前話を少し修正しました。
具体的にはリィン版アークルージュをデウスアーツと呼称、簡単に言うと騎神で使うロストアーツな感じにしました。
「――学院生の皆さん、並びに来場者の皆様。大変長らくお待たせいたしました。これより第127回トールズ士官学院・学院祭を開催します! どうぞ心行くまで楽しんで、みんなで盛り上がってください!」
導力マイクによる放送がトールズ士官学院に木霊する。
入口の正門には数多くの老若男女の人々が集い、トワの宣言に拍手を以て歓迎した。
生徒達によって開かれた扉から、子供達が我先にと率先して駆け出す。
保護者達や見物に来た来場者もその後に続き、あっという間に学院内に人が分散していく。
リィン達Ⅶ組は、その様子を見守りながら今後のことを話し合っていた。
「俺達の出番は明日の午後……それで、今日一日はみんな自由行動で良いんだよな?」
「ああ。明日のステージに向けて、存分に英気を養おう」
「……正直、昨日までの慌ただしさで疲れのほうが出てるんだが」
「急遽ヴァリマールが使えないとのことで、それに合わせて演出が変更されたからな……」
「お、お二人ともお疲れ様です……」
ヴァリマールによる空中舞踏ステージがなくなったことに安堵したユーシスとマキアスだったが、すぐに大破とは何事だと昨日は詰め寄られた。
何事かと問われれば、ブリオニア島でマクバーンと戦ったからほぼ全壊した、としか言えない。
アリサにエリオット、ガイウスといったマクバーンを知る三人はヴァリマールが壊れるほどの戦いから生きて戻ったリィンに驚けばいいのか、本当に友達になったマクバーンに驚けばいいのかわからず、ガイウスですら言葉を失っていた。
これで実際に紹介したらどんなリアクションを取るかな、と逆に楽しみになるリィンだった。
「でも、学院祭が楽しみなことに変わりはないけど、こんなにのんきしてていいのかなー?」
「ミリアム?」
「だって、クロスベル方面がすごいことになってるでしょ?」
「クロスベルの独立宣言、だよね。リィン、そっちで聞いてないの?」
「昨日特務支援課に連絡を入れて確認したけど、今はその件について色々動いてるらしい。あと、マクバーンさんって
「リィンさん、話ずれてます」
マクバーンがクロスベルへ向かうさい、リィンは特務支援課を頼るよう言っていた。
事前に連絡を回したおかげで、リィンの友人という形で滞在させてもらったそうで何よりだ。
今日は戻って来るそうだが、マクバーンがクロスベルへ行ってからあちらでの騒ぎは日増しに大きくなっている。
きっと疲れているだろうから、学院祭に来た時に精一杯もてなすのが友人の努めであろう。
「それじゃあ今日はみんなそれぞれ楽しんでね。帰りは導力楽器の搬入タイミングの確認や簡単なチューニングもしたいから、集合して欲しいけど」
「了解だ。それでは皆、今日は各々で楽しもうではないか」
ラウラがそう締め、Ⅶ組は部活の手伝いなどのため解散する。
リィンは部活に入っていないものの、生徒会の手伝いをしていたことで予備の生徒会メンバーとして数えられており、学院祭の見回りをすることとなった。
元は奉仕活動としての参加だったはずが、予備メンバーとは随分と出世したものである。
そう思いながらトワの元へ向かうと、彼女は呆れたようにリィンを見上げた。
「リィン君、本来は生徒会のメンバーでもないんだから、無理に手伝わなくてもいいんだよ?」
「いえ、部活入っていないですし、友達がこの後くるのでその案内をする時に楽しませてもらいますよ」
「だとしても、始めての学院祭はちゃんと楽しむこと!……そうだ、それじゃあリィン君にはこれからこの要請を受けてもらいます」
差し出されたのは、六枚のチケット、
聞けば、生徒会が発行した来場者全員にプレゼントしている特典チケットらしい。
