この話は零の御子により登場人物が修正されました。
また、いつも誤字報告ありがとうございます。
(あじ わかん ない)
ユウナは味のしないジュースを胃に流し込みながら、ひたすら頭痛と胃痛に苛まれる体に我慢を強いていた。
《ノイエ=ブラン》は大陸最高峰の猟兵団である赤い星座が隠れ蓑と、資金繰りに使っている場所とランディから聞いている。
今回の要請に辺り、謝罪の意味も込めてランディから色々と情報を聞いたユウナはそれらを思い返していた。
帝国にも同じバーがあるように、クロスベルに設立されたものは支部となる。
そして資金繰りにも使われるということは、ある程度客受けを考えられたメニューと料理が取り揃えられており、一流のホテルにも負けない品揃えが用意されている。
少しお高めだが、決して損はさせない品質。
それが《ノイエ=ブラン》を客の視点で評する言葉だ。
「んまっ。シャロンさんの料理で舌が肥えたと思いましたが、やっぱり料理人ってのはすごいものですね」
「通ぶってるけどリィンの場合、子供舌というか貧乏舌というか、なんでも美味しく食べるんじゃないの?」
「辛いものもちゃんと食べられるから子供舌じゃないな」
「否定するのそこ~? まあ美味しい食事はモチベーションの基本だからねー。妖精ももっと食べないと、そこの子みたいに
(私を巻き込まないで!)
リィンとフィー、そしてシャーリィが顔合わせの時と違って一見普通に談笑しながら料理を味わっている。
シャーリィなどはすでに席を移動して、リィンの隣に座っていた。
リィンを挟んでいるからいいものの、仮にもフィーの隣に位置していたのならテーブルの上に並べられた料理と酒の数々に赤い鮮血が滴る調味料が振りかけられるところだろう。
その光景が、ユウナから料理を堪能する余裕を奪っていた。
フィーの隣に座るユウナからすればシャーリィが何か口を開くたびに逐一反応するフィーを見てハラハラする。
今は大人しいが、すでに沸点が近い。
すぐに決壊してしまうそれを、絶妙なタイミングで防波堤としてかばっているのは意外にもリィンだった。
「ガレリア要塞の食事はまずいって聞いてたけど、猟兵はその辺気を使うんだな」
「そりゃねー。私達も組織立った行動はしてるけど、軍隊ってわけじゃないし気持ちよく気分良く戦うための準備は怠らないもん。
この間は私が下手くそだったけど、今度はちゃんと準備してきたらお相手して欲しいな~?」
顔だけで判断するなら、間違いなく可愛らしいと評してもいいそれに、流し目が加わる。
同年代、あるいは年下趣味の大人ならば目を奪われそうなそれも、リィンは特に態度を変えることはない。
「リベンジマッチなら受け付けるぞ、こないだの詫びも兼ねてな」
「んー、もっと本気でシャーリィを見て欲しいんだけど?」
むしろ厄介以外の何者でもないシャーリィからの誘いを、躊躇なく受ける始末。
普段であれば喜ぶシャーリィだが、その目に喜びの感情は伺えない。
有象無象にも等しい、シャーリィが蹂躙してきた十把一絡げと同一にされているのだからそれも当然だろう。
「あいにくと、リィンは別の人に夢中だから」
「そうなの? それって誰?」
「年上の男の人。五月に会ってから、ずっとその人に一途」
「リィンってば年上趣味なんだー。パパなんてどう?」
「機会があればぜひっておいフィー、打ち合わせと全然違うぞ」
「そうだっけ?」
加えて、リィンは何やら企んでいるらしい。
フィーが最初からシャーリィに絡み気味だったことを考えれば、かつての因縁を聞いているので雪辱戦を考えていたはず。
ただ、フィーの視線はシャーリィの他に対面の席……共和国は黒月のマフィアへと向けられている。
「まあ、あっちの人が何を言ってくるかわからないからね」
「おや、学生の話題に入り込むほど礼儀のない大人ではないと自負しているのですがね?」
「よく言うよ。さっきからこっちを見てるくせに」
