前回の続きを待っていた方は申し訳ありません。
再び時は逆巻かれる。
リィンがクロスベルへ到着した当日、Ⅶ組は新たな特別実習としてリィンを除いた九人、担任のサラを交えてガレリア要塞へ訪れていた。
士官学院で学ぶものの先、チカラの本質を見極めるための実習。
その入口であるガレリア要塞へ列車が到着すると、見渡す限りに鉄とコンクリートで埋め尽くされた要塞は、出迎えた生徒達に大きく感嘆の息をつかせた。
「これがガレリア要塞……」
「まるで壁……いや、実際にクロスベルとの境界を分かつ壁なのか」
列車の中から見上げるガレリア要塞の威容は、ともすれば一つの小さな街を思わせる広さを持つ土地だった。
だとしても、初見の土地ならばリィンなら喜んでマラソンを始めたかもしれない、と考えるエマ。
すぐに頭を振って思考を散らすが、一度描いてしまったイメージがなかなか消すことが難しかった。
(魔都と呼ばれるクロスベル、そこで行われる国際会議、そしてリィンさん……何も起きないはずがないですよね。そもそも通商会議への襲撃予告をされているのですし)
リィンならどこに居ても何か起こす、という考えが根付いてしまったエマである。
そしてギデオンからもたらされた情報は当然エマも知っているため、それらが事実であることを強く認識する。
糸のように目を細めるエマに気づいたミリアムが、ガレリア要塞を見上げるⅦ組をよそにエマの正面にやってくる。
「いいんちょ、どうかした?」
「いえ、ちょっと驚いてしまって……」
「そうなの? てっきりガレリア要塞じゃなくて、リィンのことを考えていたのかと思ったのに」
リィンという言葉が出たことで、まずガイウスが驚きから我に返った。
「ふふ、確かにあいつならデカイな、見回りしようと言って自由時間に中を走り回ることだろう」
「あー、すごくイメージ出来るわ。流石に旗は使わないと信じたいけど」
同意するアリサの脳裏には、五月の特別実習におけるオルディスマラソン(命名リィン)が浮かんでいた。
まともに住人や店を見ることが出来ず、ひたすら羞恥心と戦っていた記憶が蘇り思わず乾いた笑いを漏らしてしまう。
大なり小なり考えることは同じのようで、奇しくも生徒達は呑まれかけた精神を立て直すことに成功していた。
それらを眺めていたサラはこれも良薬口に苦しなのかしら、と的外れのような、そうでもないような東方の言葉を思い出していた。
ガレリア要塞のホームに降りると、列車はそのままクロスベル市へ向かう。
「この先のクロスベルには、三十分くらいで行けるんだよね? 案外、あのまま乗っていったらリィンに遭遇したかも」
「やつは一応オリヴァルト殿下の護衛として向かったのだ。ホームに居るわけがない、と言いたいが……」
「だが、本来ならこちらに参加するはずだったことを考えると、置いていかれた悔しさもある。今回の見学で何か良いものを持ち帰らなければ」
「……ラウラの意気込みには同意するけど、今回はどうだろう」
リィンをライバル視するラウラが士気を高めるも、リィンを追う仲間であるはずのフィーに指摘を受けて眉をひそめる。
どういうことだ、と言葉に出さずに問いかけるが、フィーは見ればわかるとだけ言った。
「フィー君、それは一体……」
「――来たか」
マキアスが疑問を訪ねようとするが、それを遮るように逞しい声がホームに響く。
階段から降りてきたのは、トールズ士官学院において軍事学の教官を務めるナイトハルトであった。
「ナイトハルト教官!」
最近慌ただしい正規軍の動きに影響を受け、士官学院で姿を見かけること少なくなった教官に生徒が声を上げた。
