はぐはぐオズぼんとの軌跡   作:鳩と飲むコーラ

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リィンが重心ではないので、その分他のメンバーにしわ寄せが行くお話。
前回下がったと思う好感度をなんとか戻そうとしていたら、マキアスが主人公のように…

誤字報告、いつもありがとうございます。


フフフ、息子よ。四月の特別実習だ②

「ユーシス・アルバレア! 貴様……!」

「阿呆が……! 貴様の発言が周りだけでなく自分を貶め、大嫌いな貴族以下の存在になっていると何故気づかん!」

 

 掴み合い、手を出したユーシスに対しマキアスもまた拳を振り上げる。

 だがその動きは強制的に止められる。

 振り向けば、リィンがマキアスの腕を抑え込んでいた。

 振りほどこうにも、マキアスの力ではリィンから逃れることが不可能であり、仮に膂力で勝っても鬼の力や灰のチカラを併せ持つリィンの前には無力だった。

 リィンはフィーに目配せし、彼女はその意図を察して頷く。

 

「こいつは侮辱されたエマの分」

 

 破甲拳、は危険と判断しマキアスの脇腹に軽く手刀を入れる。

 マキアスはその場にうずくまり、ユーシスに殴られた時よりも遥かに上の痛みに苦悶の声すらあげられない。

 

「ロジーヌやベリル達の分が入るかは、今後次第な。フィー、悪いけど頼む。その間に染色のほうは片付けておくから」

「ん。その依頼、引き受けた」

 

 リィンは困惑するユーシスやラウラにその場を去るよう伝える。

 二人はフィーを残す理由を疑問に思ったが、すぐに答えにたどり着きリィンの後を追った。

 

「リィン。穏便に出来そうなのがフィーだけといえ、残してきて大丈夫であろうか?」

「今のマキアスに貴族が近づいたら、余計拗れるだけだろうからな。フィーならマキアスを連れていても、この辺の魔獣なら問題ないはずだ。それとユーシス、俺の代わりに怒ってくれてありがとう。おかげであの場はエマの分だけで済んだ」

「俺の拳とお前の拳とでは大きな差がありそうだがな……しかし、礼は受け取っておこう」

 

 謙遜するユーシスにリィンは笑いが漏れる。

 その姿を侮辱と受け取ったのか、ユーシスはリィンに軽く苛立ちを覚えた。

 それが言葉に出る前に、ラウラがユーシスへ話しかける。

 

「こう言ってはあれだが、意外だったぞユーシス。そなたがリィンのためにそこまで……いや、あれは個人いうより人として、か」

「元々ストレス溜めてたところに色々あってパンクしたんだろうな」

「それは貴様が原因だろう。……だが当人は思っているほど怒りを覚えていないようだな?」

「んー、どうして親が俺を捨てたのか、ちゃんと理由を知ってるからな。俺からすればマキアスの発言はゴシップ以下に聞こえるよ」

「……よくそこまで達観したものだ」

「はは、俺には親が五人いて可愛い妹もいるからな」

 

 無駄だと知りつつ、リィンは左腕を掲げる。

 そこには相変わらず真顔をする中年の男性を模した人形が掴まっていたが、リィンはそれに安心感を覚える。

 

(フフフ、息子よ。そこで動揺しない辺り成長したな)

(我ガ起動者ハ、中々難儀ナ星ノ下ニ生マレテイルヨウダ)

 

「貴族、か」

 

 それきり会話もなく三人で移動する中、唐突にラウラがぽつりとつぶやく。

 

「成すべきことをしていればいいのに、どうしてこうまでいがみ合うものなのだ」

「それは――」

 

 ユーシスが答えようとするが、リィンを見て口をつぐんだように黙ってしまう。

 リィンはユーシスが自分を意識していることは知っていたが、その理由がわからないため二の句を継げないでいた。

 結局、ラウラが発した問いに答えるわけでもなく、三人は淡々と特別実習の依頼を片付けてパルムに戻っていった。

 

 

 リィン達に置き去りにされた、と思っているマキアスをよそにフィーは面倒なことになったとため息をついていた。

 ただでさえリィンのおかしい行動に面食らっていたというのに、マキアスの暴走とのリンクでセリーヌの毛並みが恋しくなってしまう。

 でも依頼を受けた以上、どんなに嫌でも達成しなければならない。

 それが元猟兵であるフィーの流儀だった。

 

