はぐはぐオズぼんとの軌跡   作:鳩と飲むコーラ

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いつも誤字報告ありがとうございます。


フフフ、息子よ。九月の特別実習だ④

 RFストア、そしてルーレ工科大学からの共同要請をA班・B班全員で行った後に外に出てみれば、すっかり夕暮れが黒鋼の街を包み込んでいた。

 そんな中、広場で領邦軍と鉄道憲兵隊があやわ衝突という事態もあったが、颯爽と現れたルーファスの仲介にとって何事もなくその場は解散された。

 

 その後RF本社に戻ることになったのだが、先に行ってくれと言付けてリィンは駅に向かう。急ぎも急ぎでやってくるクルトを出迎えるためだ。

 ヴァリマールにクルトが持つ通信機の導力波を探知してもらい、気配察知も合わせて出迎えると顔を見るなり無言で近づいてくる。

 抜剣の間合いで止まるあたり、発言次第で本当に抜く可能性が伺えた。

 

 当然リィンならクルトを取り押さえることは可能だが、駅でそんな騒動を起こすわけにもいかない。

 だからリィンは自分も知らなかった、と前置きして通信でのやり取りを繰り返す。

 それでもクルトは納得しないのは当然だったので、ここはセドリック自身に話してもらうしかないだろう。

 

 ということでルーファスが泊まるホテルへ向かい、リィンはフロントにヴァンダール家の次男が訪れたことを理由にルーファスとの面会を求める。

 彼が姿を現したことでセドリックはここにいると判断し、クルトを預けてあとはルーファスに任せてリィンはラインフォルト本社へ戻ろうとしたが、ルーファスに呼び止められあること(・・・・)を頼まれた。

 

 話し合いでRF本社に戻るのが遅れて謝罪しようとしたが――そこでリィンは、イリーナは今日の夕飯を同席することが無理だという連絡を受けたのだった。

 

「アリサ、いるか?」

「リィン……」

 

 ドアをノックして彼女が入っていった部屋へ入室すると、そこには憂鬱そうなアリサが振り返る。

 夕食の時もやけ食いをしていたことといい、本命は三日目といえ家族での食事が取れないことをやはり気にしていたようだ。

 

 全員が揃う今回の特別実習は、これ幸いとエリオットが主導して学院祭の出し物である演奏会についての打ち合わせを行っている。

 ただ、ミリアムはクレアに呼ばれて外に出ておりフィーも夜の街を知りたいという理由で付いて行っている。

 ユーシスとマキアスはメインボーカルのため、エリオットから逃れることが出来なかった。

 ガイウスも美術部の腕を活かし、エマとラウラを監修とした衣装のデザイン案を色々書き連ねている。

 一日ルーレを歩き回ったセリーヌは、リィンとエマに特にレイラインの異常はないとだけ言ってさっさと寝てしまった。

 

 そうやって各々が自由時間を打ち合わせで埋める中、母親との夕食の時間が取れなかったアリサに用があると言って抜け出したリィン。

 エマからほどほどに、と言われたものの家族問題で悩む相手にこの男が黙っているはずがなかった。

 

「あっ、演奏会の打ち合わせかしら。サボっちゃってごめんなさい……」

「いや、そうじゃないよ。ただ、少し提案があってな」

「提案?」

「ああ、今からイリーナさんを迎えに行かないか?」

「へあ?」

 

 アリサの表情が間の抜けるように呆けた形を作る。

 数秒経って言葉の意味を飲み込むと、両手を前後に揺らしながら絶叫した。

 

「ど、ど、ど、どういうこと!?」

「言葉通りだよ。シャロンさんに聞いたけど、イリーナさんは今遠くへ出かけてて、帰って来るのが日付を超えるかもって言ってたんだ。

 でも、ヴァリマールで迎えに行けば飛行船より早く帰って来れるし、中で二人の会話が生まれるぞ」

「だ、だからって……」

「いいか、アリサ」

 

 突然の提案におろおろするアリサの肩に両手を置くリィン。

 ひゃっ、と声を上げながら、真剣な目で自分を見てくるリィンにアリサは妙な照れを感じた。

 

「な、何?」

「ああいう場合は絶対に実現しないパターンだ。多分、明日の夕飯や最悪三日目の導力バイクのプレゼンテーションもなんやかんやで延期する可能性が高い」

「なんでそんな断言出来るの?」

「経験談ってやつかな。俺もどうにか父さんと会おうとして色々尽くしたことはあるけど、未だに偶然の一回を除けば叶ったことがない」

 