「え、ツァオさんってそういう……」
「リィン、そういう、でユウナじゃなくて私を見たことについて聞きたいことがある」
「ロリコンってことでしょ? シャーリィも狙われちゃう? その子はおっぱい大きいから対象外だろうし」
「教育上悪いからセクハラはやめてくれ。悪いなユウナ、ほら、このピザとか美味いぞ」
(謝るならツァオって人のような……)
そう思ったが、地蔵と化したユウナはその発言を流した。
ツァオの隣にいるラウも何か言おうとしたようだが、なんとも言えない表情で結局口は開かなかった。
案外、自分と同じような気持ちなのかもしれないとユウナは一方的な親近感を覚える。
そしてリィンはフィーの横からフォローしてくるが、叶うなら放置して欲しいと願う。
「ツァオ・リー。欲するのは勝手だが、迎えた先で食われないようにな」
「…………そういう意味ではありません」
言葉を堪えながら、ズレた眼鏡を押し上げるツァオ。
ユウナは彼に感じていた、油断すれば餌を捕食する蛇のように呑まれるイメージが少し和らいだ気がした。
それはそれとして、シグムントはともかく、マフィア相手に堂々と煽るリィンに冷や汗と胃痛が浮かぶ。
リィンはツァオ・リーという男とその所属を知っているはずだ。
フィー曰くいつも自然体とのことだが、こんな天然は自分の見ていないところでやって欲しいと切に願うユウナ。
奇跡的に踏んでないといえ、地雷しかない場所で走り回る姿は見ているほうが苦しいのだ。
ワジの時にも思ったがリィンが対応を変化させる時は、その人物への感情の変化に直結している。
けれど、周囲もなるべく見て欲しいと思わずにはいられない。
「そんな戯言はさておき、リィン君……少し君に聞きたいことがあるのですが」
「はい、なんでしょう?」
切り返すように、ツァオが口を開く。
切り分けた肉厚のステーキの一切れを咀嚼し、口を拭ったリィンがそれに応えるべく準備を整える。
度胸の塊とも思えるリィンを前に微笑みを深めながら、ツァオは言った。
「貴方は今後のクロスベルのことをどうお考えでしょう?」
「俺、帝国人でただの学生ですよ?」
「貴方を学生だと思っている者はこの場には誰もいませんよ」
真っ先にユウナが頷いた。
「ちなみに私もそう思ってる」
「トールズ士官学院、特科クラスⅦ組に所属してるリィン・シュバルツァーは存在しなかった……?」
「馬鹿なこと言ってないで、答えてあげたら?」
クラスメイトにまで学生であることを否定されたリィンが冗談を飛ばし、シャーリィが笑っているが、ユウナも同じ気持ちだった。
確かに学生なのかもしれないが、『ただの』を付けるのは絶対に間違っている。
(そう言えば、今回のオルキスタワーへの襲撃はリィンさんが予見したってことだけど……本当なのかな? 先輩達を疑うわけじゃないけど、どうにも……)
だが、ユウナの印象に反して周囲はリィンの答えを待っていた。
《帝国解放戦線》と《反移民政策主義》の急襲を読んだリィンならば、今のクロスベルに対してどういう意見を持っているのか、その言葉を求めている。
リィンは顎に手を添えて思考しているように見えたが、すぐに意見を言う。
「――少なくとも、結社って奴らが介入してくるのは間違いありません。ツァオさんは結社をご存知でしょうか?」
「ええ。共和国にも手を伸ばされていますからね。全容は流石に不明ですが、噂程度には聞いております」
「なら話は早いですね。結社の関与のせいで、クロスベルの導力ネットワークに異質な力が混じっています。
その力はともすれば魔獣を超えた存在、異次元存在である《幻獣》や《悪魔》がこの地に降り立つ媒介ともなりえます。
それを悪用されてしまえば、きっと混乱は避けられないと思います」
「《幻獣》……」
「《悪魔》……」
ツァオとユウナは、突然変なことを言い出したリィンに首を傾げながら、キーワードのように単語をつぶやく。
シグムントとシャーリィは、黙ったまま話を聞いていた。