アトラクションに入る時に見せれば、ちょっとしたサービスが受けられるそうだ。
一枚につき二人まで使えるそうなので、誰かと回るのがいいだろう。
「へえ……ありがとうございます、会長。ありがたく使わせていただきますね」
「うん、素直でよろしい」
「トワ会長も、俺にそう言うってことなら他の先輩達と予定があるんですか?」
「うん、アンちゃんから誘われてるし、時間が合えばクロウ君とジョルジュ君とも回ろうかなって」
「なら、その時になったら言ってください。時間が空いてたら会長の手が空くよう手伝いますので。会長だって四人で回ったほうがきっと楽しいでしょう?」
「うーん、でもなあ……」
「はは、ならこれは俺からの要請ってことで。受けない、とは言いませんよね?」
「うっ……ううー、意地悪ぅ」
「褒め言葉として受け取っておきます」
そんな風にトワも上級生の先輩達と遊ぶことを約束してくれた。
それを聞き届けたリィンは、トワに礼を言って改めて学院祭を回ることにする。
ついでにもらった生徒会腕章をオズぼんごと左腕に巻きつける。
わかる人からすれば、オズぼんが腕章をたすき掛けしているように見えるだろう。
途中、ミリアムと合流して軽く食事を摘みながらマキアスの昔馴染みらしいパティリーという少女とその連れであるカルゴを彼の元へ案内した。
美術部でエリオットと合わせてガイウスの絵を見て心を和ませていたマキアスだったが、パティリーと遭遇した瞬間に一瞬でその空気が吹き飛んだような顔をしていた。
その顔が癪に触ったのか、パティリーは激発。
マキアスに詰め寄って支離滅裂に何か叫んでいる。
言い争いの間に手持ち無沙汰になってしまったミリアムがエリオットの手を取って離脱、リィンも彼女と仲良くな、というパティリーにとっての爆弾を残して離れていく。
ミリアムとエリオットとは離れてしまったが、あちらはあちらで楽しむとARCUSで連絡を受けたのでリィンも改めてどこを回るか散策を始めた。
「にしても六枚か……マクバーンさんが来るのは午後だったか?」
(正確な時間は聞いていないが、一枚だけマッ君に残して残り五枚は別に使うべきであろう)
「流石に親父やヴァリマールと一緒ってのは無理だよな」
(気遣イハ嬉シイガ、りぃん一人デ我ラ三人分ト思エバイイ。省えねダナ)
「なら、この五枚は――」
すぐにチケットを誰に使うか決めたリィンはARCUSを取り出し、まずベリルへ連絡を入れる。
彼女は連絡をすればすぐ来てくれた、というよりいつの間にか背後に立っていた。
「早かったな。早速だけど、会長からチケットもらったから一つだけ何か一緒に回らないか?」
「……………」
「ベリル?」
「いいえ、その《因果》に至ったのね。ちょっとした考え事よ、気にしないで。それで、どうして私を?」
「どうしてって、友達だろ? それに今回の件でお世話になったしな」
「なるほど、エマさんやロジーヌさんといった人達と回ろうってことね」
「正解」
「ウフフ、本当ならあの人と六枚全部使いたかったのだろうけど、ご指名されてしまったのなら楽しませてもらうわ」
「別に代わりってわけじゃないからな?」
「ウフフ、わかってるわ。言ってみただけ」
「よし、じゃあ早速れっつごー」
向かった先はⅠ年Ⅴ組の出し物であるみっしぃパニック。
ベリルが所属するⅢ組の出し物も気になるが、自分のクラスよりも他のクラスの出し物を体験したほうが彼女も楽しめると思っての選択である。
九つの穴の空いたステージの上に立ち、そこから出てくる的をたくさん叩いて高得点を狙うアトラクションだ。
教室全体が専用のステージとなっており、何らかの導力機械か人力かはわからないが、結構なペースで穴から出し入れが展開されている。
悪みっしぃと呼ばれるみっしぃを叩くことでポイントが加算され、それ以外を叩くと逆に点が引かれてしまうシンプルなルール。
