はぐはぐオズぼんとの軌跡   作:鳩と飲むコーラ

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いつも誤字報告ありがとうございます。


フフフ、息子よ。クロスベルの地に立つぞ⑨

「初めまして。トールズ士官学院、特科クラスⅦ組所属のリィン・シュバルツァーと申します。今は臨時で皇族の護衛をしています」

 

 噂の特務支援課が勢揃いした分署ビルの中で、任意同行のために訪れたリィンは挨拶を交わしていた。

 エリィとワジ、セルゲイ以外は初対面であるため、こういうことは大事なのである。

 

「あ、ああ……こちらこそ初めまして。ロイド・バニングスだ」

「ランディ・オルランドだ、よろしくな」

「ノエル・シーカーと申します」

「本当はもう一人居るんだけど、この場にはいなくてね」

「ユウナから話は聞いてますよ、エプスタイン財団から出向している女の子だって」

 

 そうして挨拶を済ませる中、ロイド達はどこか躊躇するように口をまごつかせている。

 リィンはそんな彼らに眉をひそめるが、代表してワジが口を開いた。

 

「しかし、君は本当に目を離した隙に問題を抱えてやってくるね」

「問題?」

「ロイドがせっかくシグムント・オルランドに目を付けられてるって教えようとしていたのに、自分から虎の巣へ行こうとか何を考えてるんだか」

「だって送ってくれるって言ったし……」

「そこに素直に乗るのがどうかしてる、ってことよリィン君。相手は猟兵なのよ?」

「でもちゃんと名の通ったプロですからね。今は危害を加えられることはないと思いますよ?」

 

 エリィが心配してくるように言うが、フィーから猟兵というものを詳しく聞いているリィンはある意味で赤い星座に対しての不安はなかった。

 確かにミラ次第で命のやり取りを行い、罪のない一般人すら巻き込む相手らしいがそれはそれは彼らが選んだ道なのだからリィンがとやかく言うことはない。

 無論、リィンの前に立ちふさがるならその限りではないのだが。

 

「ところで、ユウナは大丈夫ですか?」

「ええ。単なる疲れから来る過労だから、一晩ぐっすり寝たら元気になると思うわ」

 

 エリィが頬に手を当てながら、ソファーに座るリィンの隣を見やる。

 そこにはすやすやと寝入るユウナの姿があった。

 目覚めたはずのユウナが寝ているのは、ロイドに連れて行かれたリィンを追いかけて来たからだ。

 自宅の前ということで、ロイドからはもう今日は休むといい、と言われたものの、時間が経つに連れて自分の悲鳴のせいでリィンが連れて行かれたことに気づき、慌てて追いかけてきたのだ。

 それこそ全力疾走のダッシュであった。

 

「最初は赤い星座の導力車から降りてきた上に、ユウナが悲鳴を上げるものだから勘違いしてしまったけど……」

「話を聞けばすぐ誤解ってわかってもらえました。さすがはユウナが尊敬する特務支援課ですよ」

 

 その安堵から、元々の疲労もあってユウナは二度寝に至ったというわけだ。

 ちなみに分署ビルへ来たさい、モルス老に今夜は特務支援課の世話になる、と言って通信を送っている。

 世話になる、と言う言葉が宿泊以外とも取れると思うと言葉とは不思議なものだとリィンは思った。冤罪だが。

 

「まあ、目覚めたら目の前に叔父貴が居たら驚くってレベルじゃないな」

「ユウナちゃんは私達が個別に送ったほうがいいのではありませんか?」

 

 その光景を想像し、ランディとノエルが体を震わせる。

 すぐに起こすのもなんだ、とロイドは改めてリィンに声をかける。

 

「まあまあ。この辺りで話を進めよう。リィン君。改めて聞きたいことがあるんだが、構わないか?」

「俺でわかることなら。あと、君付けはしなくていいですよ」

「ならリィンと呼ばせてもらうよ。それに、こちらにも敬語を使わなくて構わないから、楽にしてくれ」

「いえ、自分はまだ学生なので。卒業して会うことがあれば、そうさせていただきますよ」

 

