はぐはぐオズぼんとの軌跡   作:鳩と飲むコーラ

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フフフ、息子よ。悪巧みするぞ

 エリゼと再会し、アルフィンと合流したリィンは早速ユミルへと戻っていた。

 ユミルの住人もオズボーンを庇って死亡したとされる、トールズ士官学院の生徒の噂は聞いていたそうだ。

 そのため、リィンが里に訪れれば幽霊を見たような騒ぎから一転、生還の喜びを祝う催しへと変わっていく。

 テオとルシアからの力強い抱擁などを含めて、一通りリィンの無事をユミルに知らせた後は、当然お互いの情報交換が始まった。

 

「――というわけで、友達のおばあちゃんに保護されて、今までそこで治療を受けていたんだ。正規の病院を頼ろうにも、今は迂闊に外へ出られない状況だったから」

「そうだったのですね……」

「でも朗報もある。アルフィン殿下、セドリック殿下やその守護役であるクルトは無事です。どうかご安心ください」

「!! ああ……女神よ……!」

 

 リィンのほうは狙撃された後にある場所へ搬送され、そこで治療していたというざっくりとした話。

 そしてアルフィンを安心させるように、弟とその友人の無事をしっかりと知らせた。

 ただし、エリンのことは話さない。

 ルトガーが居るためエリンの場所はあまり知らせないほうがいい、という判断だ。

 

 かつてのリィンであれば問答無用で語ったが、シグムントからの指摘、シャロンとの戦いにおける情報の価値を思い知った今は迂闊なことを話すわけにはいかなかった。

 ルトガーがいなければ喋ったが、それでも彼は猟兵だ。

 誰の依頼でいつ敵に回るかわからない。

 故にリィンは慎重になっていた。

 

「エリゼ達もよく無事にユミルへたどり着けたな」

「それは、フィーさんが助けてくれたんです」

「フィーが? でも見当たらないようだし、何よりどうしてルトガーさんがここに?」

「兄様。ルトガーさんはオズボーン宰相から依頼を受けて、逃走中の私達をユミルに送り届けてくれたのです」

(父さんが……?)

 

 その理由を考え、リィンは無意識に左腕に抱きつく人形に触れる。

 今、オズぼんの意識はヴァリマールへ移っている。

 そのため、ここにある人形は文字通りただの人形であり、喋ることはない。

 ARCUSを使えば連絡は出来るが、この状況でそんなことをしても不審者以外の何者でもない。

 

 リィンは改めてルトガーを見やる。

 エリゼとアルフィンを保護し、ユミルまで護衛した恩人ということでシュバルツァー家に招かれ、酒を振る舞われて旨そうに呑む彼は何もおかしなことはない。

 ユミルに到着したのは最近で、その間にユミルの住人と顔を合わせたり宿泊している鳳翼舘で温泉を堪能したりと、旅行気分のように過ごしていると聞く。

 猟兵団の長という職業柄、コミュニケーション能力も問題なく猟兵ということを知っても物怖じしないシュバルツァー夫妻を気に入って舌を滑らせている。

 

 視線に気づいたルトガーに、リィンはフィーのことはいいのかと尋ねた。

 

「あいつは俺の娘だぜ? 囮に志願して捕まるほど迂闊じゃない」

「囮ってことは、まだ合流してないんですか?」

「はい。ですがフィーさんから連絡があって、こちらの無事を伝えたところ『無事ユミルに付いたなら安心、こっちは少し情報を探ってから向かう』と」

 

 それ見たことか、どこか誇らしげなルトガー。

 フィーにはエリゼとアルフィンを守り続けてくれたお礼を言いたかったが、また戻って来るのであればその時に再会を果たせばいいとARCUSの連絡を控える。

 仮に彼女が潜伏中だった場合、こちらからの連絡で領邦軍に見つかってしまう可能性だってあるのだから。

 ただ、ルトガーが居るのにそちらを優先しているということは、ルトガーは自分がこの場所に居ることを教えていない気がした。

 おそらく、連絡を受けるエリゼ達にも自分のことを秘密にするよう頼んだのだろう。

 報酬は自ら掴み取るもの……フィーがルトガーと会う日はまだ訪れないようだ。

 

「そうだ、ルトガーさん。ユミルの足湯は堪能されましたか?」

「あん?」

「エリゼ達を届けてから温泉は堪能したと聞きましたが、ユミルには他にも温泉を味わう施設がありますからね。まだなら、俺に案内させてほしいのですが」

 

