投稿遅れて申し訳ありません、リアルの都合で創作活動から離れておりました。
そして誤字報告ありがとうございます。
「ノルドに行こうと思う」
ラクウェルから帰還した翌日。
ミュゼと合流出来なかったことで今後の対策を話し合うため、ローゼリアのアトリエに集まった一同の前でリィンは宣言する。
「ノルドに、ですか。その理由は?」
「エマが言うには準契約者――Ⅶ組が一番多く集まっているのがノルドらしいんだ」
クルトの疑問にリィンが答える。
正確には地脈の上に居る彼らを調べるため、飛行船などで移動している時はその限りでもないそうだ。
「ノルドに居るメンバーは、フィーにユーシス、ミリアム以外の全員が揃っているんだったな?」
「はい。加えてマキアスさんのお父上であるカールさんと、エリオットさんのお姉さんであるフィオナさんも合流しています。
そこから私はエリンに戻り、それからはリィンさんが知る限りなのでその後のことはわかりませんが」
エマの念話からARCUSへの連絡は、以前ほど正確なものではない。
けれど一言二言、単語単語の伝達ならば向上したエマの魔術によって可能となっている。
そのため、すでにリィンの復活はⅦ組の連絡網で伝えたのだが、エマには不安があった。
(連絡が何かに妨害されている、ような気がします……伝えているはずなのに、伝わっていない……)
念話によるARCUSへの連絡自体は送られている。
けれど、その伝言への返事がないのだ。
ARCUSの通信範囲がまだ帝国全域でない以上、彼らからの連絡がないのはおかしくないはずなのだが……
そんなエマの不安をよそに、リィンが会話を続ける。
「そこまで大幅な移動はしてないと願いたいけど、とりあえず俺としてはⅦ組のみんなと合流したい。何より現状ではどう動くにせよ圧倒的に手が足りないからな」
「ヴァリマールやテスタ=ロッサを導入したとしても、本来の性能を発揮できない。それに単独ならともかく数を揃えられたら機甲兵なり戦車なり、それを突破することが出来ませんからね」
クルトの補足に頷くリィン。
ラングドック峡谷の戦いは、現状の騎神の戦闘力を図るという意味では良い仕事をした。
以前の力を発揮することが出来ない以上、仮に七月に遭遇した
「緋はともかく、灰は準起動者に恵まれている。彼らのサポートは、今のヴァリマールを支える貴重な力となろう」
「そうでなくとも、みんなとの合流は果たしたいところですが」
「では、メンバーを二手に分けるのはいかがでしょう?」
提案したのはギデオン。
彼が言うには、内戦が始まってからも積極的に動いていない勢力……《貴族連合》においても、自領にこもり領民を守るハイアームズに接触するべきだと語った。
「無論、これはセドリック殿下にアルフィン皇女、お二方のどちらかが向かう必要があるでしょう。それが最低限の誠意に他ならないと具申します」
「ハイアームズ……」
脳裏にパトリックの顔が浮かぶ。
彼とは浅からぬ仲であり、ともにハイアームズ侯爵へ顔を合わせたこともある。
そうでなくとも四月の特別実習から、時折世話になった相手だ。
彼の人柄を考えれば、今回の内戦……そもそも戦をすることに積極的でないのは明らか。
ならばギデオンの言うように、離反させるとまでは行かずとも、利のある話し合いが期待出来るかもしれない。
「私は異論ありませんわ」
「僕もです。ここでこもっているよりは、何かと皆さんの助けになれるかもしれません」
「ですが、護衛はどうされるのですか? リィンさんがノルドへ行く以上、そちらにもメンバーを割く必要が……」
「こっちは俺とアルティナだけでいい。エマはもしもの時のために、殿下達に付いて行ってくれ」
「……最悪の時は転位で逃がせ、と?」
エマの問いに頷くリィン。
転位術をほぼ自在に行使出来るようになったエマなら、妨害されない限り無事にエリンへセドリックやアルフィンを逃がすことが出来るだろう。
彼女もまた、リィンに触発されてマクバーンに挑んだ仲間の一人。
修羅場
「僕やギデオンさんのことは気にしないでください。当然危機となれば死力を尽くしますが、エマさんという保険があるのでしたらとても心強いです」
