はぐはぐオズぼんとの軌跡   作:鳩と飲むコーラ

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いつも誤字報告ありがとうございます。


フフフ、息子よ。野盗が騒がしいようだ

 ラクウェルは特に検問などはなく、リィン達は無事に歓楽都市への侵入に成功する。

 すぐさまマヤの案内で彼女の元実家へ向かおうとするリィンだったが、途中でかなり大きな喧嘩に遭遇してしまう。

 

「だから、俺達がこの街を守ってやってるって言ってるんだ!」

「うっせえ、知るか! こっちはもう必要ないんだよ!」

 

 人だかりから少し離れた場所での騒ぎに何事か覗いて見れば、何やら言い争いをしているようだ。

 ラクウェルの住民と思われる町人達と、数人の男達が揉めているのが見えた。

 

「すみません、何があったんですか?」

「いやね、最近出入りしていた猟兵が頼んでもないのに勝手に自警団みたいなことを始めてね。自分達は街を守る警備兵なんだから、色々物資とか融通効かせろって馬鹿みたいなこと言ってるのよ」

「それは、なんとも」

 

 ルトガーから聞いた壊滅した猟兵団の残党なのだろうか。

 どちらにせよ、屁理屈で無茶苦茶も良いところである。

 そんなことに住人が応じるわけがないのだが、何やら雰囲気がおかしくなってきている。

 言い争う男達、その猟兵側と思われる集団が互いに目配せを行っているのだ。

 リィンは静かに鞘のまま納められた太刀を取りながら、クルトにつぶやく。

 

「クルト。一撃で確実に気絶させられるか?」

「真正面からは対応されて難しいでしょうが、不意打ちなら問題ありません」

「わかった、俺が撹乱するから続いてくれ。アルティナはマヤを頼む」

「介入するのですか? あまり目立つのは……」

「いくら暴力沙汰が日常茶飯事なラクウェルでも、武器を出すなら放っておくわけにもいかないさ」

 

 男は文句を言っているのを含めて五人。

 口論している男は残す、と伝えるとクルトは静かに頷いた。

 静かに人混みをすり抜け、男達に近づくリィンとクルト。

 特に邪魔をされることもなく、言い争いを見守る見物客の最前線へ体を潜り込ませる。

 いよいよヒートアップしていく口論。

 猟兵側と思わしき男達がいよいよ武器を取り出そうとする寸前、すでにリィンは彼らの眼前に現れていた。

 

「はっ、ならこっちにも考えがあるぜ!」

 

 男が手を上げる。

 だが、何も起きない。

 騒がしかった場が沈黙に包まれ、先程の喧騒もありよりいっそう静けさを強調する。

 

「おい、お前ら――え?」

 

 男が振り返った先には、リィンの疾風によって気絶し、その合間を縫って放たれたクルトの鞘付き双剣によって最後の一人も倒れたところだった。

 つまり、残っているのは口論していた男だけである。

 

「口喧嘩で導力銃を使うのはダメだろ」

 

 地面に落ちた導力銃を鞘で穿つ。

 細身の棒といえ、壱の型・螺旋の力が込められた鉄塊から繰り出されるそれは銃身を抵抗なく潰していく。

 言葉と動作があまりにも自然に行われた武器破壊にクルトの目を剥かれるが、それを指摘する人物はいなかった。

 

「で、考えがなんだって?」

「あ、いや、その……」

「じゃ、後はそちらで片付けてください」

「悪いな、兄ちゃん」

 

 軽く手を振ってその場を離れる。

 多少の騒ぎにはなったが、武術を学んだ剣士であるリィン達に一般人の足で追いつけるはずもなく、すぐにアルティナ達と合流する。

 その後もマヤの元実家へ向かう合間、何件か似たようなものを見た。

 武器を取り出したのは最初の一件だけだが、それでもラクウェルという都市の特徴を顧みても多い気がする。

 

「マヤはこんな場所で暮らしていたのか?」

「普段はここまでではないですね。やはり、内戦における緊張が一番かと」

「かといって、《貴族連合》の盟主のお膝元、とまでは行かないけど管轄地域、それもオーレリアさんの傍でよくここまで……できる……」

「リィンさん?」

 

 尻窄みに小さくなっていくリィンの言葉にアルティナが反応する。

 口にしながら、確認するようにクルトに顔を向けた。

 

「クルト。不意打ちじゃなくても、あれくらいなら何人か倒せるよな?」

「え? まあ、そうですね。銃を持った相手に囲まれたら厳しいですが、ブレードのように近接戦闘で迫ってくるのでしたら、同時に何人かはいけると思います」

 

 つまり、彼らは猟兵といえヴァンダール流の初伝のクルトでもそれくらいの対処が出来る程度の練度でしかない。

 内戦を機に名を上げようとして、逆に壊滅させられている猟兵団ならばその技量は語るべくもない。

 そんな敗残兵が集まっても烏合の衆だ。

 一般人相手なら、大きな顔が出来ると思ったのだろうか?