 遠回りに二人で話さないか、という誘いだ。

 温泉に入っていなければそちらに誘導したが、故郷の名物の一つである足湯を味わってもらいたいことに変わりはない。

 ルトガーはリィンの意図を見抜き、嬉しそうに口元を歪めた。

 

「いいぜえ。ユミルの若様自らの誘いだ、断るのは悪い」

「兄様、私達も」

「いや、大丈夫だよエリゼ。男同士の話もしたいからね」

「お、男同士」

 

 何故かアルフィンがどもっているが、気分が悪いのかと尋ねればなんでもないと激しく否定される。

 明らかに様子がおかしいので詳しく聞こうとするが、エリゼのインターセプトによって引き離されたリィンは首を傾げながらも足湯へ向かった。

 

「皇女様やお前の妹を護衛してたのが、宰相からの依頼ってことは間違いないぜ?」

 

 靴と靴下を脱ぎ、足湯に浸かって顔を綻ばせたリィンにルトガーは開口一番告げる。

 意表を突かれたリィンだったが、ルトガーも自分がここに招いた理由を察していたようだ。

 話が早い、とリィンは早速用件を告げる。

 

「では……どうしてユミルへの護衛なんですか? 《革新派》と《貴族連合》の戦いにおいて、アルフィン殿下を旗頭に据えれば大義名分が立つ。

 少なくとも家族を取り戻すという、至極真っ当な理由で《貴族連合》を追い詰めることが出来るはずだ。なのにそれをしないなんて……」

「そりゃあ簡単さ。宰相殿は()()()内戦を無血で終わらせる、なんて考えてないんだよ」

 

 息をするように自然と言い放たれた言葉に、リィンは息を呑む。

 

「皇女殿下を使えば大義名分が立つが、同時に彼女の意志が今後の指針に関わっちまう。そうなると心優しいアルフィン殿下は無駄な流血を避ける行動を取るはずだ。それが宰相殿には煩わしいんだろうさ」

「な、なんでそんなことを。このまま内戦で帝国人が争っても、国力が疲弊するだけじゃないですか。そうなったら」

「共和国やクロスベルが攻めてくるってか? 断言しよう、それはない。今のクロスベルは《零の至宝》によって鎖国下、共和国はIBCの資産凍結による金融恐慌が起きて大パニック。直接の侵攻はあの神機によって阻まれている」

 

 ようは構ってる暇がないとルトガーは言う。

 だから存分にクロスベルの決着が着くまで時間を使って《貴族連合》を、正確には邪魔な貴族を粛清しようと画策している。

 

「今のやっこさんなら四大名門の一つでも残れば御の字ってとこかもな」

「なんで、そんな……」

「知れたことだ。お前が撃たれたからだよ」

「え?」

「血が繋がってなくても、俺も父親の身だ。息子達や娘が撃たれたら当然キレるし、ましてや目の前で()()()()()()撃たれる、なんて自分への怒りで頭がおかしくなっちまう」

 

 それは、確かな父としての情。

 人からの指摘といえ、今のオズボーンにリィンを案じるものがあるという言葉に、状況を忘れて照れてしまう。

 そんな少年に呆れながらも、ポケットから取り出した葉巻に火を付けた。

 

「ま、かといって事が終わるまでここに皇女様を滞在させる気はないようだがな」

「と、言うと?」

「利用出来るのは利用する。例え、そこに血が流れてもな。――数日後、ここに《北の猟兵》が来る。アルバレア公爵の依頼でな」

 

 突然の内容に、リィンはすぐに内容の審議でなく否定の言葉を吐いた。

 

「貴方は、《貴族連合》に雇われているんじゃ」

「そりゃあ馬鹿息子達のことだな」

「元西風の連隊長の二人が所属してるから、てっきり貴方も《貴族連合》に雇われていると思いましたが……」

「まさか、フィーよりも一回りの年上の癖に親離れ出来ないとは思ってなかったが……それがあいつらの選択ってことなら仕方ねえ。ガキ共の尻拭いしてやるのも親の努めだしな」

「……つまり、何が言いたいんです?」

「妙に察しが良い時と悪い時があるなぁ、リィン。別に俺は《貴族連合》に雇われてるわけじゃないってわけさ」

「……でも、《革新派》ってわけでもない」

「クク……本当に察しが良いやら悪いやら」

 

 悪人面と揶揄されてもおかしくない、凶悪な笑みを浮かべるルトガー。

 ルトガーが本当に《革新派》に所属しているのならば、蒼の騎神が暴れまわる戦場に紫の騎神を突撃させればいい。

 少なくとも《貴族連合》には蒼と金の二機が存在しており、《革新派》には一つも騎神がないのだ。

 オズボーンの指揮と練度の差があるといえ、騎神の有無はやはり大きい。

 なのに、紫が《革新派》に所属しているのならば、戦場に出ないほうがおかしいのだ。

 