「つまりその、どういうことですか?」
流石にクロスベルの未来についてなら、自分にとっても無関係ではない。
ちゃんと耳を傾けるべく地蔵から人間に戻ったユウナが率先して尋ねる。
「導力ネットワークで通信とかが出来るよな? その通信はネットワークを通して『声』としてユウナ達に届くように、現実に実体化する、と言えばわかるか?」
「もしかして、ノーザンブリアで遭遇した?」
そこにフィーが割って入る。
話を聞くに、彼は学院の授業の一環でノーザンブリアへ行ったことがあるようだ。
やはりただの学生ではない。
「ああ。高位次元の存在が、上位三属性とか、色々場が不安定な時に現れるそうだ。
もちろん、あくまで媒介であってそれ単独では何の意味もなさないのですが、結社連中ならその下準備を加えた上で悪用することに違いないでしょう」
「つまり貴方は、再びクロスベルに異変が起きると?」
「俺は目にしたわけではありませんが、少し前に教団なる組織によって大混乱に陥ったようですが、それに近いものが起きるんじゃないでしょうか。
結社は《帝国解放戦線》に協力、あるいは隠れ蓑にしているようですし、クロスベルへちょっかいをかけていることは間違いありません。
ただ、先のテロリストのように結社は間接的な関与を大得意としているそうなので、結社そのものを捉えるのは難しいと思います」
「間接的な関与……」
そう言ってツァオはシグムントを見やる。
同時にシグムントもツァオを見ており、互いが互いに怪しいと疑っているようだ。
ユウナからすればどちらも怪しいのだが。
リィンはそんなユウナの視線に気づいて補足する。
「立場的にお二人を疑うのは当然だろうけど、こういうのはどちらでもない第三者パターンが多いと思う」
「わ、私はその……」
「誤魔化す必要はない。生徒といえ、警察関係者なら疑うなって言うほうが無理な面子だし」
フィーの代弁にドキドキしていたが、シグムントもツァオも何も言わない。
この程度の言葉で感情が揺らぐほど、精神が未熟ではないのだ。
よって、ユウナは安心して言葉を返す。
「第三者?」
「赤い星座も黒月も、知名度的には抜群だ。有名ということは、それだけ目を引くということだから、そちらに注目している間に動くなんて第三者にとっては簡単なことさ」
「リィンは心当たりあるの?」
「いや、クロスベルは今日を含めて滞在一週間もないんだぞ? そこまで情報持ってないって。ツァオさんに聞かれて答えたのも全部推測だし」
フィーからの問いに苦笑するリィン。
だが、一週間と経たずに特務支援課でさえ気づかなかったワジの正体、導力ネットワークに潜む謎の力。
クロスベルに仕込まれた何かが、徐々に明るみに出ているような気がする。
それこそ、無理を言って学院から彼を借りて一ヶ月ほど滞在させれば……
と考えて、ただでさえ独立宣言で揺れるクロスベルに対処する特務支援課が、毎日この頭痛と胃痛を堪えながら爆心地に付き合わされる、と思うとユウナはその提案をなかったことにした。
「その洞察力、本当に子供のものとは思えません。流石は、先日列車砲の一撃を防いだ英雄殿だ。その若さで皇族の護衛を任される実力はあるようですね」
「もうその身分ではないですけどね。あと、テロリストからクロスベルを守ったのは特務支援課やクロスベル警備隊の人達ですよ」
「クク、隠す気がないのに今更何を言っているのやら」
「いえいえ、実際テロリストを拿捕したのはクロスベルの皆さんですからね」
リィンからの賞賛に、誇らしげな気持ちが湧くと同時に罪悪感を覚えるユウナ。
リィンは今回のことを全投げしただけ、と言っていたとティオから聞いたものの、彼が掴んだ手柄はそれ以上だ。
クロスベル通信社の記者や市民への対応による疲れなど、成果を思えばまるで足りないとロイド達は言っていた。
喋り疲れたのか、ジュースを口に含んで表情をほころばせるその姿は年相応。
