鹿野郎!あいつは見ただけで個性を消すイレイザーヘッドだ!」
「個性を消すぅ?俺みたいな異形型のも消してくれんのかよ!?」
周りの
その男は大きく腕を振りかぶりながら相澤先生へ肉薄し、その腕を振り下ろす。
「いや、無理だ」
けど相澤先生は冷静にその拳をかわし、防御の薄い顔面へカウンターで拳を入れた。
「消せるのは発動系や変形系に限る。―――が」
カウンターにより大きく仰け反った男の足に捕縛武器を巻き付ける。
「お前らみたいな異形型の個性は統計的に近接格闘で発揮されることが多い」
巻き付けた捕縛武器の反対側を一本背負いのように引っ張り、相澤先生は自分よりも大きい男を投げ飛ばした。
「だから、その辺の対策はしている」
飛ばされた男は他の
す、すごい。
ゴーグルで目線を隠して、誰の個性を消してるか分かりづらくして相手の連携をかき乱してるのか。
「すごい、多対一こそ先生の得意分野だったんだ」
アタシが先生の動きに見入っていると、隣で緑谷君が感心したように呟いたのが耳に入った。
って、違う!今は呆然と見てる場合じゃなかった!
「空音!何やってんの!?」
「緑谷くん!早く避難を!」
「ご、ごめん!行こう、緑谷君!」
「う、うん!」
三奈ちゃんと飯田君に急かされ、止まっていた足を動かす。
「させませんよ」
「っ!?」
避難していた皆に追いついた瞬間、アタシたちとゲートの間を塞ぐように黒い靄の
「初めまして。我々は
…オールマイトを殺す?
それがこいつらの目的なの?
「まぁ、目的のオールマイトが居ないのは誤算でしたが、私のやることは変わりません」
黒い靄の男がそう言うと、その体の靄を大きく広げ始めた。
「オラァ!」
「死ねぇ!」
先手必勝という事だったんだろう。
相手が何かする前に戦闘不能にしようと、切島君と爆豪君が靄の男に攻撃を仕掛けた。
「危ない危ない。生徒と言えど、優秀な金の卵でしたね」
「ダメだ!二人とも退きなさい!」
けど、その攻撃は相手に効かず剰え
「だが、所詮は卵。散らして、殺す」
男の宣言と共に体の靄が爆発的に広がり、アタシたちに覆い被さろうと迫ってくる。
「三奈ちゃん!」
「空音!?」
咄嗟に隣にいた三奈ちゃんを掴んで個性を使って靄の届かない上空に跳び上がる。
上空から見下ろすと飯田君や障子君が近くにいたクラスメイトと共に靄の範囲外に逃げ出せたのが見えたが、クラスの半数以上が黒い靄に飲まれてしまっていた。
「そ、空音!皆が!?」
「三奈ちゃん、今は落ち着いて。まだ敵が目の前にいる」
黒い靄に飲まれたクラスメイトを見て悲鳴を上げる三奈ちゃんに冷静になる様に言い聞かせる。
靄が引いたのを確認して着地すると、そこにいたはずのクラスメイトは半分以下の人数に減っていた。
「飛風くん!芦戸くん!無事だったか!」
「飯田君!他の皆は!?」
「障子くん!居場所は分かるか!?」
「…散り散りになってはいるが、全員施設内に居る」
やられたっ!
多分、皆の飛ばされた先には
轟君や爆豪君ならともかく、個性の調整が出来ない緑谷君や戦闘能力の低い透ちゃんが囲まれてしまったら為す術が無い。
「…散らし損ねが思ったより居ましたが、まぁ良いでしょう。残った卵たちはじっくりと調理するとしますか」
余りにも早い本物の悪意にアタシたちはただ身を固くするのであった。
次回はバトルパート予定!