「ぐ……く……」

「アーツでも薬でも、回復は自分でやってね。自業自得なんだから」

「自ご……いつつ、くそっ、なんで殴られた頬より軽く突かれた脇腹が痛いんだ」

「リィンとユーシスの地力の差だろうね。言っておくけど、ユーシスと同じ勢いでリィンに殴られてたら、病院どころか女神様のところに行ってたかもしれないよ?」

 

 フィーから見てもあのときのユーシスは普段の余裕は皆無で、本気の怒りが感じられた。

 何がユーシスの琴線に触れたかわからないが、マキアスの台詞にそれに値する言葉が含まれていたのだろう。

 かくいう自分も、浮浪児だからと侮辱しかけていたマキアスに良い感情を持てなかった。

 全部を言い切ることはなかったが、その後の言葉は少し考えれば察せられる。

 なのにああまで悪感情を受け流すリィンを評価し、割り切りの良さは猟兵向きかもとそんなことを考える。

 マキアスは懐から取り出したティアラの薬をゆっくりと飲み込む。

 ユーシスに殴られただけならティアの薬で十分だったが、リィンの一撃はそれでは不十分だったのだ。

 薬のおかげで痛みが治まったのか、マキアスがゆっくりと立ち上がる。

 その顔は深い後悔を刻んでいた。

 

「なんだ、そんな顔できるんだ」

「何の話だ……」

「反省出来る程度には、自分の言葉がいかに馬鹿だったかわかってるんでしょ?」

「うぐっ…………」

「頭に血が昇りやすい性格なんだろうけど、矯正しておかないと痛い目見るよ。今回はそれで済んだのはむしろ僥倖」

 

 リィンの灰のチカラを目の当たりにしたフィーは、しみじみとつぶやいた。

 あの拘束技も反則だが、あの巨体から繰り出される一撃を受けたらひとたまりもない。

 それを実験と称して人に向けているシュミット教室と呼ばれる場所は、あまり近づきたくない。

 

「浮浪児」

「…………………」

「私もそうだから、リィンにはちょっと親近感。あそこまでわんぱくじゃなかったけどね」

「え……………」

「たまたま貴族の家に拾われた子供が貴族になるなら、マキアスにとっての貴族って随分と範囲が広いんだね」

「何が言いたいんだ………」

「自分を孤児だって言えるのは、拾われたことを苦に思っていない、両親に愛された証拠。拾い子を愛することが出来る貴族も、マキアスにとっては悪?」

 

 らしくもないと思いつつ、フィーはマキアスに語る。

 多分、同じ浮浪児だから感じ入るものがある、それだけ。

 アフターサービスかな、と思いながらフィーは続ける。

 

「貴族とか平民とか、そんな身分で相手を見るよりも、その人の行動を見るのが一番簡単に相手を知ることだと思う。私もゼムリア大陸を色々回って、色んな貴族や平民を見てきたけど、悪い貴族もいれば良い貴族もいた。良い平民もいれば、悪い平民もいた」

 

 猟兵であることまでは語らず、フィーはゼムリアを旅したことがある、とだけ留める。

 

「リィンは変な人だし、エマや他の組の生徒を振り回してるみたいだけど、その子達が楽しそうに笑っているのを見たことあるから、悪い人じゃないと思う。セリーヌも懐いてるみたいだしね。ユーシスは誰かに迷惑かけたりした? 貴族らしさなんて、口調くらいしかないんじゃない? 口が悪いって言うなら、私はマキアスのほうがよほど悪いって感じてる」

 

 もし、とフィーは締めくくるように告げる。

 

「私が今から貴族の養子になったら、手のひら返して話さなくなる? だったら、マキアスにとっての貴族はそういうものなんだね」

 

 その声にマキアスは返事を返すことはなく。

 フィーは無言になってしまったマキアスを引き連れて、残りのメンバーと合流する。

 宿酒場に戻ってきたフィー達を見て、リィンはある提案をした。

 

「昼飯だけど、せっかくなら釣った魚を調理しないか?」

「どしたの、突然」

「気分転換だよ。正直、午後から実習って空気じゃないしな」

「ん、わかる。私もいい?」

「ああ。ユーシスとラウラはどうする?」

 