 今でこそマクバーンを優先しているが、リィンは鬼の力が安定した頃にオズボーンと出会うべく動いていたこともある。

 だが妙な因果律でも働いていたのか、一向に会うことなくテオのツテを頼っても男爵家では伯爵家、加えて宰相のプライベートを確保するのは不可能だった。

 だからこそ、帝都での偶然の出会いは感極まるものもあったのだが……アリサに同じ轍を踏ませるわけにはいかなかった。

 

「ってわけでうんって言ってくれ」

「い、いきなりそんなこと言われても……」

「ってわけでうんって言ってくれ」

「強制イベント!?」

 

 頷くまでエンドレスになるタイプだ、とおののくアリサ。

 だがヴァリマールのコクピットの中はある意味密室だ。

 確かに、会話するしかない空間の確保という意味では理想的かもしれないが……

 

「でも、お母様が頷くかしら」

「あの人は利益と理由さえあれば頷くタイプだ。シャロンさんにも確認したけど、今の会食を終えたら戻るだけって聞いたから問題ないはずだ」

 

 あとは気持ち一つだ、とリィンが押すとアリサは小さく頷いた。

 

「よし、ならジョルジュ先輩からもらった資料とか記憶結晶とか色々用意してくれ。ヴァリマールの中でそのままプレゼンテーションしちゃおう」

「……騎神ってなんだっけ」

「我ハ我ダゾ」

「い、居たんだっけ」

「ウム、ズットナ」

 

 もはや何人目かもわからない台詞をぼやきながら、アリサは流されてると思いながらも、乗るしかないという判断を下す。

 準備が整うと、リィンは窓に近づくようアリサに言う。

 そこから見える夜景に、かつての記憶が刺激されるアリサだったが――

 

「静かに来い、ヴァリマール」

「ォゥ」

 

 一瞬、ネオンサインの光が揺らいだと思った瞬間――アリサは、ヴァリマールの操縦席に座っていた。

 

「……………え?」

「アリサ、少し邪魔するぞ」

 

 声と共に、横から伸びるリィンの手が手元を操作する。

 すると前方のメインカメラが起動し、ルーレを一望する景色が眼下に見えた。

 

「え、え―――――――!?」

「ヴァリマール、イリーナさんの現在地はわかるか?」

「しゃろんヨリ聞イタ通信番号カラ導力波ノ解析ヲ開始……シバシ待ツガイイ」

 

 モニターには文字の羅列が次々と浮かんでは消えて情報を処理していく。

 かつてクロスベルの通商会議における襲撃で、ティオのハッキング技術をその身で体験したヴァリマール。

 彼女ほどではないが、シュミットの教えもあり位置の特定程度は可能となっていた。

 クルトの来訪を瞬時に察したのも、この技術の恩恵である。

 

 それを説明すると、アリサはエマはいつもこんな頭痛を……と切なそうな表情でラインフォルト本社のある部屋を見つめていた。

 

「で、でもなんで私が操縦席に? リィンは……」

「いや、イリーナさんを迎えに行くんだから、アリサがその位置でいいんだ」

「動かせないんだけど……」

「大丈夫だ、これを使ってくれ」

 

 そう言ってリィンがアリサに渡したのは、マスタークオーツ《ギアス》だった。

 最近はもっぱらエマが魔煌兵を操作する時に使用しているが、本来はヴァリマールを遠隔操作するために開発されたものだ。

 ヴァリマール側からフォローすれば、《ギアス》でもヴァリマールの飛行操作が可能だろう。

 

「導力車で言えばアリサはあくまでハンドルを操作するだけで、アクセルとブレーキはヴァリマールが勝手に判断してくれる。

 もちろん、アリサが速く飛ばしたかったりブレーキかけたいっていうなら《ギアス》を通じてヴァリマールに届くから、ひとまずイリーナさんのところに向かうまでこれで練習しようか」

「お願い、私にわかる言葉で喋って」

「念じろ。そうすればヴァリマールは動く」

 

 本当にわかりやすかった。

 

「りぃん。導力波ヲきゃっちシタ」

「よし、アリサ。それじゃあ《ギアス》をARCUSにセットして、早速試運転と行こう」

 

 頷いた時点で、すでにこの展開は避けられなかった。

 契約書が大事なのは取引においても当然だが、相手を混乱させて気持ちを乱している間にハンコを押させるような所業は正直引いた。

 が、それがイリーナとの距離を詰めるのであれば……アリサには、この道を選ぶしかなかった。

 