 リィンとしては、自分が学生で相手が社会人なのでその辺りはきっちりしておく。

 

「それで、聞きたいこととは?」

「シグムント・オルランドとの会話だ。実は俺達も、彼と話をしてね」

 

 そこでリィンは、シグムントが己に会うために足を運ぶ前に特務支援課に居たことを聞く。

 そのさい、ロイドはシグムント……正確には赤い星座がクロスベルへ訪れた理由を尋ねたそうなのだ。

 

「あの場では詳しいことはわからなかったけど、君が何か掴んでいたりしてるか聞きたいんだ」

(守秘義務ってこれに該当するのかな?)

(フフフ、息子よ。今のお前はオリヴァルト皇子の護衛だ。ならば、彼に不利益を与える選択肢は取らないほうがいい。

 そして、殿下ならば赤い星座と特務支援課、どちらを選ぶかなど一目瞭然であろう。そもそも依頼を受けたことに対する守秘義務を、関係のないお前に適応される謂れはない。

 だが、今のお前は皇族の護衛だ。殿下に連絡は入れるべきだろう)

 

 なら、とリィンはロイドにある提案をした。

 

「すみません、先にオリヴァルト殿下に許可をもらってからでいいでしょうか?」

「構わない。ああ、通信端末ならそっちに」

「いえ、自前のがあるので大丈夫です」

 

 そう言ってリィンはARCUSを開き、オリヴァルトの番号を入れる。

 ほどなくして、陽気な声がARCUSの向こうから聞こえてきた。

 

「ハローリィン君。こんな遅くにどうしたのかな? ひょっとして、眠れないから子守唄でも歌って欲しいとか? 

 これからセドリックのところにお邪魔しようと思っていたから、合わせてプレゼントしようじゃないか」

「はは、それはまたの機会にお願いします」

 

 挨拶を交わしながら、リィンはすぐ用件を告げる。

 するとオリヴァルトは快く許可を出し、同時にこのまま通信を繋げるよう言った。

 報告も兼ねて、ということだろう。

 

「帝国が一枚岩じゃないのは聞いていたが、まさかこうして協力してくれるほどとはな……」

「鉄血宰相の行動には理由があるかもしれないが、それでもそこに生まれる犠牲を容認することは出来ないからね。

 僕もまた、精一杯足掻いているだけさ。そういう意味では、クロスベル限定かもしれないけど、君達とは同志とも言える」

「だからって、これは帝国政府への反逆になってしまうのでは? 現状、貴方の立場は……」

「立場を気にしていたら、鉄血宰相と戦うことなんて出来ないしね。どうしても気になるなら、ただの独り言を聞いてしまった、というていで行けばいいさ。それとも、ボクのリィン君が集めた情報はいらないかな?」

「ボクの、は外してください殿下」

 

 それを言われてしまえば、ロイド達には何も言うことは出来ない。

 不穏な空気に包まれるクロスベルに降り注ぐ暗雲を払うため、彼らにその協力を否定することは出来なかった。

 そして、そんな考えを持つ彼らだからこそ密告の危険など抱かずにオリヴァルトは話をすることが出来たのだ。

 

「い、いいのかい? 随分と気軽に言ってるけど」

「オリヴァルト殿下は他人との距離が近いんですよ。あの方の二つ名はご存知ですか?」

「放蕩皇子……諸外国をふらふらと歩き回っているって聞くけど」

「旅芸人として流浪の身で生計を立ててたりしたからね、公式の場ならともかくここでは気軽に言ってくれると嬉しいな」

「は、はあ」

「本人がいいって言ってるんだから気にしなくていいんじゃない? ほら、さっさと報告しなよ」

 

 それでも特務支援課は全員恐縮そうだ。

 そんな空気をワジが砕いたことで、リィンはこほんと息をつく。

 許可も下りたことで、リィンは改めてソファーにARCUSを置いてオリヴァルトの声も全員に聞こえるようにしてからシグムントとの会話を語る。

 猟兵王が生存していた、ということはランディが特に驚いていたが、それでも捜査の進展らしい進展がないことに歯噛みの表情を見せる。

 

