はぐはぐオズぼんとの軌跡   作:鳩と飲むコーラ

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フフフ、息子よ。西ゼムリア通商会議の開催だ

 西ゼムリア通商会議。

 クロスベルの新市長にしてIBC総裁であるディーター・クロイスが提唱する会議。

 周辺国家全ての首脳が集い、各国の政治や経済を含めた国際問題に対して多国間で協議することを主題とした国際会議である。

 

 東の大国、カルバート共和国からはサミュエル・ロックスミス大総統。

 北東にあるレミフェリア公国からは若くして国を治めるアルバート大公。

 南西にあるリベール王国からは女王代理としてクローディア王太女。

 

 いずれも国賓クラスのVIP達がクロスベルに集っていた。

 歴史上を見ても類を見ないこの大規模な国家会議は当然世間の注目度も高く、また政治という戦場において最過酷とも言える場所であった。

 特に、主催であるクロスベルにとっては。

 クロスベルのランドマークとして、ディーター市長自ら設計し建設されたオルキスタワー。

 全長二百五十アージュに地下四十階もの広大な空間を備える、クロスベルの新たな象徴。

 腹に一物を抱えた彼らは、そんな言論の戦場で相まみえることとなる。

 

 とはいえ、リィンのクロスベル来訪二日目――つまり通商会議の一日目は昼食会に各種懇談会、夜には晩餐会に加えてアルカンシェルの観劇が行われた。

 つまり、本番は本日、というわけだ。

 

 リィンはと言えば、昨日のうちに出来ることは色々と済ませていた。

 特務支援課と共に要請を手伝い、ティオ・プラトーと呼ばれる特務支援課最後の一人の合流。

 第八制御端末では、謎の声から一方的な因縁を受けた。

 傷を負わされたそうだが、癪にさわる言いがかりに思わず再びの幻葉切りで沈黙させた。

 

 そこでオズぼんの協力により星辰の(アストラル)コードなるものを入手したため、ティオとヨナへ渡す傍ら、シュミットへお土産としてヴァリマールを通して送っておいた。

 さらにただの観光客として訪れていたオリヴァルトにミュラー、セドリック、クルトの四人の騒ぎに巻き込まれたり、エリィがトワとの再会に喜び共に楽しい昼食を囲んだ。

 また、ティオがトワに非常に共感を覚えたようで、エリィに次いで友好を結んだのは良いことであった。

 

 その後は、東方は共和国における伝説の凶手と呼ばれた《銀》との出会い。

 特務支援課と別れた後はレクターとの再会や《黒月(ヘイユエ)》へのなし崩しの紹介からの《反移民政策主義》と呼ばれる共和国側のテロリストの存在を知った。

 

 そして夜にアルカンシェルへの観劇に護衛として付いていったさい、リーシャ・マオへのある疑いのために接触を試みた。

 結果、お土産に買っておいたイリア・プラティエとリーシャのブロマイドを所持していたことによるファンの暴走扱いに加えて、恐喝の疑いが生まれてしまった。

 色々あって無罪にはなったものの、ギリアス・オズボーンとの会談が流れてしまったのはリィンとしては非常に惜しいことだった。

 

 類を上げればキリはないが、《帝国解放戦線》の痕跡を探す傍らで様々な出会いを経た夜に、オリヴァルトとセドリックの皇族兄弟とミュラーにクルトといった護衛兄弟の面々との話し合いも行われた。

 そのさい、自作自演に近い通商会議への襲撃の危機を回避すべく、リィンは特務支援課や警察との合同作戦を開始していた――

 

 

「よう特務支援課の皆さん、お揃いか」

 

 通商会議が進む中、議論に参加出来ないロイド達は警備の合間それぞれの関係者への話を伺いに向かっていた。

 そんな中、回廊室ではレクター、そして落ち着かない様子で会議を見守るセドリックと、その護衛であるクルトが共に並んでいた。

 

「あ……昨日はどうも。改めまして、僕はエレボニア帝国第二皇子、セドリック・ライゼ・アルノールと申します」

「クルト・ヴァンダールです。昨日は短い時間でしたが、お世話になりました」

 