「ナイトハルト少佐殿。トールズ士官学院一年、特科クラス《Ⅶ組》。特命を受けてクロスベルへ向かったリィン・シュバルツァーを除き担当教官含め全員の到着を報告します」
「11:30――了解した。ようこそ、ガレリア要塞へ」
普段は学院で犬猿の仲を見せるサラが、ナイトハルトに敬礼する。
ナイトハルトもまた礼を返すその姿に、生徒達はここが学院とは異なる場所であることを再認識した。
その後、生徒達が就寝する場所に荷物を置くと、ブリーフィングルームと思わしき部屋へ案内される。
「今回は特別実習の二日を使い、お前達には『実地訓練』と『特別講義』に参加してもらう」
「実地訓練、というのは?」
「この後、第四機甲師団・第五機甲師団による合同軍事演習が行われる。まずはその見学をしてもらう」
「第四機甲師団と言えば、ナイトハルト教……少佐殿が所属する部隊でしたか」
「それに、エリオットのお父さんであるオーラフ・クレイグ中将が率いる帝国正規軍最強と呼び名の高い部隊よ。
ちなみにここの少佐殿は、そのエースとして名を馳せているわ」
「ごほん、私のことはどうでもいい。大事なのはこの演習に参加でなく見学ということになる。
まず、その前に腹ごしらえだがな。それでは食堂へ向かうぞ」
その後、糧食をメインにしたお世辞にも美味いとは言えない軍隊の食事を摂ると、しばしの間自由時間が設けられる。
各々がガレリア要塞を回る中、エマはふと霊力の残滓を感じ取った。
「え……?」
感じたのは一瞬だけで、再度知覚を全開にしてみても霊力を感じ取ることは出来ない。
気の所為、とは考えなかった。
ギデオンより通商会議への襲撃が予告されたオリヴァルトは、クロスベルでの護衛にリィンを雇う他、当然その情報はヴァンダイクを通じて正規軍へ流した。
大々的にしないのは、ギデオンが生存していることを隠すためである。
セドリックに感銘を受け、鉄血宰相の是非を知るために黒の史書を探す旅に出たといえ彼は元テロリスト。
帝国軍に捕まれば処刑は免れない身の上だ。
ルーファスとTMPにより多くの《帝国解放戦線》が逮捕されたが、ギデオンはそこから逃走しているという認識が現状である。
通商会議への襲撃が確信を得られたことへの対価と考えれば、ある意味司法取引とも言えた。
そも、今回の演習に第四機甲師団が参加しているのはその対応のため。
元々演習の予定があったところを、スケジュール調整をして通商会議の日に合わせた。
逆に言えば、オリヴァルトが持つコネクションで動かせた唯一が第四機甲師団、と言える。
それほど、軍事においてのギリアス・オズボーンの影響力は大きい。
自らをあえて襲撃させ、クロスベルへ開催国としての責任を問い賠償を求める。
そんなマッチポンプまがいの政治がまかり通る程度に、だ。
さておき、そんな襲撃予告が行われた場所に近いこの要塞で感じ取る霊力。
この上なく怪しいと言っているようなものだった。
エマはその残滓を追いかけると、列車砲が設置された場所へやってくる。
――そう言えば、息子がクロスベルへ居る頃にはエマ嬢はお隣のガレリア要塞へ赴くのだったな。
脳裏によぎるのは、数日前に聞かされたオズぼんの言葉。
そこで魔女の予知とも言うべき勘がエマにある事実を閃かせる。
「何をしている」
早速こっそりとある魔術を使おうとしたエマだったが、その姿を軍人に見咎められてしまう。
「その制服は確か士官学院の生徒か。見学は構わないが、この辺りは列車砲も近く、士官候補生の諸君らが近づいていい場所ではない。
見学なら他を当たるといい」
「――すみません、失礼しました」
残念に思いながらも、エマはその場を離れながら頭を巡らせる。
使おうとした魔術は準備に時間がかかる。
なら、事情を打ち明ける?