「わかりました。ならノルドにはセリーヌ、貴女が付いていってちょうだい」
「うーん断りたいけど断れないこのジレンマ」
なぜか盛大にため息をつくセリーヌ。
これから一緒にノルドへ赴くというなら、あとでブラッシングでもしてケアをしてやるべきだろう。
と、
「殿下と姫様、どちらかがセントアークへ……」
「いえ、ここは二人で行かせてもらえませんか?」
アルフィンがそう提案する。
エリゼが心配そうに彼女を止めようとするが、アルフィンは静かに首を振ってその配慮を否定する。
「四大貴族の一角を相手にするのです。多少の手土産は必要でしょう」
「まさか、自ら人質になるおつもりですか?」
「その手しかない、となれば頷くのもやぶさかではありませんが、それは違いますよ」
「では一体……」
「それは、まだ秘密にさせてくださいな。成功するとも限りませんので」
口に人差し指を当てて片目をつむるアルフィン。
こんな時だというのに、その表情は悪戯っ子な一面が際立ち、可愛げを見せている。
だがセドリックが苦笑しながらも同意している辺り、ただの思いつきというわけでもなさそうだ。
その後エリゼを筆頭に反発もあったが、代案が出ないことで結局アルフィンも供にセントアークへ向かうことが決まった。
「私はライサンダー卿が手が足りないとのことで、その手伝いに行こうと思います。守護騎士としてでなくとも、いちトールズの教官や生徒として協力は出来ますからね」
「私は……ちょっとやることがあるから別行動を取らせてもらうわね」
「おい、俺は置いてけぼりか?」
ロジーヌとベリルの予定も決まり、各自行動を、というところに割り込んだのはラクウェルから共にやってきたアッシュだ。
彼は積極的に内戦を止める、ということを考えているわけではないが、付いてきたからには相応に自らも動くつもりだった。
だが、ノルドにもセントアークにも向かうメンバーに選ばれることがないと知って怒りを顕にする。
リィンがその理由を告げるより前に、アッシュの目を何かが遮る。
「施術を施したヌシの左目はまだ不安定。積極的に使わせるわけにはいかぬよ。せめて数日は待機しておるがよい」
それは、自身の身長に迫る杖を持ったローゼリアだった。
アッシュは文句の一つでも言おうとしたが、彼女の視線が自分と同一――つまり、宙に浮いているのを見て強制的に中断された。
「ローゼリアさん、アッシュのことはよろしくお願いします」
「うむ。呪いが関わっているのであれば、放置しておくわけにもいくまいて」
「アッシュ、俺も戻ったら鬼の力の時に学んだ制御法を本格的に教えるから、しばらく昨日説明した簡単なやつで我慢していてくれ」
「あんなのもう出来てるっつーの」
リィンが教えた簡単な制御法とは、いわゆる霊視によるエネルギーの流れの把握である。
導力や霊力の流れを知ることで、どこでどんな動きをしているのかを掴む第一段階とも言えるものだ。
それを、すでにアッシュは可能としているらしい。
「そりゃ頼もしい。なら戻った時にたっぷり見せてもらうさ」
「今見ろやコラ」
そう言って苦笑するが、当然納得のいっていないアッシュが頷くはずがない。
故に、リィンはこう返す。
「なら手を出せ」
「あん?」
「いいから、ほら手をパーにしてみろって」
「なんだっつーんだ……」
釈然としないながらも言われた通りに手を広げるアッシュの手のひらに、リィンは握り拳を添える。
眉をひそめるアッシュに、リィンは一つ息をついた。
「やっぱまだ駄目だな。ローゼリアさん、復習よろしくおねがいします」
「うむ、任されよ」
「おい、だから何――」
その文句が全て出される前に、アッシュは強制的に口を閉じる。
軽い嘔吐感が頭に響き、とっさにそれを飲み込んだせいだ。
「な、ん……」
「破甲拳幻葉・弱ってね。アッシュの霊視が完璧なら、俺の手のひらからもう一つのエネルギーが伝わっているのが見えたはずだ。
それに対処出来なかったってことは、そういうことさ」
思わず床に膝をつくアッシュに軽い手当てをしながら、手を引いて立ち上がらせる。