だからこそ、その未来予知じみた洞察力や灰色の騎士人形を駆る力が異質なことこの上ない。
「ただ、現状で言えば――」
続けようとするリィンへ、シャーリィが肩を寄せて塞いだ。
「ねえねえ、難しいことばっか話してないでさー。そろそろ遊ばない? 腹ごなしの運動ってやつ」
「この辺に動ける場所があるのか?」
「ジオフロントなり適当な旧市街なり、探せばどこにでもあるでしょ。とにかく、あの時の続きしようよ~」
両手を振って、見た目可愛らしく言い寄るシャーリィ。
リィンもその気のようだが、シグムントとツァオへ顔を向ける辺り主催と対話相手の顔を伺っているようだ。
ぶっ飛んでいるようで、妙なところで常識的な少年である。
「私としてはもう少し話をしたいところですが……これ以上は、お嬢さんを退屈させるようだ。ええ、この辺りで構いませんよ。お付き合い感謝します」
「せいぜい遊んでやれ、シュバルツァー」
「へへへ、なら早速――」
「いや、どうせならニ対ニでいかないか? シグムントさんとシャーリィ、俺とフィーの家族タッグ」
了承した瞬間、とんでもないことを言い放つリィン。
思わずシャーリィですらぽかんと口を開けていた。
そこにフィーの静かなツッコミが入る。
「さっきは流しちゃったけど、家族じゃないから」
「本物の家族タッグと見た目家族タッグで」
「言い直してまで譲らないんですか……ってあの人、と?」
何か企んでいると思えば、シグムントとやり合うことを画策していたようだ。
ワジから、強い人と友達になるために強くなると聞いたことがあったが、シグムントすら
リィンの強さを知っているユウナでさえ、この場で一番強いのは誰かと聞かれたらシグムントと答えてしまうほどに、彼の存在感は圧倒的だった。
「シグムントさん、
多少、溜飲は下げられると思うんですが」
途端、部屋に向けられる無数の視線。
ここは赤い星座のホーム。
ランディ曰く百名あまりの構成員が存在している。
全員が揃っているわけではないが、この場にいる全員が猟兵としても動けるのだろう。
殺気すら入り交じるそれにフィーが汗を流し、ユウナの頭痛が増して息が荒くなる
対するシグムントは、手で周囲を制しながらも、悠然と座ったまま笑う。
「中々に挑発がサマになっているな」
「駄目ですかね」
「俺達が帝国政府からのオーダーを果たせなかったのは事実だからな。『予感』を覆されたのは、紛れもない貴様
シグムントの言う複数形に、特務支援課のことだろうと予測したユウナの心が少しだけ軽くなる。
(そうだ、特務支援課は……クロスベルの英雄はこの人達にだって決して負けてない!)
テロリストの速やかな鎮圧には、ティオのハッキングあってこそだ。
騎神という存在があれば単騎であの場を制圧出来たかもしれないが、きっと被害は少なからず出たはず。
無血の結果はティオの成果だ、とユウナは弱気になる心を立て直す。
「お前が俺と戦いたがっていたことは承知している。その上での挑発行為なのだろうが、あいにくと――」
「なら、私達もその話に噛ませていただけませんか?」
リィンの提案を断ろうとしたシグムントに、ツァオが割って入る。
何を考えている、とシグムントの隻眼がツァオを睨めつけるが、彼は朗らかな微笑を崩さずに言い返す。
「オーダーを果たせなかったのは私共としても同じこと。ならば赤い星座からはシャーリィさん、そしてこちらからは《銀》殿を派遣、それらによるニ対ニでこたびの雪辱を果たしたいと思うのですが」
「なっ……」
東方人街の魔人、銀の名が出たことでユウナは息を呑む。
かつて劇団アルカンシェルへの脅迫状騒動に名を使われ、特務支援課に要請を依頼したことがあると伺っている。
警察でもアルカンシェルへの脅迫状は大きな騒動となり、生徒であるユウナもその情報を知っていた。
「別に《銀》さんを呼ばなくても、シグムントさんやツァオさんが参戦していいんですよ?