 いいや違う、とリィンは自分の考えを否定する。

 

「無茶が出来る相応の理由がある……」

「無茶、ですか」

「アルティナ。仮にクラウ=ソラス単独でラクウェルの制圧を頼んだら、出来ると思うか?」

「援軍がなく、時間をどれだけ使ってもいい、と仰るなら可能性はあるかと」

「おいおい……」

 

 おっかないことを言うアルティナにおののくクルト。

 させるつもりはないさ、と不安そうなマヤと合わせて二人に言う。

 一度思考を頭の片隅に置き、改めてリィン達はメモに記された住所へ向かった。

 

 

「マヤ! どうしたんだ突然……そ、それに君はリィン君? 生きていたのか!」

「はい、お久しぶりですジョセフさん」

 

 メモに記された住所の先で待っていたのは、彼女の父親であるジョセフであった。

 先日士官学院の学院祭で挨拶して以来だが、あの時よりも妙に覇気があるというか、どこか戦士……いや、軍人の顔をしているように思えた。

 

「ミュゼさんの例の伝言で来てくれたのがリィンさん達だったの。お母さんは?」

「アヤは流石に家だよ。連れて来るには、ここはむさ苦しいからな」

「むさ苦しい?」

「おいおいジョセフさん、ひどくないか?」

 

 クルトの疑問に答えたのは、リィンよりも年下、クルトと同年代程度の少年だ。

 その後ろに何人か少年達が並んでおり、勝手知ったる我が家とばかりに適当なテーブルに座っていく。

 リィンは説明を求めてマヤに目を向けるが、彼女も首を横に振るばかり。

 故に事情を知っていそうな相手、ジョセフにアルティナが尋ねた。

 

「察するに、こちらの家屋を何らかの集会所としているのでしょうか?」

「今だけ、だがな。事が終わったらすぐにでも叩き出す」

 

 不満をありありと見せながらも、ジョセフは少年達を追い出す気配はない。

 マヤにとって生家、彼らにしてみても家族で十数年を過ごした家を不良のたまり場にされてはたまったものではない。

 ふと、リィンは気になったことがありマヤの耳に唇を寄せる。

 

(そう言えば、なんでマヤは引っ越したんだ?)

(お母さんの体調を考えて、もう少し日当たりや空気など健康に良さそうな場所をミュゼさんに紹介してもらいまして。その購入に、私の稼いだミラは全然使ってないそうですが)

(その決断も心苦しいものだっただろうに、よほど改心したんだな)

 

 元々、ジョセフはぐうたら親父という言葉が非常に合っている男だったそうだが、今の彼を見ればそんな気配は微塵も感じられない。

 母親であるアヤが死にかけ、マヤが働きに出たことが彼の心境を一転させたのだろう。

 

「彼らはいわゆる愚連隊だ。リーダーは今出かけているが、街を守るために結成したようでね。作戦会議など、集合場所として提供している。ミラは一銭も払っていないがな」

「愚連隊……なぜそんなものを?」

「君たちはラクウェルに入って早々、住人を助けてくれただろう? アレの対策の一環だよ」

 

 どうやらリィン達がしたことは報告済みのようで、ジョセフは一連の流れを承知していた。

 話を聞けば、どうやらあの猟兵……彼らからすれば野盗達は先週辺りからラクウェルに出入りしているらしい。

 最初こそ彼らにしてやられたが、愚連隊を結成するリーダーの少年の尽力によって半殺しの目にあい、壊滅させたそうだが……また最近になって別の野盗が出入りしたようだ。

 リィンはそこでルトガーから聞いた情報と照らし合わせ、内戦によって憂き目を見ている猟兵達の連合がここに流れていると予測する。

 

 ちなみにフィーから聞いた話だが、猟兵というのは傭兵よりさらに優れた者に与えられる称号であり、新人が団を立ち上げたからすぐ猟兵団、というわけではないようだ。

 つまり、街で見た者はあくまで傭兵でしかないということになる。

 

「でも、仮にも半殺しの目にあってまた似たようなことをするでしょうか?」

「愚連隊に一泡吹かされたことに実感がないのかもな。それか、情報が行き届いていないか」

 

 言ってしまえば烏合の衆なので、統率が取れていない。

 だが、気になることもある。

 