「そうだ、ついでにこれ焚いておくよ」

 

 リィンがオズぼん経由であるものを取り出す。

 

「それは?」

「アロマテラピーの一種と思ってくれ。エリンの花から抽出したお香らしい。……言葉がなくてもお互いがお互いを思っていれば、きっと効果覿面だよ」

 

 

「伝説の騎神と言っても座り心地は良くないわね」

 

 仕事を終えて飛行船へ乗り込もうとした母を発見し、迎えをよこすという言葉に頷き人気のいない場所に誘導したと思えば、拉致にも等しい転移でヴァリマールの中にイリーナを回収した。

 本当に珍しく、転移され娘の膝の上に座っていると気づいたイリーナは僅かな驚きを見せた。

 そしてヴァリマールの中であると教えると、すぐに座り心地の指摘をする辺り、本当に鉄の理性をしていると思う。

 

 イリーナと入れ替わるように、リィンはヴァリマールの手の上に転移、アリサとイリーナを残して外に出ていってしまった。

 モニターには手の上に乗るリィンが映っているが、彼はARCUS片手に呑気そうに手を振っており、苛立ちが込み上がるのを避けられない。

 だが、どんな前後があるといえ、今ヴァリマールの中には自分とイリーナしかいない。

 降って湧いた機会を逃すわけにもいかず、アリサは口を開く。

 

「ごめんなさい、てっきり横に入ってくるものとばかり……」

「貴女が動かしているんじゃないの?」

「本当の意味で動かしているのはそこにいるリィンよ。私は一緒に乗せてもらって、待っていただけ」

 

 《ギアス》のことを説明するが、イリーナはその情報は知らなかったそうだ。

 ここでシュミット教室の情報は基本的に外に出ることがなかったことを思い出し、それをジュースでも奢るようにアリサに渡したリィンの危機管理の無さに渋面を作った。

 

「特別実習のレポートは全員分確認していたけど、本当に独断専行がすぎるわ」

「もうシュミット教室は解散してるし、許可は得てる、と、思うわ。でも、私達のレポート見てくれてたの?」

「これでも理事長だもの、貴女の活動も見たわ」

「なら、機甲兵のことも――」

 

 そこから先を言おうとして、アリサは言葉を止めた。

 サングラス越しに自分を見るイリーナの目が、どこか期待はずれとも言いたげなように見えたのだ。

 

(違うでしょアリサ、どんな偶然か幸運か、母様が目の前に居るのに、言うことはそれじゃない!)

 

 それらは五月の段階でサラ達がとっくに調べているはずだ。

 なら、言うべきことは他にある。

 一番聞きたい父親のことをぐっと抑えて、アリサは冷静さを維持するよう務める。

 タイムリミットはRF本社に戻るまで。

 ヴァリマールのスペックを考えれば一時間もかからない。

 

(その短い時間の間で、母様から本音を聞き出さなきゃ――!)

 

 ゆっくりと息をつく。

 イリーナとの話し合いのために考えていたことを、一つ一つ引き出していくだけ。

 何も難しい事はない、とアリサは心に喝を入れた。

 浮かべるのはガイウスの持つノルドの心。

 時に嵐や豪雨に襲われても、ありのままに受け入れる雄大なあの地での思い出がアリサの脳裏に浮かぶ。

 ARCUSを握りしめ、Ⅶ組の友人達を思いながらアリサは言った。

 

「それより、ちょうどいいから今から導力バイクのプレゼンテーションをさせてもらうわ」

「へえ?」

「どうせ明日の夕飯も、三日目の会議も中断されそうだもの。それじゃあまず、母様から引き継いだ段階からだけど――」

 

 そこからアリサは、商売人の娘らしく導力バイクの進展を語っていく。

 紙に記された書類はもとより、時に記憶結晶を使いヴァリマールのモニターと繋ぎ大画面を使った資料をイリーナに見せていく。

 これは、イリーナを迎えに行く間にリィンから教えてもらった機能だ。

 

 導力テレビを遥かに凌駕する高画質に、イリーナも目を見張ったほどだ。

 時にイリーナから飛ぶ質問に対しても、ジョルジュからの資料を参考に返答していく。

 アリサにとっては数時間、実際は三十分ほどのプレゼンテーションがヴァリマールの中で行われていく。

 時折間を空けてイリーナの思案の時間を作ると同時に、自分を落ち着かせる。

 普段ならば感情が昂ぶって素直に見ることが出来ないイリーナの顔を、ヴァリマールの中という異常な状況に放り込まれることで、逆に冷静に見れるようになっている気がした。

 