 ロイド達に気づいた様子のセドリックは、焦りを見せながらも挨拶を交わす。

 昨日、アルセイユに招待されたさいにロイド達は直接二人と出会っているのだ。

 クルトも言葉こそしっかりしているが、セドリックに負けないくらいにハラハラした様子で彼を見守っているので、逆にロイド達のほうが冷静になるほどの動揺であった。

 

「セドリック殿下、落ち着きましょう。会議に参加しているのはあくまでオリヴァルト皇子とオズボーン宰相……見守る貴方がそれでは、その動揺が伝播してしまうかもしれませんよ」

「そ、そうですね。すみません」

「軽々しく謝るのもよくはないと思うけど、それもまた殿下の美徳ってところなのかね」

 

 肩をすくめるレクターをよそに、クルトは特務支援課、特にワジからの視線に反応した。

 昨日も似たような視線を受けており、それが何なのかを護衛役としてはじめての公式の仕事を受けた彼には何を意味しているのかよくわかっていた。

 

「特務支援課の方々を不安にさせて申し訳ありません。リィンさんに比べて、僕が役者不足というのは痛感しているつもりです」

「い、いや。帝国の護衛にそんなこと……」

「あはは……構いませんよ。僕がクルトに求めているのは強さでなく、安心なので」

「言うなよ……」

「悔しかったら、ちゃんと強くなってよね?」

 

 落ち込むクルトに、笑みを向けながら楽しそうに揶揄するセドリック。

 仲の良い皇族とその護衛役に、ロイド達は自然と昨日のアルセイユでの出来事を思い返す。

 

「やはりミュラーさんを意識している、ということでしょうか」

「そうなんですよ。僕もそうなんですけど、お互いにそれぞれの兄と公式で初めて一緒に仕事を行うんです。まあ仕事というほどやるべきことはあまりないですが……

 ともかく、彼はそれで気負い過ぎてて全然安心出来ないんですよ」

「セドリックに言われたくないよ」

「つまりどっちもどっち、ってわけだ」

 

 レクターの一言に沈黙する二人。

 ロイド達から見ても、ミュラーとクルトの実力差はひと目でわかる。

 護衛という立場なら、この場に居るのはリィンが適切なのでは、と思わざるを得ない。

 捜査一課であるアレックス・ダドリーがこの場にいて、率直な意見を言うことが許されたのなら明らかな場違いと言われてもおかしくはなかった。

 その様子を察したセドリックが、くすりと笑いながら言う。

 

「僕がクルトを傍に置いているのは、『友』だからです。強さは他の皆さんが補ってくれますが、今抱えているこの不安を晴らしてくれるのは友であるクルトだけ……

 だから、実力そのものは度外視してるんですよ」

「それを言われるとこちらの立場がな……」

 

 護衛として必要なものは強さだけではない。

 むしろ、『安心』という心の守護、信頼という絆は時に強さよりも大事だ。

 セドリックの言葉は、特務支援課の心を響かせる。

 無論強さも重要だが、クルトはそれこそティオよりも一歳上、ユウナと同い年。

 一番大事なものを持っているのなら、あとは修練と経験を積んで成長していけばいい。

 

「な、なるほど。確かに殿下にとってはそれが最優の守護者というわけですね」

「なのに、クルトと来たらミュラーさんやリィンさんと比べてばかりで」

「そうだぞ坊っちゃん。あのオッサンに向かって、セドリック殿下が直々にクルトを護衛役に連れていくよう具申したんだ。

 その価値を自分から捨てていく、っていうのはちょっとかっこ悪いぜ?」

「は、はい」

 

 クルトのような生真面目な少年には、むしろプレッシャーに感じるのではないか、という言葉。

 だが、これらを受けて慣れなければならない、という決意がクルトの目からも感じ取れる。

 

「ま、経験と覚悟を整える時間は用意されてるんだ。その間に決めることだな。それにしても……」

 

 レクターが肩をすくめながらも、ロイド達を見やる。

 そして、その中の最大の違和感を指摘した。

 

