はぐはぐオズぼんとの軌跡   作:鳩と飲むコーラ

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いつも誤字報告ありがとうございます。


フフフ、息子よ。これからのことを話し合おう

「あの」

 

 ユミルの名物である温泉に浸かり、堪能していたリィンはアルティナの声に目を向ける。

 銀糸を束ねるように流れた髪は温泉に浸されて広がり、毛先から水気を吸って肌に温かさを送っている。

 湯着に包まれた華奢な体躯も、外で見た色白さからほんのりとした赤みに染まっており、上気した頬が十分な熱を体中に行き届けていることを証明する。

 そんな体の調子とは裏腹に、明るい新緑を宿す瞳はどこか困惑を宿していた。

 

「どうした? お湯が熱いならこっちのほうに……」

「いえ、そういうわけではなく。この状況に物申したいのですが」

「体を冷やしたアルティナが、外に居続けるって言うから温泉に案内したことが不思議か?」

「それは理由があるので納得しています。私が言いたいのは――」

 

 そう言って、アルティナはお湯の中から小さな白い指を持ち上げ、己とリィンの間にあるものを差した。

 

「どうして、灰の騎神が温泉に浸かっているのですか」

 

 無機質な声音にほんの少しだけ漏れた感情が、温泉に混じる異物を指摘した。

 そのまま浸かれば水面が上がり温泉が全て流れ出てしまうはずだが、何故かヴァリマールが入っても水かさに変化はない。

 加えてヴァリマールが入ると手狭な上に、深さ的に足湯のようなものになっている。

 そもそも騎神サイズの重量物がこの場にあるのに、どうして足場が平気なのですか、など多数疑問なアルティナだったが、オズぼんが何かしているのだろうとリィンは特に何も言わなかった。

 

「フフフ、アルティナ嬢。騎神とて意志を持つモノ。ならば共に湯治をすることに何ら疑問はあるまい?」

「疑問しかないのですが」

「ユミルでは珍しくないんだよ」

 

 当然、嘘である。

 ヴァリマールを手に入れたのは半年以上前な上に、ユミルに来た時もエリンですらも温泉に入れた覚えはない。

 何故突然温泉に入れたのか、と言えば左腕をもがれたからである。

 普段であれば気にしなかったが、オルディーネとの戦いによって損傷したヴァリマールを、アルティナ同様に外に置きっぱなしにするのはリィンとしても心苦しかったのだ。

 だから温泉に誘った。

 騎神がこの場にいるのは、そんな思いつきによるものである。

 

「そうなので……って騙されませんよ。私は事前に貴方のデータを閲覧しています。この灰の騎神を入手したのは今年の四月のはず。珍しくない、と認知されるほど数をこなしていているとは思えません」

 

 理論的に切り替えされるのはなんだか珍しいな、とぼんやりと思うリィンだった。

 

「そうなんだ、すごいです! って素直に言ってくれた方が可愛げがあるぞ?」

「子供騙し……いえ、騎神という超常存在をこんな雑に扱うのは貴方だけです」

「雑に扱ってるつもりはないぞ? 親父、何なら背中でも流すか?」

「フフフ、それは大変嬉しいことだが、流石に断らせてもらおう。それは彼のために取っておくがいい」

「騎神を父親と呼称……蒼の騎神とのダメージが抜けきっていないのでしょうか? 今のようなとても常識的でない行動の繰り返しは、脳へ悪影響を……」

 

 思ったより頭脳が幼くなかったアルティナの声に聞こえないフリをしながら、リィンは少し真面目な声を作る。

 

「そんなことより、君に聞きたいことがあるんだ」

「そんなこと……? 騎神が温泉に入ることがそんなこと……?」

「黒の工房出身なんだってな? なら、それがどこにあるか教えてもらえないか? 無理なら、フランツ・ラインフォルトがそこに所属しているかだけでも聞きたい」

 

 本当に真面目な質問だったので、アルティナはどこか納得いかないと目線で訴えながらも、一つ息をついて教えてくれた。

 

「生憎と、黒の工房の所在地についてはわかりません。私は出荷される時に記憶処理を施されているため、メモリーにロックがかかっているのです」

「ふむ……」

 