「《赤い星座》のシグムントさんも似たようなことはしてましたからね」

「へえ、あれからまた知己を増やしたってところか」

「貴方達を嵌めた相手について興味深そうでしたよ」

「ま、明言は控えておくぜ。どんな思惑を抱えていても、一応雇用主だ。それよか、もっと他に聞きたいことがあるだろ? ある程度なら教えてやるぜ」

 

 彼が色々と情報をリィンに渡すのは、相応の見返りを求めてのことだと気づいている。

 自分がユミルに迫る危機を放置しておくはずがない、ということを見透かされながらも、動かないわけにはいかない。

 

「報酬は自らの手で勝ち取るもの……俺に情報を教えたのは、先払いってことでしょうか」

「そうとも言えるな」

「狙いはアルフィン殿下でしょうか」

「アルバレア公爵は、な。ただ鉄血宰相殿は別の狙いがある」

 

 ルトガーは一度そこで言葉を切る。

 言外に答えてみせろ、と言われたようでリィンは口元に指を当てて思案する。

 

(ルトガーさんの話をまとめれば、父さんにとってアルフィン殿下はそこまで重要視していない気がする。むしろある意味で邪魔と思われているような……それでも利用価値があるとすれば)

 

 それは、アルフィン・ライゼ・アルノールという皇族としての立場。

 囮としてはこれ以上なく機能すると言えるが、問題はルトガーを派遣したことだ。

 本当にアルフィンの確保を考えているのなら、正規軍かTMP、それこそクレアやレクターを派遣すれば彼女達はその役目を全うすることだろう。

 猟兵王と呼ばれるルトガーを動かすには、あまりにも役が不足している気がした。

 無論、姫殿下の護衛には最上級のものを与えられて然るべきだ。

 それでも、不敬かもしれないが騎神を所有するルトガーを思えばもっと別の思惑で動いていてもおかしくはない。

 

(逆に言えば()()()()()()()()()()()()()()()()()……)

 

 リィンは、直感の赴くままに告げた。

 

「まさか、クロウ先輩……いえ、蒼の騎神がここに来るってことですか?」

「当たらずとも遠からず、ってところか。いや、ある意味では正解か」

「と、言うと?」

「ヴィータ・クロチルダ。《深淵》の魔女がここへ来るってことさ」

 

 リィンはルトガーの答えに、驚きのあまりに立ち上がってしまう。

 その様子を見ながら、ルトガーはニヤニヤと意地の悪い笑みを浮かべていた。

 

「クク、こうして他人を驚かせる情報ってのは面白いもんだな。今の蒼はあの魔女のおかげでなんとか手綱を握られている状態だ。それを抑えれば、自然と《貴族連合》は自滅の一手を辿る」

「……俺に何をさせたいんですか?」

「あの魔女を捕らえる手伝いを依頼したい。当然、ユミルに迫る《北の猟兵》の駆逐も合わせてな。俺の話はそれだけで、それ以上でもそれ以下でもない」

 

 話は終わった、とばかりにルトガーは葉巻を堪能し、足湯の暖かさと体へ吹き結ぶ寒風のギャップに体を震えさせる。

 その姿に、リィンは眉をひそめるしかない。

 

(話が大きくなりすぎてないか? 鬼の力がなくなった俺にそんなこと……あっ、ローゼリアさんやエマ達のことに気づいてるのか?)

 

 ルトガーも紫の騎神の起動者だ。

 魔女に導かれて騎神に乗ったという可能性は大いにあった。

 故にエリンのことを聞いており、彼女達の助力を期待しているのかもしれない。

 だとしたら導いたのはヴィータだろうか?

 猟兵である彼は、請け負った以上雇用主には従うはずだ。

 仮に自分を導いた魔女であっても、依頼なら捕縛してもおかしくない。

 

(でも、それなら逆にローゼリアさんとエマをユミルに呼んでいる間にエリンへ侵攻される可能性もあるかもしれない)

 

 考えすぎかもしれない。

 けれど、一度膨らんでしまった想像を消し切ることは出来ず、リィンは前提から覆すことにする。

 

「アルフィン殿下はすぐに別の場所に保護します。そうすれば、そもそもユミルに危険が迫ることはありません」

「お? いいのか?」

「いいも何も、ユミルと殿下を天秤にかけるような依頼じゃないです」

 