(まるで、戦術リンクを母様と結んでるみたい――)

 

 少なくとも、ここ数年で一番イリーナとコミュニケーションを取れている気がした。

 それが仕事を通じて、というのは悲しいことだったが、それを顔に出さない成長をアリサは見せていた。

 

「それで、今後の展開としてはサブパーツ……ヘルメットを導入して、安全を確保するのも一つの手だと思う。

 デザインが良ければ、一種の造形品としても――」

 

 そうして、アリサにとって始めてのプレゼンテーションを終える。

 まるで大型の魔獣と戦った後のような疲労感。

 それでも手応えはあったのではないか、と期待を込めてイリーナを見てみるが彼女に反応はない。

 サングラスで隠れているせいで目の動きを把握することが出来ず、ある意味プレゼンテーションをしているほうが気楽だった待ち時間がアリサを包む。

 精神的疲労あり目を閉じてしまいそうになる中、やがてイリーナがつぶやく。

 

「完成品はどこなの?」

「え?」

「導力バイクの完成品よ」

「え、えっと試作品を持って来てもらっているから、家に戻れば……」

「そう。実際に確認させてもらうけど、まあ悪くない出来だったわ。技師の腕が良いのかもしれないけどね」

「そ、それじゃあ……!」

「発表はこちらでやっておくけど、また詳しい設計図のデータを用意しておきなさい。すぐに量産出来るように、ね」

 

 そこでようやく、アリサは安堵の息をついて笑みを浮かべた。

 資料の束を膝の上でまとめるイリーナだったが、アリサの膝の上に居ることでその振動が彼女にも当然伝わる。

 そこで、リィンとのやり取りとイリーナへの意気込みで麻痺していた常識が反応した。

 

「え、えっと……母様。プレゼンテーションは終わったし、そろそろ退いてもらっても……」

「あら、勝手に動く椅子なんて不出来ね。相手を転ばせる気?」

「だ、だからってこの体勢は……」

「さっきまで気にしていなかったのに、おかしな子ね」

「おかしいのはこの状況で突っ込まない母様でしょう!」

「天下のラインフォルトグループの会長を膝の上に乗せるなんて栄誉、貴女で五人目なのよ?」

「嬉しくないわよそんなの! っていうか多いのか少ないのかわからないわねその数!」

 

 からかい(・・・・)の言葉に絶叫するアリサ。

 と、叫んだ瞬間にアリサはイリーナを見つめ直す。

 かつての母は優秀なキャリアウーマンで、ユーモアがあって思いやりもある女性だった。

 まるで、その時の母が目の前に居るような気がしたのだ。

 アリサは震えながら、一つの記憶結晶を差し出した。

 

「これ……前に言ってた、父様の技術が使われた武器。シュミット博士のお墨付き」

「……出しなさい」

 

 指示に従い、アリサはヴァリマールに頼んでテスタ=ロッサのデータをモニターに出してもらう。

 複数に分けられた資料の図は、シュミットが手がけて解明したデータの羅列。

 技師であったフランツの作品によく触れていた家族(二人)だからこそ、彼の癖とも言うべき仕込みに気づけた。

 

「これはどこで?」

「リィンがクロスベルに行った時に、赤い星座の猟兵に喧嘩を売られて返り討ちにして武器を壊したそうなの。それで、その修繕をシュミット博士に依頼した時に発覚したそうよ……」

 

 イリーナは無言。

 自分で言っていて、ツッコミどころが満載だ。

 ちらりとリィンを見れば、彼は何やらARCUSで誰かと話している。誰に話しかけているのかは気になるが、今はそれよりもフランツのことだ。

 

「それで、六月のレポートを読んだっていうなら、死んだフィーのお父さん……猟兵王のことも知ってるわよね?

 だから、ひょっとしたらお父さんが生きてるんじゃないか、って私……」

「確証のない話は妄言でしかないわ」

「――黒の工房。それが、その武器を作られた場所。少なくとも、そこに父様……いえ、フランツ・ラインフォルトの技術を持つ人がいることに違いないわ」

 

 リィンから教えられたその名は、ミリアムからの補足で結社の工房ということが判明している。

 つまり、《帝国解放戦線》がその繋がりの中にいる。

 

「列車砲だけじゃなくて、父様が考案した機甲兵までもあんなテロリストなんかが使ってる。そんなの、父様は絶対に了承するはずないわ。

 まさか、結社に生き返った父様が居て、母様はそれを知ってるから手を貸しているってこと?」

「まさか。あの人に関しての新しい情報を知ったのは、貴女からが初めてよ」

「それにお祖父様のことも同じ。どうして母様。どうして貴女は自分を顧みずにラインフォルトを拡大していくの?