「殿下と坊っちゃんの精神安定剤にして暴走剤はどこにいるんだ? それに、あのちっこいお嬢ちゃんも見えないようだが」

「あ……」

「そう言えばリィンさんが居ませんね。ティオさんも……」

 

 特務支援課は現在、ロイド、エリィ、ランディ、ノエル、ワジの五人だけしかいなかった。

 昨日の段階でオリヴァルトから直々に特務支援課への協力を要請されたリィンの事情を知るセドリック達は、てっきりリィンも一緒と思っていただけに眉をひそめる。

 

「彼は現在、ティオと共に別行動中です」

「おいおい、あいつを放っておいていいのか? 今は大事な国際会議中なんだぞ?」

「僭越ながら具申致しますと、あの人から目を離すと本当に何を仕出かすかわからないので、一刻も早く確保して傍に置いておくべきだと思います」

 

 レクターとクルトの言葉に、帝国におけるリィン・シュバルツァーという少年がどう見られているのかがよくわかる言葉だった。

 レクターは事前の情報もあるが、昨日リィンと行動を共にしたことで彼が呼び寄せる騒動という名の因果を軽く実感しており、クルトほどではないが同意を見せていた。

 そんな中、セドリックは兄の思惑を聞いていたこともありすぐに答えを察する。

 

「《帝国解放戦線》への対処ですか?」

「はい、セドリック殿下。急襲は確実として、その備えに待機しています。心配なのは非常にわかりますが、きっと効果のほどは一入かと思われますよ」

 

 わかります、と言わんばかりのクルトの目が淀む。

 振り回した分だけ結果を出すリィンの行動は、確かな対価をもたらすのだから。

 だが、それを国際会議で行うという事実がクルトの胃を痛めつけていた。

 自分のことでもないのに、エマを筆頭に生真面目な人間特有の症状とも言える。

 

「ふぅん。まあ、俺達としては皇子やオッサンに危害がなければ後は観戦モード……主催国はあくまでクロスベルなんだ、気張ってくれ」

「ええ。と言ってもリィンに協力してもらってる以上、クロスベル単独という形ではありませんが……」

「リィンさんなら、名前を出さずに特務支援課への極秘の協力者で通しそうな気がしますね」

「一応、皇族の護衛なんだがな、あの人」

 

 そんな話をしているうちに、会議に動きがあった。

 と言っても何か重要な意見がもたらされた、のではなく休憩時間を挟むようだ。

 記者達の騒ぎが離れたこちらにも聞こえるような喧騒が聞こえてくる気がした。

 

「さて、休憩時間のようだな。オリヴァルト殿下もおそらくこっちに来るだろうけど、まだ居るか?」

「いえ、他の方へ挨拶もしようと思いますので、ここで失礼します」

「皆さん、お仕事頑張ってください」

「はい、ありがとうございます殿下」

 

 無言で頭を下げるクルトにも礼を言って、ロイド達は一度その場を離れる。

 その後、共和国側の関係者であるキリカ・ロウランやイアン・グリムウッド弁護士、リベールの王太女であるクローディアとレクターが学校の先輩後輩関係であることを知るなど、各国家の関係者と話を交わしていく。

 さらにロックスミス大総統との会合など、特務支援課は短時間で精神的な負担を覚える頃、ギリアス・オズボーンからの呼び出しにより彼が待つ部屋へ向かう。

 

「宰相閣下がお待ちだ。そのまま入るがいい」

 

 無駄に威圧感のある帝国軍将校の言葉に従い、オズボーンの待つ部屋の扉を開ける。

 

「失礼します、オズボーン宰相閣下」

「クロスベル警察、特務支援課。お招きにより参上致しました」

「……入ってきたまえ」

 

 厳かで、低く艷やかな声が特務支援課の体に伝う。

 つぶやきほどの短な言葉一つに重りが込められているような威圧感。

 獅子の住まう巣に武器を持たずに訪れてしまった無知な子供。

 扉の前に佇んでいた帝国軍将校の威圧感など、空気にしか感じなくなるような圧迫感に特務支援課は全員が喉を鳴らす。

 

「全員が揃ってはいないのだね。オリヴァルト皇子の伝で我が帝国からの協力者が派遣されていると伺ったが」

「リィンと他のメンバーのことでしたら別行動中です。話があるというのなら……」

「いや、構わない」

 

 ロイドはふと、威圧感が弱まるような錯覚を覚えた。

 リィンのことを話題にしたからだろうか?