それとも、《銀》を倒せばお二人と戦えますか?」
「リィン、それはちょっと傲慢」
フィーが食べていたパフェのスプーンを、リィンの口の中に突っ込む。
挑発の引き合いだろうが、正体不明にして伝説の凶手とシグムントとツァオの三人を相手取るのは無謀に過ぎる。
そもそも、全てが正体不明の《銀》に負ける可能性だってあるし何よりシグムント一人でこの場に居る全員を相手に出来る。
だから文字通り甘い、とフィーはパフェを以て証明していた。
……状況が状況なので指摘しないし彼女も意識していないようだが、食べかけのパフェのスプーンを異性の口に入れるという行為に、見ているユウナのほうが恥ずかしくなって頬を朱に染めた。
「でも、なんで《銀》を? 言っちゃあれだけど、貴方も側近の人だって弱くない……どころか、達人に相当するよね?」
「いえいえ、戦鬼殿に比べれば私共など。それに《銀》殿は何やらリィン君に興味を持っておられるようですからね」
「え?」
まさかの発言に、リィンは間の抜けた声を出す。
フィーとユウナは何をしでかしたの、と目を向けるがリィンには覚えがなかった。
「俺と《銀》さんって接点なんてあってないようなものですよ?」
「
たった一日の出会いだった自分が、こうまで巻き込まれることを思えば妙な説得力がある、とユウナは思った。
そこへシグムントの声が飛ぶ。
「何やら盛り上がっているようだが、やるなら他所でやれ」
「えー。パパは受けないの?」
「ランドルフが居れば目を覚まさせてやるために受けたかもしれんが、そうでないなら貴様らの提案を受ける理由はない。
白蘭竜の提案通りなら、こちらからはお前が代表になればいい」
「おや、歓迎会の主催者として楽しまれるかと思いましたが」
「シュバルツァーが求めているのは、俺との手合わせ……遊びではすまされんものだ。依頼を受けていたならその限りではないが、現状ではそんなものは受けていないのでな」
その言葉にユウナはほっとする。
いや、赤い星座が依頼を請け負っているのは帝国であり、リィンは同国に所属するのだから早々敵対することはないと思うが……
それでも、ユウナはツァオの言う『歓迎会』がリィンへの囲い込みという不安が晴れず穏便な決闘を必死で模索する。
そして閃く。
かつて、特務支援課のランディが発案し《テステメンツ》と《サーベルバイパー》、遊撃士の三つ巴を制したあの戦いを。
「なら、
「へえ。ランディ兄、口ではなんだかんだ言いながら私達のレクレーション使ってたんだあ」
「え?」
「私達の場合は実際に足を使ってのチェイスバトルなんだけどね。今でも訓練の合間の時間を使ってよく遊んでるよ。ちなみに、どんなアレンジだったの?