 嘘はついていない。

 そもそも、まだ出会って一日も経っていない彼女であるが、嘘をつくような性格とも思えない。

 ならば、記憶操作を受けているというのは事実なのだろう。

 魔女が因果律操作をするのだから、技術でそんなことが出来てもおかしくない。

 

「でも、ミリアムは黒の工房の名前にあまり反応してなかった、というより生まれ故郷であると思ってなかったようだけど」

「彼女はギリアス・オズボーンに派遣されました。下手に情報を持たせたら、そこから探られる、と思ったのではないでしょうか」

 

 そう告げるアルティナだったが、自分でギリアス・オズボーンと言ったことで何かに気づいたようにヴァリマールを見上げた。

 

「あの……リィン・シュバルツァー」

「ん、なんだ? それとフルネームは長いから、名前でも名字でも好きに呼べばいいぞ」

「では……リィンさんと。この灰の騎神が語りかける声なのですが」

「フフフ、アルティナ嬢。そこは私から説明しよう」

 

 ヴァリマールからの声にびくりと体を震わせるアルティナ。

 湯着に身を包み、暖かな温泉と煙によって体は健康的な温度に保たれているはずだが、それでも感じる何かがあったようだ。

 

「私と息子の出会いは――」

 

 それからはおなじみの説明である。

 リィンが鬼の力に目覚めた時に、己もまた人形のような姿で彼の左腕に抱きついており、そこから共に人生を過ごした紆余曲折の日々を語る。

 もちろん全てを語るには時間が足りないので、ダイジェスト風味でお送りしている。

 それでも波乱万丈にして波乱曲折な出来事に変わりなく、特にトールズ士官学院に入学してからは怒涛の密度が詰まった日々を送っていたものだ。

 

 が、それらを聞いたアルティナの反応は芳しくない。

 うろんげな瞳でリィンとヴァリマールを見比べており、マクバーンを協力者達と打倒し親友となった辺りで、温泉と反比例するように半眼の冷めた目をしていた。

 人形めいている顔のいい少女がするには、恐ろしいほどに似合っているが子供がしていいものでもない。

 

 だが今のリィンはそんなこと微塵も気にならなかった。

 何故ならば、オズぼんが見えないと言っている少女に、彼の声が届いているという事実に、感動にリィンは浸っているのだから。

 

「マクバーン。通称《劫炎》。《身喰らう蛇》に所属する執行者No.Ⅰで戦闘力においては使徒を上回り、騎神すらもその焔で溶かし尽くす、結社最強の男」

「そうそう、その通り」

「……………」

 

 すすす、と無言のままアルティナがリィンに近寄り、その左腕を見る。

 目を凝らしているようだが、表情に変化はないのでわかりにくい。

 リィンはオズぼんの人形が見えるのかと思い体の向きを変えるが、アルティナの反応に変化はなかった。

 

「……確かに私の外見は些か幼いのかもしれませんが、かといって面と向かって嘘をつかれるのは気分が良いものではありません」

 

 自身の体格が幼いことを見せるように、アルティナは自身の起伏の薄い胸に手を当て、組んでいた足を温泉の中で伸ばす。

 

「何を以て嘘って言うんだよ」

「人形など見えませんし、劫炎と戦ったというのに五体満足ではありませんか。騎神を圧倒できる戦闘力の持ち主と戦って、無傷ですませられるほどの強さを持っているとは思えません。

 仮にそのような戦闘力を有しているのであれば、あの蒼も平然と追い払えたはずです」

「そうなんだけど! 傷は治してもらっ……親父、この子絶対信じてないぞ」

「フフフ、息子よ。百聞は一見にしかず、という東方の諺があるように、人は時に情報よりも自分の目に映ったもので判断する生き物だ。

 何、マッ君と再会した時に改めて紹介するか、彼を知る者から改めて説明してもらえばいい」

「そうか、エリゼ達だな!」

 

 学院祭に呼んだ際、リィンはマクバーンを親友としてエリゼにも紹介している。

 妹の言葉なら信じるだろう、と思ったリィンの判断は早かった。

 

「アルティナ。体のほうはもう温まったか?」

「え、はい……保温という意味では十分です」

「なら出よう。エリゼからも言ってもらわないとな。親父はどうする?」

「フフフ、私はもう少し入っていよう。別の客が来たらすぐに転位で抜ける故、騒動を起こすことはせんよ」

「わかった。よし行くぞ!」

「あの、もっと他にすべきことがあるのでは」

「友情の証明が先だよ!」

 