「話を聞く限り、ジョセフさんが介入する理由がないように思えます。彼らだけでその野盗団は追い払えたのでしょう?」

「その通りだ。だから、重要なのはここからなんだが――どうやら、領邦軍崩れがそこに合流したらしい」

「領邦軍、崩れ?」

「数日前から、連中の装備が妙に羽振りが良いというか、戦術オーブメントを使っていた」

「猟兵崩れといえ、戦術オーブメントは裏を使えばある程度手に入るのでは?」

「ああ、その可能性はあるだろう。だが、私が領邦軍崩れと思ったのは――」

「おっさん、見てきたぜ」

 

 ジョセフの言葉を遮るように、乱入する声があった。

 リィン達が振り返れば、そこに居るのは金茶色の髪を持った、豹のようにしなやかな体躯の少年、アッシュ・カーバイドであった。

 

「ん、君は確か」

「ゲッ、お前は」

 

 リィンがその姿を認めると、アッシュが苦虫を噛み潰すような顔を作る。

 二人の因縁を知らないアルティナ達は首を傾げるばかりだが、リィンがアッシュに声をかけるより早く彼は先手を取る。

 

「どうしてここに居るかしらねえが、こっちが先だ。おっさん、ラングドッグ峡谷で間違いねえ。写真通りのやつがあったぜ」

「そうか……やはり領邦軍の手が」

「お父さん、どういうこと?」

 

 マヤのことはジョセフの娘であると知っていたのか、アッシュは舌打ちを残しながらもジョセフに渡そうとした写真をテーブルの上に置いた。

 そこに映されていたのは――機甲兵ドラッケンであった。

 驚くリィン達に、ジョセフは静かに告げる。

 

「奴らはどうやら、機甲兵を持ち出しているようでね。流石にそれが相手では、愚連隊が逆に烏合の衆でしかなくなる。故に私も色々協力しているのさ。それでアッシュ。その機甲兵は万全のものだったか?」

「いいや、おっさんの読み通りある程度損傷した状態だ。装甲は焦げ付いてたし、中古品も良いとこだろ」

「だが、その中古品でも戦車すら持っていない我々からすれば破格の戦力……」

「そうか。だからあんなのがのさばってるのか」

 

 そこまで聞いたリィンは、一度アッシュ達愚連隊によって追い払われた野盗が再び顔を見せた理由を理解する。

 バック、この場合機甲兵という戦力を保有していることを知っていたからこその態度だったのだろう。

 だとしても、あんな言いがかりで丸め込めると思っていたのなら、壊滅はさもありなんだが。

 

「機甲兵は一体だけか?」

「あん? なんでテメーにそんなことを……」

「ラクウェルが機甲兵を所有した賊に襲われそうだってのに、放っておくわけにもいかないさ」

「リィンさん」

 

 アルティナの咎めるような声。

 ミュゼの捜索と、彼女をエリンに連れて行くというのが自分達の仕事。

 任務外のことを積極的に受けるリィンに、アルティナはサポート役として口を挟まずにはいられなかった。

 

「ミュゼを探すのは、少なくとも機甲兵を破壊した後でもいいだろ? メインクエストを達成する前にサブクエストをやりきっておくのはランナーの嗜みだぞ?」

「言っている意味がわかりません」

「後半の発言はともかく、機甲兵がなければ元の鞘になるだけでしょうしね」

 

 アッシュの指揮による愚連隊だけで一度は追い払った事実がある以上、機甲兵という虎の子がなくなれば野盗連合も消滅することだろう。

 ミュゼに会う前の一仕事として――あるいは、彼女はこれを見越しているのかもしれない――リィンは自然とジョセフに言っていた。

 

「ラングドッグ峡谷はラクウェル北部でしたよね。どうやら、機甲兵はそこに配置されている様子。よければこの話、俺達に預けてみませんか?」

「これは俺達の問題だ、余所者が出張るんじゃねえ」

「……縄張り意識というものでしょうか? データ上、彼らのような存在はそういう主張をすると伺ってましたが、実際に見るのは初めてです」

「第一、てめぇのせいでブラッドは外出歩けなくなったんだ。そんな爆弾みたいな奴と組めるかよ」

「ブラッド……?」

 

 リィンは記憶をたどってみるが、思い出せない。

 その様子に、アッシュは頭をかきながら詳細に教えてくれる。

 

「前にラクウェルに来た時、てめぇが空中散歩とか言って、空に飛ばしたやつだ」

「空に……」

「飛ばす?」

「前ってことは特別実習だよな?……ああ、あいつか。でも確かお互い手打ちになったろ?」

 

 アルティナとクルトのつぶやきをスルーしながら、リィンは灰のチカラたるロア・ヴァリマールで強制空中散歩をさせた不良のことを思い出す。

 今の彼は空が青い日は外に出歩けなくなるほどトラウマが長引いているそうだ。

 