私はチキンレース流にアレンジしたこともあったんだよね。いやー、ちょっとハリキリすぎて崖から落ちたことあったけど、楽しかったなあ」
ユウナは、ランディ発案のそれがまさか赤い星座での遊びとは思わず、しどろもどろになりながらもかつての戦いの詳細を語る。
シャーリィはやっぱりぬるいなあ、と言いながらも割と乗り気に感じた。
フィーを見てみれば、私達はそこまで馬鹿じゃない、という不満を全身で語っている。
シャーリィの雰囲気を考えればお互いにアットホームのはずだが、その内容は大きく差があるようだ。
「では、私も準備をお手伝いしましょう。《銀》殿を呼び出すまで、少しお待ちください」
ツァオは今まで会話に混ざらなかったラウを引き連れて同じく出ていった。
楽しみ~♪ と言いながら余ったパフェの掃討にかかるシャーリィ。
リィンは求めていた結果と違うが、これはこれで良い経験になるか、とわかりやすく顔に出ている。
「そう言えば、リィン達は運転って出来る?」
「いや、無理。フィーは……聞くまでもなかったな」
「身長は足りてた。ただ、触らせてくれなかっただけ」
「はいはい、妖精さんは愛されてるねー。それじゃあ貴女、導力車は貸してあげるから足よろしくね?」
「………………え?」
シャーリィに笑みを向けられたユウナは、彼女が何を言っているか理解出来なかった。
「あ、あの……よろしく、とは?」
「チェイスバトルでしょ? ランディ兄のをそのまま使うのはぬるいし、ルールはこっちでアレンジしていいよね?」
「構わないけど、どんなアレンジなんだ?」
「基本的にはそっちの子が古戦場まで導力車を走らせて、その間にリィンと妖精が動けなくなったらこっちの勝ち。無事到着したらそっちの勝ち、でどう?
大丈夫、依頼でもないのに一般人を狙ったりしないからさあ」
「そう言ってリィンに返り討ちにあった人を知ってるんだけど」
「妖精ってばリィンを一般人だと思ってたんだ」
「一般人なんだけどなあ」
それは違う、とリィンのぼやきに三人の少女の気持ちが一つになった。
「えっと……私、参加しなくちゃいけないんでしょうか……」
「え、そのためにここにいるんじゃないの?」
「ただの付き添いですよ!?」
「あのお兄さんの格好してるのに? あのお兄さんなら、なんだかんだ妥協してシャーリィ達の要請受けてくれると思うけどなー」
両腕を頭の後ろに回しながら言うシャーリィ。
そこへリィンがフォローする。
「無理なら引き受けなくていいぞ。俺がフィーを背負って足になるって手もあるし」
「
「それただのおんぶですよね?」
「まあ、それでもこっちのワガママにユウナを巻き込むよりはマシだろ」
その言葉にユウナはハッとする。
リィンに対して最大限、可能な限り譲歩して行動を手伝ってあげること。
それが、今日のユウナへの要請だった。
色々文句はあるが、それでもこの場にいるという理由がユウナの答えを決める。
「――いえ、大丈夫です。まだノエル先輩ほど華麗な運転は出来ませんが、頑張らせていただきます」
「ユウナ、意気込みは良いけど相手は……」
「わかってます、今更です! リィンさんの面倒を見るのなら、これは簡単なほうですよ!」
「うーん、感染度が高い」
フィーの言葉を流しながら、ユウナは心を震わせて闘志を燃やす。
リィンはとにかく怪我をさせないようにしよう、とフィーに言いながら彼女もそれに頷く。
「やるなら勝ちます! 特務支援課の代理として!」
「ちょっと予定とズレたけど、勝敗がつくならまあいいか」
「それは言えるな。それじゃあユウナ」
「はい、なんでしょう?」
「とりあえず、準備が整うまで飯食べよう。さっきから全然箸が進んでなかっただろう?」
「あ……」
その言葉を証明するように、ユウナのお腹がほんの少し、彼女にだけわかる程度の空腹を訴える。
幸い音は鳴らなかったものの、意識すればストレスに対するやけ食いを求めるように体がエネルギーの補給を求めていた。
「すみませんシグムントさん、追加注文良いですか?」
「構わん、好きに頼め」
「それじゃあユウナほら、これメニュー一覧」
「…………アリガトウ、ゴザイマス」
乙女としてしてはならない醜態に声を震わせながらも、ユウナはチェイスバトルへ向けて料理を注文するのだった。
零のチェイスバトル、閃アレンジな感じに。
修正の結果、シグムントとツァオの参戦が消えて代わりに《銀》がイン。
ユウナちゃんは運転手として参戦です。
この時期のユウナに運転出来るの、という疑問はご都合主義タグで了承していただけたら。
警察としてチェイスバトルを取り締まらないのはどうよ、という疑問は次回辺りに解決されるかと思います。