そんな話を並びながら仕入れていると、ようやくリィン達の出番となった。
「お、ムンクがこの出し物の担当か」
「やあリィン。と言っても案内するだけで操作するわけじゃないんだけどね。ベリルさんと回ってるのかい?」
「本命の間の時間稼ぎに使われてしまって」
「言い方言い方」
「リィンは顔が広いからねえ」
同じシュミット教室の面々なだけあって、ムンクも人見知りをせずに雑談を交わす。
説明を受けるとピコピコと音が鳴るハンマーを渡される。
ベリルに目を向けてみるが小さく返された両手がリィンに譲る、と無言の言葉を発していた。
「よし、せっかくならハイスコアを狙ってみるとするか!」
「なら、及ばずながらお手伝いさせてもらうわね」
「な、なんだかすごいことが起きそうな予感が……」
寒気を覚えるムンクの言葉は真実となる。
何故ならば、ベリルは――
「リィン君、真ん中中央。次は私から見て上の右、次は下の左……」
彼女の宣言通り、ベリルの言葉が示す先から悪みっしぃが湧き出てくるためリィンは非常に楽をしてハイスコアを叩き出した。
ムンクは反則だろ~と頭を抱えているが、助言してはならないルールはないため適応された。
「ウフフ、それじゃあ次は私ね」
「よし、今度は俺がアドバイスするぞ。えーっとまず――」
気配察知に優れたリィンは、先程のゲームで各種のみっしぃの気配を掴んでいた。
当然、穴に隠れたみっしぃが這い上がる動きを見切るなど容易い。
故にそんなリィンのアドバイスを受けたベリルは、リィンには及ばずながらニ位のスコアを達成する。
そして当たり前のように、リィンとベリルには今後アドバイス禁止令が出されるのであった。
とはいえなんだかんだと楽しんだ二人はみっしぃのぬいぐるみを手にし、ベリルはあえて悪みっしぃのぬいぐるみをもらっていた。
「それでいいのか?」
「目つきがなんだか私に似てない?」
「似てない。もっと女の子だろ、ベリルは」
「冗談よ、私が持つなら似合うと思うわ」
断言しながらも、そんなものかと考える。
まじまじと見るのも失礼と思い、ムンクに礼を言ってその場を後にした。
「さて、次はどこに行こうかな」
「本校舎でいいんじゃないかしら。待ち人はまだ到着が遅れそうよ」
「む、そうか」
「ああでも、珍しい人が見えてるからその人を誘ってみたら?」
「珍しい人?」
「ええ。私が誘っておいたの。今なら本校舎一階、Ⅱ組の出し物のところに向かっているはずよ」
「ベリルが? 確かに珍しいな、一体誰なんだ?」
「それは行ってのお楽しみ。ゆっくり話してきなさい」
「話して来なさい、って……ベリルは?」
「私はもう楽しんだからね。それじゃあまたね、リィン君」
そう言ってベリルは去っていった。
普段よりも唐突に思いながらも、悪みっしぃを抱えていた様子を見れば言葉通り楽しんでいたことに違いはないだろう。
(フフフ、息子よ。気になるかもしれんが、ベリル嬢の言葉だ。何か意味のあることだろう)
(ウム。往クガイイゾ、りぃん)
二人に言われるがままに、リィンも一応の納得を示しながら本校舎へ向かう。
示された先はⅠ年Ⅱ組の出し物、ステラガルデンだ。
星を鑑賞出来る出し物のようだが、何よりリィンを驚かせたのは本当に珍しく意外な人物と出会ったからだ。
「シュミット博士!」
「フン、わざわざこんな場所で待ち合わせをせずとも、通信を使えばいいものを……」
「あ、えっと……すみません」
(フフフ、息子よ。どうやらベリル嬢がお前の名で呼び出したようだな。せっかくだ、ブリオニア島での礼と合わせて入ればいい)
(そ、そうだな。確かに色々あってお礼を言うタイミング逃してたし)
オズぼんの言葉で咄嗟に言い繕い、怪訝そうな目を向けるシュミットを誤魔化しながら二人はステラガルデンへ入っていく。
(シカシ、コノヨウナ場所ハ異性ト入ルノデハナイカ?)