 今も全然手綱を握れてないじゃない! 少なくとも機甲兵が製造されたのは第一開発部のはずだわ、あそこは《貴族派》の――」

「私がすることに変わりはないわ。RFは発注された装置や兵器の製造とテストに携わるだけで、それ以上でもそれ以下でもない」

「っ……この――」

「でも」

 

 そこでイリーナは一度言葉を切る。

 激情を止められたアリサだったが、言葉次第では再点火することに疑いはない。

 

「私は今もあの人を愛してるわ」

「…………私のことは?」

「さて。少なくともトールズに入学する前よりは、ましになってると思うけど」

「そこまで言ったなら口にしてよ!」

「心配しなくても、貴女の学院生活はシャロンやⅦ組の子達を通して知ってるわ」

「……口にして欲しいって思うのは、ワガママなの?」

「まあ少なくとも、学院で良いお友達に恵まれてはいるようね」

「ああもう、この人は!」

 

 アリサが癇癪を起こしてしまったせいで、気づかない。

 僅かにイリーナの口元に笑みが浮かんでいることに。

 イリーナはレポート以外にも、シャロンからの報告で学院でのアリサの生活のおおよそは知っていた。

 

 外国人であるノルドの少年に世話を焼いたり、この騎神の本来の操縦者に苦労する友人相手に骨を折ったり、元猟兵の少女の面倒を見たりと、他の級友との仲も悪くないと聞いている。

 それらに加えて部活動に精を出して、同窓生や上級生達とも仲を深めている。

 そんな充実した学院生活を送っており、同時にイリーナとの対面のために導力バイクに関しての企画書を仕上げるなど、成長という言葉を実感出来る程度にはアリサのことを見ていた。

 

 鼻腔をくすぐるエリンの花の香りが、イリーナの思考を和らげていることもあり、彼女にしてはかなりわかりやすく言葉を伝えている。

 だが、まだ子供なアリサはそれに気づいていなかった。

 

「少なくとも、こちらでもこの武器を作った相手のことは調べておくわ。それで納得しておきなさい」

「ううう、嬉しいけど嬉しくない……」

 

 そんな母子の会話が終わった頃合いを見計らうように、モニターに変化が訪れる。

 メインモニターに映ったのは、かつて祖父や父、そして目の前の母と共に見たルーレの夜景が広がっていた。

 アリサとイリーナは、互いに無言でその景色を眺めていた。

 

(……少なくとも、また母様とこの景色が見れたってことは進展、かしらね)

「到着ね。……うちの飛行船よりも速い辺りは、流石の伝説の機体と言えばいいのかしら」

 

 腕時計を見やり、日付変更前にラインフォルト本社上空へ戻ってきたことに気づいたイリーナはアリサの膝の上から移動する。

 重みと体温の暖かさが離れていくことに寂しさを覚えながらも、アリサはリィンに外へ出してもらうよう言おうとするが、それより早く彼の声が届いた。

 

「ところでイリーナさん。突然なんですが、今から貴女を監禁させてもらいます」

「……………………え?」

 

 アリサは、リィンが何を言っているのかまるで理解出来なかった。




イリーナ会長とのやり取りが一番悩むルーレ編。
この人パッパ以上にキャラ崩壊するイメージがないのでどこまでやっていいのか手探り手探りでやりつつ、こんな感じに。
家族問題ということでアリサオンリーの会話にしましたが、やはりリィンが強引に割り込んでイリーナさんをヴィータ化させたほうが良かったのか…と今更に。

そしてプロットではⅦ組全員集合してアリサへの印象をイリーナに伝えた上で、娘への言葉をかけるというものだったのに、何故かホテル・ヴァリマールへ案内してしまう事態へ。
筆が進んだのでこちらにしましたが、Ⅶ組的にはやはり全員の言葉はあったほうが良かったか…

そういえばⅡのアリサの絆イベントでは、二人入るとお姫様抱っこのように膝の上に座る形でしたが、Ⅳの断章でセリーヌとの搭乗時を見るともっと余裕があるように見えました。
いくら子供サイズといえセリーヌが横に座れるのですし、やはりⅡの膝上はヴァリマールの粋な計らいというやつだったのかもしれませんね。
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