 そう言って、話は終わりと言わんばかりにリィンは用意されたタオルで足を拭きながら足湯から出る。

 ルトガーは面白そうに笑うだけで、シュバルツァー家へ戻るリィンに声をかけることはなかった。

 

 

 そして、リィンは自宅に戻り早速アルフィンをエリンへ案内することを進言する。

 ルトガーがいないなら好都合、このままヴァリマールの元へ案内して――

 

「あの、リィンさん。ルトガーさんが仰っていたのですが、ここに残らなくて良いのでしょうか? 騎神を止められる魔女という方が来るのですよね?」

 

 アルフィンがそんなことを言い出した。

 詳しく聞けば、ルトガーが道中で護衛している間に、これからユミルですることとして話を聞いていたそうだ。

 蒼の騎神が暴れまわっていることは彼女の耳にも届いており、ルトガーは巧みな話術で彼を捕縛ないし無効化することこそ内戦の終結が早まるとアルフィンの思考を誘導した。

 誘導、と言っても嘘ではない。

 蒼の騎神が止まれば《貴族連合》は弱体化し、《革新派》の勝利が近づき内戦の決着を迎えるという意味では偽りではないのだから。

 問題は、それに関してアルフィンが身を投げ出す必要などないということだ。

 リィンは当然そこを指摘するが、帰ってきた答えは彼の望むものではなかった。

 

「私には何も出来ませんが、この身が役立つのであればどうかお使いください」

「いえ、そう言われましても」

「ルトガーさんから話を聞いていた時は不安しかなく、実行する勇気もありませんでした。でも、リィンさんが一緒なら大丈夫です」

 

 そこまで信頼される理由がわからず、リィンは首を傾げる。

 自分より年上なのに、どこか年下の子供っぽい幼い仕草にアルフィンはくすくすと笑う。

 

「すでに実績が示しておりますわ。私もクリスタルガーデンで救われ、お兄様、セドリックに至っては通商会議も合わせて何度も貴方に助けられています。それにエリゼのお兄様でもあります。だから、守ってくださいましね?」

 

 ウインクしてこちらを見上げるアルフィン。

 だがかすかに、その体に緊張……震えを押し殺しているように思えた。

 それも当然のことだ。

 セドリック同様に、彼女もまた戦争や荒事とは無縁の生活を送っていたのだ。

 突然内戦などというものに巻き込まれ、慣れぬ逃避行を繰り返して精神が参っていてもおかしくはない。

 なのに、こうして教えられたからといえ未来のことについて視野が向けるのは、皇族としてのプライドか。

 

「エリゼ……それに父さんや母さんも、殿下を止めてくれ」

「…………」

 

 兄からの言葉に、家族一同は困ったように沈黙する。

 すでにアルフィンの意志はリィンと合流前に聞いており、ユミルに到着してからも何度も説得が行われていた。

 特にエリゼは、ルトガーがアルフィンと会話する場にいたためユミルを巻き込むおつもりですか、と厳しい言葉も添えた。

 だが、ルトガーの言葉に最終的に納得を示してしまった。

 

「殿下を受け入れた時点で、その覚悟は済んでいるさ。里のみんなにも説明済みだ」

「男爵家といえ、私達は皇族に忠誠を誓う貴族です。……それに、ただ従うってわけではないのよ?」

「あの蒼の騎神の起動者は兄様を撃った実行犯と聞きます。それにたどり着くのであれば、私達が協力しない理由はありません」

 

 シュバルツァー家の言葉の節から感じられるのは、忠誠心と家族を害された怒り。

 こうしてリィンと再会出来たため、呪いに至るほど強烈な感情を有しているわけではないようだが、それでも息子を、兄を生死の境へ彷徨わせた相手への思うところがないはずがない。

 

「…………考えさせてください」

 

 言いながら、一度リィンはシュバルツァー家を出る。

 向かう先は足湯。

 リィンを視界に収めると、ちょうど葉巻を吸い終えたのか携帯灰皿で処理をしているところだった。

 

「手、回したんですね?」

「仕事をやりやすくするのも猟兵の努めだぜ?」

 

 彼らは無意識にルトガーによって思考誘導されているとリィンは考えた。

 元々ユミルの住人は善良な人々だ。

 彼のコミュニケーション能力と、そんな彼らの領主たるテオの息子が害されたということを聞けば憤るのは当然であり、そこに鬱憤を晴らす機会が生まれれば意識を誘導するのは容易い。

 とどのつまり、リィンがユミルに顔を出した時点でこの展開になるのは避けられなかったのだ。

 