最もなヴァリマールの疑問はしかし、映像出力というあまり見ない導力機械を導入しているこのクラスだからこそ、というシュミットへの配慮とも言えた。
だが、星空の演出やガルデンの名を示すように貴族らしい優雅な庭園を歩く情緒はシュミットにはない。
さっさと先に進んでしまい、備え付けられた導力機械のスイッチを押していた。
映し出されるのは、天幕に満ちる星々と天の川。
その光景には、さしものリィンも感動を覚える美しさであったが、シュミットは星でなくじっと導力機械を眺めている。
その瞳に移るのは懐古、だろうか。
ふと、リィンは気づけばこんな言葉を口にしていた。
「フランツ・ラインフォルトの技術を持った人は、黒の工房という所に所属しているそうです」
「……何だ、改まって」
「あ、いえ、その……」
「フン、取り繕わなくていい。
ルーツ? と疑問を浮かばせるがリィンは表情には出さない。
ただ、先程自然と出た言葉からして推測出来ることは一つしかなかった。
「これは、弟子時代の?」
「暇潰しにしかならん、と切り捨てたが、巡り巡って日の目を見たようだ」
本物と見紛うばかりの星空を映し出す技術よりも、それを生み出した経緯がシュミットの琴線に触れたらしい。
「シュバルツァー」
「は、はい」
「私はこのままエリンを出る。もう戻ることはそうないだろう」
「え!?」
「テスタ=ロッサの呪いに関しても形となり、貴様が発案した騎神によるデウスアーツ……その雛形もこの目で確認した。もはやエリンですることは残っていない」
「で、でもまだヴァリマールが……」
「あれはガンドルフに任せておけば問題ない。そもそも、騎神を扱う専門の職人が居るのなら、私が関わる必要はないからな。魔女達にも一通りの導力技術の習得はさせた。あとはあちらでなんとかなる」
「でも、どうして突然……」
「私としてはいつも通りだ。ただ、他に興味のあることが出来た、それだけに過ぎん」
「そう、ですか……」
シュミットの性格は四月から関わり、今に至るまで知っているつもりだ。
たった半年の付き合いながら、もっとそれ以上の時間を過ごしていたような気がする。
七月に解散したシュミット教室の後でも、エリンへ行けば会うことが出来たシュミットとはもう定期的に会えなくなるのだろう、とリィンは察していた。
「ちなみにどちらへ?」
「言う必要はない」
「うーん、それは残念」
「話はそれだけだ。ではな、シュバルツァー」
そう言ってシュミットはまた先に出ていったしまった。
その背中に声を掛けようとするが、彼の足は早く一刻も早く次の場所へ向かいたいと願っているようだった。
だからリィンは、その背中に言葉を送る。
「四月から、色々お世話になりました。博士、本当にありがとうございました!」
「礼などいらん。言葉より、私の興味に足るものでも持って来い。……まあ、それなりに悪くない時間ではあったがな」
相変わらずな言葉を残しながら、シュミットは教室を出て去ろうとし――
「あーシュミット爺ちゃん! 来てくれたんだー!」
突然目の前に割り込んだミントとエンカウントしていた。
「なっ、貴様……」
「久しぶりー、ひょっとしてマカロフ叔父さんかジョルジュ先輩とかに会いに来たりしたの? だったら私が案内してあげる! そうだ、それと私達のクラスでも出し物してるから寄ってって~」
「離せ、私は今から……」
「そら、れっつらごー! あ、リィン君も良ければ来てね、本校舎二階の私達のクラスだから!」
嵐のように怒涛の勢いでまくしたて、シュミットの手を取ったミントは彼を抱えて去っていく。
その様子は元気な孫に振り回される祖父のようにしか思えず、先程までの空気を木っ端微塵に砕いていった。
「さすが、ミント」
(天敵トイウヤツカ)
「あれはあれで、案外博士も楽しんでるかもしれないけどな」
そんなはずない、と本人が居れば断言したであろう台詞は、あいにくとリィンの耳には届かない。
ミントに連れ去られるシュミットを見送りながら、リィンはもう一度頭を下げるのだった。
*
本校舎一階ではⅣ組の出し物である東方茶屋が開かれていたが、マクバーンが来てから誘うつもりなので、ミントに誘われた本校舎の二階へ向かう。
そこで行われているのは、Ⅰ年Ⅲ組による出し物、ブレードによる遊戯会場、ゲート・オブ・アヴァロンだった。