否、本来のここの管轄は第五機甲師団。
ここを預かるワルター中将も、質実剛健にして厳格そうな軍人だった。
基準を満たしたのはガイウスだけ、と体格が細身であることを男性陣に指摘し、女性に関してもあまりこの場に居ることを良く思っていないような印象を受けた。
ミリアムやフィーは外見的に仕方ないといえ、オーレリアのように実際に武勲を示すところを見せなければ話が通用する相手ではない、とエマは判断する。
その後の彼女の行動は早かった。
自由時間をフルに使い、周辺の違和感を求めて歩き回った。
もしセリーヌがこの場に居れば、時に催眠魔術で強引に情報を抜き取る光景は、明らかに起動者の影響をひしひしと受けていると彼女に落涙させたことだろう。
情報を求めるエマだったが、一度タイムアップ――演習の時間を迎えてしまう。
口惜しく思いながらも、Ⅶ組は装甲車に乗ってガレリア要塞に併設された軍事演習場へと向かった。
そこで行われるのは、主力戦車《アハツェン》や旧式戦車、軍用飛行艇などが立ち並ぶ鉄と火の力の象徴。
軍事兵器に言葉を失う一同をよそに、第四機甲師団の団長であるオーラフ・クレイグが到着する。
鋭い目つきに異名の通りの赤毛をなびかせる巌のような男――だったのは途中までで、エリオットを認識した途端にただの親ばかと成り果て、ナイトハルトは手で顔を覆ってしまうほどの変化だった。
当の息子に咎められ、威厳を取り繕うオーラフだったが、それでも演習が始めれば軍人としての責務を果たしていく。
開始される演習。
主力戦車《アハツェン》や軍用飛行艇から放たれる砲火は、旧式戦車を鉄の棺桶のように一撃で沈めていく。
近代戦である戦車を用いた、機甲師団の鉄火の威力を見せつけられた一同。
個人の武力など鼻で笑われるような光景を前に、ラウラなどは拳を握り悔しさを顕にしていた。
ユーシスも歯噛みの表情を隠せない。
なぜならこのガレリア要塞はクロスベルと同時にクロイツェン州の領邦軍への牽制も含んでおり、仮に矛を交える結果となれば、という仮定を目の前で見せつけられているのだから。
アリサも浮かない顔である。
実家であるラインフォルト社が開発した主力戦車のスペックを目の当たりにしたことに加えて、やはり実家が作り出す鉄火場に言葉に出来ない気持ちを表情に出していた。
常ならばこういった空気の時にフォローに回るはずのガイウスも、外の世界における《チカラ》を前に、ただ呆然と光景を眺めることしか出来ずにいた。
そんな風に、帝国が抱える暴力を見たⅦ組は、その後に行われたナイトハルトからの演習の成果についての説明も、どこか上の空で聞く他なかった。
その夜、昼間に食べた糧食と違い週に一度の豪華な夕飯に箸が進まない一同。
そこに、サラがクロスベルやテロリストの情報を持ってやってきた。
ヴァリマールを深く知ることで、比較的に冷静だったエマが代表して言う。
「サラ教官、リィンさんは何をしでかしましたか?」
「あ、やらかしてるっていうのは確定なのね」
「逆にお尋ねしますが、何も起きないと思ったんですか?」
レグラム二日目は表面的に何もなかったが、デュバリィとの決闘があったので何も起きていないわけではない。
そのことを、エマは魔女的に察していたのかもしれない。
「あーうん……理解が深くて何よりだわ。まあしでかしたんだけどね。人づてだから多分本人に聞いたらもっと増えると思うけど――」
やっぱり、と思う反面どこにいてもいつも通りなリィンにⅦ組から呆れの声が響く。
その内容に笑い、レグラムでのアドバイスにあまり意味がなかったことに顔を覆うユーシスや、それを慰めるラウラ。
そこに生まれた空元気でほんの少しだが調子を取り戻したⅦ組は、ひとまず評判のハヤシライスへスプーンをつけていった。
その夜、こっそり部屋を抜け出したエマは自らに隠蔽の魔術を用いて行動を開始する。
夜間の見回りがあるといえ、昼間に比べれば比較的に動きやすい状況でもっとも怪しい列車砲へ近づいていくエマ。
途中、整備員達が《アハツェン》の
ひとまず万一に備えて、列車砲の近くを基点に転移封じの結界を張っておく。
《帝国解放戦線》は現在、ヴィータが所属する結社が協力している。
彼らは非常に高度な技術を持ち、転移と共に現れるのが常道だ。
なら、仮に彼らがここへ現れたとしても動きを封じてしまえば不意打ちは避けられるはずだ。
エマはその後ガレリア要塞を周って結界を作っていき、ナイトハルトやサラにもここへ襲撃がある可能性についても報告した。
結界はさておき、襲撃に関しては予想の内だったようで《アハツェン》などわずかであるが従来よりも戦力の補充に成功していたらしい。
(なるほど、あのメンテナンスはそのためのものなんですね)