 それとも、萎縮する自分達に気遣ってのことか。

 後者の可能性は低いと考えるロイドだったが、先にオズボーンが機先を制した。

 

「エレボニア帝国政府代表、ギリアス・オズボーンだ。諸君のことはレクターから色々と聞いている。それでは諸君、改めて残りの休憩時間に付き合ってもらおうか?」

 

 そこから先は、率直に言えばクロスベルの今後についてだった。

 彼なりに直截に尋ねれば、意識調査とのことだが……

 クロスベルがどれだけ保つか。

 その問いを投げられた特務支援課は当然、今後も変わらぬ存続を願うがオズボーンが語る意志と意志のぶつかり合いから生まれる闘争の予感に、口をつぐんでしまう。

 ロイドがもたらしたリベールとの百日戦役を例にした反論も、上手くはぐらかされてしまう。

 ただ、意志という言葉だけが特務支援課の中に残っていた。

 話は終わりだ、と切り上げようとするオズボーンに対し、反撃の狼煙を上げたのはワジだった。

 

「ところで宰相閣下、叶うなら一つ質問を許していただきたいのですが」

「長い時間は取れんが、それでよければ構わんよ」

「では……貴方はリィン・シュバルツァーとどういう関係なのでしょうか?」

「ワジ?」

「彼が持つ人形(・・)のことを考えると、貴方と無関係と思えなかったので」

「……………」

 

 その問いに初めて、オズボーンが沈黙する。

 その事実にランディが目を見開き、押されたまま歯噛みしていたノエルが驚愕に口を呆けさせる。

 

「人形? そんなものリィンが持っていた覚えはないが……」

「おいおいワジ、まさか一昨日リィンが寝てる隙に荷物でも漁ったのか?」

「流石にちょっと擁護出来ないですよ、ワジ君!」

 

 一斉にワジに向かって非難が浴びせられるが、彼は動じない。

 ただ静かに、オズボーンの一挙一動に注視していた。

 そのことに、オズボーンは軽く唇を歪めた。

 

「ワジ・ヘミスフィア。私には何のことかわからないが、それは一体どんなものだったのか教えてもらえないかね?」

「それは、鉄血宰相である貴方を模した人形で……」

「ポーズや格好など、人形と一言に言っても種類はある。それこそ、このクロスベルではみっしぃなるマスコットが非常に数多く存在している」

 

 ならばわかるだろう? とオズボーンはワジに言う。

 

「それらを分類するのなら認識部分として、固有の形があるはずだが、一体どういうものだったのか教えて欲しいのだが?」

 

 急に口数が多くなった、と思ったのは気のせいか。

 エリィやノエルなどは、あのオズボーンの口からみっしぃという言葉が出た段階で体を震わせていた。

 吹き出さなかったのはひとえに外交の場であるためか。

 

「喋る人形だと伺っていますよ」

「なるほど。そういったものがあるとは、私も知らなかったよ。グッズとして売り出すには冒険的と言える。

 これも、意志の強さと問うべきかな?」

「は、はは……」

 

 ありえない冗談にロイドは乾いた笑いを漏らすしかない。

 先程まで感じていた威圧感は和らいだ……というよりワジだけに絞られた、と言うべきか。

 そのせいか、常に優雅な笑みを浮かべるワジも冷や汗をかくほどに余裕を奪われている。

 

(逆に言えば、この話題は鉄血宰相にとって見過ごせないということ。いや、確かに自分の人形がみっしぃグッズみたいに売られている、なんて聞けばそうなってしまうかもしれないが……

 きっと本質は別。なら、リィンのことか?)