すぐにアッシュはその手を解いたが、ぐうの音も出ない結果を見せつけられてはそれ以上リィンに文句を言うことはない。
それを見届けたリィンは、次にエリゼのもとへ近寄る。
「エリゼ、殿下達のことは頼んだぞ」
「私としては兄様に付いて行きたかったのですが……」
「おいおい、姫様を一人にする気か? 周りが男だらけってのもアレなんだし、同性で頼れる相手がいたほうがいいだろう」
「ですが……」
「大丈夫。無茶はするだろうけど、またこうしてエリゼのところへ戻るからさ」
言いながら義妹の頭を撫でるリィン。
明らかに文句あります、と目で訴えるエリゼだったが、彼女を抱き寄せて落ち着かせるように肩を叩いてやれば、ひとまず納得してくれた。
なんだかんだよく出来た義妹である。
「それじゃあ、お互い全力を尽くそう!」
そう言って、リィンはアルティナとセリーヌを伴い精霊の道を使うべくヴァリマールの元へと向かっていく。
その後ろ姿を見ながら、クルトがつぶやいた。
「ああしていつも味方を鼓舞してくれる姿だけ見ていれば、とても尊敬出来るのに」
「素直に尊敬させてくれないところばかりですからね、リィンさん」
セドリックの同意にいつものことです、と流しながら、エマもまたセドリック達と共にセントアークへと転移していった。
◇
精霊の道を使った長距離転移でノルドに到着したリィン達は、ヴァリマールで空を疾駆していた。
降り立った場所は見慣れぬ石柱に囲まれる場所であったが、アルティナが持っていた地図により地形を把握し、ひとまずゼンダー門へ向かうことにしたのだ。
さらにクラウ=ソラスの光学迷彩により姿を隠蔽しているため、空を飛んでいても誰かに見つかることなく悠然と空を飛ぶヴァリマール。
さらにその姿は、少しの変化が伴っている。
「親父、左腕の調子はどうだ?」
「フフフ、急拵えといえ悪くはない。これなら多少性能も元に戻っていると言っていいだろう」
「機甲兵は騎神の模造品、つまり相性で考えれば悪くないってことだな」
リィンに返事をするのは灰の騎神
頭部こそまだ壊れかけであるが、隻腕となっていたはずの箇所には新たな鋼の腕が装着されていた。
その左腕は、ラングドッグ峡谷で戦ったシュピーゲルの残骸を再利用したものである。
ドラッケンはアッシュの暴走によりレストアが難しくなったが、シュピーゲルに限っては再利用が可能ということで、ガンドルフの手により左腕をヴァリマールに移植したのである。
左腕が復活するまでの応急処置であるが、オズぼんが言うならば問題ないだろう。
直に付け根と合わせているわけでなく、パーツを組み合わせたガントレットタイプということもあるが、元より直接乗り込むのでなく、《ギアス》による遠隔操作でヴァリマールを扱っていたリィンからすれば、左腕の違和感はこの程度なら支障はない。
シュミット教室の薫陶は、しっかりとリィンの中に受け継がれていた。
「この灰は……蒼や金、緋に紫と同じ騎神なんですよね?」
「何言ってるんだ、そうじゃなきゃこの機体は何だって言うんだよ」
「それ
操縦席に身を寄せるアルティナは、オズぼんに未だに慣れないようで、なんとも言えない目で唇をもごもごとさせている。
安心させるように言葉を紡ぐリィンとは対象的にセリーヌの目と声は死んでいた。いつものことである。
「そろそろゼンダー門ですね。一度迷彩を――」
「――!? アルティナ、左舷にノワールシェイド!」
「えっ?」
「急げ!」
「っ、了解しました」
「え、一体何――ふぎゃぅ!」
降下準備をしようとしていたリィンが突然叫ぶ。
その理由を知るよりも早く、雇い主の激に体を震わせたアルティナは言われるがままにノワールシェイドを展開する。
その瞬間、そのバリアを破砕し轟音が響く。
耳鳴りと煙で視界と鼓膜が奪われる、リィンはゼムリアストーンの太刀を抜刀――するよりも早く、第二射が灰に着弾した。
「きゃあああああああああああ!」
視界が三百六十度回る。
突然のことにセリーヌの悲鳴が木霊し、アルティナは何か反応するでもなく呆然と結果を受け入れる。