 そう言って勢いよく温泉から飛び出していくリィン。

 なお、エリゼからの説明を受けてもアルティナが納得することはなかった。

 

 

「おかえりなさい、皆さん」

「見慣れない人がいますけど、セドリック君に似てる……噂の姫殿下?」

 

 一夜明け、両親やユミルの住人と別れを済ませたリィン達はヴァリマールの転位によってエリンへ戻っていた。

 朝になる頃にはルトガーはすでにユミルから去っており、書き置きの一つも残っていなかった。

 そういうとこだぞ、とフィーが味わったものよりも薄い寂寥感を覚えながらも、リィンは心の中で彼に感謝を送る。

 

 転位初体験のエリゼにアルフィンは精霊の道に驚き、アルティナも態度には出さないが僅かに目を瞬かせている。

 そして広場に戻ったリィン達を、テスタ=ロッサを《ギアス》で動かす訓練を行っていたクルトとその手伝いをしているニーナが出迎えてくれる。

 ただ、転位当初は隻腕となり頭部の剥がれたヴァリマールを見て盛大に動揺していたが。

 そのことに対して荒ぶっていたが、なんとか二人を落ち着かせるリィン。

 数日ほど見なかったが、クルトの顔はユミルへ行く前よりも生気に満ちている。

 有り体に言えばやる気が伺えた。

 きっと目標が出来たからなんだろうな、とリィンは口元をほころばせた。

 

「アルフィン殿下。ご無事で本当に何よりです。セドリックもお喜びになるでしょう」

「貴方も無事で何よりですわ、クルトさん。フフ……本当にセドリックも居るのね」

「姫様、まだ泣くのは早いですよ」

 

 弟の友人を確認したアルフィンの目の端に涙がにじむ。

 決壊寸前のようだが、どうせ溢れさせるならば家族の前で、と思ったリィンはすぐにクルトへ確認した。

 

「セドリック殿下は?」

「今はローゼリアさんのアトリエにおられると思います。それと……」

「後で聞く。それより今は家族を再会させたいからな」

「承知しました。では案内します。ニーナすまない、少し席を外すよ」

「うん、ちゃんと案内してきてね」

 

 何やらクルトとニーナの距離感が縮まっている。

 テスタ=ロッサを動かす手伝いをしているのであれば、自分とエマのように友情を築いていてもおかしくはない。

 見れば、自分だけでなくエリゼ達……特にアルフィンも興味深そうに二人を眺めていたが、セドリックが居るアトリエに近づくたびに表情を切り替えた。

 

「セドリック、居るか?」

「クルト? どうかし――」

 

 入室した先。

 テーブルに備え付けられた椅子に座っていたセドリックが、こちらを見て驚愕の表情を作り、音を立てて立ち上がる。

 同時にアルフィンの瞳から堰を切ったように涙が溢れた。

 駆け出すのは、同時。

 弾かれるように距離を詰めた姉弟は、互いに涙を流しながら力強い再会の抱擁を交わすのだった。

 

 

 

「……すみません、皆さんを置いてけぼりにして」

「いえ、お気になさらず。離れ離れになった家族との再会ともなれば、他の何をおざなりにしても優先させるべきでしょう」

 

 気恥ずかしそうに頬をかくセドリックと、その右隣に座り顔を赤面させながらうつむくアルフィンの姿にリィン達が微笑ましく笑う。

 アルティナといった見慣れぬ少女のこともあり、ひとまず全員に自己紹介をしてもらった後に、改めてリィンは視線をある人物に向ける。

 何故ならば、リィンが起きてからも見なかった顔がここに居るからだ。

 

「ギデオンさん、お久しぶりです。戻っていたんですね」

「そうかしこまらなくて結構だよ、リィン・シュバルツァー。君にとって私は憎むべき相手のはずだからね」

 

 そう、そこに居たのはギデオンだった。

 セドリックから話を聞くと、彼は数日前に黒の史書の大部分の探索を終えてエリンに戻ってきたようだ。

 本来ならば内戦が始まった後、すぐにエリンへ戻りたかったそうだが、正規軍や領邦軍に見つからないよう、注意深く慎重に移動する必要があったため、遅々とした動きになってしまったことを恥じていたという。