 

 思えば、オズボーンは最初にリィンのことを気にかけていた。

 全員のことを、ワジですら名前を知っていたのにリィンのことは名前を出さずに抽象的に自分達に浮かばせるというやり方で。

 なら、ワジの言う人形のことはさておきギリアス・オズボーンにとってリィンは何か気にかける男であることを示している気がした。

 

「フフ、伝聞(・・)を己の経験として語るのは若者の特権か。いや、これは世界共通の風習か。憶測で探りを入れるのも時には必要だが、この場では浅慮としか言えんな」

「…………」

「とはいえ、わからないことがあるから世の中は面白い。手の内が全て見えた遊戯(ゲーム)など、退屈の極みというものだ。

 それこそ、件の少年のように予測出来ぬ行動を実行する意志を持つべきであろう。そして問いの答えであるが、私にはそれがどういったものであるか(・・・・・・・・・・・・・・)というのは見当がつかんよ」

「…………ご意見、感謝致します」

 

 それきり、ワジは沈黙する。

 オズボーンとのやり取りは、おそらく二人にしかわからないリィンへの認識。

 何かを見逃しているのか、とロイドは捜査官としての勘を疼かせるが、この場で問いただすことではないとして、挨拶をして退室する。

 

「ワジ、さっきのは……」

「僕なりに鉄血宰相を測ろうとして失敗しただけの話さ。気にしないでくれ」

 

 それ以上は聞いてくれるな、という言葉を雰囲気で発するワジ。

 疑問を残しながらも、回廊室へ戻ってきたロイド達は再開した会議の様子を見守っていく。

 やはりというか、通商会議の後半は事前にリィン達から聞き、イアンも危惧していた波乱が待っていた。

 

 帝国と共和国の二大国からはクロスベルの安全保証に関する問題提起を次々と提示され、次第に強張っていくディーター市長とマクダエル議長。

 まるで協調するように足並みを揃える両国は、予測通りの展開へ転がっていく。

 ロイド達にはこの苦難を見守るしかない状況の中、傍にいたダドリーの通信機が鳴った。

 内容は、赤い星座と黒月(ヘイユエ)がそれぞれの拠点から動いたという報告。

 その時点で、ロイド達の行動は決まった。

 

予測通り(・・・・)だ。みんな、屋上へ行くぞ!」

「おうよ!」

「ええ……当たって欲しくはなかったけど」

「ですが、逆に言えば裏をかく唯一のチャンスです!」

「ちっ、元を正せば帝国も原因の一つだが、今は乗る他ないか」

 

 士気を上げながら、ロイド達は会議の行く末を案じながらも屋上へ向かう。

 そこに、この現状(かべ)を打開する手段があると信じて。

 

 そうして特務支援課が屋上へ向かってから少しして、会議は最も懸念されていた方角へ舵を切る。

 クロスベル警備隊の解体からベルガード門を帝国軍、ダングラム門を共和国軍が管理するといった実質クロスベルの崩壊を意味する提案。

 それに対しディーターがある提案を行おうとした、その時だった。

 

「方々、下がられよ!」

 

 中立の護衛として参加していた、本物(・・)のアリオス・マクレインの激が飛ぶ。

 次の瞬間、窓に映り込む空を飛ぶ巨大な鉄塊。

 参加者が驚きに身をすくめ、飛行艇、とクローディアが叫んだ瞬間、備え付けられた銃口による乱射が通商会議を襲う。

 

「ご安心を! 砲撃にも耐える特注の強化ガラスです!」

 

 その言葉を証明するように、飛行艇から放たれた銃弾の乱舞はガラスにヒビを入れるだけで破ることは叶わない。

 その合間に参加者は入口側に避難し、護衛達が各々の主に付き添う。

 

「――我々は《帝国解放戦線》である」

 

 会議を襲う二つの飛行艇の一つ、ラインフォルトの高速艇から犯行声明文が語られる。

 

「同じく、カルバートの古き伝統を守るために立ち上がった《反移民政策主義》一派の者だ」

 

 もう一つ、ヴェルヌ社が開発し、略奪された軍用ガンシップからも同様の言葉が紡がれる。

 