それを聞いたエマは安堵して、女性陣の寝室へと戻っていった。
予防は確かに正解だった。
そのまま結界が作動したのならば、先の話である戦力の増加がされることなく列車砲も制圧される前に帝国軍が《帝国解放戦線》を鎮圧した可能性もあったかもしれない。
だがエマにとって不幸だったのは、彼女はあくまで魔女であり軍が運用する装備について詳しい知識を持たなかったこと。
何より、その光景を
「ったく、あいつがいないから楽だと思ってたのに、面倒なことしやがって――」
エマが立ち去った後に、どこかでそんな言葉が夜の空気に溶けて消えていった。
*
翌日――エマにとっては当日――午前中は正規軍の兵士に混じった体力トレーニングが行われ、午後にはブリーフィングルームにてテロリストの詳しい情報を聞くこととなった。
だが同時にクロスベル警察が慌ただしく動いており、それに同調するようにオリヴァルトとの会合が進められている、とのことだった。
「オリヴァルト殿下……ということは、やっぱりリィンが何かしてるのよね?」
「秘密……のはずなんだけど、ボクのところに回ってきた情報でもリィンが忙しなく動いてるって報告を聞いてるかな」
「言っていいのか?」
「何せ本人が動きを隠してないからね。独自に何か掴んで対策してます、ってわかりやすく動いてるみたい。ただ、流石に内容はわからないけど、クロスベル警察と連動しているってことが気になると言えば気になるかな?」
「クロスベル警察?」
「リィンがお世話になるんじゃなくて、お世話してるの?」
「いや、流石に先月冤罪で逮捕されたばかりなんだから、同じことは繰り返さないだろう」
知らないということは幸せなことだった。
「……やつが動いているとなると、安心と不安が同時にやってきてどう反応すればいいかわからん」
「ま、向こうのことは向こうに任せましょう。ただ、《帝国解放戦線》は先月帝都に潜伏していたメンバーが一網打尽になったといえ、活動がなくなったわけじゃないわ。
彼らの企みを阻止した私達は、いつどこで襲われるかもわからない。肝に命じておきなさい」
そんな警告を受け取りながら、Ⅶ組は要塞に格納された《列車砲》を見学しに向かうこととなる。
だがその途中、ナイトハルトのARCUSに通信音が鳴り響いた。
連絡を受けたナイトハルトの顔が強張っていくのを見やり、Ⅶ組の胸中に不安が生まれていく。
通信を終えたナイトハルトに、サラが内容を聞く。
「クロスベルで何か?」
「ああ。つい先程、通商会議が行われる超高層ビルに《帝国解放戦線》、及び共和国方面のテロリストの襲撃があったらしい。
幸い、クロスベル警察と
皇族の方々含め首脳達にも怪我一つ負わなかったそうだ」
「灰色の」
「騎士人形」
全員の脳裏に良い笑顔をするリィンの顔が浮かぶ。
さっすがリィン、と喜んでいるのはミリアムで、他の面々はなんとも言えない表情を浮かべている。
「あの男、ついに国際会議でも派手に動いたのか」
「ま、まあ殿下達を守るためだし……」
「だが、しばらくリィンの周りがいっそう騒がしくなるだろう。帝国時報などでも取り上げられること間違いなしの成果だろうからな」
「でもリィンがヴァリマールを動かしてるって公表しなければ……」
「トールズの生徒もだが、リィンが騎神を動かしていることを知っている人は多い。なら人の口に戸は立てられない、どこかで情報が漏れることは避けられないと思う。
何より、政治的に目をつけられない理由がない」
「……記者への対応はお偉いさんに任せましょう」
「ああ、シュバルツァーのことはひとまず置いておくぞ。今は列車砲の見学を――」
ナイトハルトの言葉は、全てを言い切ることが出来なかった。
それよりも早く、ガレリア要塞に地響きが起きたからだ。
「なっ……!」
「今のは!?」
「真下からだわ!」
「真下……格納庫か!」
振動は際限なく続き、ナイトハルトとサラを先頭にⅦ組も続いて格納庫へと向かう。
そこでは誰も乗っていないはずの《アハツェン》が動き回り、味方に向けてその凶悪な砲手を向け、爆炎の華を咲かせていた。
驚くⅦ組をよそに、ナイトハルトは倒れた整備兵へ呼びかけた。
「無事か、一体何があった!」
「手配されて追加された《アハツェン》が、勝手に……」
「そ、それに昨日導力メールで指示を受けた《Cユニット》付きのほうも……」
「なんだと……!?」
同時に外から悲鳴と轟音が木霊する。
格納庫に出てみれば、要塞各地に砲弾を打ち込む《アハツェン》が、昨日演習が行われた場所へ走っていくのが見える。
生身では追いつくことが出来ない現状に歯噛みする一同へ、逞しい声が響いた。
「ここは我らに任せよ!」