 マキアスはびくりとして、リィンをちらちら見てはなんとも言えない表情を作り、ユーシスは腕を組み、瞳を閉じたまま微動だにしない。行く気はないようだ。

 ラウラもまた、無言で首を振り、リィンは頷いた。

 

「マキアスは休んでいたほうがいい。でないと午後の依頼に響く。全員分釣って来るから、期待してくれ」

「あ…………」

 

 言うが否や、リィンは足早に宿酒場を去っていく。

 フィーもその後を追い、手を伸ばしたマキアスの声は二人に届くことなく虚空へ消えていく。

 

「そなた、後悔しているのならもっと早く言えば良かったものを」

「そんなの…………出来たら…………とっくに…………」

「…………俺もやはりリィン達のところへ行く」

「む?」

「異性だからというわけではないかもだが、お前はまだマシと思われているはずだ。本来ならフィーに頼みたいところだが、付いていってしまったものは仕方あるまい」

 

 ユーシスはそう言って足早にリィン達を追いかける。

 ラウラは仕方あるまいはこちらの台詞だ、と思いながらもマキアスを寝室へ連れて行く。

 マキアスをベッドへ寝かせたラウラは、近くの椅子を持って傍に寄る。

 しばらく会話のない無言が続くが、やがてぽつりとマキアスがつぶやく。

 

「…………ダメなんだ」

「何がだ?」

「貴族、というだけで頭の中が真っ白になって、嫌な記憶だけが繰り返すんだ。僕の大事な……」

 

 それきり、マキアスは涙を堪えるようにラウラから顔を背け、表情を歪めて布団を強く握りしめる。

 だがマキアスはそこが限界だったのか、それとも知り合って間もないラウラに話せないのか、それ以上口を開くことはなかった。

 ラウラは一つ息をつき、貴族である自分はやはりこの場にいては居てはいけないと判断して退出する。

 マキアスにとってはありがたくも苦しい、辛い時間が訪れる――だが、しばらくして寝室のドアが開いた。

 目に映ったのは、こちらへ手を振りながら笑みを浮かべたサラの姿であった。

 

 

「さっきはありがとな、フィー」

「ん。まあ実習代わりにやってくれたし、いいよ」

 

 パルムの川でリィン達は釣りの準備を行っていた。

 ユーシスもフィーも釣りをするのは初めてなのか、好奇の目でその様子を見ている。

 

「釣り竿と餌は人数分あるから、二人もやってみるといい。結構面白いぞ?」

 

 オズぼん経由でその手に釣り竿を二つ出現させたリィンは、淀みない動きで釣り餌を用意しながら二人に渡す。

 手品のように釣り竿を取り出したリィンに目を丸くする二人は、けれどもその奇行に慣れ始めたのか無言でそれを受け取った。

 

(フフフ、息子よ。彼らも随分慣れてきたようだな)

(我ニハ思考ヲ破棄シタヨウニ見エル)

(なんだ、今まで黙っていたのに)

(フフフ、子供達の青い春に割り込む無粋な大人ではないということだ)

(トイウコトダ)

(私達はしばし黙っていよう。息子よ、『仲間』と共に釣りを堪能するがいい)

(スルガイイ)

 

 ヴァリマールが早速オズぼんの影響を受けているなあ、と思いつつリィンは川に釣り糸を垂らす。

 ユーシスとフィーも、それに倣って川へ釣り糸を投げ込んだ。

 すぐに釣れるわけではないが、ビギナーズラックを期待しながらリィンはしばし魚の流れを読む。

 静寂がパルム川に満ちる。

 釣りの空気に耐えられなかったのか、ユーシスがぽつりと口を開く。

 

「貴族とは、成すべきことを成すもの。その通りだな……〈貴族の義務〉(ノブレス=オブリージュ)、今の帝国ではそれを果たす者は少なくなっている。さきほどあった染料の依頼のようにな」

「何かあったの?」

「春の染め物じゃなくて、貴族の道楽でパルムの織物を求めていた伯爵が依頼人の依頼人だったんだよ。ただ、その貴族は作る職人が若い人だったのが気に入らない、って結局別の職人のものを見繕っていった。マキアスが居たら危なかったな。結局、そいつはユーシスに気づいて逃げるように去っていったけど」