「我らが互いの怨敵を討たんがため共に協力することと相成った。覚悟するがいい、国に巣食う寄生獣共め!」

 

 銃弾では崩せぬと判断した両組織が屋上へ向かう。

 オルキスタワーへ降り立ち、そこから制圧を開始するのだろうと全員が考える中、オリヴァルトが告げる。

 

「問題ない、すでに手は打ってある。ですよね、ディーター市長、マクダエル議長」

「うむ……」

「彼らを信じるしかあるまい」

「ほう?」

「お三方、何やら企んでいるご様子で?」

「いえ、私に出来ることはクロスベルの英雄たる特務支援課、それに警察や警備隊を信じることだけです」

 

 その物言いに、オズボーンとレクターはこの場にいるのが各国の親衛隊や警備であり、クロスベル警察や警備隊の数は必要最低限であることに気づいた。

 

「兄上!」

「殿下!」

 

 先んじて到着したレクターに遅れて、セドリックとクルトがやってくる。

 互いの弟が無事と知り、オリヴァルトとミュラーは互いに安堵の笑みを浮かべた。

 

「オリヴァルト殿下、何やら貴方も関わっておられるようだが……」

 

 そこにオズボーンの疑問が刺さる。

 他の面々も気になる様子であると知り、オリヴァルトのその笑みを維持したまま言った。

 

「言ったでしょう? すでに手は打ってある、と。特務支援課の手伝いに、私の護衛を向かわせただけですよ。メインは彼らにある」

「今まさに安全保証について語られた疑問視……それを晴らしてみせましょう」

 

 マクダエル議長が頷き、ディーターが参加者へ叫んだ。

 

「皆様、ご安心ください! 我がクロスベルの誇る特務支援課が、警察が、警備隊が見事この窮地を解決して見せましょう!」

 

 あまりにも自信たっぷりな様子に、怪訝の目を向けるロックスミス。

 だが、その言葉はこの後すぐに証明されることとなる。

 

 一方、オルキスタワーの屋上へ降り立とうとする二つの飛行艇(ガンシップ)

 だが彼らは気づかなかった。

 天空より飛来する存在が自分達以外にもいるのだと――

 

「弐の型、疾風」

「なっ」

 

 気づいた時には遅かった。

 紫電ニ閃。

 灰色の騎士人形(・・・・・・・)が持つ太刀から繰り出された斬撃が二度閃き、二つの飛行艇のローターを斬り飛ばす。

 強制的に降下するガンシップを認め、灰色の騎士人形……灰の騎神、ヴァリマールに搭乗するリィン――でなく、同乗(・・)していたティオ・プラトーは叫ぶ。

 

「エイオンシステム、起動!」

 

 ヴァリマールの持つ太刀が形を歪ませ、魔導杖へと変化する。

 騎神を導力端末(・・・・)としたティオの導力ハッキングが、導力ネットとレイラインを通じて起動される。

 彼女の展開する導霊力の網に対し、《帝国解放戦線》と《反移民政策主義》のテロリストは為す術なく、強制的に飛行艇のシステムを支配されていく。

 同時に、オルキスタワーへハッキングを仕掛けていたコードもまとめて掌握。

 そこに特務支援課と捜査一課、クロスベル警察が到着する。

 両テロリストは襲撃して間もなく、詰みの一手を決められるのであった。




二日目カットしたら一日目の長さはなんだったの、ってくらい一気に話が進みましたね。
次回は今回の裏側であるリィンとティオ視点、ヴァリマールに乗ることになった経緯などが書かれると思います。

もうちょっとエリィとトワの絡みとかも書きたかったのですが、モブに力を入れる軌跡だからこそ碧時代でもトワの姿を確認したかったものです。
クロスベルにもエマが居るんだな、って小ネタとかも色々ありましたが…クロスベルのモブの皆さんを出せなかったのはちょっと残念です。
パン屋とかはちゃんと行っておきたかった…

セドリックによる政治考察のシーンがあっても良かったかな、と思いましたが彼はクルト共々あんな感じで見学参加、空気だけ味わってます。
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