「おや……じ! 緊急転移!」
三半規管の限界に挑戦するような圧迫感にリィンが出来ることは、オズぼんへの指示とアルティナとセリーヌを守るべくその両腕に二人を抱え込むことだけであり。
「トドメを……いや、これは……シュピーゲルの反応……ではない!?」
通信性能の上がっているヴァリマールが拾った言葉を気にすることも出来ず、謎の攻撃により、リィン達は撃墜されてノルドの大地へ落ちていった。
◇
「切り札は見せても奥の手は最後まで見せない……学生にしては手強かったが、所詮は戦場を知らん子供だな」
一方、ガイウスの故郷の跡地にてⅦ組は猟兵団《ニーズヘッグ》に追い詰められていた。
ガイウスの弟妹が置き去るしかなかった荷物の回収のために足を運んだのだが、そこに待ち伏せを受けたのだ。
だが、そこはリィンとの特別実習などで鍛えられたⅦ組。
猟兵団であっても、軍用魔獣の導入があってもその猛攻を退けることに成功する。
が、そこに現れたのは機甲兵とも見紛う巨大な人形兵器。
今まで相手取ってきた人形兵器とスケールの違う、圧倒的存在感。
それが、Ⅶ組の反撃の芽を摘んでいた。
本来は魔獣こそ《ニーズヘッグ》の奥の手であったが、貴族連合との協力によって機体の貸与が行われていたのだ。
貴族連合にとっても貴重な戦力を猟兵団に貸し与えるのは不審の目もあったが、総大将たるルーファスの言によりひとまずの納得を示す。
何より、実際にその人形兵器の恩恵は高く猟兵団としては下請けも考えるくらいだ。
そのため、ノルドに派遣された《ニーズヘッグ》の部隊は評価が高く彼らの自尊心とミラを大いに満足させていた。
「くそっ、あんなのを隠し持っていたなんて……」
「……技術力に剣を阻まれるのも何度目だ。いい加減、この辺りで真っ二つにしてやるべきだな、うん」
マキアスの焦りに感化されたのか、ラウラの闘気が危険な方向へ舵を切るのを察知したエリオットが慌てて彼女を止める。
「ラ、ラウラ、落ち着いて! ラウラが冷静になってくれないといろいろ困るから!」
「だが、猟兵団と魔獣だけならともかくこれは苦しいな……すまないみんな、本来ここに来る必要はなかったというのに」
「それは言わない約束よ、ガイウス。でも……せめて人形兵器だけなら」
ガイウスを慰めながらも、悔しそうに唇を噛むアリサ。
リィンとフィー、ユーシスとミリアムを除くⅦ組の五人はこの危機的状況をどう切り抜けるかそれぞれ頭を働かせる。
しかし、これを突破するには一手どころか何手も足りない。
人形兵器という強大な戦力が、数手分を確保しているせいだ。
(こんな時……)
その先は、誰もがその気持ちを共有していながらも言葉にはしなかった。
「さて、貴様らは捕縛して――」
猟兵団の一人が発した通告が止まる。
それは、彼の頭上に影が差したからだ。
釣られて見上げたその瞬間――轟音を撒き散らして人形兵器が潰された。
「………………え?」
それは、誰が発した言葉だったか。
奥の手と称して悠然と現れた戦力を押し潰した存在は、頭部を欠損し左腕もない巨人。
そして、巨人の周囲に生まれた魔法陣から飛び出してくるものがあった。
それは、両腕に銀髪の少女と黒猫を抱えた一人の少年の姿。
「ああもうっ! 一体何がなんだってんだ!」
こっちの台詞だ。
そんな彼を前に、この場にいる敵味方関係ない、全員が一言一句違わず気持ちを揃える。
しかし、この混迷の状況の中わかっているのはただ一つ。
Ⅶ組メンバーとリィンの再会は、ここにこうして叶ったということであった。
色々ご心配おかけして申し訳ありません、生存報告くらいしておくべきでした。
この数ヶ月、一文字も書けてなかったので久々に執筆するとなんだか不思議な気分です。
過去のペースで書けるかはちょっとわかりませんが、閃の軌跡Ⅱ編もマイペースにやっていこうと思います。
ただ、遅れを取り戻すという意味でⅠ編ほどゆったりでなく、ちょっと展開を巻いていくかもしれません。
あと遅れながらUA百万ありがとうございます!
展開も色々異なる本作ではありますが、改めてよろしくおねがいします。