「若さに不安を抱くなとは言わんが、その者の腕すら見ようとしなかったのだ。出来が悪ければそれは職人の不備だが、それ以前の問題だ」

「へぇ、マキアスの面倒見てたのは正解だったかな。嫌な気分になりそう」

「そういう意味ではユーシスとのやり取りは痛快だったよ。よくやってくれた、って。……おっ、レッドパーチゲット」

 

 最初に魚を釣り上げたのはリィンだった。

 不満そうなフィーに、経験の差だと宥める姿を見ながらユーシスは絞り出すように語り始めた。

 

「人よりも大きな力があるからこそ、それを律しなければならない。俺の場合は権力がそれに該当するが、制御を外れて暴走する力はあまりに危険だ」

「わかるよ」

 

 レッドパーチをバケツに入れながら、リィンはしみじみと漏らす。

 リィンもまた、鬼の力という異能に悩まされた身だ。

 今でこそオズぼんのおかげでコントロール出来るようになったが、エリゼを守った時のような破壊の衝動に身を委ねていれば、ユミルの里は今頃地図から消えていた可能性もありえた。

 その恐ろしい考えにたどり着いたときには、情けなく涙を浮かべてしまったものだ。

 

「…………私もそれならわかる、かな」

 

 フィーが同意する。

 十歳を超えた頃から戦場を渡り歩いた元猟兵の肩書きを持つフィーにとって、力の扱い方を知るのは重要なことだった。

 自制という鞘から依頼という持ち手によって抜き放たれる刃。それが猟兵だ。

 ただ力のままに振るうのは猟兵ではなく、くずれだ。その辺のチンピラと変わりない。

 猟兵は依頼内容こそ物騒なものだが、だからこそその力の振るいどころをよく知っている。

 もちろんやくざな家業、戦闘狂が多いし、父親もそれに該当する人だった。

 けれど孤児だったフィーはそこで家族という存在を知った。

 戦場から離れれば、そこから覗く顔は優しい親や兄弟のもの。

 そんな大好きな家族の下で育つことが出来たのは嬉しいが、だからこそ離れ離れになった今が、とても寂しい。

 

「私もそういった心得は、父上から学んだものだ」

 

 そこにセリーヌを抱えたラウラがやってくる。

 ようやくセリーヌを撫でられてご満悦そうなラウラ。

 リィンはセリーヌからの恨みがましい目を流し、マキアスは? と聞けば、サラが面倒を見てくれているようだ。

 なら安心か、とリィンは釣りを再開する。

 セリーヌが抗議の声を上げたが、リィンがバケツの中の魚を示し、次いでセリーヌの口へ指を持っていくと、彼女はしばし悩んだ後にただの猫に戻った。ちょろい。

 

「教官来てたのか、っていうかラウラ聞いてたのか」

「うん、たまたま聞こえてしまってな……聞き耳を立てるようですまなく思う。だが、やはり貴族が傍にいるのはだめだろうと思ってな」

「いや、大丈夫だろうさ」

「貴族が民を養い、民が貴族に奉仕する。それだけで済むのに、そこまで嫌悪するものなのだろうか」

「そう言い切れるのは、ラウラが良い両親と環境に恵まれたってことの何よりの証明だよ」

 

 かのアルゼイド子爵は、公爵家のユーシスからの評判も悪くない。

 公爵と子爵、その絶対的な身分差がありながらのその評価は、子爵閣下の人柄を示しているようだった。

 

「話を戻すと、俺はそういうの、父さんともう一人の親父から色々学んだな」

「私も、お父さんかな。お兄さんもいるけど」

「俺は…………兄上、だな。公爵家なら、大抵のことは叶ってしまう。だからこそ、俺はこの感情に振り回されるわけにはいかん」

 

 何故か歯切れの悪いユーシス。

 リィンはやはりユーシスからの意識を感じる。

 そろそろ問いただすべきか、と思ったところでフィーの竿にはじめての魚がかかった。

 わっ、と慌てるフィーにリィンは手慣れた動きで彼女の手に自分の手を添え、協力して引き上げる。

 フィーの初釣果はカルプであった。

 

「おっ、やったなフィー。食いっぱぐれることはないぞ」

 

 ちなみにリィンは会話の間にも釣り上げ、バケツの中の魚は三匹を超えていた。

 その余裕に機嫌が悪くなったフィーは、無言で釣りを再開する。

 手持ち無沙汰であろうラウラにも釣り道具を渡し、四人は会話が途切れたまま釣りを再開する。

 結局リィンが六匹、追加でセリーヌ用に一匹釣って七匹。フィーが一匹釣り上げラウラとユーシスは釣果ゼロであった。

 釣れなかった二人にどや顔をするフィーとラウラとで一触即発になったのは、また別のお話である。

 