 その様子に、リィンは隣に居るロジーヌへ問う。

 

「ロジーヌ、いいのか?」

「ええ。謝罪は受け入れましたし、もう呪いに振り回されることもないと思います」

 

 穏やかに笑うロジーヌに、相変わらずの優しさだと友を誇る。

 元よりリィンがギデオンを――《帝国解放戦線》を憎んでいたのは、ロジーヌを巻き込んだからだ。

 何より、ロジーヌが許しているのが一番大きいと言える。

 あの時にオズぼんから受けた、ロジーヌが報復を望まないという言葉がある以上、リィンとしても捕獲した時の一撃でけじめは付けたつもりだ。

 

「なら、俺から言うことはありません。改めて、よろしくお願いします」

「なんともむずかゆいものだ……」

 

 かつて折られた骨の痛みを想起しているのか、腹を抑えて苦悶の表情を作るギデオン。

 その様子に苦笑しながらも、セドリックがこほんと息をついて口を開く。

 

「皆さん。改めてお話があります。今後についての、重要なことです」

 

 セドリックの言葉に、全員が息を呑んで続く言葉を待つ。

 

「今、この帝国はかつての獅子戦役のように守るべき帝国の民同士が鉾を交えています。僕は皇子として、この状況を正したい……そう考えています」

 

 それはセドリックの性格を思えば当然の選択だった。

 皇族である以上に、彼は善良な人物であり、他者を重んじることが出来る少年であるからだ。

 

「ですが、そのために必要な様々が不足している上に、僕には意志を貫き通す力も何もない……」

 

 眼前に上げた両手を力なく握り、頭を振るうセドリック。

 事実、今のセドリックは戦術オーブメントを持たせたところでクルトにも勝てない程度だ。

 気質を考えれば、アルフィンにすら負けるかもしれないと彼は考えていた。

 

「だからどうか、そのために僕を助けてください。何の恩賞の確約も出来ず、寡兵という言葉すら生ぬるい現状、ないない尽くし、甘やかされた皇子に出来ることは、そうやって周囲にねだることだけなんです」

 

 それは、開き直り以外の何者でもないただの感情論。

 けれど、自分の無力を知り唯一とも言える皇族としての立場から繰り出されるワガママであった。

 当然、まともな論理感を持つ者なら話を聞くことすらないだろう。

 誰だって行動にはメリットを求める。

 メリットでなくとも、相応の理由を提示するものだ。

 エリン一つとっても、かつてドライケルス帝を導いた魔女が長を務める秘境。

 その縁を頼り、末裔としての友好を求めれば返事はともかくローゼリアもそれに応じた答えを言っただろう。

 

 けれど、セドリックはそれすらもしない。

 相手の心を揺さぶるカリスマも、戦局を覆す強さも、行動を読み切る叡智もない。

 かつてギデオンに願ったように、彼に出来ることはただ一つ。

 誰かの力を頼る、というものだけだ。

 自分に出来ないから、代わりにやってもらうという他人任せの極み。

 ともすれば無責任とも取れる行動はしかし、セドリックが言えばまた話は別になる。

 

「元よりそのつもりです、殿下。俺も現状を放っておくことは出来ませんしね。仮に殿下がこのままエリンに隠れていても、こちらは勝手に動いたでしょうし」

 

 何故なら、彼の友好を結んでいる相手に、それらを果たす可能性を持った存在(リィン)がいるのだから。

 その存在はメリットという建前がなくても人のために動くことが出来る、稀有な少年だ。

 彼が動けば人が付いてくる。

 だからセドリックは、自分に魅力がなくても構わない。

 魅力のある人物と友好を結び、結果として帝国が救われるのであれば、いくらでも自身が無能であって構わないとセドリックは決断したのだ。

 セドリックにカリスマはないかもしれない。

 けれど、人を惹きつける魅力を持った人物と仲を育む縁に恵まれていた。

 

 そしてその決断に、感化される者は当然居た。

 

「僕も、だ。臣下として友として、助けないはずがないからな」

「私もです、殿下。かつて交わした約束、今果たさせていただきます」

 

 クルトとギデオンが同意する。

 かつてリィンによって絆と理性を取り戻した二人の意思表示は、波紋のように広がっていく。

 