「外に出歩いても他人に迷惑をかけるだけなら、むしろ引きこもっているほうがいいのでは?」

「あんだと?」

「アルティナ、時に正論は人を傷つける。だから言うタイミングは図らないとダメだ」

「傷つけたのはそっちだろーが!」

 

 がーっ、とアッシュが叫ぶがリィンは聞く耳を持たない。

 ああいう手合いは放置しておけば、いずれアッシュにも迷惑をかけるだろうに、面倒見の良い少年である。

 

「実際、機甲兵は生身じゃまず無理だ。文句があるからには、何かしら対抗策はあるのか?」

 

 以前、七月にあった帝都の特異点騒動において、リィンはスカーレットの駆る機甲兵の手を斬り飛ばしたこともあるが、あれは鬼の力やゼムリアストーンの太刀、何よりロジーヌを救った直後、メンタルが充実していたから、ということもある。

 だが異能も武装も喪失した現状では、騎神を召喚しなければ生身で戦うのは難しい。

 少なくとも、アッシュ達愚連隊がオルディーネ相手に生身で立ち向かったルトガーや、五月のブリオニア島で《ギアス》で操作されたヴァリマールを完封した西風の連隊長達ほど上手く立ち回れる気がしない。

 そう指摘すれば、アッシュは顔を反らして舌打ちを返す。

 彼も戦力差は理解しているようだ。

 ただ素直に頼れないのは、不良のプライド故か。

 

「少なくとも、こっちには機甲兵が出ても対応出来るものを持ってる。なあクルト?」

「へえ、この線の細い坊っちゃんがね」

 

 遅かれ早かれ、クルトはテスタ=ロッサを操作して機甲兵に立ち向かわなければならない時が来る。

 ならば《ギアス》操作によるテスタ=ロッサでどれだけ機甲兵と戦えるかを把握するチャンス、見逃す手はない。

 そんな意図を込めたリィンの視線に頷き、クルトはエリンにおけるニーナとの訓練を思い返し、胸に手を当てて答えた。

 

「ええ、機甲兵が出てきても僕には戦う手段があります」

「なら、頼んでも構わないかね?」

「おい、おっさん!」

「アッシュ君。街と面子、どちらが大事かなど、聞くまでもないだろう?」

 

 それでも納得がいっていない様子のアッシュ。

 仮にも愚連隊を結成し、野盗団を追い払った実績がアッシュにはある。

 それを考えれば、頭ごなしに押さえつけるより実際に自分達の力を見せたほうが早いだろう。

 

「アッシュ。どっちにしろ俺達はラングドッグ峡谷へ行かせてもらうから、不安なら付いて来るか?」

「リィンさん、別に彼らに配慮する理由は……」

「人は自分の故郷は自分で守りたい、って思うものなのさ」

「故郷、ですか」

 

 アルティナは言葉の意味は知っているものの、実感を見せない、どこか空虚な言葉を発しながら、最終的にはリィンさんが言うなら、と従ってくれた。

 クルトも機甲兵と戦うことを予想していたのか、思っている以上に動揺はない。

 

「……力ずくで大人しくさせる、って言ったらどうする?」

「アッシュが通そうとしてる結果が、そっちに降りかかるだけだ」

 

 つまり、アッシュがリィン達を制圧するのでなく、リィン達がアッシュを抑えるという結果。

 鬼の力がなくなったといえ、リィンが八葉一刀流の中伝に至った剣士であることに違いはない。

 達人に近い剣士相手にアッシュが我を通そうとすれば、結果は語らずとも理解してしまう。

 本格的な武術を学んだことのないアッシュだが、彼我の力量差は腹が立つくらいに理解せざるを得なかった。

 そこに、最後のダメ押しが加わる。

 

「アッシュ君。仮に君が出向いている間に野盗団が来ることを危惧しているなら、それは私に任せたまえ。本業は狙撃手だが、全く指揮が出来ないわけじゃないからな」

「…………チッ」

 

 アッシュは無言で部屋を退室しようとする。

 その背中を目線で追いかけるリィン達だったが、彼は部屋を出る直前に振り返り、こう言った。

 

「おら、ボサッとしてんな。さっさと行くぞ」

 

 了解、とリィンは苦笑し、アルティナとクルトも合わさった四人の少年少女は、機甲兵を潜伏させているというラングドッグ峡谷へ向かっていった。 




アラゴン鉱山町とかラクウェル方面にあるそうなので、そこを野盗団の拠点にしてグスタフ出せるかと思いましたが無理でしたね…
ひと目見て覚えたクララ先輩は別として、何気に彼もミントから騎神のオーブ製作をすぐ覚えたり、火薬を扱ったりと軌跡世界の技術屋はモブでも侮れないを体現している気も。
でもデータの有無が出番の有無となりました。
マヤの母親であるアヤの名称はオリジナルです。多分名前は出てないはず…
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