「そう睨むなよ。ここの奴らは気のいい奴らばかりだからな、俺だって傷つけるつもりは毛頭ねえさ。だが、戦場はいつだって不確定要素の塊だ。その要素を少しでも排除するために、俺は立ち回ってるだけってな」

 

 そこに嘘はないようだが、故郷を戦場にされると言われるのはリィンとしても腹立たしい。

 そしてリィンが手伝えば、ユミルの被害は減りヴィータを捕らえクロウへの道が一気に開かれる。

 しかめっ面を作るほどよく出来た脚本だった。

 

 選択肢を突きつけるのでなく、それを選ばなければならない。

 それでいて自分で決断したのだからと納得させることで、誰もルトガーがこの状況を作り出したとは思わないだろう。

 リィンがルトガーを疑えたのは、彼から直接話を聞いたからだ。

 そうでなければ、リィンもまたエリゼ達と同じように自分の意志で選択したのだと受け入れていただろう。

 これが猟兵王。

 請け負った仕事を完遂させる()()()()()()なのだとリィンは理解した。

 

「俺、結構貴方のこと嫌いかもです」

「そうかあ? 俺は好きだぜ、お前みたいなの」

「家族を利用されて怒らないほうがおかしいと思いますけど?」

「クカカ、そう怒るなって。なぁに、姫さん含めて誰一人危害は加えさせやしねえさ」

 

 くつくつと笑うルトガー。

 せめてもの抵抗に、せめて自分から情報は与えるものかと決めたリィンだった。

 

「それで、俺は何をすればいいんですか?」

「まず、お前さんのことは秘密にしておく。リィン、お前は気づいちゃいないかもしれんが、結構帝国でも重要な存在になってるんだぜ?」

「…………ヴァリマールのことですか」

「それだけじゃないが、間違っちゃいないな。少なくとも、アレは切り札になりえる」

 

 弱体化しているといえ、騎神は戦況を変える一手になる。

 死亡したと判断されているなら好都合、ここぞという時まで生存は隠しておくというルトガー。

 少なくともここを襲う《北の猟兵》が生身であるなら、自分達だけで制圧出来ると言った。

 そしてヴィータにも可能な限り、リィンが復活したことを隠したまま捕縛するそうだ。

 彼の生存を明かすのは、ヴィータに隙を生む決定的な瞬間まで待つとのこと。

 

「とりあえず、変装用の衣装は貸してやる。それで数日の間、導力銃の扱いを学んでもらおうか」

「導力銃を?」

「俺の側付きの猟兵ってことでな。新人研修ってやつだ」

「俺、西風の旅団に入るつもりないんですが」

「ハッハッハ、変装にはある程度の技量は欲しいからな。見てくれだけでもいっぱしになってもらうぜぇ? なあに、お前の学習能力は十分高い、見かけだけでもすぐ覚えるさ」

 

 先行くぞ、とルトガーは足湯から出てリィンに衣装を渡し、本人はアイゼンガルド連峰へと向かう。

 導力銃の扱いを学ぶため、ある程度の場所と魔獣を相手が必要だからとルトガーは言う。

 悶々とした気持ちを抱えながらも、リィンは一度着替えとルトガーに協力することを告げるべく、シュバルツァー家へ戻っていった。

 

 

 そして襲撃が来る直前まで、リィンはルトガーから導力銃やブレードなど猟兵が使う武器の扱いと佇まいを学ぶ。

 エリゼも手伝おうとしたが、こればかりはとリィンが説得した。

 テオ達も、流石に娘に猟兵の技を覚えさせようとはしなかったのが幸いだった。

 ただ、悪態を付くリィンのことが珍しく、その上でルトガーからの薫陶を受ける姿に衣装がおそろいということもあって、エリゼはまるで父子のようという感想をぼやき――そのつぶやきを聞いたテオが積極的に息子との仲を縮めようとする一幕があったそうな。




いつかあるかもしれない、リィンとルトガーが親子のようだと聞いた面々の反応。

フィー・ゼノ・レオニダス
「「「団長と親子……新しい家族?」」」
オズボーン・テオ・リアンヌ←!?
「「「ガタッ」」」

親父特攻持ってそうな、息子適正が高い気がするリィン君。
ルトガーは猟兵「王」と呼ばれるほどですし、戦闘狂以外にもちゃんとこういう仕事に対する気配りがあるといいなってことで色々画策しました。
猟兵は敵が多いはずなのに、割と敵対者からも慕われてたってことならしてやられた感があっても、不満があっても文句のない立ち回りをしていたのかな、とも。

今回に限ってはオズぼんのアドバイスがないので、いいように言い含められた感じですね。
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