「父さん!」
「陽動の可能性がある。おまえ達はここに留まるのだ!」
そこに赤毛のクレイグ率いる第四機甲師団が到着する。
《アハツェン》の上に立ち、仁王立ちでⅦ組を見下ろすオーラフの言葉に従い、ひとまず各地の状況を調べようとした一同の体に影が差す。
思わず上を見上げれば、そこには飛行艇が降り立ち発射された導力ミサイルが格納庫を燃やしていく。
さらに列車砲の近くに降り立った飛行艇から、続々と現れる人形兵器の群れ。
そして、
「転移!? どうして!?」
エマの叫びに答える者はおらず、無情な襲撃により被害は広がっていく。
同時にサラとナイトハルトが、左翼と右翼に散らばる相手の狙いが列車砲にあると察した。
「あちらの襲撃が防がれたと知って、列車砲で直接狙う気か!?」
「案外同時に攻めるつもりだったのかもしれないけど、どちらにしろ私達がやるべきことは変わらないわ」
「……そうだな。お前達、これはもはや特別実習ではない。ここで――」
「黙って見てろ、って? リィンが向こうで頑張ってるのに、私達だけ何もしないわけには行かないよ」
ナイトハルトの言葉を遮ったのはフィー。
それをきっかけに、Ⅶ組のメンバーは各々の想いをナイトハルトにぶつけた。
「同感だ。このような暴挙、見過ごすわけにはいかん!」
「連れて行かないというなら、勝手に動かせてもらう!」
「くっ…………」
逡巡するナイトハルト。
軍人といえ、教官でもある彼は教え子を鉄火場へ送ることへの躊躇があった。
そこにサラが割り込む。
「時間がない、手伝ってもらいま――」
だが、そこにさらなる絶望が待ち受ける。
要塞入口、そこに一際大きな地響きが鳴った。
目を向けたその先に佇むのは騎士人形が二つ。
かつてブリオニア島で相まみえた機甲兵《ドラッケン》達がそこに降ってきた。
「なあっ!?」
「機甲兵!?」
その機敏な動きで駆けつけた戦車の砲弾を避け、一方的に破壊していくドラッケン。
戦況は、圧倒的な不利を迎えていた。
「一体だけならまだしも、複数か……!」
「いえ、手段はあります。ですが……非常に危険ですが」
「なんだと?」
そこに待ったをかけたのはエマ。
彼女は転移封じの結界が壊されていることへの動揺を消し、全員にその手段を告げる。
「私が皆さんを転移で要塞内部へ送ります。そうすればあの機甲兵を突破出来ますが、逆に言えば少人数で列車砲の制圧をしなくてはいけません。
そして、私は付いていくことが出来ません。つまり一方通行、避難することが出来なくなります」
「ミルスティン、転移とは……」
「……説明はいずれ。ただ、私は少佐と教官達を要塞の中へ届けることが出来る、とお考えください」
「……わかった。そして構わん。軍人として臆することはない。我々を移動出来るというのならば、頼む」
「私もよ。アンタ達は……言うまでもないか」
サラの言葉に同意するように頷くⅦ組。
エマの魔女としての技を知るⅦ組に、疑問など浮かばなかった。
「だがミルスティン、お前はどうするつもりだ?」
「あの機甲兵を引きつけます。倒すことは難しいでしょうが、周囲への被害はそれで抑えることが出来るかもしれません。
そうして時間を稼げば、きっとエリオットさんのお父さんが駆けつけてくれるはずですから……!」
「出来るのか、とは問うまい。お前もシュバルツァー同様、あのシュミット教室の一員……おそらく、何か対抗策があるのだろう。ならば、こちらは任せておけ」
「……A班はあたしに、B班はナイトハルト少佐に付いて行きなさい!」
「お願いします……!」
起動する転移術。
光に包まれた九人がドラッケンをすり抜け、列車砲への道を進んでいく。
無事に転移を見届けたエマは一人、ドラッケン二体に対峙する。
「
紡がれる召喚術。
Mクォーツ「ギアス」が煌めき、呼び出されるのは魔煌兵《オル=ガディア》と《ダイアウルフ》。
ヴィータと対峙したさいに使った時よりも洗練された、二体同時召喚。
数の上では互角に戻したものの、エマに余裕はない。
それでも、彼女の表情に諦めはなかった。
「こんなの、リィンさんとヴァリマールに比べればなんてことはありません」
導きの魔女の決断に応じるように、二体の魔煌兵がドラッケンに向けて疾駆する。
導力技術と錬金術の結晶のぶつかり合いは、そんな決意と共に始まった。
《帝国解放戦線》側に付け込ませる隙を描写してたら、いろいろ描写が甘くなってしまった感。
原作未プレイでこの作品を読んでいる方は、わかりにくいシーンが多かったら申し訳ありません。
サブタイトルは幕間とか断章にしようかと思いましたが、一応前回の続きで。
予想より長くなってしまったので、次回でリィン視点に戻したいところ。