 

「サラ教官……」

「やっほー、マキアス。随分とひどい顔ね」

 

 ベッドから上半身を起こしたマキアスは、自分の心情とは正反対にのんきな上官の姿にさらに顔を歪めた。

 

「話はラウラから聞いたわ。いくら相手がリィンだからって、言っていいことと悪いことくらいはあるものよ。……その顔見れば、自分がしでかしたことは理解しているようね?」

「………………」

 

 相手がリィンだからって、という言葉にサラの悩みが現れていたが、そこに気づけるほどマキアスに余裕はない。

 サラは何か言うでもなく、ラウラが座っていた椅子に腰を下ろし、近くのテーブルに持ち込んだ酒を置く。

 マキアスはその行動に面食らっていたが、やがてその姿に怒りが湧いてくる。

 

「何をしに来たんですか」

「そりゃあ担当教官ですもの、生徒の様子を見に来るのは義務だわ」

「だったら三人のところへ向かってください。今頃、パルム川で釣りをしているはずです」

「ラウラが行ってるから四人……セリーヌも預けたから四人と一匹ね」

「だったら五人と一匹になればいい……僕のことは放っておいてください」

「いやー、ケルディックからの移動で疲れちゃって。ここで休憩させてもらうわ」

「貴女という人は…………!」

 

 マキアスの知る『年上の女性』とは似ても似つかぬ態度に、くたびれていたマキアスの心に活力が湧いてくる。

 その原料が眼の前の女性への怒りというのは、女性に優しくをモットーにするマキアスにとって認めがたい事実であった。

 

「なら教官らしく、問題点の指摘でもしてあげましょうか?」

「いりません……」

「さっすが優等生」

「エマ君に負けます」

「入試二位は十分だと思うけど?」

「それでも、負けは負けです。武力でも貴族に叶わなかった……特に、あのリィン・シュバルツァーは圧巻だった……」

 

 リィンが見せた武芸の腕前、灰のチカラなる未知のアーツ。

 どれをとっても貴族に勝るものがなく、自分は奴らに届かない、とマキアスは現実を前に心が折れかけていた。

 認めたくない一心でリィンに絡んだ結果が、アレだ。

 心を落ち着かせた今だからこそ、あのときの自分がいかに愚かだったのかよくわかる。

 何より、最も気に食わない公爵家の人間に尻拭いをさせてしまった事実が、マキアスの心に重くのしかかる。

 

「あれは例外というか、まともに考えちゃいけないタイプだと思うけど……」

 

 落ち込むマキアスに、サラは慰めの言葉をかける。

 事実、自分ですら危うく、圧倒する可能性を持った少年を同年代の生徒が比較するのは理不尽というものだ。

 

「僕にも……あんな力があれば……」

「それで、気に食わない貴族様をぶちのめして、気分爽快? その先はどうするの?」

「え………?」

「仮にⅦ組から貴族を排除して、その勢いでトールズ士官学院から貴族科をなくしたとしましょう。その後、君はどうするの? 帝国中から貴族をなくす?」

「その、あと?」

「『敵』がいなくなったら、今の君ならなんだかんだ因縁付けて新しい『敵』を作っていくでしょうね。君が何を抱えて貴族へ憎しみを抱くようになったかは知らないけど……」

 

 ぐい、とサラは置いた酒をあおる。

 酒精の香り鼻をついたが、それ以上にその先のサラの言葉が気になった。

 

「そうやって反省できる『今』が分岐点よ。その気持ちのはけ口を用意して頭空っぽにしてあげるから、午後に備えて休んでなさい」




おかしい。
オズぼんからも自分でなんとかしろって言われて悩んだリィンがロジーヌとかベリルに連絡して悩みを相談してもらう、ってプロットだったのに展開がまるで違う。
すごく普通にシリアスになってる。
これが原作っていうかⅦ組補正なのか…
単にオズぼんが出張らないと普通になるのか…そうなるとリィン君はやっぱり普通の男の子ですね!

旧Ⅶ組も、新Ⅶ組くらい横の繋がりもっとあって良かったと思うので、なんだかんだこれはこれで?
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