「あのセドリックがここまで言うのなら、私も隠れるわけには行きませんわね」

「姫様、無茶はいけませんよ?」

「私は元よりリィンさんのサポートのために派遣されましたので、周りの意見は関係なく付いていきます」

 

 アルフィンが、エリゼが、アルティナが口々に意志を示す。

 ロジーヌは無言でリィンに頷いている。

 元より彼女の気質、そして友人を助けることに理由はいらなかった。

 

「皆さん……」

「何やら盛り上がっておるようじゃの」

 

 感極まるセドリックが何度目かの涙を流していると、ローゼリアが現れる。

 口元からちらりと覗く牙を見せる笑いは、心底おかしそうな様子だ。

 そして、その背後からエマとセリーヌも姿を見せた。

 

「エマ! もう大丈夫なのか?」

「お久しぶりです、リィンさん。ベッドから抜け出せる程度にはなんとか」

「あくまで歩ける程度よ。戦闘はまだ控えたほうがいいから、外出の許可は出せないわよ?」

 

 それでも、無事な姿を見ることが出来たのは嬉しいものだ。

 孫とその友人のやり取りに笑みを浮かべていたローゼリアだったが、やがてセドリックに向き直る。

 自身より小さく幼い外見といえ、魔女の長としての威厳の前にセドリックは息を呑む。

 

「妾達は俗世への介入を禁じておる故、直接の手伝いは出来ぬが……今後内戦に向けて活動するのであれば、ここを拠点として貸し出すことは許可しよう」

「いいの、ですか?」

「かつてドライケルス達が守った国が崩壊していくのは、あまり気分が良いものではないからの」

「いえ……今でさえ助けられているのに、正式に許可をくださって、本当に、本当にありがとうございます……!」

 

 セドリックが頭を下げ、アルフィンもそれに倣う。

 皇族が頭を下げるという行為に周囲は慌てるが、ローゼリアは帝国の身分制度とは関係のない、里レベルといえ他国の主なのだから誠意を見せるのは当然だとセドリックが制する。

 

「じゃが、アテはあるのか? 肝心の騎神は損傷と起動者不在で本来の性能を発揮することが出来ず、かといって正規軍や領邦軍とやり合えるほどの数を揃えておらんぞ?」

「《帝国解放戦線》は生き残っていたとしても《貴族連合》に吸収されているでしょう。私という存在があの中でも特異でしたので……」

「それでしたら――ミルディーヌを探すのはどうでしょう?」

 

 口を開いたのはアルフィンだ。

 ミルディーヌ――ミュゼ・イーグレット。

 オズボーン暗殺未遂事件の日から失踪した彼女達の友人。

 少女の精神に超越した頭脳を持った彼女は、あれ以来まるで音沙汰がない。

 その無事を確認したいこともあるが、何より彼女の頭脳であれば何かしらの献策を提示出来るのでは、ということだ。

 だが、リィンにはその建前に隠れた本音……彼女の無事な姿を見たいという気持ちを察した。

 内戦への介入を決意した場で、ただ友人を探したいというワガママを言えるほどアルフィンは覚悟が決まっていなかったとも言えるが、彼女はそれでいいと思う。

 

「ミルディーヌ……確か、カイエン公爵の姪でしたか。……彼女なら先日、オルディスで見かけたことがあります」

「なんだって?」

 

 思わぬ発見をしてくれたのはギデオンだった。

 元々黒の史書の複製を探すために帝国全土を巡っていた彼は、各地の情報をそれなりに持っているらしい。

 

「じゃあ、決まりだな。早速行くか――オルディスへ」

 

 思い立ったら即行動。

 リィンはひとまずミュゼとの再会を果たすため、休息の間もなくオルディスへと向かう決意を抱くのであった。




セドリック
「寄生だったら何が悪い!」

リィンが主人公といえ、設定的に出張らないほうがおかしいので必然的に目立つ皇子様。
本当に無力でだめな子だったらいくらリィンでも助けようとは思いませんが、無力も突きつければある意味カリスマ持ち?な感じに仕上がりました。

まずはミュゼ探し。Ⅶ組との本格的な合流はその後を予定してますので、彼らの再会はまたのんびりお待ちください。
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