「ここからは確信ではなく、推測混じりながら情報になるんですが……」

「構わない。今は少しでも多くの情報が欲しい」

 

 では、と言ってリィンは元《帝国解放戦線》の一人、ギデオンから明かされた通商会議における襲撃を明かす。

 これはセルゲイ達に言っていたのでロイド達も承知だった。

 故に話すのは、この先のことだ。

 

「おそらくですが、赤い星座はその《帝国解放戦線》に対するカウンターとして雇われたのではないでしょうか?」

「カウンター? 共に襲う側ではなく?」

(フフフ、クロスベルの現状。安全保証辺りをつついて強引にクロスベルの治安に介入するつもりなのだろう。

 共和国のロックスミス大統領も、合わせて提案してくるはずだ)

 

 オズぼんからもたらされる情報を推測混じりに言いながら、ようは壮大なマッチポンプなのだと語る。

 《帝国解放戦線》が通商会議を襲うのを織り込み済み、本命は帝国が用意した武力である赤い星座に制圧させて、クロスベル自治州の警備体制を崩す。

 猟兵を雇う理由は、皇子であるオリヴァルトならびにセドリックの護衛という名目だ。

 待っているのは、帝国ならびに共和国における武力提供という名のクロスベル警備隊の解体。

 それらを語ったリィンは、喋り疲れたと言わんばかりに用意された水を含んで喉を潤す。

 だが、語り終えた彼を迎えたのは、ランディによる未知のものを眺める目つきだった。

 

「なんなんだこいつ」

 

 リィンとしては何もおかしなことを言っているつもりはないので、逆にそんな目で見られる理由が検討つかない。

 だが、ロイド達から見ればただの学生でしかないはずのリィンがもたらす情報、そして政治の視点は明らかに不釣り合いに見えた。

 それこそ一番驚いたのは、事前にリィンを知っていた者達だろう。

 彼らからすれば、リィンは武力こそあれ政治のせの字も知らない子供のはずなのだから。

 オズぼんが見えない特務支援課には、リィンが見る視点に驚くしかない。

 オリヴァルトも同様だが、まだリィンを知っているので彼らほどの動揺はない。

 

「リィン、君は一体……」

「え? さっき言ったように、トールズ士官学院の学生で、今はオリヴァルト殿下の護衛ですけど……」

「な、なるほど。放蕩皇子なんて聞いていたけど、あくまでフリであって本当はすごく優秀な人なのね。彼の薫陶あってこそ、ということかしら」

 

 エリィが尊敬の念を覚えるような感心の声を上げる。

 彼女の中では、若くして政治への造詣が深い皇子となっているのかもしれない。

 他の特務支援課のメンバーも似たようなものだった。

 

「うーん過分な評価というのは、ここまでむず痒くなるものなんだね」

 

 勝手に上がるオリヴァルトの評価をよそに、その推測を聞いたセルゲイが口を開く。

 

「殿下。今の話はどこまで信用していいんでしょうか?」

「少なくとも鉄血宰相はそういう手を打ってくる、と思ったほうがいい。彼はそれくらい悪辣な仕掛けを躊躇なく行うからね。リィン君の推測は間違ってないと思う」

「随分と彼を評価しているようですな」

「君達は初対面かもしれないが、リィン君のこれまでの行動が実を結んでいるだけさ。色々と苦労はあるが、それに見合ったメリットももたらすからね。……まあ、時折洒落にならない場合もあるが」

 

 言わずもがな塩の杭の残留物のことである。

 あの一件はさしものオリヴァルトも、かなり頭を悩ませていた。

 そのことを吹っ切って以来は、逆に何が起きても不思議ではないという胆力を得たのは怪我の功名か。

 それらの話を聞いたセルゲイはなるほど、とつぶやき通信端末へ向かう。

 これから各種方面へ連絡を入れるらしい。

 