早速誰かを誘って入ろうとするリィンだったが、そこにちょうどロジーヌが子供を引率しているところだった。
三人の子供達の後ろに並ぶロジーヌが最後尾のようで、リィンはその背中に声をかける。
「ロジーヌ、今日はその子達の引率か」
「あ、リィンさん。ええ、みんな楽しみにしていたみたいで……」
「手伝いもあるのにお疲れ様だな。せっかくだ、チケット一枚譲ろうか? 一つで二人まで行けるそうだし、子供達と合わせればちょうど四人だろ」
「それはリィンさんのものですよね? わざわざそんなことしていただかなくても……」
「別に構わないさ、まだロジーヌに渡してもまだ三枚余るし」
そうやってチケットを譲る譲らないで軽く押し付け合っていると、列に並んでいた子供達がリィン達に気づく。
「むっ、出たなリィン・シュバルツァー! ロジーヌ姉ちゃんは俺とステラガルデンに入るんだから、お前は別のところで遊んでろよ!」
「今はブレードだよ、ブレード! そんなのあとあと!」
「カイもルーディも落ち着きなさい、ロジーヌさんが困るでしょう!? それに年上の人になんて口を聞くのよ!」
憧れのお姉さんと距離が近いリィンに敵意むき出しのカイの視線を流しながら、良いことを思いついたと彼にチケットを差し出そうとする。
だが、その手をロジーヌが抱えるように止めることで阻止された。
その光景に、カイの目が釣り上がりティゼルがはっとした表情を作った。
「あ、あのシュバルツァーさん」
「ん、どうした?」
「チケットなら私が譲りますので、ロジーヌさんのエスコートをお願い出来ませんか?」
「ティゼル、何言ってるんだよ!」
「だって朝からずっと付き合ってくれてるんだし、そろそろ休憩してもらっても良いでしょう?」
「だったら俺がするっつーの! それこそステラガルデンってところで!」
「あんたじゃロジーヌさんが落ち着かないでしょ!?」
「もー、ブレードが先だろぉ!」
子供は揃うと騒がしい。
だが周囲は喧騒の中には顔をしかめる者も出てきて、不躾な目を子供に向ける者もいた。
リィンとロジーヌは一瞬お互いの目を合わせ、カイとティゼルを止めようとする。
が、そこに第三者の声が割り込んだ。
「子供達よ。口を開くなとは言わないが、ここはブレードを楽しむ来場者が多い。それらの集中を妨げる行為は、謹んでもらおう」
「あれ、ラウラじゃないか」
「むっ、リィンか」
凛とした佇まいの空気に押されたのか、子供達はラウラに呑まれて黙ってしまう。
これ幸いとリィンは彼女がここに居る理由を尋ねた。
「ラウラもここに遊びに来たのか?」
「うん。だが予想以上の盛況でな、案内のモニカがパニックを起こしそうだったのでその手伝いを申し出ていたのだ。休憩時間になれば、彼女とも回る約束をしているしな」
「そっか、お疲れ様」
「そなたは……ふむ、生徒会の手伝いか。ただの
「はは、俺もそう思うよ」
「で、一体何が理由で騒いでいたのだ?」
「それは――」
理由を説明すると、ラウラは一つ頷いて少し待っていてくれと言ってモニカの元へ戻る。
ニ、三会話した後に戻ってきたラウラは、安心させるように子供達に笑みを向けた。
「ほら、このチケットを使うがよい。私はモニカのチケットから特典をもらうとする」
「いいのかラウラ?」
「問題ない。ここへ来る前にぐるりと回ってみたが、一番欲しいと思えるものは一つだけだったからな」
「ああ、みっしぃの」
「そ、それは口にしなくてもいいだろう」
少し照れるような顔を見せながらも、ラウラはチケットを差し出す。
やはりロジーヌが恐縮そうだったが、断るほうが失礼に当たると説得してなんとか納得してもらった。
子供達もラウラの佇まいに圧倒されていたせいか、素直に受け取ってくれた。ただ、カイが「俺にはロジーヌ姉ちゃんが……!」と葛藤していたのは何だったのだろう。
やがて列も進み、ロジーヌ達がⅢ組に入ろうとするところでリィンもティゼルのお願いを聞くべく一緒に入る。
中に入ると、レグラムにあるローエングリン城を思い起こさせる雰囲気を持つ部屋がリィン達を出迎えた。
ベリルと遊んでいる時に聞いたが、彼女が部屋の背景を担当したようでまるで当時の景色を直接壁に貼り付けたかのようなリアリティがある。
子供達がブレードで遊ぶ傍ら、リィンもロジーヌと一戦交えることとなった。
「そう言えばみっしぃパニック、楽しませてもらったよ。すごいクオリティだった、まあアドバイス禁止令を受けたけどな」
「また何かしたのですか?」
「ベリルと合わせてちょっと完封というかゲームにならないハイスコアを出してしまったというか……ちょっとやり過ぎた」
「ふふ、リィンさんらしいと言うか。でもベリルさんと回ったのですか? てっきりあの方と回ったのかと思いましたが……いえ、一緒にいない時点で来ていないと判断するべきでしたね」
ロジーヌの言うあの人とはマクバーンのことだ。
リィンも可能なら出し物の全てをマクバーンと回りたかったが、クロスベルで忙しくしているそうなので無理は言えない。
記憶を取り戻したことで何やらやる気になっている彼の邪魔をするつもりは、友情的になかった。
そう言うと、ロジーヌは軽く目を丸くしている。
何かおかしなことでも言ったか、と聞けば謝罪されながら理由を語った。
「あれだけ執心されていたのに、意外と言えば意外、と」
「別に常に一緒に居るのが友達じゃないしな。俺とロジーヌだってそうだろ?」
「言われてみれば、まあ」
そんな風に雑談を交わしながらブレードを進めていると、戦いはリィンの勝利で幕を閉じる。
雑談がメインだったので勝ち負け自体はどうでも良かったのだが、ロジーヌから拍手を送られるのは悪い気分ではなかった。
「お話の途中、失礼致しますわ」
そこに、静かな声が届く。
リィンが目を向ければ、奥からメイドの女性――シャロンが一礼してこちらへ歩み寄ってきていた。
驚くリィン達をよそに、シャロンは自らがクロウより《ブレードマスター》の称号を与えられた者と語る。
紆余曲折を経て戦うことになったのだが、座っているのは何故かリィンだった。
「なんで俺が? そうだルーディ、ブレードマスターに挑むチャンスだぞ、挑んでみないか?」
「俺、もう負けちゃったから……」
「ルーディはロジーヌさんに勝てなかったので、そんなロジーヌさんに勝ったリィンさんが挑むのは自然ですよ」
「そんなもんか……別に俺はそこまでハマってるわけじゃないからなあ」
「では、こういたしましょう。私が負けましたらリィン様の大好きなシスター服になってご奉仕させていただきますわ♪」
その言葉にリィンがむせる。
背中をさするロジーヌの手に動揺を取り戻しつつ、いきなり戯言を放つシャロンに叫んだ。
「何がどうしてそうなるんですか!」
「リィン様は職業服フェチなのでしょう? 逆にロジーヌ様にメイド服を着てもらったほうがいいでしょうか?」
「え?」
一瞬、リィンはロジーヌに振り返り彼女の学生服をつい眺めてしまう。
ロジーヌはリィンの視線とシャロンの言葉で、何を思われているのか察して頬を染めながら顔を逸らした。
「って違うから、違うから! シャロンさん、盤外戦術は卑劣だぞ!」
「おほほ、ご存知の通り私は戦いに手段を選びませんので」
「ぬぐぐ。ええいともかく、俺が勝ったら誤解を解くのに協力してもらいますからね!」
(フフフ、息子よ。もう勝負は付いているぞ)
(我ニモワカル。りぃんノ敗北ダ)
(だまらっしゃい!)
茶々を入れるオズぼんとヴァリマールに叫びながら、リィンはブレードマスター・シャロンに挑み――予想通り敗北した。
結局、誤解を解く協力は得られず、気まずい空気のままロジーヌ達と別れることとなる。
一人勝ちしたシャロンは、それはもう満足そうな笑みを浮かべていた。
その笑顔に一片の陰りもなく、シャロン・クルーガーは遅れた青春を取り戻すように楽しんでいるのだ。
後にレックスによるその瞬間を切り取った一枚が、学生はおろか来場者も混ざったオークションによってかなりのミラで取引されることを、今は誰も知るよしもなかった。
長くなってしまったので二分割にします。
後半はまた別のキャラとアトラクションを回るリィン君をお楽しみに。
こいついっつも連れてる奴が違うな…
それにしてもトワ姉ちゃんに憧れるカイといい、カイという名前は年上の女性に憧れる子供特有の名前なのだろうか…
マキアスにカイが入ってないので単なる偶然でしょうが、千人を超えるとされる閃のサブキャラの数を考えると多少の被りは仕方ないことですね。
クルトも確かサブキャラに居た気がしますし…