「セルゲイさん、殿下が認めたといえあくまで推測ですよ?」

「いや、一考の価値はある。まるで帝国政府の思考そのものを見抜いているかのように感じるからな」

「……それだけ、クロスベルにとっての壁が大きいとも言えます。オリヴァルト皇子が、穏健派であることが不幸中の幸いかもしれません」

 

 ノエルが噛み締めるように言うと、空気が重くなってしまう。

 クロスベル人として、やはり現状にどうしても頷けないのだ。

 リィンは空気を入れ替えるべく、話題を変えた。

 

「ワジ、第八制御端末のことは伝えたのか?」

「当然。君のことがなければ、これから探索しようと思ってたくらいだしね」

「なら、早速捜査を――」

「いや、俺としては明日にするべきだと思う」

 

 意外にも、調査への動きを止めたのはランディだった。

 どうして、と目で語る特務支援課に冷静に補足する。

 

「その変な術がかけられた場所を考えろ。おそらく導力技術に詳しいやつ……ティオすけが必要になるんじゃねえか?

 そもそも、お前さんが第八制御端末へ行こうとしたのは、導力ネットに混ざる何かを調査するためだろう?

 あいにくと元々訪ねようとしていたヨナもいないし、ティオすけもまだ戻ってない。行ったところで無駄足になる可能性だってある」

「でも、何らかの術がかかってた以上はあそこに何かある、って言わんばかりだと思いますよ?」

「ああ。だからこそ万全の体勢で、ってやつだ。どうするよ、リーダー」

「確かにティオが居れば問題ないだろうが、待つ時間というのももどかしいな」

 

 その提案は一考の余地があるのか、思案するロイド。

 リィンも元々導力ネットに混じる霊力が気になったため、出かけるなら同行を申し出ようと思ったが、ふいに眠気が襲って来た。

 時刻を見ればそろそろ日付変更が近づいている。

 クロスベルを走り回り、アリオスとの激闘がやはり体に響いている。

 食事によるエネルギーの補給を十全に満たしたため、体が休息を求めているようだった。

 

「それじゃあリィン……っと、もうこんな時間なのか」

 

 ロイドがリィンに声をかけるが、頭を揺らして眠気と戦うリィンを見て時計を見やる。

 そこで調査は明日に持ち越し、ということが決定された。

 

「明日にまず朝一でヨナに連絡を入れて、そちらからコンタクトを取ってみよう」

「了解、リーダー。こいつはどうする?」

「放置しておくわけにもいかないしな。空いてる部屋を案内しよう」

「……あー。おかまい、なく」

「そんな顔で頷けるほど、警察は厳しくないさ。情報提供のお礼、というには安すぎるけど、今夜はゆっくりしてくれ」

「もう明日になりそうだけどな」

「揚げ足を取らないでくれ……」

 

 ロイドとランディのやり取りに笑う一同をよそに、ノエルがソファーに眠るユウナを見る。

 リィンもその頃には半分意識が飛んでいるようで、ユウナから体重を預け合られつつも寄り添うように寝ている。

 起こすのが逆に申し訳ない、と思うくらいだ。

 

「おっと、それなら通信はここまでにしておこう。うちの護衛をよろしく頼むよ」

「お任せください、今夜はしっかりお預かりします」

「ところで殿下、一つ尋ねても構いませんか?」

 

 通信を切ろうとするオリヴァルトへ待ったをかけたのは、ロイド。

 気分を悪くすることなく、快くその申し出を受けたオリヴァルトに対して、彼は言う。

 

「見たところ、リィンはただの子供ですが……そこまで信用する何かがあるんですか?」

「言っただろう? これまでの行動が信頼の現れだと」

「ワジからある程度聞いてはいますが、あまりにチグハグというか……」

 

 ロイドも上手く言葉に出来ないようで口を濁す。

 皇族の護衛に対して不敬かもしれないが、どうしても気になってしまう。

 ロイドから見たリィンの人物像は、ワジから聞いた印象と、彼とのやり取りしかない。

 それでも、その上であの政治への視点、偽物といえ《風の剣聖》を打倒する武力。

 とても成人前の少年が持つには、明らかに持ちすぎている気がした。

 

「行動と能力の差異は、人は見た目によらない、と言うのは簡単だけど……ここでリィン君をプロファイリングしたところで、おそらく結果は変わらないよ。

 問題も多いが、彼は友のためなら世界すら敵に回せるような少年、とだけ覚えておけば問題ないだろうさ。

 他は彼の付随物でしかなく、リィン君の本質はそれだけで説明出来るからね。

 ただ、とても友を大事にする男だ、と」

 

 それ以上の追及はない。

 エリィ達も同じだ。

 そもそも、特務支援課からすればリィンにそこまで疑いの目を向ける理由がないとも言える。

 ロイドがリィンを気にかけたのは、その洞察力からオズぼんという第三者を捉えた、とも言えなくもない。

 説明出来ない。

 それだけで気にかけるのは、ある意味で警察官らしいとも言えた。

 シーユー、と切れた通信を眺めていたノエルだったが、空気を入れ替えるように努めて明るく言う。

 

「それじゃあ、私はユウナちゃんを送ってきますね。ご家族の方がまだ起きていればいいですが……」

「そ、そうね。なら私は通信を送っておくわ」

 

 ややあって、父親がミシュラム勤めのためこの時間でも起きていたクロフォード家に連絡を入れ終わる。

 

「じゃあノエル、ユウナのことよろしく頼むよ」

「勿論です、私にとっても後輩にあたるのでよろしく任されました」

「一応私も一緒に行くわ。何事もないとは思うけど、ユウナちゃんに道案内を頼んだのは私だしね」

 

 ユウナを起こさぬよう、ゆっくりとその体を抱えるエリィ。

 普段のリィンなら体重を預けられるといった体への異常にはすぐ気づくはずだが、眠りが深いようで一向に起きる様子はない。

オズぼんやヴァリマールも無理に起こす様子はなく、今はただ体を休めていた。

その間にノエルは特務支援課の導力車を手配し、やがて彼女達はユウナを連れて出ていく。

 二人を見送りながら、ロイドもまたリィンを抱えて客室へ運んでいく。

 その様子を、ベッドから抜け出した一人の少女と巨狼がじっと見つめていた。

 

 

「ねえ」

 

 誰だ、とリィンは目蓋を開く。

 己の体はベッドに寝かせられており、窓から見える色は夜を彩る黒。

 どうやら眠ってしまったようだが、まずは話しかけている相手を見ようとする。

 顔こそ見えないが、一人の少女らしき相手を認識した。

 彼女はリィンが眠るベッドの傍に立って、こちらを見下ろしているようだ。

 

「フフフ、お嬢さん。今になって(・・・・・)何か用事かな?」

「貴方達が居ることで因果が崩れてしまうかも、と思っていたのだけど、きっとそうはならない、と思ったから」

 

 親父が見えるのか、と喜びの声をあげようとするが、リィンはそこから先を発することが出来ない。

 いや、口にすることは出来るが、相手に届かない、と言えばいいのだろうか。

 まるで、喋ったという事実がなかったかのようにリィンは言葉を出せずにいた。

 

「貴方は、何のために頑張ってるの?」

 

 それは、ひどく抽象的な言葉だった。

 それこそ何を指しているのか教えて欲しいくらいに、曖昧な雲のように掴めない疑問。

 だが、リィンはその感覚を理解し、一言で示した。

 

「人生を楽しく過ごすためだよ」

「そっか」

 

 その想いは、リィンにオズぼんそして少女以外にはわからない。

 少女も説明を求めることをせず、ただ頷き……視界から消える。

 目覚めた時、リィンはこの夜のことをまるで覚えていなかった。




シグムントが特務支援課を訪ねたので、ノイエ=ブラン訪問イベントはカットされています。
そしてようやくクロスベル来訪一日目が終了です。
二日目を描写すると、一日目と同じくらいのボリュームになり本命がさらに遠のくので同じくカット、次回から通商会議に入ろうと思います。
二日目の思い出って感じで地の文で何か入れていくかもしれませんが、ご了承いただけたらと思います。
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